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第13話 錬金術の本と魔法と盗賊


乗合馬車は辺境の町エルドラを後にしアラバスの町へ向かう、俺の新たな旅だ!



『ところで、ベクターさんに何貰ったの?』


『なんだろ?開けてみるね』


『うわ~ これ、錬金術の本だ!色々な素材の活用法・組み合わせ・効果まで乗ってる。たぶん初心者向けだと思うけど、これめっちゃ助かるよ』


『へえ~ 凄く良い物貰っちゃったね~』


『こりゃー お土産奮発しないとだね』


『あれっ まだ何か入ってる、手紙付きだ』



手紙には「こないだのブラッククロウラーの素材から、強力接着剤を作ったから少し上げるね~」って書いてある。強力接着剤は大きめのジャムの瓶のような物に入っており真っ黒だ。



『うわー これも助かる~』


『えっ なんだったの?』


『こないだ、お礼に渡したブラッククロウラーの素材から強力接着剤が出来たらしくて、少しくれたみたい』


『んふふ もう何に使うか決めたみたいな顔してるわね』


『な なんでわかるのかな』


『うん、これがあれば更に上手くいくような予感がするよ、楽しみだ』


『うふふ 貴方達、仲が良いわね』



乗合馬車の正面に座っていた20代後半に見える女性がニコニコしながら話掛けてきた。



『貴方達、かなり若そうだけど冒険者かしら?』


『はい、二人でパーティを組んでます。まだ初心者ですが』


『うふふ 良いわね~ パーティ名は何ていうのかしら?』


『そういえば、決めてないわね・・・・』


『そっか、まだ二人だから忘れてたね、考えないと』


『あらあら、うふふ 名を考えるのも楽しいわね』


『アラバスへは買い物かしら?』


『はい 鍛冶屋へ行きたくて』


『冒険者のお姉さんも買物かしら?』


『うふふ よく冒険者だと分かったわね、お嬢ちゃん』


『ええ、強い魔力を感じるわ』


『うふふ お嬢ちゃん大したものね、私は杖が欲しくてアラバスに探しに行くのよ』


『へえ~ お姉さん魔法使いなんですか?』


『大した魔法使いじゃないけどね、パーティ名がまだならお名前お聞きして良いかしら?私はシャルル・ロア ロアって呼んでくれたら良いわ』


『俺はクオンです』


『私はシャーリー・ミュウです』


『クオン君にミュウさんね、道中よろしくね うふふ』



正面から見たら、目線を合わせるのも照れるぐらいの美人でスタイル抜群、大きな双丘が印象に残る、「妖艶」って言葉が似合うぐらいの大人の女性だ。


着ている黒いローブも、魔法使いと言うより自然な感じで普通の服に見える。


隣に座っているミュウが小声で耳打ちしてくる。



『ねーねー 丁度良いじゃない、自分の魔法属性とか新しい魔法の覚え方、聞いちゃおうよ』



なるほどエルドラの町では、魔法使いの伝手がなくて聞けなかったことを思い出す。



『ロアさん、お聞きしたいことがあるのですが良いですか?』


『あら、何かしら?』


『実は俺達、魔法使いの方に知り合いがいなくて魔法について聞きたいんですよ』


『自分の魔法属性とか、どうやって調べてますか?』


『う~んそうね、調べると言うよりは習得出来るかどうかで判断するわね』


『自分にある属性ならすぐに習得するし、ない属性なら覚えれないか覚えても伸びないわ』


『なるほど、ロアさんはどうやって属性確認したんですか?』


『そうね~ 貴方達は今どんな魔法が使えるのかな?』


『二人とも回復と火になります』


『あらあら、魔法まで仲が良いのね うふふ』


『それなら話が早いわ、魔法はイメージってのは分かるわよね』


『両手に集めた魔力を、イメージに従って属性変換するのが魔法よ』


『新しい属性を確認、つまり覚えるにはイメージしやすいかどうか属性変換が大事なの』


『ちょっと待ってね』



ロアさんは自分のカバンに手をいれ、なにかを探している。



『あったあった、今手持ちにあるのはこれだけだけど、はい、これを上げるわ』



ロアさんはビー玉のような形の、水色をした魔石っぽい物を取り出し俺に渡してくれた。



『これは?』


『それは水の魔石、つまり水属性の魔石よ、練習用に上げるわ』


『それを手に持ったまま火属性と同じ要領で水をイメージするの、それ持ってるとイメージの補助になるわ』


『最初は手の平が濡れるぐらいでも良いから繰り返し練習するのよ、自分にあった属性なら直ぐに覚えるわ、ま~ 直ぐって言っても2日ぐらいは掛かるでしょうけど』


『逆に2日ぐらいやっても覚えれないなら、その属性が自分にない可能性が高いわ』


『いえいえ、貰うのは悪いので買い取ります。って高いですか?』


『うふふ 新人冒険者相手に商売なんてしないわよ、安物よ気にしないで』


『う~ん、そういう事でしたら、お言葉に甘えて頂きます』


『情報だけでもありがたいのに、すみません助かります』


『良いのよ、じゃお嬢ちゃんに渡しとくわね』


『ロアお姉さん、ありがとう』


『まあ、うふふ 嬉しいこと言ってくれるじゃない』



ロアさんのお陰で旅の道中を楽しくすごし、いつのまにか昼の休憩になり、お弁当を食べることにする。


俺達はいつもの<陽だまり亭>のお弁当を広げて食べていると、ロアさんは小さなカバンしか持っておらず、お昼持ってこなかったのかと思い、買い溜めしておいた保存食を勧めてみた。



