第27話 4人目の能力
俺は奴隷商を出て、すぐにムーアさんを抱き抱える、やはり酷い高熱だ。
『あ あぅ なんだい、いきなり?』
『すみませんムーアさん、しばらく我慢してください、ミュウ、ロック急ごう酷い高熱だ』
『分かったわ、ロック君、宿屋に着いたら毒消しポーションとメディカルポーションすぐ用意して』
『私は桶に、お湯を作るわ』
『分かった、宿屋に着いたらベッドに寝かすよ、ミュウ人体の構造を、もう一度よく思い出して』
『分かってるわ、任せて』
あたいは高熱で朦朧とする意識の中、抱き抱えられて搬送されるのを心地よく感じていた、ああ久しぶりに安らぐ、ふふふ このまま死んでも良いかもね、いや話は聞きたいかな、どんな楽しい話をしてくれるのか、それとも、予想を裏切るような話なのか?ムーアは思考する中、意識を閉じる。
『よし、ミュウ寝かせた、毒からが良いか?』
『そうね毒から行きましょうか、この桶のお湯に左手を浸けて』
『毒消しポーションまず腕に掛けるよ』
『お願い、次の1本は飲ませて』
『かなり酷いわね、クオン君、少し切ったほうが良いかな?』
『ああ、この一番毒が酷い部分一部切開しよう、壊死してる部分だ』
『ミュウ<ハイヒール>の用意を、ロックそれ飲ませたら、もう1本用意してくれ』
『よし切るぞ、神経に触らないように慎重に切るから待ってくれ。ミュウ合図したら頼む』
『これぐらい切ればいいだろう、少し毒と血を絞り出す、ロック切開した部分に毒消し掛けて』
『ミュウ良いぞ』
『OK 骨・筋肉・神経・血管・血・皮膚・細胞の1つ1つまでイメージは出来た!元に戻す!!!<ハイヒール>!!!』
ミュウの<ハイヒール>で切開した傷が見る見る塞がっていく毒消しポーションも効いたのか黒ずんでいた腕が徐々に赤みが指してくる。
『よし、良いぞミュウもう一度、体全体に<ハイヒール>を』
『分かったわ<ハイヒール>!!!』
『よし、腕はなんとかなりそうだ、次だ』
『ロック』
『はい、メディカルポーション効果【大】用意出来てるよ』
『よし、飲ましてくれ』
『どうだ?』
『うん、熱も下がったみたい』
俺は念のためムーアさんに鑑定を掛け、状態を確かめた、ちゃんと病気は治っており、経過は良好だ。
『よし、鑑定結果良好だ!!!』
俺達3人は、ハイタッチして喜びを分かち合う。
『やったね、は~ 良かったわ後は、ゆっくり休んで栄養のある食事ね』
『ああ、柔らかい物が良いな』
『なら、昨日の干し肉と野菜を煮込んでおきますか?』
『そーね、あれなら柔らかいし丁度良いかもね』
俺達は飛び散った血やポーションを綺麗にするため、<クリーン>を掛け、ムーアさんの服をシャツに着替えさせ寝かせた。
もちろん着替えは、ミュウがやった。起きたときのために栄養のある柔らかいスープを作り、様子を見た。
どれぐらい時間が立っただろうか、俺達も食事を済ませムーアさんが目覚めるのを待つ。
『ん、ん~ ここは?』
『見覚えのない天井、ベッドに寝てるのか?それに服、私はどうして?』
『ああ、そうか、奴隷商から買われたんだった、あの子達は?』
『あっ 起きたみたいね、おはよー クオン君、起きたみたいよー』
『おはよう、どう?どこも痛くないかな?』
『はっ そ そういえば、痛くない?だるさもない、腕が』
『あたいの腕が動く、うそ、どうして、痛くない、動くわ』
『あなた達なにをしたの?どうして腕が動くの?』
『えへへ 頑張って治したんだよ♪』
『頑張りました!』
『あはは 皆で治したんだよ、痛くはないようだね良かった』
あたいは、この子達が何を言ってるのか理解出来なかった、でも涙が溢れてくる。
生き残るのは諦めかけていた。左腕は、もう完全に諦めていた冒険者も終わりだ・・・生活にも苦労するだろう、片腕で食べて行けるだけ稼げるだろうか?無理かも知れない、そう考えると生きるのも諦めざるを得なかった。
元々、ロクな人生じゃなかった、貧乏で家族が食べて行けず子供の内に家を出た。あたいが家を出なければ兄弟の食事がなかった。
獣人であるがために、どこへ行っても虐められた。それでも生きた稼ぐために冒険者になった、だが戦闘力が低いため罠感知・罠解除の腕を磨いてパーティに拾って貰った、でもあまりうまくは、ならなかった。
そして罠解除に失敗した。容赦なく捨てられた当然だ世の中は、そんなに甘くないミスをした、あたいが悪いんだ。
涙は出なかった、死ぬ事を考えた、考えなくても、もうすぐそうなると理解した。運よく奴隷商に拾われたが、結果は変わらなかった。
でも、でも、どうして今涙が出る?涙が溢れて止まらない。
あたいは、あたいは、死ぬのが怖かったのか?怖くて怖くて無意識に考えなかったのか?だから助けて貰って涙が止まらないのか。
自然と出る涙が止まらない中、あたいを3人が輪のようになって抱いてくれている、慰めてくれているのか?あたいを慰めてくれる人に出会ったのか?あたいは、子供のように、わんわん泣きじゃくった。
『ご ごめんね、あたい子供みたいに泣いちゃった。でも嬉しかった、助けてくれて本当にありがとう』
『あたい、諦めていたんだ生きることに、でも助けてくれて嬉しかった。あたい本当は、死ぬのが怖かったんだ』
