第170話 上級ダンジョン「ヘラクレス」 全身全霊
俺達は戦闘準備を整え、各スキルを開放していく。
それに続くように友達もバハムートの幼体であるハムを中心に<剛腕><剛体>スキルを見に纏っていく。
全ての用意が終わると、俺達は全員と視線を合わせ作戦を実行へ移した。
『『『『『『!!!!!!エンチャット神土属性魔法!!!!!!』』』』』』
頭の中で≪神の声≫が響く。
【条件を満たしました。≪シンクロ魔法≫が発動します!!!】
突然6人の左手の紋章が浮かび上がり輝き出す!!!
次の瞬間6人のアダマンタイト製の武器から神々しい黄金色の光が放たれた。
ただのエンチャット魔法と言えど、6人によるシンクロ魔法は飛んでも無い魔力と気力を持っていかれる。
しかし、これだけではベヒーモスに対抗できるなんて思ってはいない。
続いて俺達最大の連携技を繰り出していく。
『『『『『『!!!!!!【六 天 風 神】!!!!!!』』』』』』
俺達が訓練し開発した連携技であり、各自の技により凄まじい風を生み出しミュウの神風属性魔法も駆使し敵対者を引き寄せる。
魔法と技が交じり合った凄まじい回転によって現れた6つの竜巻は、ベヒーモスを中心にして暴れまわる。
『ガガガガガガガガガガガガガガガガッ』
驚いた事に俺達6人と6匹の総攻撃をベヒーモスは耐えている。
それでも流石にノーダメージとまではいかないのか、徐々にベヒーモスを押し始めた。
ガンガンと減っていくMPに俺達は予め用意しておいた、MP回復用のゴーレムコアやマナポーションを使用していく。
もちろんベヒーモスからも<マジックドレイン>を使い魔力を吸収している。
そこまでしてもあまり長続きは出来ないのが予想できた。
流石はベヒーモス笑えるぐらいに凄まじい防御力だ♪
俺達は最後の攻撃に出ることにした、これで駄目なら俺達の負けだ。
『畳みかけるぞ!』
『おう』×全員
俺達は作戦通りベヒーモスの後ろ脚に攻撃を集めており、六天風神を止め個人技で畳みかける。
俺達の個人技を次々に叩き込み、ハムの<レインボーブレス>と他の5匹による<五属ブレス>を放ち終わる頃、ようやくベヒーモスの強靭な後ろ脚は地におちた。
『GUGOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO』
『今だああああああああああああああああああ!!!!!!!!!』
『『『『『『!!!!!!<メテオロス>!!!!!!』』』』』』
頭の中で≪神の声≫が響く。
【条件を満たしました。≪シンクロ魔法≫が発動します!!!】
突然3人の左手の紋章が浮かび上がり輝き出す!!!
ミュウ1人だけでも山を消し飛ばした<メテオロス>のシンクロ魔法がベヒーモスへ襲い掛かる。
以前にみた<メテオロス>とは比べ物にならないぐらい、巨大な隕石が高速で降り注ぎベヒーモスへ着弾していく。
その凄まじい威力は轟音と地震を引き起こし、とても立っては居られない程だった。
それにしてもエンチャットのシンクロ魔法に続いて、上級魔法の<メテオロス>をシンクロするのは流石に無茶だった。
出来ればエンチャットシンクロ魔法で倒し斬りたかったが、後ろ脚を潰すのが精いっぱいとは・・・
それでも巨体であるにも関わらず動きの速いベヒーモスへ、この最後の<メテオロス>を当てる為に機動力を奪う事には成功した。
この2段構えの作戦だったが、誤算と言えば逃げる体力が残らなかった事だろうか。
俺達はベヒーモスが地に横たわった姿を見るのを最後に意識を手放してしまった。
これでベヒーモスを倒し切れなかったなら、俺達の負けだなと思いながらも全力でやりきった満足感で皆笑顔で倒れていた。
どれぐらいの時間が経ったのだろうか、俺達は気持ちの良い光に包まれながら目を覚ました。
生きてる?ベヒーモスを倒したのか?それともベヒーモスも倒れているのか?
