第45話 新たな魔法
俺はミュウの頬っぺたを引っ張りながら、オーラさん達と自宅へ向かう。
『クオン君、ごめんって頬っぺた取れちゃうわ』
『次に笑ったら、両方の頬っぺた引っ張るからね』
『分かった、分かりましたー しかしクオン君の童顔ネタも飽きないわね』
『よし、着きました。オーラさん、どうぞ入ってください』
『『えっ!!!』』
『こ こんな豪邸に住んでいたのか・・・』
『す 凄いですお兄さん達、お金持ちなんですね』
『いやいや、普通の冒険者だよ。ここは、訳ありで安かったから借りてるんだよ』
『まあ、どうぞどうぞ』
しばらく、びっくりして動けなかったオーラさん達を家に招き入れ大きい方の食堂部屋へ入って貰う、待たせるのも悪いのでアイテムポーチへ作り置きしておいた食事を次々と出す。もちろん熱々だ。
『さー どうぞ食べてください』
『これは、どれも美味そうだ』
『うわ~ こんな御馳走初めてだよオーラ兄さん』
『んふふ デザートもあるから、いっぱい食べてね』
『デルタ君、しんどくなったら言ってね』
『あっ 僕の病気のこと聞いたんですね、でも今日は、凄く体調が良くて大丈夫です』
『食べながら聞いてね、調子が悪いとき具体的にどうなるの?』
『はい、僕の病気は、咳が止まらなくなって呼吸しにくくなるんです、でも今日は大丈夫ですよ』
『なるほど、大変だね』
俺は病気のことを聞いて、おそらく喘息だろうと検討をつける、微かに喘鳴音が聞こえる呼吸に抵抗があるのだろう確かに、<ヒール>やポーション【小】では、治りにくいかもしれない。
『デルタ、安心しておけワシが病気なんぞ治して友達のいる孤児院で暮らせるようにしてやるからな』
『オーラお兄ちゃん、ありがとう、でもお金掛かるんでしょ?僕も頑張ってすぐ治すね、何時までもオーラお兄ちゃんに迷惑ばかり掛けられないもんね』
『子供が気使わなくても良い、今日はクオン殿とダンジョンへ行って、いっぱい稼いできたのだ心配はいらん』
『へえ~ 凄いなクオン兄ちゃん達も強いんだね、僕も病気を治してオーラ兄ちゃんのように冒険者になるのが夢なんだ、いつかパーティを組んで世界を旅するんだ』
『良い夢だな、きっと叶うぞ思ったよりも早くにね』
『ありがとうクオン兄ちゃん』
『よし、じゃそろそろオーラさんにお願い事をしたいんだが良いですか?』
『ああ、ワシに出来ることなら、どんなことでもしよう』
『実は、オーラさんに俺達のパーティ「サークル」へ入って欲しいんだ』
『なっ わ ワシをパーティメンバーにだと』
『ええ、ちなみに私達の総意ですよ』
『是非、お願いしたいですオーラさん』
『あたいからも、お願いニャ』
『し しかしワシのようなポーターを正式メンバーにすれば、ちゃんとしたメンバーが集まったとき邪魔になるぞ』
『ポーターとは、フルメンバーに足りないときに入れる只の荷物持ちだ、タンク役兼ポーターにしてもワシは弱い』
『見た所タンク役が欲しいのかも知れんが、探せばワシよりも良いタンク役が見つかるはずだ』
『お主達が、もっと弱いのであればワシでも良いかも知れないが、お主達は強い!しかもワシが会った中では、最強のパーティだ』
『よくタンク役が欲しいって分かりましたね?』
『お主達は、皆体が小さい、いくら力が強かろうが、誰がタンク役をやっても広範囲の攻撃の前では、厳しくなるだろう?』
『そうですね、これから強敵を相手するとき何れ、そうなると思います、しかし俺達はタンク役だけでオーラさんを選んだわけじゃないんです』
