第178話 飛空艇完成記念パーティはサプライズ付き
翌日サークルメンバー全員を引き連れて、人が誰も来ない平原に来ていた。
以前から目を付けていた場所で、ここなら誰にも見られず飛空艇の飛行テストが出来るだろう。
サークルの世界で一通り完成した飛空艇をアイテムBOXに収納し、今は目の前の平原にアンカーを打って固定している。
サークルメンバーは全員飛空艇の船上に乗り込み、後はアンカーを外すだけだ。
『あ~ ドキドキしちゃうね~♪』
『はい、僕なんて昨日は眠れませんでしたから♪』
『ニャハハ それは皆一緒ニャー♪』
『フハハ ワシでも心躍るからの♪』
『フフ 当然ですわ♪』
『いやはや、これが成功したら前人未踏の快挙だからね♪』
『うふふ ベクター様は自信たっぷりなのに?』
『私も人の子だからね、自信はあるが絶対ではないのだよ』
『フォホホ 私めなどは、この偉業に立ち会えるだけでも誇らしいですからな♪』
『クロワ師匠でそれなら私など、どうなるのですか?』×トルネ
『うふふ 私なんて唯の料理人だよ?』×マリン
『あの~ 私達なんてメイドなのですけど?』×アーチカ
『新参者の私は一体どうしたら?』×クレア
『飛んでも無い量の資材を集めていたのは知っていましたが、誰がこんな物を造っていたなんて想像出来るのですか?』
『うふふ 何時も冷静なクレアさんが最初に見た時、あんなに取り乱してましたものね♪』×ローニア
『い 言わないで下さい、私の想像なんて遥かに超越していたのですから』
『クオンさんが、やる事は人知を超え過ぎてるんですよ』×リップ
『流石に今回は心臓が止まりそうでしたけどね♪』
『こらこら、この飛空艇はサークルメンバー全員で造ったものだろ?』
『もっと自分自身にも誇って欲しいな♪』
『んふふ さあクオン行っちゃおうよ♪』
『ああ それじゃあ秒読みを開始するぞ♪』
俺達は全員で秒読みを開始した。
【10】×サークルメンバー
【9】
【8】
【7】
【6】
【5】
【4】
【3】
【2】
【1】
【0】
【行けええええええええええええええええええええ】
『おりゃー 』
『ぬんっ 』
『ニャアア』
『えいっ』
『やあですわ』
『よいしょー 』
俺達6人は飛空艇を繋いでいたアンカーを、一斉にアイテムBOXへ収納した。
すると超巨大な飛空艇は「ゴゴゴゴゴ」と音を立てながら空へ浮かんでいく。
『おおおおおおおおおおおおおお~~~~~~~♪』×サークルメンバー
『う 浮いたあああああああああ~~~~~~~♪』
『キャアアアアアアアアアアアアアア♪』×メイド達
『フフフ 幸先良し♪』×ベクター
『ああ~ 素敵過ぎですわ♪』×ロア
超巨大な飛空艇は徐々に高度を増し、遂には雲に並ぶほどの高さまで浮上した。
雲を突き破り太陽が顔を出す頃、まるで天空の世界にでも来たような光景が広がっていた。
歩けるかもと錯覚するほど、下に雲が広がり青い空に降り注ぐ太陽の光が素晴らしい景色になっている。
飛空艇は予定通り上昇が止まり、ある程度の高度で静止したようだ。
トルネちゃんに飛翔金属の総量から、制御できるぐらいの加重計算を徹底的にして貰った賜物である。
このまま維持できるか、しばらく様子を見ていたが何も問題は無いだろう。
これで事実上、完成したと言って良いだろう♪
『ベクターさん、ここはベクターさんしか居ないでしょ?』
『フフ 私に譲ってくれるとは、光栄だね♪』
『柄にもなく興奮が収まらないよ・・・だが完成だ、完成したぞ』
【天空の航空母艦「スカイサークル」の完成だ!】
『うわああああああああああああああああああああああ♪』×サークルメンバー
『やだ、なんか涙が出てきちゃった』
『それはミュウ、感涙ってやつだ♪』
『もうクオンも泣いてるじゃない?』
『ニャハハ 皆泣いてるニャー♪』
『この偉業には感涙なくして語れませんわ♪』
『うむ、感無量である♪』
『わーん 良かったよー♪』
サークルメンバー全員が涙を流し、抱き合いながら喜びを分かち合った。
何時も冷静なベクターさんやクレアさんまで泣いて喜んでくれている。
やはり全員が手掛け苦労して造った物が完成したときの感動は一入だ♪
ここは俺も気合を入れて、声を張り上げる。
『よーし「スカイサークル」完成パーティをするぞーーー♪』
『おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー♪』×サークルメンバー
俺達は事前に用意していたテーブルや椅子を艦上に並べ、次々と料理やお酒を出していく。
全ての料理が並べ終わり、皆にお酒を配り終わったのを確認し高らかに声を出す。
『みんなー ありがとう♪』
『皆のお陰で遂に完成しましたー 』
『名前は皆で考えた「スカイサークル」です!』
『今日は「スカイサークル」完成を祝して大いに飲み食いして下さい♪』
『メイドさん達も気にせず飲んでね』
『でわでわーーー 乾杯!』
『乾杯ーーーーー♪』×全員
『ぷはーーーーー♪』×全員
『あー こんな雄大な景色を見ながら飲むお酒は最高~♪』
『うふふ クオン様は、ああ言って下さってますがあまり羽目を外してはいけませんよ?』×アーチカ
『駄目よアーチカさん、逆よ逆♪それを言うなら今日は羽目を外さなくちゃいけませんよ?だよ』×ミュウ
『あはは そそ、今日はそんな事気にせず思いっきり飲もう♪』
『うふふ ありがとうございます♪』
『では、皆さんクオン様の御厚意に甘えましょうか♪』
『は~~~~い♪』×メイド達
宴が始まり皆が盛り上がってきたので、今日計画していたサプライズを実行に移すことにした。
『ロア姉さ~ん♪』×ミュウ
『うふふ どうしたの?』×ロア
『こっちに来て』
『えっ そ そんなに引っ張らなくても行くわよー 』
『うふふ ささ、此処に立って』
『な なんなのよー 』
『良いから良いから♪』
【みんなー 用意は良いかー♪】
【おーーーーー♪】
【3】
【2】
【1】
【せーの おりゃーーー♪』
『キャアアアアアアアアアア』×ロア
次の瞬間巨大な飛空艇である「スカイサークル」が消え失せた!
消えたと言っても落下する訳でもなく、ちゃんと足場はある。
そう、これは「スカイサークル」の機能の1つである艦全体を透明化だ。
ロアさん以外は全員この機能を知っており、事前に練習もしていた。
透明になった瞬間ロアさんは、まるで何もない大空に立っているのだから驚くのは無理もない。
そしてサークルメンバー全員が大量に用意しておいたバラの花びら一斉に空から降らせた。
天空に立ち尽くすロアさんの周りは、ヒラヒラと花びらを舞い降りている。
そこへ何時の間にかタキシードへ着替えたベクターさんが歩み寄る。
『ロア君・・・いやシャルル・ロアさん、永年待たせて申し訳なかったね』
『私と結婚して下さい!』
『えっ・・・えええっ』
ベクターさんはロアさんの目の前で片膝を付きながら、結婚指輪を差し出している。
そう、これは俺達6人がベクターさんを説得して計画した、プロポーズサプライズだ♪
驚き戸惑っていたロアさんは、現状を把握できたのか涙を流し感動している♪
『私にしては少し派手だとは思ったのだが、受け取ってくれるかね?』
『は はい、喜んで♪』
『私の生涯で・・・こ こんなに驚いた事も、こんなにも感動したこともありません』
『ずっと、ずっとお慕いしておりましたベクター様』
『こんな朴念仁の私を愛してくれてありがとう』
『幸せにするよ♪』
ロアさんは、もう言葉が出ないのかベクターさんに抱き締められながら感動の涙を流し続けていた。
俺達はそれを拍手で祝いながら、全員が感動し貰い泣きしていた。
『もう皆なんてことしてくれるのよ、涙が止まらないじゃない?』
『んふふ おめでとうロア姉さん♪』
『すっごく幸せそうで羨ましいわ♪』
『もう馬鹿ね♪』
『ありがとうミュウちゃん、ありがとうサークルの皆♪』
『おめでとう♪』×サークルメンバー
『パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ』
長い長い拍手が止まる頃、ロアさんは皆に素敵な笑顔を見せてくれた。
俺達はサプライズが成功したことに喜び、またお酒を飲み続けた♪
『それにしても何だったの?行き成り飛空艇が消えちゃったから驚いたわ』
『えっとこの「スカイサークル」の機能の1つなんですけど、全体に<クリア>の魔法が施せるんですよ♪』
『こ こんな巨大な飛空艇全体に?』
『はい、操縦席に居ながら360度全体が見渡せるようにベクターさんと相談して造りましたからね♪』
『・・・ベクター様もクオン君に似て来たんじゃありませんか?』
『全てはクオン君のアイデアだよ?私は凡人だからね』
