第88話 エリクサー
夢の続きのような朝食を頂き、話を聞いているとハチミツキャンディーの商談をこれからするらしい。
その間私達は、好きな場所で寛いでいてくれとのことだ、そこへミュウ様がやってきて話をする。
『クオンが商談する間、待つのも暇でしょ私と暇潰ししない?』
『ミュウ様、暇潰しとは?』
『昨日、魔力が上がったでしょ?私が見た所、全員魔法使えるようになってるかもしれないのよ』
『只、私でも各個人の得意属性が見ただけでは、分からないから私と魔法の練習してみる?』
私を含めメイド達がザワザワと信じられないと騒ぎ出す。
『わ 私達が、魔法を使えるようになるのですか?昨日言ってたことは、真実なのですか?』
『ええ、間違いないわ、生活魔法なら、もう全員出来るはずよ』
『ほ 本当ですか?私達は、生活魔法も出来ない者ばかりで旦那様の厚意で雇って貰っているのです』
『んふふ 本当よ生活魔法ぐらいなら、すぐ使えるわ、一度全員に掛けるから、よく見てて』
『<クリーン>!!!』
ミュウ様の両手が淡く光り輝き、私達全員の体へ流れて行く、すると足のつま先から髪の毛まで綺麗になっていくのが分かる。
『す 凄いです、一度で全員に掛けるなんて』
『あはは 簡単よ、いーい!<クリーン>は光魔法なんだけど、両手に魔力を集めて綺麗にするイメージを固めてから<クリーン>って詠唱をするだけよ』
『もう、魔力は見えるはずよ、やってみて』
私達は、半信半疑でミュウ様に言われた通り、真似をしてやってみる。
それぞれが自分に対して<クリーン>を掛けて行く、で 出来た・・・う 嘘でしょ、こ こんなに簡単に出来るなんて・・・
『ねっ 簡単でしょ』
『あ ありがとうございます、ま まさか魔法を使うことが出来るなんて』
私達は、一喜一憂し、皆で喜びの声を上げる。
『んふふ 生活魔法ぐらいで、何言ってるのよ、これから魔法を教えるのよ』
『ええっ は はい』
『よく聞いてね、魔法には属性があって、人それぞれが得意な属性があるの、それを調べるために属性石を使うわ』
『火・水・土・風の基本4属性、雷・氷の複合属性、光・闇のレア属性、そして例外的な無属性があるわ』
『細かく言うと、まだあるんだけど、今は、これだけ覚えて、そしてこれが属性石よ』
『無属性以外の8つあるわ、これを手に取って魔力を込めると、それぞれの属性効果が出るわ、得意属性なら、すぐに効果が出るから』
『まず、アーチカさん試してみて、火から行こうか』
『あー ちなみに自分で出した属性は自身を傷つけないから火が出ても大丈夫よ』
『握って魔力を込めるだけですよね?』
『そうよ、簡単でしょ』
私は、ミュウ様に言われた通り魔力を込めてみる、すると小さな炎が石からポッと出ているのが分かる。
『んふふ まずアーチカさんは火属性がありそうね、簡単でしょ?』
『じゃ、各自、属性石を交換しながら、やってみて』
『ミュウ様、どうしてこんなに親切に大事な事を簡単に教えてくれるのですか?』
『う~ん、どうしてだろ・・・そうねあえて言うなら、貴方の出してくれたお茶が美味しかったからよ』
『えっ あ あれだけで?』
『んふふ それだけよ、クオンがあのお茶に感動してメイドさん達全員を招待したのよ』
『後は、皆が可愛かったからじゃないかな、クオンったらデレデレしてたし』
『あはは、まさか』
『あっ そうだ1つ言い忘れたわ、属性が、もう1つあったわ回復属性よ』
『これは、属性石がないから感覚で覚えて貰うしかないし、適正がなかったら覚えられないのは他の属性と同じだから、見てて』
