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作戦会議

「二人とも綺麗だ」


鈴木の褒め言葉にリーゼは満足そうに頷き、アンナは恥ずかしそうに喜んだ。アポロンの滞在予定は3日程を考えている。体調を万全に戻し、オーガが住う山脈の首長竜の討伐やポセイドンへの旅の準備など、やる事は沢山あるが戦争に勝利した、お祭りムードのアポロンを堪能したいと言うのが本音だ。


「明日のドラゴン狩りだが、作戦はあるのかい?」


「特には、とりあえず夜中にしようとは思ってる」


「おいおい。竜を狩ろうとしてるのに作戦が無いとか言わないよな」


「作戦がいりまして?私が夜に一人で狩ってもよろしいんですのよ」


「リーゼの強さは分かってるが、そういう話じゃない。チームとして現場で臨機応変にやれって、言うだけなのはリーダーとして無責任過ぎるぞ義兄弟」


鈴木とリーゼ、キッシュが明日行う竜退治について話し合いを始めた。


「確か前回遭遇した時は高圧の水流ブレスで岩を切っていたな」


「逃げるので精一杯でしたねー」


「やっぱり作戦考えた方が良いだろう」


キッシュは鈴木とアンナの表情を読み取り答えを出した。


「そう言うば」


沈黙していたメドラウトが突然作戦会議に参加した。


「この前の逃げてる時に思いついたんですが、奴がブレスを吐くタイミングを見計らって、水魔法で口元を凍らせるのはどうでしょうか?」


「それ良いですね、どんな切り札があるかは分からないですけど、現段階では水流ブレスが最大の脅威なので、それを封じられれば優位に戦えます」


「僕とアンナさんでブレスを封じている間にリーゼさんとキッシュ君の前衛が攻撃するのはどうでしょうか」


「なんかいけそうな気がしてきた、良いんじゃないか」


「私は何でも良いですが、皆さんが納得するならそれにしましょう」


「俺は何をすれば?」


「太助さんは回復役ですよ、竜相手に闘うんですから一番の要です」


「そっ、そうか。分かった」


「明日は勝てないと判断したらすぐ逃げましょうね」


「首長竜は湖から出て来れないから、ヤバくなったら即退却だ」


リーダーの指示にリーゼ以外が頷き同意する。


晩餐会では相も変わらずアンナが参加者の視線を独占していた。鈴木は大臣のガーグと話をしていた。


「勇者殿。先日の無礼、平にご容赦を」


「気にしないで下さい。ガーグさんが民の事を思っての発言である事は理解していますから」


「ありがとうございます」


「獣葬する際は気をつけて下さいね」


「疫病ですな、聞けば聞くほど恐ろしいものですね」


鈴木はひとしきり挨拶を済ませると自分のゲストルームへと帰った。外は真っ暗で月明かりだけが、窓から射し込んで部屋を照らす。


「はぁー、疲れた」


鈴木はベッドにだらしない格好で寝転んだ。戦争が終結し護衛が付かなくなった為、久しぶりに一人で寛ぐ事が出来る。鈴木がベッド上でゴロゴロ、ゴーロゴロしていると窓が急に開き風が入り込む。


「何だ!?」


開いた窓を注視するが何もいない、風と水属性の付与による冷房の効き過ぎなのか、背筋に悪寒が走る。


「まさか不可視のスキルを持った何者かが...」


カプッ


「やられたー」


鈴木が背中に抱きつきながら血を吸う輩の正体を暴く為、鏡の前に立つと予想通りリーゼがいた。


「リーゼ、お前」


リーゼは鈴木の問いかけに一切反応せずに一心不乱に血を飲む。ゴクゴクと喉を鳴らし、夏場の麦茶の様に美味しそうだ。しかし血を急に吸い出されているので、貧血なのか足元がフラフラしてきた。


「そろそろいいんじゃないか」


「ここに来てからずっと我慢してましたのよ。明日は竜狩りですし、滋養強壮をつけなくては」


フラフラになりベッドに倒れ込むが、リーゼは蛇の様に身体を巻き付け、ゆっくりと吸血を堪能する。


「これ以上は洒落にならん」


「大丈夫、大丈夫」


「何が大丈夫な...ん...」


鈴木は眠ると言うよりは気絶して翌朝を迎えた。


今日は朝からバイトが入っている、勤務先のコンビニにバスを使って通勤した。コンビニバイトはやる事が多く目紛しい、品出しにレジに賞味期限のチェック、揚げ物をフライヤーで作って、最小商店とは言い得て妙で小売りの全てが詰まっている。コンビニの実状を知れば知る程、あの嫌みなオーナーが格好良く見えてくる不思議。もしかしたら医師よりも忙しいんじゃないかと、苦笑いしながら鈴木のレジ打ちの速度が上がっていた。9時間労働を終え仕事からあがると。


「鈴木さん」


「はい」


「今日のレジ打ちの早さは良かったよ、明日も頑張ってね」


「ありがとうございます」


オーナーからの思わぬお褒めに鈴木のテンションは少し上がった。仕事を一生懸命して褒められるのは嬉しいものだ、夕焼け空を見上げながら自宅の最寄りのバス停に向かうバスを待っていると。


「オギャーオンギャー」


可愛い声で泣く赤ちゃんを連れたお母さんが後ろに並び、その後ろに年配の男性が続きバス停には5人が並んだ。バスが到着して鈴木が乗り込もうとした時、赤ちゃん連れの母親がベビーカーを乗せようと悪戦苦闘していたので、鈴木はベビーカーの乗車を手伝った。

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