『オーラさんには、正直に言いましょう、俺達には絶対的な<直感>のようなものがあって、それがオーラさんを選んだんですよ、俺達はオーラさん以外のタンク役を入れることは、ありません』
『だから俺達は、コロコロとメンバーが変わるようなことはありません、出来れば一生同じパーティです。俺は、絶対にパーティメンバーを裏切るようなリーダーには成りません』
『ワシが裏切るとは、考えないのかね?』
『実は、エイトールさんから色々と話しを聞いていてオーラさんが、どういう人なのか伺っています、しかも裏切るような方が病気の子供を引き取って面倒みたりしますか?』
『俺達の仲間への希望は、人格そして絶対的な<直感>です』
『オーラさん僕達のパーティメンバーになってくださいお願いします』
『あたい達と世界を旅するニャ』
『んふふ 要するに私達は、オーラさんが気に入ったのよ』
『オーラ兄ちゃん この人達良い人だよ僕の事は、気にしなくて良いからパーティに入るべきだよ』
『デルタ、し しかしワシは、お前の病気が治るまで、ここを離れる訳にはいかん』
『あっ すみません言うのが遅れましたねデルタ君の病気は、今治しますよ!』
『オーラさんがパーティに入ってくれなくてもデルタ君の病気は今治します』
『『えっ ええっ 』』
『な なにを言っているのだ、この病気は治すのに時間が掛かるのだ』
『ミュウ』
『分かってるわ、さっ デルタ君、隣の部屋へ行きましょうか』
『えっ あっ ミュウお姉ちゃん?』
『んふふ お姉ちゃんって呼んでくれると嬉しいわね』
ミュウはデルタ君の手を取って隣の部屋へ行きデルタ君を寝かせる、それを全員で見守っている。
『ミュウ、ポーションでも良いが、出来そうか?』
『ええ、ムーアの時に効果は見て大体理解してるけど、無理そうならポーションで、お願い』
『ん、分かった』
『デルタ君、今から私が魔法を掛けるから、落ち着いてゆっくりしてて』
『オーラさんも、私達を信じて見てて』
『分かった、ワシは、お主達を信じておる』
ミュウはデルタの胸に両手を当てて正常な状態に戻すイメージをする。
『行くわ <メディカル>!!!』
ミュウが<メディカルポーション効果【大】>に匹敵する効果をイメージし治癒魔法を唱える。
これは、俺が持っている限りの人体構造の知識をミュウに説明し理解を深めるため日々努力した結果、出来ることだ。
魔法詠唱が終わり、眩い光がデルタの体を包み込む、やがて光は胸部に集まり緩やかに消えていく。
『ふ~ 病気自体は治ったと思うわ、念のために<ハイエストヒール>やっとくね』
『分かった、オーラさんの腕を治したポーションに匹敵する魔法だよ』
『なっ <フルポーション>と同じ効果を魔法で出せるのか』
『それを覚えるために、あのとき効果が見たかったんだよ』
『あの時に見た効果だけで覚えた?まさか』
『行くわ <ハイエストヒール>!!!』
魔法詠唱が終わり先ほどの<メディカル>と同じように眩い光が現れデルタを包み込む。
『ああ、ミュウお姉ちゃん気持ち良いよ、あったかい』
『んふふ もうちょっと待ってね』
デルタの全身を包んでいた光が穏やかに消えていく。
『デルタ君、終わったわ、どお?痛いとこある?』
『いいえ、息がちゃんと出来る、オーラ兄ちゃん息が苦しくないよ、全然苦しくない』
『そ そうか良かったなデルタ』
オーラとデルタが涙ぐみ病気が治ったことを喜び合う、俺達もそれを見ながら涙してしまう。
『デルタ君、これで病気は、完全に治ったと思うけど、まだ無理しちゃダメよ、2~3日ゆっくりして少しづつ運動して確かめてね』
『うん、分かったよミュウお姉ちゃん、ありがとう』