『あたいに、何の話があるのか、分からないけど出来たら貴方達、いえ御主人様達のために、これから恩返しさしてください、お願いします』
とりあえず、病気で弱った体を元に戻すために、ムーアさん用に作ったスープを進める。ムーアさんは、ゆっくりとスープを食べてくれて一息つく。
『クオン君』
『リーダー』
『ああ 俺から話すよ』
『光対策は、大丈夫?』
『大丈夫よ、ばっちり光が漏れないように密閉したわ』
『はい、大丈夫です』
『よし、じゃ話を始めるね』
『ムーアさん、ごめんね、本当は会った時に治療する事を伝えたかったんだけど、他の人がいる前で言えなかったんだ』
『気にしないでください当然です。やはり、あたいに使ったのはメディカルポーションですか?あんな高価なものを?』
『ああ、それは気にしなくて良いよ、確かに<メディカルポーション効果【大】>は使ったけど、俺が作ったんだ』
『えっ 作ったって<錬金術>ですよね?冒険者じゃなかったんですか?』
『うん、冒険者だけど<錬金術>もやってるんだよ』
『御主人様は、冒険者なのに<メディカルポーション効果【大】>作れるほどの錬金術師なのですか?』
『まあ<錬金術>は、趣味みたいなもんだしミュウもロックも作れるしね』
『御主人様達は、何者ですか?』
『ふつーの冒険者なんだけど、それは置いておいて話を進めよう』
『実は、ムーアさんに話って言うのは、俺達のパーティ「サークル」に是非入って欲しいんだ』
『もちろん断ってくれても、奴隷契約は解除するよ』
『入ってくれても奴隷契約は解除するけど』
『俺達3人は、奴隷じゃなくて仲間が欲しいんだよ』
『どうして、あたいなんかを?あたいも冒険者だけど、なんにも役に立ちませんよ?奴隷商で見せた、あの殺気、3人共そうとう強いでしょう?』
『それは、大丈夫だよ、俺もこの間までムーアさんより弱かったから』
『んふふ もちろん私もだよ』
『もちろん僕もです』
『『『是非パーティ「サークル」に入って下さい!!!』』』
『えっ あたいより弱いってまさか・・・あたい、唯一の特技である罠解除も失敗するような者なのに・・・もの好きね。御主人様達が、そういうなら是非お願いします』
『ふふふ あたいは、もう御主人様に恩返ししたいって思ってるから、これを断ったら傍に居ずらくなるしね』
<神の声>が響き渡る!!!
【エア・ムーアのパーティ登録を確認しました】
『えっ』
【ユニークスキル<+>が発動されます】
なっ なに?私の左手が輝く、御主人様達も?くっ眩しい眼が開けてられない。閃光のような輝きがひと際、強く輝き、徐々に弱くなり4人の左手の甲に円形のマークのようなものが、ゆっくりと点滅している。
『わ 私の左手が熱い、な なにこれマーク?』
『声が頭に直接語り掛けてくる』
【ユニークスキル<+>が発動されました。】
【ユニークスキル<+>が発動に伴いユニークパーティスキルが発生しました。】
【4.ユニークパーティスキル《ハンター》が発生しました。】
【ユニークパーティスキル<能力開眼>発動によりムーアの潜在能力<千里眼>が開眼されました。】
【ユニークパーティスキル<ウィンドウ>発動によりパーティスキル<パーティトーク>が発生しました。】
【ユニークパーティスキル<クリエイター>発動によりパーティスキル<エンハンス>が発生しました。】
【ユニークパーティスキル<クリエイター>発動により特殊スキル<付与術>が発生しました。】
【ユニークパーティスキル《ハンター》発動によりパーティスキル<スキルハンター>が発生しました。】
『声が治まった、左手の甲に浮き出ていた円形のマークも消えている』
『あたいの力が、弱っていた力が溢れる、不思議な感覚???』
『ムーアさんの潜在能力は、<千里眼>か、なんか凄そうだね』
『みんな、多かれ少なかれ能力が封印されているのかもしれないね』
『あたいの奴隷紋が消えている、御主人様達が外したんですか?』
『いや、たぶん【プラス】の効果なんだと思うよ』
『ぷ 【プラス】って???』
『そ そうだわ確かユニークスキルって、ユニークスキルって言ってたわ』
『御主人様達は、ユニークホルダーだったの?あの数十万人に1人居るか居ないかの?』
『んふふ ムーアさんには、これからなが~~~い説明が待ってるよ♪』
『じゃ、ムーアさん説明するね』
『は はい、なにがなんだか?』
『あはは、僕もその気持ちわかります』
それから俺達は、なが~~い説明をムーアさんにした。ムーアさんは、ポカンと口を開けたまま固まっている。
『ムーアさん?』
『はっ す すみません、まだなんか理解が追い付かなくて』
『うん、ちょっと説明長かったよね、でもこれから少しずつ解っていくと思うよ』
『う~ん、解るというか、慣れる?』
『僕は、まだ慣れてませんよ』
『それと、あたいのことはムーアとお呼び下さい、御主人様』
『では、俺の事はクオンと呼んで下さい』
『私はミュウで』
『僕はロックです』
『しかし、私は、』
『もう奴隷じゃないよね?』
『ふふふ 分かりましたわ、御主人様がそうおっしゃるならクオン様と、お呼びします』
『ミュウ様・ロック様、承りましたわ』
『『『・・・・・・・・・』』』
『まっ しばらくは、良いか』
『んふふ ムーアお姉様♪』
『ムーア姉ちゃん!』
『ミュウ様・・・ロック様・・・・』