『<ヒール>!!!』
『コツは、生活魔法と同じよ属性石の順番が来るまで回復属性の練習をやってみて』
◇ ◇ ◇
俺は、ハチミツキャンディーの制作方法をローニアさんに教えて、見栄えの良いガラス容器のデザインから製作方法まで詳しく教えた。
原料のハチミツやリンゴンの実は、オリオンでもコンパスでも入手出来るため、簡単に手に入りそうだ。
商談は、サクサク進み売り上げの40%を、ギルドの口座へ振り込んでくれるらしい。
そして以前頼んでいた、俺達が持っていない付与魔法付の装備を3点、頂いた。
買い取ろうとしたが、昨日の食事代がわりだと言い、受け取ってくれなかった。
装備は全て指輪で付与魔法は、<回復上昇><爆発効果><闘技上昇>だった、どれも使えそうで俺も嬉しい限りだ。
お礼代わりに、ハチミツとリンゴンジャムをいくつか分けることにした。
それと、俺から新たにお願い事をした、俺達が入手した魔物素材を買い取ってくれる商人を紹介して欲しいと言うことだ。
俺達が渡した素材から有用なマジックアイテムが作れるか教えて貰い、駄目そうなら、そのまま売却することが出来たら理想的だ。
勿論そんな都合の良い人が居るとは思えないので、妥協する気はある、絶対条件は口が堅い事だが、それは商人なら当然のことなので問題はない。
後は、以前オークションに出したようなゴールドの装備を3点ほど注文が入ってるので製作することに合意した。
商談は、あっさりと終わりリビングへ戻るとメイドさん達が、魔法の練習をしていたことにローニアさんが驚いていた。
既に全員が生活魔法程度なら取得しており、ローニアさん達3人も直ぐに覚えることが出来ることを伝えると、もはや驚愕と言って良いほど驚いていた。
『いやはや、驚きの連続だな大きな商談が終わったのに、そちらが霞んでしまうよ』
『あはは、こちらもかなり助けられてますので、お互い様ですよ』
『あっ ガデラスさん、もしもリーバイ家に困った事が起こったら俺達へ言ってください、理不尽な輩なら俺達が叩き潰しますから』
『ふふふ 頼もしい限りだな、その時は、遠慮なくお願いするよ』
『ミュウ良いかな?』
『ええ、送ってくるわ<ライトシールド>の解除もあるしね』
『では、皆さん、またいつでも、お越しください』
『うふふ 御馳走様でした、クオン様これからも良いお付き合い宜しくお願い致します』
『クオン様、私達メイドにも招待して頂き、ありがとうございました』
『いえいえ、また美味しいお茶が飲めるのを楽しみにしてるよ』
『只、くれぐれも言っておくけど、昨日の食事そして魔法の事は、誰にも言わないようにね家族にもだよ』
『分かりました、誰にも言いません、他のメイド達にも言っておきます』
リーバイ家一行は丁寧にお辞儀してくれて我が家を後にする、みんな良い人達で気分が良いな。
ミュウも<ライトシールド>を直ぐに解除して戻ってきた。
只、帰りしなにアーチカさんに相談されたことを聞くと、どうやらアーチカさんのお母さんが病気を永年患っていて、医者にも見放されており、なんとか治す方法を知らないか尋ねられたらしい。
『なるほど、それで見に行くんだろ?俺も行こうか?』
『ううん、とりあえず私が行って治してくるよ』
『ミュウ』
『んふふ 分かってるわ、ちゃんと口止めしてあるから』
『あはは 流石だね、すぐ行くの?』
『ええ、待ち合わせしてるから行ってくるわ』
『大丈夫だとは思うけど、気を付けてね』
『ありがとう、行ってくるね』
俺達は、各自で昨日の片付けをしていると、ミュウが帰って来た、表情を見る限りミュウでも難しいのか?