『あら、気を使わせちゃったわね、良いのよちゃんと持って来たわ』



ロアさんは小さなカバンに手を入れると、どう考えてもカバンより大きい皿が出てくる。



『あ アイテムポーチ!?』


『あら、新人さんなのに、よく知ってるわね』



ロアさんは大きなお皿とフォークを出し食事を始める、湯気が出るような料理じゃないので時間経過のないアイテムポーチかどうかは分からないが、やはり予想通りこの世界にもあった。


これから所得出来るかどうかは、分からないが期待に胸が膨らむ。



『あら クオン君? 良い笑顔してるわよ うふふ』


『ええ、良い物を見して貰いました。ありがとう、ちょっと嬉しくなりましたよ』


『大丈夫よ、君達ならいつか手に入るわ、でも野暮やこと聞いちゃダメよ うふふ』


『ええ、もちろん』



昼の休憩も終わり、俺とミュウさんは代わる代わる水の魔石で水魔法の訓練をしていた。



『『ピクッ!!!』』



俺とミュウさんは武器を手にする。



『あら、二人共どうしたの?』



次の瞬間、乗合馬車の屋根に矢が何本か刺さり、カツッカツッっと音がする。



『ヒィ と 盗賊だ』



御者が盗賊を発見し、慌てだす。



『ミュウ』


『分かってるわ』



この子達、この襲撃を事前に察知したの?私でも矢が刺さるまで分からなかったのに・・・おそらくかなり遠方からの攻撃のはず、ロアは戦慄を感じ少し微笑む。うふふ 面白いわ、この子達・・・


俺とミュウは素早く<マップ><サーチ>で盗賊を確認する。もちろん誰にも気づかれないようにだ。


約100メートル前方に5人を確認。



『ミュウ殺さずに行くよ』


『OK、いつでも良いわよ』


『おーい、分かってんだろ~ 馬車に乗ってるやつ全員出てこい!』


『大人しくして荷物を外へ出せ、死にてぇーのか!』



盗賊達は大声で叫ぶ、御者はぶるぶる震えており手綱を握りしめたまま俯いている。


俺は歩いて馬車の前方に出る。5人を視認できた武器はすでに抜いている、さて待とうか。



『おい、そこのガキ!武器を捨てろ殺すぞ!』


『武器を捨てたら殺されるだろ?』


『ぎゃはは おもしれえ、このガキ!どっちにしても死ぬんだよ』



盗賊達はみんなバカ笑いし近づいてくる。



『ところで聞きたいんだが、盗賊はお前たちだけか?近くにアジトがあるのか?』


『バカが、お前達を逃がさないように前後に分かれてるんだよ』



既に<サーチ>で人数は確認しているが、少し話して時間を稼ぐ、そろそろか・・・



『まあ良いよ、後でもう一度聞くよ』



俺は盗賊達に向けてニヤッと笑う。直後、盗賊達の頭上に炎が降り注ぐ。



『なっ なんだ グギャアアアアアアア アチチッ アチイイイイイ』



パニックになっている盗賊達へ俺は全力で当身を食らえ5人を気絶させる。当身だが手加減は無しだ。全力でやらないと倒せない懸念もあった。



『終わったよーミュウ、ナイスフォロー』


『しかし、バッカねー とっとと縛っちゃおうよ』



俺達はハイタッチをした後、ロープで盗賊達を縛り持っていた武器を馬車の中へ入れ御者に話をする。



『御者さん、御者さん』


『は はぃぃ』


『終わったよ、近くに盗賊達を渡す町とかありますか?』


『えっ あっ はい、ここいらに町はアラゴスしかありません』


『う~ん、困ったな』


『うふふ 貴方達強いのね、新人さんなのに』


『あっ ロアさん倒したのは良いんだけど、どうしたらいいか困っちゃって』


『そうね、殺さないなら連れて行くしかないわね、全員歩けるんでしょ?縛ったまま歩かせましょう』


『そうですね、じゃ起こしますね』



俺は気絶させた盗賊達を全員起こす。



『なんだぁ~こら~ このロープを解きやがれ』


『じゃさっきの続き聞きたいんだけど、近くにアジトはあるのかな?』


『答えるわけねーだろ、クソガキがぁ~』


『困ったな情報だけ聞いて町まで連れて行こうと思ってるんだけど、嫌ならここで死にますか?』



俺は笑顔で答える。盗賊に容赦なんて微塵も感じないしね。



『・・・・・・・・・・』


『ま 待て、分かった答える。アジトは無い俺達5人だけだ』



盗賊のリーダーっぽい人が返答する、まあ嘘でも確かめようがないんだけど。



『分かりました町まで歩いて貰えますか?』


『分かった従おう』


『あっ 1つだけ忠告を、逃げようとしたら焼き殺します。俺の魔法の練習です』


『・・・・わ 分かった』



俺は盗賊を数珠繋ぎにし、馬車の後ろへロープで括りつけ歩かす。再び馬車はアラガスに向け歩みだす。



『ふ~ うまくいったわね』


『うん、でも10人ぐらい居たらヤバかったね』


『うふふ 貴方達、強かったわよ』


『1つ良いこと教えて上げる、ミュウちゃんはあれだけ炎が使えるなら<ファイアウォール>を練習しなさい、文字どおり炎の壁よ、敵を分断するにも使えるし防御・包囲・逃走にも役立つわ』


『そしてクオン君、貴方の戦法はかわし難いけど力が乗りにくい持ち方よ、力を込めるときはもっと独楽のように回転力を使いなさい。手で斬るんじゃないの肘で斬るのよ』


『貴方達なら、あの程度の盗賊10人ぐらい楽勝よ♪』



俺達はあれだけの戦闘で、ここまで的確な指示が出来ることにロアさんが只者では無いことが分かった。



『『ご指導ありがとうございます』』


『んふふ ロアお姉さん、何者なの?』


『あら、新人に優しい冒険者よ うふふ』


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