俺は急いで身体を起こし辺りを見渡したが、どこにもベヒーモスの姿は見当たらない。
<気配感知>でも分からない、どこだと思っていると大空洞に出来た巨大なクレーターの中に光り輝く宝箱を発見した。
それを見た瞬間、俺はベヒーモスを倒した事を確信した。
俺は右腕を高く掲げ、もう一度地面へ寝転がった。
勝った、倒したんだ・・・俺は歓喜に身を委ねながら本当にギリギリだったなと苦笑した。
すると皆も目が覚めたのか、高く掲げた俺の右腕に拳を重ねてくれた。
目が覚めた時、暖かく感じた光はカー坊が<癒しの光>を使ってくれていたことに気付き、皆でカー坊の頭を撫でてお礼をした。
『強かったな?』
『強すぎるわよ、もう駄目だと思ったんだからね?』
『ニャハハ 最初見ただけでチビリそうだったニャー♪』
『あはは 僕も実は膝が震えっぱなしでした♪』
『フハハ ワシもとても喜ぶ余裕はなかったな♪』
『フフ あれを見たら魔族でも逃げだしますわ♪』
『あはは 皆ありがとう皆の力がなかったら、とても倒せなかったよ』
『ハム達も、ありがとう助かったよ♪』
『キュキュキュー♪』
『クークククー♪』
『ムーームーー♪』
『ミーミミミー♪』
『コンコンッ♪』
『・・・♪』
『んふふ 皆も喜んでくれてるわ♪』
『さってと、じゃあ宝箱でも・・・』
『あれっ か 身体が・・・』
『えっ うわ う 動かないわね・・・』
『フハハ ちと無理をし過ぎたか?』
『あはは でも心地良い疲れですよ?』
『フフ もう少し回復しないと動くのは無理そうですわね』
『ニャハハ もう少し寝てるニャー♪』
俺達は大の字になって寝ころびながら30分ほど動けずゴロゴロしていた。
ここが魔物が出ないボス空間で助かった。
ようやく身体が動く様になり大空洞にできた巨大なクレーターに下りて行く。
『それにしても凄い威力だったわね?』
『ああ でもこれぐらいしないと倒せないベヒーモスに驚くよな?』
『あはは 本当ですね~♪』
『ニャー 宝箱が3つもドロップしてるニャー♪』
『フフ 黄白金宝箱2つに光金宝箱ですか♪』
『ニャー 光金宝箱なんて初めて見たニャー♪』
『罠は無いみたいニャ黄白金宝箱から開けるニャ?』
『ああ 頼む♪』
俺達は全員で宝箱の中身を覗いてみると、そこには賢者の石が3つも入っていた。
『うはーーー 』×全員
『フハハ 行き成り凄い物が出たな♪』
『ベクターさんに1つ借りてるからな、ようやく返せるよ♪』
『ニャハハ 次いくニャー♪』
そして次の宝箱も全員で覗いてみると、そこにはポーションの様なガラス瓶に生命の水ってのが入っていた。
<鑑定>したところ、どうやらこれは死者蘇生薬らしい・・・
『・・・・・・・』×全員
『死んでも生き返っちゃうんだ?』
『そうみたいだな?』
『凄いですね~ 』
『凄いニャー 』
『凄いで済ませて良いのか?』
『フフ 高く売れそうですね?』
『売らないぞ?これは俺達に、もしもの事があった時の為にストックしとくからな』
『クオンなら、そう言うと思いましたわ♪』
『そろそろ本命行くニャ?』
『ああ 頼む』
『ゴクッ・・・』×全員
いよいよ俺達でも初めて見た、光金宝箱をゆっくり開けて中を見た。
皆は拍子抜けするような表情になり首を傾げている。
だが、それは<鑑定>するまでの間だけだった、俺達は鑑定結果に唖然とした。
【アンサー ダンジョン固有アイテムの1つ ヘルクレスの杭】
【ヘルクレスの杭:効果範囲内において所有者の全ての能力が倍になる聖域を展開する】
『うはーーーーーー 』×全員
『こりゃまた、飛んでも無いな・・・』
『ねえ私達って、どこまで強くなるのよ?』
『フハハ 何を言うミュウ?たった今苦戦したばかりではないか♪』
『フフ 確かにそうですわ♪』
『ん~ 設置位置が難しいアイテムですねー 』
『それはもう考えてあるんだ♪』
『ニャハー 流石クオンニャー 』
『もう、またどこまで先を考えてるのよー 』
『あはは ちゃんと納得させてやるから心配するな♪』
『はぁ~ 頭が痛くなってきたわ』
『確かに・・・』×ミュウ達
『皆で声を揃えて言わなくて良いだろ?』
『あのね~ どうやったら、たった今手に入れた飛んでも無いアイテムの使い道を考え付くの?ねえ一度クオンの頭の中見せてくれない?』