『おかえりミュウ、どうやらミュウでも駄目みたいだな』
『ええ、かなり重体だったわ、私の<ハイエストヒール>でも治らないと思う』
『そこで皆に相談なんだけど、エリクサーを使ってみたいの』
『ミュウ言いたい事は、分かるけど、それには覚悟がいるよ』
『ええ、分かってるわ、それを見てエリクサーと同じ効果を持つ魔法を完成させて見せるわ』
『フハハ ワシの時のようにだな』
『勿論ワシに依存はない』
『ニャハハ ミュウならきっと出来るニャ』
『僕も、ミュウなら間違いなく出来ると思いますよ』
『私には、意味が分からないわ・・・』
『そうだねライカは、知らないから説明するね』
『私が、作った<ハイエストヒール>は、元々フルポーションの効果を見て作ったの』
『フルポーションの効果を直に見て、どういう風に作用するか確認してから魔法に置き換えて作ったのよ』
『なるほど、分かったわ、今回もそれと同じようにエリクサーの効果を覚えるわけね』
『只、前回との違いは使用するのが仲間じゃないってことだ』
『エリクサーの価値は、まさに仲間の命そのもの』
『もし魔法が出来なければ、数万人はいるだろう患者の1人を救うだけになる』
『なるほどね、それがリーダーの言う覚悟なのね』
『ああ、俺は、全員を救うことは出来ない、俺にとって最優先は仲間の命だ』
『今回のエリクサーも仲間への使用なら、何の問題もない』
『よく分かったわ、後は、ミュウの覚悟だけね』
『私は、エリクサーを借りてから、ずっと<鑑定>を繰り返してみたけど、やはり使用するところを見ないと分からない』
『そう今回は、良い機会だと思うわ、現時点なら仲間の命を3回救えるわ、でも今私が魔法を覚えたら、無限に仲間の命を救えることになるわ』
『分かった、ミュウにそれだけの覚悟があるなら俺も反対はしない、只、全員で見てミュウの助けになろう』
『今の俺達なら、かなり詳細に魔力の流れが感じれる筈だ、全員で見て覚えよう』
『『『『望むところだ(ニャ)!!!』』』』
『んふふ ありがとう皆、頑張るわ』
俺達は、ミュウの案内でアーチカさんの、母親の所へ行き、全員で面会する許可を取る。
俺も確認したところ、確かに悪い、どうやら肺を丸ごと交換しないと治らないぐらいの重体だ。
『アーチカさん、正直に言うと、かなり厳しい状態だが、俺達なら何とかなると思う』
『ほ 本当ですか?すみません昨日に引き続き、図々しいとは、承知しておりますが、私に出来ることは、何でもしますので、どうかお願いします』
『アーチカさん、俺達の求めることは、唯一つミュウにも聞いたとは思うけど、俺達の事は、絶対に秘密に出来ますか?』
『神に誓って誰にも言いません』
『分かりました約束ですよ、見ていてください』
『ミュウ用意しよう、俺が見ても、やはり胸だと思う、ミュウは胸を中心に見てくれ』
『オーラは頭部、ムーアは両足、ロックは両腕、ライカは下腹部を、俺は、全体を見るよ』
『皆<感知之極>と<五感強化>をフルに使い<マジックハンター>を最大限引き出すぞ!』
『『『『『了解!!!』』』』』
『ミュウ良いぞ、始めてくれ』
『分かったわ、皆行くね』
ミュウは、恐る恐るエリクサーの蓋を開け、アーチカさんの母親に少しずつ飲ませる、その効果は、まさに奇跡!飲んだ瞬間に全身が光り輝き、創造とも言える回復が肺を作り上げていくのが分かる。
全身の弱ったところへも作用し、治すと言うよりも新たに作り上げて行くような感じだ。
やがて光が消え、すっかり顔色が良くなったアーチカさんの母親が静かに寝ている。
<鑑定>を使い調べたところランクが上がったせいか詳細に調べることが出来、完治したことが分かる。
驚いたことに、しばらく養生しなくても良いぐらいに治っている、恐るべき効果だ。
『アーチカさん、ミュウが完全に治しました、もう心配ありませんよ』
『ありがとうございます皆さん、ミュウさん本当にありがとう』
アーチカさんは、涙をポロポロと流し、母親に抱き着いて喜んでいる。
エリクサーに匹敵する魔法が出来たら、これから何人でも助けることが出来るようになる、ミュウだけに任せず俺も全力で力を入れることを、新たに思い直す。
<マジックハンター>も+7から+9へ2つも上がった、それだけ難度が高いことが分かる。
アーチカさんをなだめて、俺達は、家に帰り全員と話をする。