第59話 最後の仲間
結局、魔族の女性はミュウに任せて山賊達はロープで縛ってから引き摺って運ぶことにする、山賊が溜め込んでいた、お金や武器防具は、とりあえず<アイテムBOX>にほり込んでデーラの下へ向かう。
引き摺りながら運んでいた山賊が地面に擦れ、木の根にぶつかって何人か気絶から覚めたが、構わずそのまま走って戻る。
デーラのために作った地下室まで戻り無事、女性を救出したことを伝えると泣いて喜んでくれた。
『お兄ちゃん達ありがとう、でも私なにもお礼出来ない・・・』
『良いんだよ俺達がデーラにお礼言いたいぐらいだからさ』
『えっ ど どういうこと?』
『それよりもデーラちゃん家へ帰らなくて大丈夫なの?』
『うん、昨日から帰ってないから、きっとお母さんが心配してると思う』
『この魔族のお姉さんもデーラちゃんの村の人かな?』
『ううん、私の村で見たことはない』
『なるほど、じゃデーラは、早めに送り届けたほうが良さそうだね』
『あたいが送っていくニャ』
『ありがとう猫のお姉ちゃん、私を助けてくれたお姉ちゃん大丈夫?』
『ああ、怪我してて治療したとこだから、まだ安静にしとかないとだし俺達の村へ連れていって看病するよ』
『お姉ちゃんも魔族だから村へ入れないよ、バレたら酷い事されちゃう』
『ああ、それは、大丈夫だから安心してくれ』
『じゃ、ムーア頼む』
『分かったニャ デーラちゃん村まで送るニャ』
『ありがとう・・・ねえ、また会えるかな?』
『ああ、きっと会える俺達が会いに行くよ』
『ほんと、きっとだよ約束ね』
『ああ、約束だ』
ムーアは、デーラちゃんの手を引いて村まで送ってくれた、何かあれば<パーティトーク>で連絡するよう伝える。
俺達は、また気絶していた山賊共を連れて<エンゲルラント>の町へ戻ることにする。
さって、どうやって門兵を潜ろうかな・・・
『オーラ<アイテムBOX>に生物は、入るのかな?』
『うむ、言ってる意味は、分かるのだが、以前試したら生物は無理であった』
『しかし、荷車の底に隠して入れるのではないか?』
『なるほど、ちょっとやってみようか、もうすぐ町だしね』
オーラの提案どおり荷車に魔族の女性を寝かしてから<アイテムBOX>に入っている物を上から被せて見えなくしていく。
『うん、これで誤魔化せそうだな』
『そうね、全然分からないわ』
『僕が、地下通路作っても良いですけど、これの方が早そうですね』
『ああ、町から出るときは、また考えようか』
俺達は、町へ着き予想どおり門も難なく通れた、引き連れていた山賊達を門兵の方に任せて、そのまま家へ帰り魔族の女性を空いている部屋のベッドに寝かせる。そうこうしてるとムーアが帰って来た。
『ただいまニャー』
『ムーア早かったね』
『急いでたしオンブして連れて行ったニャー魔族の町へ入るのを確認したから、もう大丈夫ニャ』
『なるほど、ありがとうムーア』
『ニャハハ 大した事ないニャ久しぶりに本気で走ったけど、ヤバいほど早かったニャ』
『今の身体能力で全力で走ったら、ヤバいね今度皆でやってみよう』
『フハハ 楽しそうだな』
『ああ、そうだ山賊達から色々スキル覚えたみたいですけど確認しときましょうか』
『そういえば、すっかり忘れてたな、じゃリビングで食事しながら確認しとこうか』
俺は、買い溜めしておいた食糧を<アイテムBOX>から出してテーブルに並べていき皆で食べ始める。
山賊達からスキルをコピーしたのは結構多かった。スキルも<スキルハンター+4><アイテムBOX+1>になっていた。
『結構、覚えてるね順番に言うと<気配感知><気配遮断><影隠><切断強化><突強化><MP回復><威圧>かな7つも新しく覚えてるね』
『<威圧>はコピーしたんじゃないニャ』
『山賊相手に皆怒ったから自力で取得したみたいね』
『なるほど、今まで何度か<威圧>してたみたいだからスキル取得になったのか』
『ワシから言わせればスキルもなしに、あれだけの威圧を放っていたのに驚くわ』
『スキルも、かなり増えてきたね、ここらへんでスキル上げしないとな』
『ねーねー それより最後のメンバーね楽しみだわ』
『あはは まだ入ってくれるとは限らないよ』
『ぬっ どういうことだ?』
『あの魔族の女性のことだよ、僕達のパーティ候補なんだ』
『オーラも感じただろ?あの女性に』
『ああ、確かに何か不思議な感覚があったな』
『そうニャあの時の感覚が仲間候補の<直感>ニャ』
『そうか・・・あの感覚が、ワシの時もそうだったのか?』
『んふふ そうよ、あの独特の感覚、間違いないわ』
『ってことは、あの女性が起きたらクオン殿が口説くのだな?』
『オーラ、言い方が悪いぞ!』
『フハハ しかし、そうであろう?』
『ああ、頑張るさ、あの女性からは、何か圧倒的な力を感じる・・・そうオーラの時のような』
『あ~ やっぱりね、凄まじい力が封印されてるのね』
『ああ、魔族なのに山賊に勝てないほどの強烈な封印だと思うよ』
『そういえば、人数がいたとはいえ、あんな山賊に魔族が負けるとは思えませんね』