『こらこら、怖い事言うなよ?』
『あはははは♪』×全員
俺達は命賭けだった戦闘が終わったばかりなのに、笑い合い冒険者と言うものを楽しんだ。
少し名残惜しくもあるヘルクレスも踏破し現れた、ダンジョンコアの部屋へ入っていく。
予想通り今まで見たダンジョンコアより遥かに大きく、上級ダンジョンになると俺よりも大きくなるんだと驚いた。
見ていると相変わらず不思議な感覚になり、そのまま手を触れてみると頭の中に声が聞こえてきた。
『我がヘルクレスダンジョンへ、ようこそ冒険者達よ!』
『やっぱり、会話出来るのですねダンジョンマスターさんですか?』
『はい、私はヘルクレスダンジョンを管理しているダンジョンマスターです』
『見事と言っておきましょう、まさかこのダンジョンを攻略されるとは思ってもいませんでした』
『特にベヒーモス戦は素晴らしい戦いでした♪』
『ありがとう♪でも大変でしたよ?』
『うふふ それはそうでしょう、何しろヘルクレスダンジョンを制覇したのは貴方達が初めてなのですから♪』
『やっぱりそうですか、俺達でも大変でしたから♪』
『ところで質問しても良いでしょうか?』
『どうぞ何でもご質問下さい』
『またこのダンジョンへ来たいのですが、ベヒーモスは復活するのでしょうか?』
『ええっ?』×全員
『クオン貴方まさか、またベヒーモスと戦う気なの?』
『ああ 俺達が本気で戦える魔物なんて1回戦うだけなんて勿体ないじゃないか?』
『うはーーー 』×全員
『うふふ 一週間ほどお待ち願えますか?ベヒーモスは普通の魔物とは違い膨大な魔力を必要としますから♪』
『なるほど、では一週間後にまた宜しくお願いします♪』
『畏まりました♪』
『では、私からダンジョン制覇報酬として魔法を1つプレゼント致しましょう』
『『『『『『おお~ パチパチパチ!!!』』』』』』
『うふふ 神無属性魔法である<リフレクト>を送りましょう』
『これは全ての魔法をそのまま相手へ弾き返す魔法の盾となります、貴方達なら使い熟す事が出来るでしょう』
その瞬間、俺達の頭の中へ直接何かが刷り込まれていくような感覚が起こり<神の声>が響き渡る。
【サークルが無属性魔法<リフレクト>を習得しました】
俺達6人は、ハイタッチして喜びを分かち合う。
『ありがとう♪』
『うふふ どういたしまして♪』
『それでは、また会いましょう素晴らしい冒険者達よ』
『フゥ~ また凄い魔法貰っちゃったわね?』
『ああ これでもう魔法攻撃は怖くないな♪』
『ニャー でも今日はとっても疲れたニャ』
『あはは そうだな、じゃそろそろ帰ろうか♪』
『はい、僕お腹ペコペコです♪』
『あはは 俺もだ♪』
俺達はヘルクレス上級ダンジョンを制覇し、心地良い疲れを残したまま王都へ帰る事にした。
ダンジョンの外へ出ると丁度、朝日が昇っており俺達は、ほぼ丸一日ダンジョンへいたようだ。
休憩を長めに取っていたとは言え、結構な時間が経っていたようだ。
俺達は先ず王都にある冒険者ギルドへ顔を出すことにした。
冒険者ギルドへ入ると、そこには鬼人であるクレアさんがいた。
相変わらず凛とした佇まいの綺麗な女性である♪
俺達はクレアさんの下へ向かうと、やけに驚いた表情をしている。
『クオン様達、一体どうしたのですか?』
『えっ 俺達がどうかしましたか?』
『・・・その、まるで死闘を繰り広げた後の様に、服がボロボロになっているのですが?』
『あっ 』×全員
『んふふ そう言えばそうね♪』
『フハハ そのような些事に気付かないほどの出来事だったからの♪』
『ニャー また綺麗に治すニャー 』
『ごめんねムーア、せっかく作って貰った服をボロボロにしちゃった』
『ごめんなさい』×全員
『ニャハハ 良いニャ役に立ったなら、あたいも嬉しいニャー♪』
『確かにムーアが作ってくれた防護服が無かったら、今回は危うかったかもしれませんね』
『全くだ最初に吹っ飛ばされた時、これがなければ意識を失ってたかも知れないな』
『ニャハハ 誉め過ぎニャ、擽ったいニャ♪』
『・・・私としましては、サークルがそこまでボロボロになるほどの魔物が恐ろしいのですが?』