『あっ ミュウお姉ちゃん』
『ん?なーに』
『お願い、オーラ兄ちゃんの左腕も治せないかな?』
『んふふ もう治ってるわよ♪』
『ん ああ、悪い言ってなかったな、ほれっワシの左腕も治して貰ったんだ』
『ああ、良かった本当に良かったねオーラ兄ちゃん、ありがとうミュウお姉ちゃん』
『フフフ 自分の病気が治ったことを喜んでおけば良いものを』
『しかし君達は、本当に何者なんだ?何故こんな高度な魔法が使える?』
『すみません、それは、まだ言えないんです』
『フフフ そうかマダか・・・本当に不思議な者達だ』
『オーラさん、返事は急ぎません、よく考えてから返事を下さい』
『それからオーラさんデルタ君、今日見たこと聞いたことは、全て内緒でお願いします』
『ああ、分かっている、どうせ話しても誰も信じてはくれぬわ フアッハハハ』
『僕も、誰にも言いません、ありがとう』
オーラさんとデルタ君は、深々とお辞儀をし、お礼を言って俺達の家を出た、パーティに入ってくれるかどうかは、まだ分からない良い返事を期待しよう。
『ねえ、オーラさんパーティへ入ってくれるかな?』
『僕は、もうオーラさんの武器考えてますよ』
『ニャハハ ロック様は気が早いニャー、でもあたいも入ってくれると思うニャ』
『俺も入って欲しい、そしてオーラさん、どれだけの力を秘めてるのか・・・皆気付いた?オーラさんの潜在能力への封印強すぎると思わなかった?』
『そうね、見た目だけでも、あの体、あの筋肉もっと力があってもおかしくないわね龍人だし』
『リーダーが、そこまで言うのなら飛んでもない力なんでしょうね』
『あたい達のように潜在能力が解除されたとき、どれだけの力になるのか楽しみだニャー』
『あはは 恐ろしいぐらいの力かもよ?俺の<直感>がそう伝えるんだよ』
◇ ◇ ◇
『オーラ兄ちゃん、なんか不思議な人達だったね』
『ああ、何者か底が知れぬ』
『でも、オーラ兄ちゃん嬉しそうだよ』
『フフフ 左腕が動かなくなってから誰も誘ってくれなかったワシをパーティへ誘ってくれ、ありえない強さで魔物を狩り、惜しみなくワシに分け前をくれた、ワシの左腕、デルタの病気をも治してくれた』
『これで喜ばずに要られようか?フハハ ワシの願いが今日1日で、全てあの者達が叶えてくれた』
『オーラ兄ちゃん、いつも僕に言ってくれている「受けた恩は、恩を持って返す」実行しないとね』
『ああ、デルタお前は、それで良いのか?』
『オーラ兄ちゃん、僕もオーラ兄ちゃんに受けた恩を返さないといけないんだ孤児院に行って僕は、将来のパーティメンバーを探す良い機会だとは、思わない?』
『フハハ 良い考えだデルタ、しかしワシがあの者達に受けた恩は巨大だ、返し終わるまで一生掛かるかもしれんぞ?』
『僕が冒険者になって、パーティを組んだ時オーラ兄ちゃんのクランに入れてくれたら、ずっと一緒に居れるよ』
『フフフ フアッハハハ それは楽しそうだ実に楽しそうだな、考えるだけで笑顔になりそうだ』
『しかしなデルタ、あの者達は、見た目からは、想像も出来ないほど強い、身も震えるほどだワシは、あの者達の殺気で身動き出来なくなった・・・それほどの者達とワシは一緒に居れるかの?』
『オーラ兄ちゃんが、それほど言うほどなのか~ 凄い人達なんだね僕が見た感じでは、凄く優しそうにしか見えないのに・・・』
『あの者達は、一種の化物だ!凄く優しい化物だがな フアッハハハ』
『オーラ兄ちゃんも、強く成るしかないね、オーラ兄ちゃんなら同じくらい強く成れるよ!』
『フフフ デルタは、ワシを信じてくれるのだな』