第57話 奴隷商からメイドさん
あ あれ皆固まっている、ひょっとして口に合わなかったか・・・俺が冷や汗を掻いていると子供達が動き出す。
『お 美味しい~ うわ~ フワフワだ~~』
『このステーキ、マジで美味い、なんて柔らかいんだ』
よ 良かった喜んでくれている、やれやれ焦った。一瞬動きが止まった子供達が一転ガツガツと食べてくれて、あっという間に完食してくれた、なんか見ていて嬉しいな。
シスターも食べてくれたんだが、なにか凄く驚いている様子だ。
『お オーラさん、こんな美味しい物、私も食べたことないんですが・・・』
『ああ、昨日狩ってきたハーピーの卵とケルピーのステーキだ』
『えっ えええ こ 高級食材じゃないですか』
『フハハ 狩ってきたやつだから無料だぞ』
『で でも売れば、高く売れたんじゃ』
『うむ、それはワシも言ったんじゃが、内のリーダーは食材は食べるって言うのでな遠慮はいらぬ』
『クオン様、こんな高級食材出して頂いて、良かったんですか?』
『んっ ああ、オーラが言ったとおり、美味しい物は食べなきゃね』
『んふふ クオン君、食材は売った事ないもんね』
『こら、ミュウそんな言い方したら俺が食いしん坊みたいじゃないか』
『あはは リーダーだけじゃなくて僕達みんな食いしん坊ですよ』
『ニャハハ ロック様の言う通りニャ』
『そうだ、シスターこれも皆で食べて下さい』
俺は、家で作ってきたハチミツクッキーを出してシスターへ渡す、ついでにストックしているハチミツも幾つか一緒に渡した。
『まあ、甘い物なんて久しぶりだわ、ありがとうございます皆、喜びますわ、ハチミツは隠しといて今度出しますね』
『あはは 一緒に出したら直ぐに無くなりそうですね』
『さ~ 皆おやつも貰ったから皆で分けてね』
『うわ~ お兄ちゃんお姉ちゃん、ありがとう』
『あ 甘ーい、美味しい~』
『うわっ これも美味しい』
やはり子供だけあって甘い物は大人気だ、クッキーも直ぐに無くなり皆、満足したみたいだ。
その後、冒険者の話を皆にして、また冒険者ファンが増えたみたいだが、結構な時間が掛かったので、そろそろ帰ることにする事を伝えると子供達に引き留められた、また来るってことを約束し孤児院の外へ出る。
『『『『『『『『『『お兄ちゃんお姉ちゃん、ありがとう』』』』』』』』』』
最後に子供達皆でお礼を言ってくれて、俺達は、ほっこりした気分になる。
『さて次は、奴隷商だな』
『ムーアどうする?知り合いもいるかもだが顔隠しとくか?』
『あたいは、ほとんど話もしなかったから顔隠さなくても良いニャ黒服にはお礼言うニャ』
『ああ、あの人は良い人だったな、よし行こう』
奴隷商に行くのは、ムーアを引取りに行った依頼だ。道は、しっかり覚えている近づいていくと相変わらず黒服の方が立っており覚えているか、分からないが声を掛ける。
『こんにちわ、久しぶりですね』
『こんにちわ、クオン様』
『流石に記憶力が良いですね、覚えていてくれましたか』
『あはは これが商売ですからね』
『む ムーアか・・・お前腕があるじゃないか、い いったいどうして・・・』
『ニャハハ あの時は、お世話になったニャありがとニャ』
『ふふふ 喋り方まで会ったときに戻ってるじゃないか、いったい何があったんだ』
『クオン様達に治して貰ったんニャそれ以上言えないニャ』
『ふふふ 只者じゃないとは、思っていましたが不思議な方だ、あの時のムーアは例え<メディカルポーション>が有ったとしても治るかどうか分からない症状だったはず』
『それに、あの壊死していた腕が治るとは、いったい・・・』
『とりあえずは、ムーアを治してくれて、ありがとう礼を言っておきます』
驚いたことに黒服の方は、お礼を言ってくれた、少し興味が湧いてきたので<鑑定>で確認することにする。
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【ステータス】
名前:ヘルマ
LV:25
種族:ヒューマン
HP:200/200
攻撃MP:110/110
回復MP:110/110
攻撃:126
防御:130
敏捷:124
器用:126
魔力:123
精神:127
戦闘スキル:<短剣+5>
特殊スキル:<気配遮断+3><夜目+5>
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なるほどね、元殺し屋ってとこかな、優しい殺し屋も居たもんだ。しかし俺達の持ってないスキルばかりだな・・・
『ところで今日は、どんな御用で?』
『今日は、使用人を探しに来ました、紹介状もあるので見て下さい』
『ほう、商業ギルド長からですか』
ヘルマは、その場で紹介状を読み始める。
『なるほど、分かりました、此方へどうぞ』
俺達は、以前に入った商談室のようなところへ案内された。
『一応お聞きしておきますが、ご希望はどういった感じですか?』
『以前と同じですね、全員見せて貰えますか?』
『ふふふ そう言うと思いましたよ、しばらくお待ちください』