『あはは♪』×全員
『今日は、ヘルクレスダンジョンの探索報告ですよね?』
『ああ 一応その通りだ』
『お疲れでしょうが、ギルマスへ報告しておきたいので2階へお越し頂いてもよろしいでしょうか?』
『分かった、皆行こうか』
『了解』
俺達はクレアさんに連れられ2階にあるギルマスの部屋へ入ると、ギルマスも俺達の恰好を見て驚いていた。
『いやはや、どうやらサークルを以てしてもヘルクレスは厳しいようだね?』
『厳しいどころじゃなかったよー 』
『フフ 初見殺しは多数あり、魔物も強かったですからね♪』
『僕は各フロアボスが一番厳しかったですね』
『はあ?ちょ ちょっと待ってくれ今各フロアボスと言ったのか?』
『はい?』
『一体君達は何層まで行ったのと言うの?』
『制覇してきましたよ?』
『えっ?し しかし、ヘルクレスは厳しかったと?』
『フハハ 厳しかったが制覇しておらんとは言って無いだろう?』
『ニャハハ ちゃんと地下80階のボスを倒してきたニャー♪』
『『・・・・・・・』』
『ま まさか本当にヘルクレス上級ダンジョンを制覇したのですか?』
『挑み始めて未だ2日しか経っていないのですよ?』
『遣り甲斐のあるダンジョンでしたね♪』
『あっ そうだ地下41階以降は本当に厳しいですから、注意した方が良いですよ?』
『ふふ あはははは♪そんな心配をしなくても、サークル以外では辿り着けんよ♪』
『なるほど、でもサジタリウスなら行けるかも?』
『地下41階以降で死ぬかもですが・・・』
『・・・分かったサジタリウスには私から注意しておくよ』
『しかし、分かってはいたが飛んでも無いな君達は?』
『あはは 俺達には良い訓練になりそうなんで、しばらく通いますよ♪』
『と ところで、まさかヘルクレス制覇報告だけとは言わないよな?』
『ん?ああ 素材ですか?』
『あまり虐めないでくれ、こちらが喉から手が出るぐらい欲しいのは分かるだろう?』
『あはは どうしようかな?』
『フゥ~ 分かった条件を聞こうじゃないか?クレアが欲しいなら付けるぞ?』
『えっ 』
『ギ ギルマス?』
『あはは 冗談だ♪』
『しかし、手応えはあったようだが?』
『あはは 本当にクレアさんを、しばらく貸して貰えるなら嬉しいですね♪』
『な なに?』
『ええっ 』
『ちょっとクオン何言ってるのよ?』
『こらこら、誤解するなよミュウ別に変な意味で言ってる訳じゃ無い』
『じゃ、どんな意味なのよ?』
『実はちょっと遣りたい事があってな、忙しくなりそうだから有能な人材が欲しいんだ』
『クレアさんなら王都にも詳しいだろうし、伝手も多そうだからな』
『お金も大量に稼ぎたいところだし、出来るだけ素材を卸すから貸して貰えませんか?』
『よし、貸そう♪』
『ギ ギルマスそれはないでしょう?』
『あはは お前は意外と好奇心が旺盛だからな♪』
『サークルの深淵に触れたくはないか?秘密さえ守れば死ぬこともないだろうしな♪』
『そ それは・・・』
『まあ、今日の所は素材とお土産を置いて行きますから、考えといて下さい♪』
俺はヘルクレスで大量に入手した魔物素材と要らない鉱石類をギルドへ卸した。
もちろん高額になりそうな素材はクロワさんに取ってある。
今日はサークル本部へ帰る予定なので、そのまま王都を後にした。
『フフ ああは言ったが、ちゃんと帰って来いよクレア?』
『まるでもう私が了承すると分かっているみたいではないですかギルマス?』
『了承するんだろ?』
『うふふ 今まで生きて来た中で、こんなにも魅力的な誘いはありませんでしたね♪』
『ですが、少し恐ろしい気持ちもあるのです』
『まあそうだろうな、言っとくが秘密を洩らせば本当に死ぬからな?』
『私では絶対に庇えんぞ?』
『お 脅さないで下さい、怖くなるではありませんか?』
『脅しじゃないからな・・・』
『ゾクッ・・・』
『・・・よく考えてから返事することにします』
『あはは それが良い♪』
『それにしても凄まじい量の素材だな・・・査定に1日掛かりそうだ』
『あっ すみません直ぐに査定致します』
『殆どが未確認素材だ、鑑定士も居るだろう』
『はい、直ぐに手配します』
『やれやれ、現れる度に驚かせてくれるな、嵐の様な奴等だ♪』