第70話 ハチミツキャンディー
『あ 甘い、とっても甘くて美味しい、こ こんな物、私食べたことありませんわ』
『良かったら、ガデラスさんも、御一つどうぞ』
『むっ では、遠慮なく頂こう』
『ほう、見た目も綺麗だが、なんとも爽やかな甘みだな、むっ 爽やかな甘みが濃厚な甘みに変わった、なんとも不思議なお菓子だな』
『ふふふ これは女性なら、まちがいなく飛びつくな』
『お お父様、まるで私が食いしん坊見たいじゃないですか』
『ふはは そう言いながらも、幸せそうな顔をしてるじゃないか?』
『もう、お父様ったら、でも正直参りましたわ、ハチミツクッキーも美味しいですが、これは別格ですわ』
『クオン様、このハチミツキャンディー商品にしませんか?』
『えっ 商品ですか?』
『ええ、これは、まちがいなく売れます、私なら1粒金貨でも買いますわ』
『『『『『イイッ!!!』』』』』
『お父様よろしくて?』
『ふはは お前が言わなければ私が言っていたところだ』
『どうだろうクオン君、我が商会に販売権を売ってくれないか?』
『ええ、まあローニアさんが喜んでくれるなら良いですよ』
『只、俺達は、今日からコンパスのダンジョンに潜るので数日戻ってこないかもですが』
『ああ、帰ってからで結構だ詳しい話は、それからしよう』
『お父様、横取りしては、駄目ですよ!私が一手に仕切りますわ』
『し しかしローニアこれは、かなりの商売になるぞ?』
『お任せ下さい、見事に成功してみせますわ』
『金貨が届いたようだ、重いが大丈夫かね?』
俺は、積み上げられた金貨の袋をアイテムポーチへ入れるような振りをして<アイテムBOX>に収納した。
『なっ これだけの重さがある物が入るアイテムポーチとは、流石だね』
『運が良かっただけですよ』
『ガデラスさん今回は、ありがとうございました』
『いやいや、こちらこそありがとう、また、宜しく頼むよオークションの件は、任せてくれ』
『ありがとうございます、ところでメイドさんは何人ぐらい居るんですか?』
『メイドかね?ザルガ何人だったかな?』
『はい旦那様、現在は15名です』
『良かった足りそうだ、いつも丁寧に出迎えてくれてますから、何かお礼したかったのですが、良ければメイドさん達にも食べて貰って下さい』
俺は、10個入りのハチミツキャンディーの瓶を3つ取り出してザルガさんに手渡す。
気のせいか壁際で待機しているメイドさん達の目付きが変わったように見えた。
やはり女性は、甘い物に目がないのかな?
『これは、これは、メイド達も喜びますな』
『旦那様クオン様のおっしゃるとおりメイド長に渡しても宜しいですか?』
『ああ、お言葉に甘えなさい』
『ありがとうございます、アーチカ』
『はい、ザルガ様』
『旦那様からお許しが出ました、クオン様からの差し入れです、有り難く受け取り、お礼を言いなさい』
『分かりました、ザルガ様』
『クオン様、私達メイドにも高価な品を頂き、ありがとうございます』
『いやいや、全然高価じゃないよ俺の手作りだし材料は、ダンジョンで取ってきた物だから只だしね』
メイド長をしているアーチカさんは、俺に紅茶を入れてくれたメイドさんだ、非の打ちどころのない所作と良い、優雅な佇まい優しく微笑んでくれる顔も喜んでくれているのが分かるのが嬉しいな。
『では、皆さん、今日は、ありがとうございました、また打ち合わせに来ますね』
『いや、クオン君、何度もご足労して貰うのも心苦しいダンジョンから帰って来たら私が伺うよ』
『俺達の家には、こんなに美味しいお茶は、ありませんよ?』
『私の家にも、こんなに美味しいお菓子はないよ?』
『あはは ガデラスさん、また会うのを楽しみにしてますよ』
