第79話 コンパスダンジョン攻略9 幻の場所
『ようやく、お出ましだな』
『待ってたぞ、鳥だな』
『え~っと、8羽かな』
『僕も、8羽ですね』
『私もですわ』
『あはは 皆、残念9羽だよ』
『『『『『えっ!!!』』』』』
『あっ 1羽くっついてる・・・重なってるなんてズルいわ』
『『『『本当だ!!!』』』』
『む~ まだリーダーには勝てないか』
『各個撃破だ、見えなくても認識していれば<鑑定>も使えるみたいだから、やってみて』
『『『『『了解!!!』』』』』
霧平原で最初に会った魔物は、ミラージュバードって言うらしい、只でさえ見えにくい霧平原で幻覚を見せる能力があるみたいだが、俺達には効かない。
『本当に<状態異常無効>取っといて良かったわね』
『ほんとニャ、リーダー様様ニャ』
『あれだけ文句言ってたのに、調子良いぞムーア』
『『『『『あはは(ニャハハ)!!!』』』』』
『ドロップ品<鑑定>してみよう』
【アンサー ミラージュバードの羽:回避能力が上昇する効果がある。】
『お~ 中々良いね、皆お守り代わりに装備に着けておこうか』
『綺麗な羽だし、良いわね』
『私は、胸に刺しておきます』
『『『・・・・・・・・』』』
『皆、ライカの胸見すぎニャ』
『えっ いや、まあ』
『ぼ ぼ 僕は・・・』
『あはは 仕方ないよライカの胸大きいから見ちゃうよね』
『えっ えっ て 照れますね』
『も~ クオン、正直すぎよ!』
なんやかんやで皆、胸に羽を付けたようだ、俺も真似して胸に刺しておくことにした。
スキルランクも、順調に上がっていく、此処は俺達の訓練に丁度良い。
<マップ><サーチ>を使っていないため、いつものように魔物と遭遇することが少なくサクサクと進んで行った。
下へ降りる階段は、ひと際、魔力が強く発していて容易に見つけることが出来た。
道中、草原になら、どこにでもいるような魔物を倒しながら、地下34階に辿り着いたところで進んでいると気になる出来事があった。
『クンクン、なんか僕とっても良い匂いが、するんですけど』
『あたいも感じるニャー、とっても甘い匂いニャ』
『ええ、私も感じるわ』
『くふふ っと言うことは?』
『あはは 行こう!』
『言うと思ったわ、まー ワシも行きたいがな』
俺達は、匂いがする方向へ歩を進めるが、中々着かない、どうやら<嗅覚強化>のランクが上がっていたためか、とても遠距離にある匂いも察知出来るようになったようだ。
『ようやく匂いが強くなってきましたね』
『ええ、飛んでもなく鼻が利くように、なったみたいね』
『今までの、あたい達じゃ分からなかったはずニャ』
『そう考えると<マップ><サーチ>を封印して良かったな』
『そうですね、いつもの<サーチ>なら、この場所は分からなかったかもですわ』
『ロックが最初に気付いた訳が分かったよこれは、ワインだな』
『『『『『流石ドワーフ!!!』』』』』
『えへへ お酒大好きです!』
どうしてダンジョンの中でワインの匂いがするのか不思議だが、俺達はどんどん進んで行くと、少しだけ霧が薄くなってきた。
どうやら、右も左も分からない、この一帯だけ霧が薄くなっているようだ、そこには幻のように芳醇な匂いを醸し出すブドウ畑が並んでいた。
背丈は、俺と同じぐらい低いブドウの木が並んでおり1粒がゴルフボールぐらいある紫の実がタワワに実っている。
『うわ~ 凄い所ですね、なんか現実じゃないみたいです』
『この果実ずっしりとしていて丸々とよく熟していて美味しそうだわ』
『<鑑定>してみるニャ』
【アンサー フォグレプ:霧の濃い所にしか育たない幻の果実と言われている。食用可。】
『ねーねー 試食試食♪』
『あはは 勿論だよ』
俺達は、それぞれ大きなフォグレプの実を取り食べて見る。
『『『『『あ 甘い(ニャ)!!!』』』』』
『な なんなのこれ、ハチミツの様に甘いのに、とても爽やかで全然くどくないわ』
『ああ、なんて濃厚な甘さなんだ皮まで旨いな』
『みんな、分かってるとは思うけど』
『『『『『根こそぎだ(ニャ)!!!』』』』』
