第54話 交渉
う~ん、今日もよく寝たな、しかし俺も予想外の大金が手に入り少し興奮していたのか、昨日は寝付けなかったため少し寝坊気味だ、とりあえず今日はオークションがあるのか聞いてから装飾品の作成とローニアさんに相談しないとな。
俺は、現代社会の装飾品を思い出して、幾つかのデザインをスケッチしていったが、素材がゴールドと宝石なので、どれもこれも王族や貴族用にしか見えない・・・まあ皆と相談してみるか。
スケッチを持って食堂へ行くと既に全員が起きていて朝食を用意してくれていた。
『おはよー 皆、早いね』
『んふふ これでも皆、寝坊気味よ』
『僕なんか昨日は、寝付けなくて』
『あたいもニャ』
『ワシも寝坊したわ』
『あはは 俺だけじゃなかったか』
『そうそう、ちょっと装飾品のデザインをスケッチしてみたんだけど皆、見てくれる?』
俺は、朝起きてからササっとデザインしてみたスケッチをテーブルに出して意見を聞いてみた。
既に用意してくれていた朝食を取りながら皆それぞれスケッチを見ていく。
『うわ~ 全部凝ってるわね、よくこんなデザイン考え付くわね』
『これ、王冠とティアラですか?すっごい緻密ですね』
『この魚のネックレス良いニャー』
『ああ、これは魚じゃないんだけどイルカって生き物をデザインしたんだよ』
『適当に描いたんだけど、どんなのが良いかな?』
『・・・・適当のレベルではないニャ』
『それをクオン君に言ってもね・・・・』
『僕が見た所、このデザインならゴールドの消費量が凄く少ないんじゃないですか?』
『あっ そうかこのデザイン見栄え重視だから線が細いんだ・・・』
『なるほど、あのゴールドの量なら数千個作れそうだな・・・』
『やはり、幾つかは、インゴットで売る必要があるか』
『それにデザインもローニアさんに聞いた方が良いかもね、家紋とかもあるし』
『そうなるとオークションのこともローニアさんに聞いた方が早いか・・・』
『ロック見本代わりにティアラ1つ作ってくれる?』
『うん宝石は、なにが良いです?』
『ルビーで良いんじゃないかな、ローニアさん赤が似合いそうだしね』
『じゃ、それで』
まず商業ギルドでオークションのことを聞いてからと思っていたが、皆の言う通り異世界のデザインって俺には、分からないし、いっそのこと全部纏めてローニアさんに聞くことにした。
ロックは俺が適当にデザインした真ん中に大きなルビーが入ったティアラを直ぐに作ってくれた<付与術>は検討した結果<自動修復><毒無効><病気無効>の3つに止めた。
売却用は、<付与術>1つにする予定だ、早速俺達はローニアさんの家に向かう、今考えると貴族との伝手は貴重だなと思う。ローニアさんの家の前に着くと、いつものように執事のザルガさんが出迎えてくれた。
『やあ、これはクオン様ようこそリーバイ家へ』
『おはようございますザルガさん』
『先日は結構な物を頂きまして、ありがとうございます』
『気に入ってくれたなら、こちらも嬉しいですロックも喜びますよ』
『おや、そちらの方は』
『ああ、新しくサークルのメンバーになったオーラです』
『ワシは、フート・オーラと言う者です、よろしくお願いする』
『これは、ご丁寧に私は、この屋敷の執事をしておりますザルガと申します、以後お見知りおきを』
『今、お嬢様に連絡致します、どうぞこちらへ』
よかったローニアさんは、在宅してるようだ俺達は、メイドさんの案内で応接室にある豪華なソファーに腰掛ける。
『クオン殿は、貴族との付き合いもあるのか?』
『ああ、ローニアさんは、友達なんだ』
『と 友達か・・・冒険者でか?相変わらず不思議なお方だ』
『あたいは、このソファーフカフカで好きニャー』
『僕、このソファー埋まっちゃうんですよね・・・』
そうこう話をしている内にローニアさんが来てくれた。
『ようこそクオン様、お越しいただき嬉しい限りですわ』
『おはようございますローニアさん』
『うふふ 私の所へ来て下さったと言うことは、野暮用ですわね?』
『あはは その通りですね、出来ればローニアさんとザルガさんだけで話を聞いて貰いたいのですが』
『うふふ 楽しみになってきましたわザルガ』
『はい、お嬢様』
ザルガさんが合図すると待機していたメイドさん達が一斉に部屋から出ていく。
『これで、よろしくて?』
『ありがとう、でも念のため障壁も張らせて下さいね』
『障壁ですか?』
『ああ、なにも害はありませんよ、ミュウお願い』
『分かったわ <エアウォール>!!!』
『なるほど、風の障壁ですか』
『ええ、これでここでの音は誰にも聞こえません』
『うふふ それほどの事なんですね、お聞きしますわ』
『実は、またダンジョンで色々宝箱が出たのは良いのですが売ると目立ちそうなので』
『なるほど、それでオークションに私が出品すればよろしくて?』
『やはりオークションもあるんですね、それもお聞きしたかったんですよ』
『ええ、在りますわ週に1度<エンゲルラント>のオークションハウスで開催してますわ』
