第55話 豪邸買取
『こ これを君達が作ったと言うのかね?』
『ええ、俺達と言うかロックが作りました』
『君は、ドワーフだね、しかしドワーフであったとしても見事だ』
『えへへ そんなに褒められると嬉しいですね、でもデザインはクオンさんですよ』
『ほほ~ 君が失礼だが、どこかで習ったのかね?』
『いえ、今日朝起きたときに適当にスケッチしたんですよ』
『な 今日しかも適当にか』
『うふふ お父様、ねっ 言った通りでしょ』
『ああ、ローニアどうやら、そのようだクオン君、君はこのティアラどれぐらいの価値になると思うかね』
『う~ん、どうでしょう、それは、売り物ではないので』
『ふふふ と言うことは、このティアラは幾らお金を積まれても売らないと言う事かね?』
『ええ、売りませんね』
『ふふふ 気に入った、良いだろうオークションでの代理出品は私がやろう』
『ええっ 当主様がですか?』
『ああ、ガデラスと呼んでくれたまえ、確か10品だったな出来次第、見せてくれるか?』
『ありがとうございます、ところでお聞きしたいのですが、どういったデザインが良いでしょう?』
『その見本は先ほど言ったように俺が思い付きでスケッチした物なので』
『ああ、これと同じ感じで、よろしく頼む』
『今日中と言ったが、もう出来ているんではないのかね?』
『いえ、まだ全然作ってないので』
『間に合うのかね?』
『あはは ロックそれの作成時間どれぐらいだっけ?』
『ええっと、これ複雑だったから15分ぐらい掛かったかな?』
『『えっ 』』
『あはは それは僕が作りましたが、サークルの皆もそれぐらいなら作れますよ、だから10品ぐらいなら1時間ってとこですね』
『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』
『それと最後に、確認しときたいのですが俺達サークルの事は、絶対に内緒でお願い出来ますか?』
ゾクッ!!! なっ 殺気?いや違う、こ これは威圧か、こんな少年の目を見ただけで私がここまで威圧されたと言うのか・・・・』
『わ 分かっているリーバイ侯爵家の名誉に誓って約束しよう』
『ありがとうございます、ガデラスさん、では今日中にお持ちしますね』
『ローニアさんも、ありがとう』
『うふふ お安い御用ですわ、あっ これは?』
『ああ、そのティアラでしたら引き受けてくれたので先に渡しておきますね』
俺達は、話が終わり執事のザルガさんだけでなく当主のガデラスさんまで見送ってくれた。
侯爵家の貴族なのに流石ローニアさんの父親だけあって、権力を笠に着ない良い人で信用出来そうだ。
全員で丁寧にお辞儀をして屋敷を後にした。
『ふ~ 背中に掻いた汗が止まらぬ』
『お父様、どうだったクオン様は?』
『ふふふ お前も大変な友達を持ったもんだな』
『私も、侯爵家当主になるまで、様々な障害があり危険にも晒されたが、こんなに冷や汗を掻いたことはない』
『あの少年は、恐ろしい者だぞ』
『えっ クオン様は、とっても優しくて恐ろしいだなんて全然、御座いませんわよ?』
『ああ そうだろう、だがそれは、ローニアが優しいからだ一旦敵に回せばリーバイ家であろうとも今日中に消えるだろうな、そうだろうザルガ』
『おっしゃるとおりです旦那様、しかし何とも魅力的な御仁で御座います』
『ザルガ、我が屋敷の者に徹底させよ、クオン殿には国王並みの礼儀で出迎えよ、絶対に無礼のないようにな』
『ローニア以後、クオン君が来られたときは、私にも知らせるようにな』
『うふふ ねー お父様、お父様なら、あのティアラどれぐらいの値をつけます?』
『ふふふ そうだな私なら黄金貨100枚なら買いだな』
『ええっ わ 私の見積もりを遥かに超えてますわ』
『ローニアなら黄金貨10枚ってところだろう?だが付与が3つ付いてるのは希少なのだ、しかも全て有用なスキルとは、その価値は計り知れん』
『うふふ 私最初あのティアラ高値で買いますって言いましたが、私では買えませんでしたわ、うふふ恥ずかしいわ』
◇ ◇ ◇
俺は、屋敷の買取交渉を思い出して、帰りに商業ギルドへ寄ることを伝えた、最初は、俺一人で行こうかとも思ったが皆の家のことなので全員で行くことにする。
えっと、確か名前は、そうゲルマンさんだ、まあ流石にギルド長だから居るか分からないけど聞いて見よう。
商業ギルドへ着いて受付嬢の方へ話しかける。
『こんにちわ、すみませんゲルマンさんは、居られますか?』
『はい、クオン様ですね、どうぞこちらへお掛けになってお待ちください』
『すみません、ありがとうございます』
流石に受付嬢だけあって記憶力が良いのか、俺の名前も覚えてくれていた。
やはり容姿で雇っている訳じゃないのか、しかし美人過ぎるしな・・・・俺は、どうも人の名前を覚えるのが苦手な為、そういうところは尊敬する。決してボッチ生活が長かった訳じゃないとは思うが・・・
