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作者: わたる

 死について考える事は誰しも1度はあるはずだ。考えて考えて考え抜いた先に待っているのは無駄に時間を浪費し死に対する恐怖が以前より何倍も増すただそれだけだ。そして、世界のどんな偉人だってその答えを知る者は居ない。だが、死は誰にも訪れる。いつかは経験する事なのに誰もその答えを知らない、ある意味世界で1番神秘的なんじゃないかとも思う。そして今俺はその死に一番近い所にいる。



 なぜそうなったかなんて今更どうだっていい。もう今更後悔だってする気にもなれない。後悔の無いように生きようと良く言うが、結局一つも後悔無く死ぬなんて無理なんだと今になって分かった。俺も後悔が無いように生きていた筈なのに……。だから今更後悔なんてしない。それにどうせ深く考えた所で後悔が増えていくだけだ。それならただゆっくりとその時を待っていればいい。何も考えずに流れに身を任せるように……駄目だ何も考えないという行為は俺が思っていた以上に難しいらしい。



 死ぬ時ってのはもっと恐怖し生きようと現実世界に(すが)るものだと思っていた。だが本当に死ぬとなると意外と恐怖を感じないものだ。それはただ俺が別に未練なんてないからなのかもしれない。たが、俺が死んだ後、誰か泣いてくれる人がいるのか。誰が泣いてくれるかなんて考えること自体が無粋なことだが、泣いてくれる人が居るのかなんて思うという事は俺は愛されていなかったのかも知れない。もしくは俺が心の底から人を愛していなかったのかも知れない。自分では愛していたつもりでも相手に伝わっていなかったのかも知れない。こうやって最期まで自分の事ばかりしか考えられないのが憎い。ああ、そうか自分の事ばかり考えていたから最期までこんなことばかり考えてしまっているのか。そう思うと納得がいく。



 この状態が段々心地よくなってきた。そろそろ時間なのかも知れない。本当に意外だ。死ぬ時は恐怖よりも心地良いと思うなんて。そっと何かに包まれている様な、いや、これは産まれた時の気持ちだと直感的に理解した。そして、なぜ誰も産まれた時の事を覚えていないのかようやく分かった。それは単に昔の事だからという訳ではなく、死ぬ時にそれを思い出すためだったのか。生と死は対極的に見えて、実は一番近いもの同士だったと今改めて身に染みた。そして人は学び続けるのか、それがたとえ死の間際で意味は無かったとしても。


 段々落ちていく……俺の事を呼んでいるかのように……何か見えた。俺はこの一部になるのか。何も怖くない、ただもとに戻るだけだ。

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