『あ~ ベクターさん狡いですよ?』
『共同制作者なんですからね?』
『ふふ 大人は狡いものなんだよ♪』
『ん~ こうなったら盛大な結婚式を・・・』
『ま 待ちたまえクオン君?』
『あはは 冗談ですよ♪』
『いやはや 何から何まで参ったよ君には?』
『うふふ ベクター様も、クオン君には形無しですね♪』
『ロア姉さんも、もう結婚するんだから様付けは駄目なんじゃないかな?』
『呼び捨てとか?』
『そ そんな事できるわけないでしょー 』
『フハハ 君もミュウ君には形無しだね♪』
『もう困った子達ですわ♪』
『あはははは♪』×全員
再興に幸せそうな2人を前に、宴は1日中続き全員酔い潰れるまで飲み明かした。
この異世界では飛行機も無いから「スカイサークル」も空に浮かべたままにすることにした。
宴だけで1日が終わってしまったけど、たまにはこんな日があっても良いよね♪
翌朝から皆で艦内を探検し、改めてその広さに驚いている。
超巨大だけど一応飛空艇なので、ちゃんと運転室があり自由に移動できる。
レチクルの水晶からもたらされる魔力を使い、風属性魔法で上下左右移動が可能だ。
また魔動力装置から生まれる推進力を利用しプロペラで移動する事もできる。
サプライズで使用した<クリア>で360度立体的に外を確認できる機能。
感知系魔法を利用したレーダー機能。
各種属性魔法を利用した攻撃魔法機能。
やる気になれば艦内に居ながら国を亡ぼす事もできる、なかなか恐ろしい飛空艇になってしまった。
全ては空中に投影できるコントロールパネルからタッチパネルのように操作が可能になっている。
この殆どが俺達6人とベクターさん夫妻で構築したので、この様々な機能を聞いたサークルメンバーが少し引いていた。
『と 飛んでも無いものとは思っていましたが、私の想像を遥かに超えていたんですね・・・』×ローニア
『ハハハ 人知を超え過ぎてて理解不能になったよ』×リップ
『こらこら、誤解するなよ?攻撃機能はあくまでも防衛用だからな?』
『それにしたって、やり過ぎじゃない?』×ロア
『いあいあ 攻撃機能は男のロマンですよねベクターさん?』
『私に振るのかい?まあ無いよりは良いだろう♪』
『ですよねー♪』
『絶対に似た者同士なのは間違いないですね?』×ロック
『フハハ まあロックも分からない事も無いだろう?』
『そりゃそうですけど』
『ニャハハ 無敵ニャー♪』
『フフ 世の中には上には上がいますよ♪』
『もう怖い事言わないでよライカ』
『ああっ 僕リーダーが何故これを造ったのか分かっちゃった』
『流石ロックだな♪まあそういうことだ♪』
『な なんなのよロック?』
『あの艦上に造った闘技場があるじゃないですか、あれって殆どがアダマンタイト製なんですよ?』
『僕達だけが利用するなら、あんなに巨大で頑丈な物は要らないじゃ無いですか?』
『確かにそうだけど、それがどうしたのよ?』
『・・・なるほど、そう言う事だったのですね』
『ええっ ライカも分かったの?』
『・・・今思えば闘技場の中心にヘルクレスの杭を設置したとき気付くべきでした』
『なるほどな、そこまで先の事まで考えておったのか』
『誰と戦うために造ったかニャ・・・ニャニャ?』
『ま まさか、あの龍との決戦場のために、この飛空艇を造ったの?』
『ピンポンピンポン!大正解♪』
『えええええええええええええっ』×サークルメンバー
『・・・確かに今のあたい達と龍が全力で戦ったら、辺りがメチャクチャになるニャ』
『はい、それに地面なら衝撃を受け流す事が出来ません』
『下手をしたら大地が割れるか・・・』
『空の上なら、その心配も無いと言う事ですわ』
『そ それにしたって、何れ挑むとは思っていたけど、こんなに早く戦う気なの?』
『ああ何年も先って訳じゃ無い、俺の見立てでは1年以内ってとこかな?』
『皆も分かってるとは思うけど、俺達は上級ダンジョンで予想以上に強くなった』
『もうかなり、あの恐ろしい龍に迫るとこまで来てるかも知れない』
『でも、五大龍だったらの話しだ・・・真龍王バハムート彼だけは駄目だ、どうあっても勝てる気がしない』
『だから俺達は後1年以内に鍛える、そのためにもあの闘技場が必要だったんだ』
『わ 私達も頑張って鍛えます』×アーチカ
『私達が強く成ったらクオン様達も強くなるんですよね』