『でも、あれだけの怪我を負った後だから今日は、ゆっくり休んで貰って明日の朝、話をしてみるよ』
『悪いけど、ミュウとムーア、交代で様子を見てくれる?』
『分かったわ』
『任せるニャ』
『あの女性、まだ名前も分からないけど、もしパーティに入ってくれるなら俺達もフルメンバーだな』
『そうね、なにか節目的なものを感じるわ』
『フハハ ワシ達は結局、全員クオン殿に助けられたメンバーになるのだな』
『まだ、分かんないけど<直感>が外れた事ないですもんね』
『明日が楽しみニャ』
『そうだな、明日がサークルにとっての記念日になるかもね、最後の仲間になってくれたらお祝いだ』
その日は、彼女の世話をミュウとムーアに任せて各自、眠りに付くことにする。
俺は、ベッドに入り明日いよいよフルメンバーになるかもしれないことを考えて感慨に耽る、今まで色々あったよなー 俺の身に起こった謎も、まだ全然分からないが明日なにかヒントが分かるような気がする。
俺は、珍しく眠れない夜を過ごしていたが、知らない内に眠りに落ちていく。
うっ う~ん あ あれ、ここは何処?私は、ボ~っとする意識の中、見覚えのない部屋を見渡す、段々意識が覚醒していき昨日の記憶を辿っていく、そう、そうだわ私、山賊に捕まって暴行を受けていたはず・・・
昨日の記憶を思い出したが怪我はしていない・・・痛い所もない・・・あ あれは、夢だったの?いえ そんな筈はない、確かに山賊に絡まれている女の子を助けて、何かで頭を打たれた・・・
頭も触ってみるが傷はない、痛みもない・・・どうなってるの?部屋を見渡すと鏡があったので自分の姿を見に行く。
鏡を覗き込むと、いつの間にか服も変わっていることに気付く昨日来ていた服は、ベッドの横に綺麗に畳んで置いてあった。
もう一度鏡を見ると怪我どころか、まったく傷がない驚くことに古傷も消えている、なっ ど どういう事、今私は、夢を見ているの・・・
ずっと寝ていたにしては、体に不調もなく自然に動ける、動ける処か調子も良いようだ。
どう考えても、分からないわね・・・山賊に売られたとしても魔族を買うような人がいるとは思えない、同族が私を救った?いやいや、そんな酔狂な魔族なんていないか・・・
拘束もされてないってことは、何者かに助けられたのは、間違いないとして問題は、それが誰かってことよね。
私の怪我は少なくとも重症だったはず、それをここまで完璧に治療出来るなんて只者の筈がない。
逃げるにしても、逃げれるとも思えないし恩もある、待つしかないか・・・そう思っているとドアをノックされる。
き 来た、さて、どうなるやら・・・
『コンッ コンッ 入るわよー』
私は、声を聞いて女性であり緊張感もなさそうなので、幾らか安堵し扉の方を見るが誰もいない?
んっ 扉が勝手に開いただけ?私は、声が掛かってから扉が開くのを、ずっと見ていたが人影が見えないことに不思議な気持ちになる・・・
『あっ 目が覚めたのね、良かったわ体の具合はどお?昨日は、酷い怪我してたのよ』
『なっ 』
私は、驚愕し背中に汗が流れる、部屋へ入ってきた女性は、いつの間にか隣にいた・・・ば バカな私は、扉から目を離していない、いったい、いつの間に・・・
『んふふ ごめんなさい、驚かせちゃったかな?事情が分からない筈だから意気なり襲い掛かる可能性もあるでしょ?だから自己紹介代わりにね♪』
『つまり、襲い掛かっても無駄って訳ね・・・』
『んふふ 察しが良いわね、でも安心して私達は、絶対に危害を加えないわ』
どうやら悪い人では、無さそうだけど背中に掻いた汗が止まらない、恐らく戦えば直ぐに殺されるだけの圧倒的な実力の差を感じる・・・
『と とりあえずお礼を言っておくわ、貴方が助けてくれたのよね?』
『正確に言えば私達ね、私を含めて5人居るわ』
『ありがとう、少し事情を説明してくれると嬉しいんだけど?』
『そうね、でも説明は私達のリーダーがしてくれるわ』
『・・・分かってると思うけど私は、魔族よ?』
『ええ、分かってるわ、とってもセクシーなお姉さんだから男性陣が照れてたわ♪』
『わ 分かってるの魔族よ、魔族なのよ?』
『んっ 分かってるわよ?魔族がどうしたの?』
こ この人は、魔族を何とも思っていない?ヒューマン?いやエルフか、どちらにせよ恐れる必要もないほどの強者なのか・・・
『まっ それよりもお腹減ったでしょ?朝食が出来てるわ、行きましょ』
『わ 分かったわ』
『あっ ちょ ちょっとまって、その服ではダメよ、あなた下着も来ていなかったから男性陣が慌てるわ』
ワンピースのような物を昨日、寝間着代わりに着てもらったんだけど、下着を付けていないので、色々危ないわ・・・仕方なく昨日来ていた服に着替えて貰ったけど・・・こっちもこっちね・・・まあ仕方ないか・・・
『う~ん、どっちにしてもセクシーね・・・まあ仕方ないか、さあ行きましょう』
『この服、破れていた筈だけど治してくれたのね、ありがとう』
『んふふ それは、ムーアがやったのよ、本人に言えば喜ぶと思うわ』
『そういえば5人居るのね』
『さあ、ここよ座って、すぐに皆集まるわ』