ヘルマは、そういって扉の向こうへ消えて行った。しかし紹介状には何が書いてあったんだろう・・・そう考えていると、すぐにヘルマは戻って来て俺達を誘う。
『お待たせしました、こちらへどうぞ』
俺達は、腰を上げヘルマへ着いて行く以前も通った部屋にいくと、そこは相変わらず広めの部屋でメイド服を着た可愛い女性が並んでいる所、トレーニングをしている男女は、戦闘奴隷達だろうヘルマは俺の希望通り戦闘奴隷も見せてくれる。
見栄えだけでメイドを選ぶなら誰でも良いぐらい容姿が整っていた、しかし真面目にメイドを雇うにしても俺達は、掃除から食事まで全部自分でやるため、普通のメイドでは、ほとんど仕事がないのも事実であり、そうなると空いた時間に<錬金術>用の素材採集が出来る程度の実力がある人の方が有用ではあった。
その部屋を一通り見終わると次は、ムーアが以前居た部屋へ通されるムーアが居た時と同じように、少し問題がある奴隷がいるところなのだろう。
『クオン様、もうお気づきとは思いますが、此処には少し問題がある奴隷達がいる部屋です、どうぞ見て行って下さい』
『ありがとう、見させてもらうよ』
先ほどの部屋に居た、ある程度自由がある奴隷達とは違い、ここは牢屋のように鉄格子があり手前からガラの悪い犯罪奴隷のような輩や手足に欠損のあるものがいた。
牢屋のようにはなっているが、見渡すところ奴隷達の顔色も良いため食事もちゃんと出されているようだ、悪臭があるわけでもなく掃除もされている、ここは奴隷商でも良い所の部類だと言うことが聞かなくても分かるようだ。
手前の部屋から順に見ていくがヘルマからまだ何も聞いていないため、取り合えずは全員を見てから聞こうと思う。
一番奥の部屋まで辿り着き、中を覗いていると、そこには10歳程度の幼女がいた、デルタ君と同じぐらいだろうか何故奴隷商に幼女が?と思うが世の中には、幼女を好む人がいることを思い浮かべ嫌な気分になるが、とりあえず聞いて見ることにする。
『黒服さん、何故ここに幼女が居るんですか?』
『先ほども言いましたように、少し訳ありなんですよ』
『お聞きしても良いですか?』
『すみませんが、ここではご容赦下さい』
『なるほど、ミュウお願い』
『分かったわ <エアウォール>!!!』
いつものようにミュウの<エアウォール>が俺たちの居る場所と幼女の部屋の中を覆い防音の壁を作る。
『これで、ここでの会話は誰にも聞こえません、お聞きしても良いですか?』
『まいったな、貴方達は色々出来るんですね、分かりました、ここは通路になっているので、この子がいる部屋へ入ってください』
ヘルマは幼女が入っている檻の鍵を開け部屋の中へ誘った。俺達全員が部屋に入るとヘルマの話が始まった。
『実は、見た目では分からないかも知れませんが、この子は魔族なんです』
『私が、森の中で倒れているのを見つけて連れて来た子なんです、幸い怪我も病気もしていなかったのですが心を閉ざしており事情を聴いても答えてくれず、魔族なため孤児院に連れていけません』
なるほど、この異世界での魔族の話は色々と聞いたことがあるが、好戦的な種族で他の種族との争い事が絶えないらしい、幼女とは言っても魔族に恨みを持つ者も多く孤児院に連れて行けないのも納得がいく。
『相変わらず、見捨てては、行けなかったニャ優しい人ニャ』
『ふふ、買い被りですよ、もしかしたら高く売れるかも知れないでしょう?』
『なるほど、事情は分かりました、少し話をさして貰っても良いですか?』
『はい、しかし先ほども言いましたように喋ってくれるか分かりませんが、どうぞ』
『ありがとう』
俺は、幼女の前へ行くと幼女はこちらを見つめて何か怯えているようだ、ふむ人間に襲われたのか・・・ミュウかムーアに任せた方が良いかな・・・とりあえず話してみるか。
『こんにちわ俺は、クオンって言うんだ君の名前を教えてくれるかい?』
『・・・・・・・・・・・・・』
『俺達は、君に危害を加えないことを約束しよう、良かったら話をしてくれないか?』
『・・・・・・貴方達は、冒険者ですか?』
『ありがとう、そうだよ俺達は皆、冒険者だ』
『私の名前は、デーラです、お願い、お願いがあるんです』
『落ち着いて、ゆっくりで良いから聞くよ』
『お姉ちゃんを助けて欲しいの、冒険者って強いんでしょ?お願い助けて』
『お姉ちゃんってデーラのお姉ちゃんかい?』
『私を助けてくれたお姉ちゃんが今、酷い目にあってると思うのお願い、何でもするから助けて』
『人間に捕まっているのかな?よかったら詳しく話してくれるかい?』
『私、私には、人間のお友達が居たの、その友達に会いに行って村から離れた森で遊んでいたら山賊のような人間に襲われて私と友達が捕まったんだけど、お姉ちゃんが助けてくれたの』
『私と友達を逃がしてくれて、逃げながらお姉ちゃんを見たら戦ってる山賊に棍棒のような物で殴られていて』
『友達は村が近くだったから、そこへ逃げれたんだけど私は、魔族だから村へ入れなくて一生懸命走って逃げたの』
『お願い助けて、きっと酷いことされてる』