応接室に案内され、受付嬢の方がお茶を出してくれたと同時にゲルマンさんが来てくれた。
『ようこそ、クオン殿』
『こんにちわ、ゲルマンさん』
『今日は、どういったご来店ですかな?』
『すみませんが今貸してくださっている家の事なんですが』
『やはり、住みにくいですか、分かりますよ解約で御座いますね』
『いえいえ、逆です、俺達が気に入ってしまって是非、買い取らせて頂けないかと』
『ほほ~ これは驚きましたな、解約どころか買取ですか』
『あの動きに制限の掛かる家で満足とは、流石、冒険者様ですな』
う~ 呪いが掛かっていた<スロー>も解呪したんだけど言ったら値段上がりそうだし言いたくないんだが、あんなに親切に案内してくれたゲルマンさんを騙すみたいで心が痛いな・・・う~ん、やっぱり嘘は付けないな皆には後で謝ろう。
『どうされました?クオン殿』
『えっと、少し内密な話をしたいので防音の魔法を掛けても良いですか?』
『ええ、それは構いませんが』
何も言ってないがミュウが、すぐ動いてくれた、俺もやろうと思えば出来るんだが、やはり魔法のコントロールはミュウが一番うまいので、任せることにする。
『それでは、掛けますね<エアウォール>!!!』
『すみませんゲルマンさん、ここからの話は内密にお願いしたいのですが、宜しいですか?』
『分かりました、商業ギルドをやっておりますので、そういった話も多いのでご心配なく』
『なるほど、実は、あの家に掛かっていた<スロー>の呪いなんですが俺達で解呪に成功したんですよ、だからあの家は、もう普通の家なんです』
『なんとっ 解呪に成功したですと、私共も教会に頼んで見たのですが広範囲に呪いが掛かっていたため断られ諦めていたのですぞ』
『そういう訳で買取させて頂きたいのですよ、どうですか?』
『う~む、しかし何故そのことを話されたのですか?黙っていた方が、そちらとしても都合が良かったのでは?』
『そうなんですが、黙っておくのも心が痛みましてねパーティの皆には、後で謝ろうかと・・・』
うーん、皆は苦笑しているな、まあ説明しなくても分かってくれてたのかも、でも心苦しいまま、ずっと住むのも嫌だしな、うん。
『あはははは いやいや正直なお方だ、分かりました安くしときますよ白金貨100枚と言いたいところですが80枚で如何ですかな?』
『本当ですか、凄く助かります』
『その代わりと言ってはなんですが、1つお頼みしたいことがあるのですが』
むぅ やはり来たか、予想通りとはいえ一応聞いて見るか・・・
『な 何でしょう?』
『失礼ですが使用人は、雇って居られますかな?』
『いえ、俺達は、掃除も料理も分担でやっているので雇っていないんですよ』
秘密が多すぎて雇えないとは、言えないな・・・
『ふむ、やはりそうでしたか実は、ある程度の富裕層の方へ私共もお願いしているのですが』
『孤児院出や借金奴隷の雇用に困っておりましてな、富裕層の方は貴族が多くて、お世辞にも待遇が良いとは言えないのですよ』
『その点、クオン殿なら間違いなく、こちらも自信を持ってお勧め出来ますので、出来れば数人メイドを雇って頂けたらと』
『ゲルマンさん、大体お察し頂けるかと思いますが俺達は、あまり目立ちたくないのですよ』
『ふむ、そして秘密も多くて使用人は雇えないですかな?』
『・・・・・ 参りましたね、しかしその通りです、でも、どうしてお気づきに?』
『そうですな、クオン殿だから、お話しますが解呪の能力と言っても教会では数人がかりで聖水を作り武器や防具に掛けられた呪いを解くわけでして』
『解呪のポーションもあるのですが、あの家1件に掛けられた呪いを解く量を確保するのは至難の業です』
『となれば後は、方法は1つしかありませんな』
『なるほど、後は魔法しかないってことね』
『そうなりますな、しかも、それは古代魔法<ディスペル>!その希少性は、御理解されておるかと』
『なるほど、全部バレてたんですね、流石に商業ギルド長ですね』
『しかし、御安心を、私は決して秘密を口外するような真似は致しません』
『それに奴隷でしたら、秘密を漏らすようなことにはならないので是非お願いしたい』
『クオン様、あたいからもお願いニャ』
『ああ、分かったよムーア』
『っていうか、もう皆、分かってるんだろ?』
『んふふ そうね』
『僕は、それを断るリーダーじゃないって思ってますよ』
『フハハ そうだの付き合いの浅いワシにも分かるぞ』
『ニャハハ 流石クオン様ニャ』
『ってことで、お引き受けしますよ先に支払いを済ませておきますね』
『ありがたいですな奴隷商の方には私から紹介状を書きますので用意致しますね』
ゲルマンさんは、そう言って一旦部屋を後にした。今の内に<アイテムBOX>からパーティ資金の白金貨80枚を取り出し用意しておく。
しかし、参ったな結構注意していたが俺も思慮が足りないな。