『例え誤差の範囲だとしても、少しでもお手伝いさせて下さい』
『私もやります頑張って強く成ります』
『私も死ぬ気になって鍛えますわ』×ローニア
『フォホホ これは私も頑張りませんとな♪』×クロワ
『フフ 私達も頑張ろうかロア君?』×ベクター
『当然ですわ、また強くなってしまうのは痛し痒しですけどね♪』×ロア
『私達も頑張りますー 』×サークルメンバー
『ありがとう、こりゃどうあっても負けられませんね』
『付き合わせて悪いけど、皆も頼む』
『フハハ 任せよ♪』
『ニャハハ 付き合いじゃないニャー♪』
『そうですよ、もはや一心同体なんですからね♪』
『目指すところは真龍王、この世界の頂きですわ♪』
『こうなったら私達サークルが頂点に立ってやるわよ♪』
『あはは これからちょっと訓練がハードになるけど宜しくな♪』
『ええええええええええええっ』×ミュウ達
『あはははは♪』×サークルメンバー
これから厳しい訓練に明け暮れながらも、まったりとした楽しい生活を送り続けた。
なにせ飛空艇造りで資金も底を付き、資金調達やマリンさんの食材集め、トルネちゃんの店に様々な素材集めもしていった。
俺達以外のサークルメンバーも上級ダンジョンに潜る様になり、皆格段に強く成っていった。
もうサジタリウスでもサークルのメイドさん達には、とても勝てないだろう。
俺達6人も上級ダンジョンの周回や、スカイサークルの闘技場で激しい訓練を毎日やり続けた。
ヘルクレスの杭の効果で全てのステータスが跳ね上がる為、俺達の模擬戦はもはやベヒーモス戦よりもずっと激しいものになっていた。
それでも殆どがアダマンタイトで出来ている闘技場はビクともせず、俺達は全力で訓練をすることができた。
そして単独でベヒーモスに勝てる様になる頃、俺達のレベルは1000を超えた。
各ステータスも3万を超え、サークルメンバーの恩恵を入れれば4万に届くかもしれない。
ヘルクレスの杭の効果を入れれば、各ステータス8万以上になるだろう。
当然の如く上がっていくステータスに悪戦苦闘したが、ある境を超えた時だろうか俺達は妙に力に馴染むようになっていた。
まるで、その状態が平然であるかのように壊れやすい物を扱いながらも、ミスリル鋼を素手で粘土の様に加工でき。
頑張ったらオリハルコンを素手で曲げる事ができるまでになった。
1年以内と考えていた俺だが、僅か半年で来るべき時期に来たことを感じ取っていた。
『なあ、みんな?』
『言わなくてよい、もはや言葉は不要であろう?』
『喋らなくても分かるニャ』
『何か静けさを感じますよね』
『これが至ったと言う事なのでしょうか』
『皆感じる事は同じなのね、これがクオンの能力なのかな』
『そうかも知れないな、俺も皆の感情が伝わってくるよ』
『一心同体ってのは、こういうのを言うんだろうな』
『ねえ、クオン何時にする?』
『一週間後でどうだ?』
『皆故郷に帰ってゆっくりしてきたら良い、一週間後また此処に集まろうか』
『分かったわ』
『意義は無い』
『分かりました』
『了解ニャ』
『分かりましたわ』
『クオンは、どうするの?』
『俺は、ちょっと遣りたい事があるんだ』
『んふふ 浮気は駄目よ?』
『こんな神妙な時に言う言葉じゃないだろ?』
『そうね♪』
ミュウは今までに見た事がない微笑みを浮かべ、優しくキスをしてくれた。
俺は何故か驚く事もなく、唯々幸せを噛み締めた。
同じころロックとムーア、それにオーラとライカもキスをしていたようだ。
本来なら様々な感情や言葉が行き来するところだが、今の俺達には言葉は不要だった。
俺達6人は拳を合わせ視線を切ると、それぞれがその場を後にした。
俺は他のサークルメンバーに一週間後にサークルの世界から外へ出ておくように伝えておいた。
俺達に万が一の事があり、サークルの世界が閉じる可能性があるからだ。
皆も感じ取っていてくれたのか、少し泣きそうな表情を浮かべながらも快く納得してくれた。
この半年間で皆からは、無理に真龍王に挑まなくてもと聞かれた事があったが明確な返答はできなかった。
このまま戦わずに平穏に生きる事もできるのだろう。
でも俺が求める答えを知るには、避けては通れない事なのだから。
だが今となっては、それ自体もどうでもよくなっている。
俺達は戦う、それがもう決まっていた事のように・・・