『良かった、それでですね10品ほど俺達の代わりに出品して頂いても良いですか?』
『物によりますわ、私が出品するならば、ある程度の価値がありませんとお父様に叱られますので』
『なるほど、見本を1つ作って貰ったんですが見て貰って良いですか?』
『作る?ですか』
『ええ、ダンジョンで出た宝は素材なんですよロック』
『はい、どうぞ』
ロックは、あらかじめ<アイテムBOX>から出して袋へ入れて置いた試作品のティアラを渡してくれた。
『・・・・・・・・・・・・』
んっ ザルガさんとローニアさんが、固まっている、あれ予想外だったかな。
『はっ な なんて美しい』
『手に取ってみて、よろしくて?』
『はい、どうぞ』
ローニアさんはティアラを手に取り上下左右あらゆる方向で見分し、ゆっくりとテーブルにティアラを戻した。
『うふふ わたくし、もうクオン様の事では、驚かないと思っていましたがまさか、こんな物が出てくるとは思いませんでしたわ』
『てっきり武器か、何かかと』
『うふふ 正直これだけの物でしたら、わたくしが買取したいですわ、と言うか私に売って頂けませんか?』
『えっと』
『いえ、お答えしなくても分かりますわ、これだけの1品ですものオークションに出したい気持ちも分かりますが買取の方は、通常より遥かに高く致しますので、どうかお願い出来ませんか?』
『それは、売り物に出来ないんですよ見本で作った物で』
『そ そこをなんとか、お願いしたいですわ、どうか』
『ああ、すみません誤解させちゃいましたね』
『ご 誤解とは?』
『それは、ローニアさんにお願いするための見本として本気で作った物でして』
『言うなればローニアさんが引き受けて下さったときのお礼です』
『なっ オークションの代理出品するだけで、こ これを下さると言うのですか?』
『はい、それは、本気で作ったやつなので売り物には出来ないんですよ<自動修復><毒無効><病気無効>が付与されてます』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
あれ、また固まっちゃった、やはりやりすぎたか・・・いあローニアさんだから良いか。
『そ そういえば、確か10品と言いましたわね?これほどの逸品が、まだありますの?』
『とりあえず10品ほどにしないと目立つかなと思いまして』
『うふふ クオン様、恐ろしい方ですわね、でも返事はお待ち頂いてよろしくて?』
『流石に私の一存では、決めかねますわ、お父様へお願いしてみますので、このままお待ちになって』
『あっ ローニアさん』
『分かってますわ、お父様も絶対にクオン様の情報は漏らしませんわ』
ローニアさんは、それだけを告げて部屋を出て行った、大丈夫かなローニアさんは信用出来るけど、父親は会ったことないしな・・・皆と相談してみるか。
俺は、小声で<パーティトーク>オンにした。
<皆は、ローニアさんの父親どう思う?>
<ローニアさんの性格を思えば、父親も信用出来ると思うわ>
<僕は、話をしてから判断したほうが良いと思います>
<あたいも、簡単に信用しないほうが良いと思うニャ>
<ふむ、しかし便利な物だなワシも貴族には良い感情は持ってないが、貴族が全員そうとは思わんのでな>
<分かった、会ってから判断するよ、なにか思う事があったら皆も話をしてくれ>
<<<<了解!!!>>>>
しばらく待っているとローニアさんが戻ってきた、隣には如何にも貴族と言った成り立ちをした50代ぐらいの父親がいた。
『お待たせ致しました、紹介致しますわね、こちらが私のお父様です』
『ようこそ我が屋敷へ私がリーバイ家当主<リーバイ・カタ・ガデラス>だ、いつも娘が世話になっているそうで礼を言う』
俺達は全員椅子から立ち上がり、侯爵家当主とは思えない腰の低い挨拶に驚きながら返答する。
『お邪魔しております、私はパーティ「サークル」のリーダーをしておりますクオンです。ローニアさんには、こちらこそお世話になっております』
『まあ、そう畏まらず座ってくれたまえ』
『ありがとうございます、では遠慮なく』
間髪いれずメイド達がお茶のおかわりを置いていく、流石に侯爵家ともなればメイドの教育も凄いな。
『話は、娘から簡単に聞いたが、正直に言えば信じられない、いや娘の言うことだ本当なのは分かるが私の今までの経験上、信じられないのだよ』
『うふふ お父様まず、これをご覧くださいな』
『ほう、これが、先ほど言っていたティアラかね、どれ』
ローニアさんのお父さん、ここは、ガデラスさんと言っておくか、ガデラスさんは商業ギルド顔負けのルーペを取り出しロックが作ったティアラを上下左右あらゆる方向から見ていきティアラに装飾されているルビーも見分していた。
『むぅぅ し 信じられん、なんて逸品だ、このゴールドによる見たこともない緻密なデザインと良い、ルビーの大きさ、輝き、傷一つない・・・・文句の付けようがないとは、このことだ』