『あはは よろしく』
俺達は、ここぞとばかりにタワワに実っている果実を全部収穫し<アイテムBOX>に収納していく。
『でも、おかしいですね、ワインの匂いもするんですが・・・』
『まだ奥が、あるようだぞ、こっちじゃないか?』
果実を取りながら奥へ奥へと進んで行くと、そこには小さな泉がありチョロチョロと紫の液体が流れ込んでいる。
『こ この匂いは、間違いないです、この泉に溜まっているのワインですよ!』
『『『『『えええっ!!!』』』』』
『こ こんな不思議なことってあるのか?』
『んふふ ここはダンジョンだからね不思議なこともあるわよ』
『なんて芳醇な匂い、小さい泉って言っても、これ全部ワインなんですか?』
俺はワインの泉を一掬い口へ運ぶ、なっ 自然と口角が上がる、美味い・・・
こんなに美味いワインは飲んだことがない、勿論ワインなんて異世界に来てから初めて飲んだけど、今までワインと思って飲んでいたのは何だったんだ?
『あ~ リーダー狡いですよ僕も飲みますーーーーーーーーー』
『『『『では!!!』』』』
全員がワインの泉から一掬い口へ運び、自然と笑顔になる、ああ人は、本当に美味しい物を飲んだり食べた時、自然に笑顔になるんだと改めて思う。
『『『『『美味い(美味しい)(ニャ)!!!』』』』』
『い いや美味しいなんて物じゃないや、これは正に至高!アルコール度数は低いけどドワーフの僕が、こんなにも美味しく感じるなんて・・・り リーダー』
『ああ、分かってる<アースメイク>で樽を作ろうか?』
『えへへ 気合入れて作りますよ』
ロックは本当に気合(魔力?)を込めて作られた樽は【大】【中】【小】の3種類で、どれも光沢があり、とても土で作られているとは思えない出来栄えだった。
全員で、手分けして樽へワインを入れていく、何故か皆、笑顔だった、まあ俺もそうなんだが♪
『うわ~ こんなに取ったのに全然減りませんね』
『ああ、まるで無限に湧き出してくるようだな』
『くふふ こんなに楽しい作業もないわ♪』
『ニャハハ あたいも楽しいニャー』
『ロックが、怖いくらい必死で樽を作っているが、いったいどれぐらい作る気だ?』
それから1時間ほどかかり俺達は、大量のワインを<アイテムBOX>に収納した。
『これだけあれば、しばらく持ちそうですね』
『ちょっとロックどれだけ飲むつもりよ?一生分ぐらいあるわよ』
『えへへ 僕なら水のような物ですよ♪』
『さて、じゃ次へ行くか』
『えっ リーダー次って?』
『ああ、なんか妙に気になるところが、あるんだよ』
『何も見えないけど・・・一つだけ教えて欲しいわ、クオンそれって感?』
『そうだよ!』
『『『『『まだ、飛んでもない物あるんだ!!!』』』』』
『あはは ハモりすぎだ!』
ワインの泉から、まだ奥へ進み洞穴のような所を見つける。
『おそらく、ここだな』
『ダンジョンの中の洞窟?』
『まあ、行って見ましょうよ、魔物は居ないみたいだし』
洞窟へ入り少し歩いた所は鍾乳洞のようになっており、鮮烈なアルコールの匂いで充満していた。
『うわっ うわっ リーダーこれって?』
『ああ、どうやら、お酒っぽいな』
『あっ これじゃない?』
洞窟から少ししか進んでないのに、深い鍾乳洞に溜まった小さな湖のような場所で、清々しく鮮烈な芳香が漂ってくる。
そこに溜まっている液体は透明度の高い琥珀色だった。
『ぼ 僕、味見してみますね』
『あはは、ちゃんと<鑑定>してからだぞ』
『だ 大丈夫です、あ~ ドキドキするな、では』
味見をしたロックが動かない・・・まだ動かない・・・・もう待てないな。
俺達も近寄り全員で味見をしてみる、琥珀色の液体を一掬い口へ運ぶ、一気に飲み干し喉が焼ける、度数が高いみたいだ。
ああ、これは、まるでブランデーか?地上にワイン、地下にブランデーかドワーフには天国みたいなところだな。
しかし、これは何て表現したら良いんだろう味と言うのか?喉が美味しいと言っている。
後味は、素晴らしいの一言だな、余計な言葉は要らないな美味い!!!!!