『サークルの皆さんもダンジョン気を付けて下さい、またお会いしましょう』
『ニャハハ またニャ』
『こら、ムーア』
『ニャー ごめんニャ』
『クフフ ありがとうございました』
『気遣い感謝する』
『注文発注あれば、僕また頑張って作りますね』
『んふふ 皆様ありがとうございました』
俺達が帰る時、リーバイ家全員で見送ってくれた、本当に良い人達だ。
『ふぅ~ 侯爵家の友達って言ってたから緊張しましたけど良い人達ですね』
『ああ、貴族も皆ガデラスさんのようなら良いのにね』
『ローニアさんの所は、特別と思った方が良いわよ』
『やはり、そうですか私は、町には入った事ないので噂でしか知らないけど』
『さて気分も良くなったし頑張ってダンジョン攻略に励もうか』
『『『『『了解!!!』』』』』
◇ ◇ ◇
『ザルガ、メイド達を全員ここへ集めて頂戴』
『はい、お嬢様』
しばらくすると応接室にメイド達15名が全員集まった。
『お父様も部屋へ戻らないんですか?』
『ふふ 私も見たいんだよ』
『うふふ 流石お父様、お見通しね』
『アーチカ皆に配って差し上げて』
『知らないメイド達も居るだろうから説明するわ』
『今配っている物はクオン様がメイドさん達へと言って下さったハチミツキャンディーって言うらしいわ』
『先ほど私も頂いたんですが、私なら1粒に金貨を払ってでも欲しいわ』
『それを食べて是非、感想を聞きたいの、あっ 噛んじゃ駄目よ、口の中で転がすの』
『さあ、食べてみて』
『お嬢様、そんなに高価な物を頂いて良いのですか?』
『金貨と言えば私達の3日分の給料なんですが』
『アーチカ、クオン様がメイドさん達へと下さったのよ絶対食べて貰うわ、さあどうぞ』
『で では、頂きます』
メイド達が、大き目のハチミツキャンディーを頬張りコロコロと口の中で転がしている光景は、中々見応えがあるな、ふふふ クオン君も見たかったんじゃないかな?皆の驚くような顔から幸せそうな表情に変わっていく。
『どうかしら?』
『甘い、とっても甘いです、こんなに甘い物は初めて食べました』
『皆さん今度、このハチミツキャンディーを内の商会で販売することになりました、この味を覚えておいてください、また試食して貰うことになると思いますので』
『えっ ま また私達も食べれるんですか?』
『ええ、楽しみにしてて下さいな』
メイドさん達は、一斉に喜びの声を上げた。
『私も、皆さんの幸せそうな顔が見れて満足よ、ありがとう持ち場に戻って下さいな』
『あ~ 待ってくれ、私も話がある、以前に全力で接待するように言っていたクオン君が、我が家のメイドを絶賛してくれた、そして差し入れまで包んでくれたのだ、これも君達のお陰だ、私は非常に気分が良い』
『よって、メイド達全員に特別に報酬を出そうと思うザルガ』
『はっ 旦那様こちらです』
『アーチカ来なさい』
『アーチカ君の接待に、クオン君は非常に喜んでくれた、よって金貨2枚を褒美に渡すことにする』
『なっ わ 私は、言いつけの通りしただけですので』
『良いから受け取ってくれ、そしてこれからも、宜しく頼む』
『は はい、ありがとうございます旦那様』
『さあ、皆も順番に来てくれ全員に金貨1枚ずつ褒美だ』
わぁ~っと、メイド達が喜びの声を上げ、一人一人お礼を言いながら受け取っていく、メイド達全員に手渡していった。
その日の夜メイド達が泊まる部屋での会話が弾む。
『ねーねー アーチカ今日は、最高の日だったわね』
『ええ、でも緊張したわ、あの様子ならクオン様に粗相をしたら簡単に首になるわよ』
『あ~ そっか、そう考えると怖いわね、ここは、お給金も良いし待遇も良いから、やめたくないわ』
『そして、あのハチミツキャンディーまた食べたいわ』
『ここで頑張って働いていたら、また食べれるかもね』
『うん、私これからは、もっと頑張るわ』
『さあ、もう寝ましょうか』
『そうね、おやすみなさい』
・・・・・・クオン様か、見た目は子供のようなのに旦那様を相手に、あの堂々として振る舞い、でも全然嫌悪感が湧かない、いえそれどころか親しみまで感じさせる人、不思議なお方・・・
◇ ◇ ◇
俺達は、コンパスのダンジョンに向けて歩いていくことにした。走れば30分ぐらいで着くんだが<縮地>の練習や<鑑定>スキル上げのためだ。
『あっ そういえばリーダーあれは、なに?』
『えっ なんのことかな?』
『とぼけないの、分かるでしょ』
『あはは なんか手土産持っていかないとって思って故郷のお菓子を作ってみたんだよ<錬金術>で、すぐ出来るしね』
『も・ち・ろ・ん、まだあるわよね?』
女性陣3人からのジト目が痛い・・・・
『も 勿論だよ今日のおやつに出そうと思っていたんだけど今食べる?』
『『『食べる!!!』』』
『あはは はいどうぞ』
『うわ~ なんて爽やかな甘み、あっ わかったこれリンゴンのジャムとハチミツのミックスね』
『流石だね、でも半分正解』
『えっ ちがうの?』
『これ中心は、ハチミツだけニャ 濃厚な甘みが口いっぱいに広がって幸せニャ』
『甘い、なんて甘いの、私幸せです』
『なるほど、ハチミツ玉をミックスジャムで包んだんだ、考えたわね』
『正解!』
『ほんと、リーダー呆れるほど天才ね!この女性殺し!』
『ええっ 美味しく作っただけだよ』
『こんなの貰ったら女性なら誰でも好きになるわよ』
『ミュウ達は、もっと手の込んだ、お菓子食べてるだろ?』
『むっ そういえば・・・ま まあ良いわ』
【サークルの<縮地>が<縮地+1>に成りました。】
『お~ やったね俺も慣れてきたよ』
『ワシも慣れて来たが、もっと<身体強化>上げないとコントロールが難しいな』
『オーラ逆だよ、<縮地>の練習してたら<身体強化>も上がるはずさ』
『フハハ なるほどな』
『コンパスのダンジョン見えて来たね』
『<縮地>の練習終わりにしようか、見られたら不味いしね』
『『『『『了解!!!』』』』』
以前に見たようにダンジョンの管理をしている兵隊さんの前に何人か順番待ちをしているようだ、俺達も最後尾に並ぶことにする。
同じように並んでいる冒険者が話しかけてきた。
『おいおい、まさか、お前達コンパスに潜るのか?ここの魔物は強いぞ』
『ここは、2度目なので大体分かってますよ』
『ふむ、上層なら、なんとかなるか無理するんじゃないぞ』
『んふふ 心配してくれて、ありがとう』
『えっ いや、まー 良いってことよ』
『お おいっ 見てみろよ、めっちゃ可愛い子揃ってるぞ』
『な なんだよ、えっ マジか本当に可愛いじゃねーか』
『あんな子供達が中級ダンジョンに入るのか?』
『いや、見ろよ一人だけ大人がいるみたいだぞ』
『いやいや、もっとよく見ろよ、綺麗な大人の女性も居るぞ』
前に並んでいる冒険者達の会話が丸聞こえなんだが・・・そうこう言ってる内にやっと順番が回ってきたみたいだ、なんか聞いてるだけで疲れたな・・・
『おはようございます、今日も宜しくお願いします』
『おお、君達か、2度目だね』
『覚えてくれてたんですね』
『あはは ああ君達は目立つからね、よく覚えてるよ』
『んふふ』
『みゅーうー』
『ちょ な なにも言ってないでしょ』
『ああ、そうだ君達なら行かないと思うが地下21階から今日は、毒性のガスが強いみたいだから注意して進むように、対策をしてないなら行っちゃ駄目だよ』
『ありがとうございます、注意しますね』