『どうだロック?』
『感動で言葉もありません、美味しいです僕の短い人生の中で最高のお酒です』
『んふふ 最高の賛辞ね、良かったわねロック、私も嬉しいけど』
『くぅぅ 美味いな、ワハハ楽しくなってきたぞ』
『オーラまだ探索中ニャ、飲みすぎは駄目ニャ』
『ああ、でもウットリするほど、これ美味しいですわ』
『あはは、皆、気に入ったみたいだな、じゃ根こそぎだ』
『『『『『了解!!!』』』』』
ブランデーは気化するのが早そうだったので樽へ入れてから密閉することにした。
流石にワインほど無尽蔵にあるわけではないようだったが、それでも取れるだけ取って洞窟を後にした。
『<アイテムBOX>って最高ですね!』
『あはは、今更だよロック』
『フハハ 分かりやすいぞロック』
『んふふ ロックには、最高のダンジョンになったわね』
『ニャハハ ロックずっと笑顔ニャ』
『くふふ 見ていてこちらも楽しくなりますわ』
『あ~ 言っとくけど、お酒は帰ってからだぞ』
『帰りましょう!』
『『『『『おいっ!!!』』』』』
『あはは 冗談ですよ』
俺達は、名残り惜しいが、ここを後にする、また霧が立ち込める平原に戻ると、まるで幻だったようにブドウ畑が消えて行く。
『き 消えた・・・』
『ま 幻だったのかしら』
『よ 良かった・・・<アイテムBOX>には、ちゃんとフォグレプもお酒も入ってます』
『本当に不思議な空間だったな』
『また来たいですね』
『ああ、また来ようか』
おそらく、この霧平原の中で移動しているのだろう、あの場所へ再び向かうのは難しそうだが俺達なら、また来れそうだ、楽しみにしておこう。
霧平原にも慣れて来た俺達は、どんどん進み、地下38階で新たな魔物に出会う。
『そこそこ大きいわね』
『単体みたいニャ』
『<鑑定>してみたが、コカトリスって言うみたいだな』
コカトリスか、名前だけは有名だから知っていたが、まさか実物に会えるなんて人生分からないもんだ。
姿も見えてきたが派手だな、赤を基調とした色取り取りのダチョウみたいだが尻尾がヘビだ、だとしたら石化もありそうだが勿論、俺達には効かない。
『私が、行きますね』
『ああ、任せたライカ』
コカトリスが単体だったこともあり、ライカに任せた、想像どおりライカの一閃で、あっさりコカトリスの頭が飛ぶ。
・・・しかし、コカトリスは死なずにライカへ向かっていく。
『えっ ど どうして死なないの?』
『ライカ、魔力の流れを、よく見たら分かるよ』
『ああ、なるほどね、クフフ 色々な魔物が居るのね』
ライカの一閃が、今度は、コカトリスの尻尾のようなヘビを切り取る、するとコカトリスは動きを止めて倒れた。
『コカトリスって、鳥とヘビ倒さないと倒せないのね』
『これも良い練習になったな、魔物の弱点を探すのにも役立ちそうだ』
『んふふ そうね今までなら分からなかったけど、今なら気配と魔力の流れで、分かるかも』
『よし、少し訓練しようか』
『『『『『了解!!!』』』』』