第110話 ユニークスキル【〇】
『ふむ<ルーム>!!!』
ベクターさんが<ルーム>と唱えると目の前にゲートが現れる、どうやら<刻印>が成功したようだ。
『どうぞ入ってみてください、ロアさんも念のため試してください』
『分かったわ<ルーム>!!!』
ロアさんも問題なくゲートが出現し<刻印>が成功したことが分かる。
『では、二人共入ってください』
『なんか怖いわね・・・』
『あはは 楽しみだよ行こうかロア』
『分かりましたベクター様』
ベクターさんとロアさんは<ルーム>のゲートを潜りサークルの世界に足を踏み入れる。
『『なっ 』』
『し 信じられん、あれから数日しかたってないのに、あの巨大な城は?』
『うわ~ 凄いわ・・・なんなのあれは?』
『んふふ あれが私達の本部よ♪』
『頑張って作ったニャ』
『『・・・・・・・』』
『全く恐ろしい能力だな、あんな城を短期間で作ってしまうとは』
『手作りなの?嘘でしょ?』
『大変だったんですよ、でも妥協無しで作ったので楽しかったです』
『さあ、行きましょうか』
俺達はベクターさん達を連れて、巨大な門から庭に入りゆっくりと進みながら城へ入る。
『全く持って素晴らしい、私でもこんなに豪華な城は見た事ないよ』
『君達、実は王族って落ちは無いよね?』
『んふふ クオンがここのデザインをササッと書いちゃったのよ、それをロックが実際に建設したのよ、勿論私達全員で作ったんだけどね』
『リーダーここのデザイン1分ほどで書いちゃったんですけど、どう思います?』
『『・・・・・・・人外だな』』
『・・・どんどん俺が誤解されていくような』
『『『『『『『あはは!!!』』』』』』』
『とりあえず食事をしながら今後の話をしましょうか』
『どうぞ、こちらですわ』
大食堂は広すぎるので俺達用に作った食堂へ案内し海から取って来た魚料理を出すことにした。
ベクターさん達よりムーアの方が大喜びしているんだが。
『次は部屋に案内しますね、どの部屋でも良いんですが一応選んだので案内しますね』
『ベクターさんとロアさん隣通しの部屋にしました、勿論<錬金術>用の部屋も用意しています』
『ははは、言葉もないよ』
『冗談でしょ?まさか私の部屋も同じような感じなの?』
『あはは ちょっと本気で作りすぎちゃって・・・』
『私の屋敷よりこの部屋の方が広そうだね』
『呆れた君達、飛んでもない技術もあるのね』
『では、そろそろクランの話をしても良いですか?』
『どこまで話をしてくれる気なのかな?』
『俺達の全てです、でも安心してください、ベクターさんとロアさんが秘密を漏らすような事があるとは思えませんが、ウッカリだったとしても他の人に話せない様に制限を掛ける事も出来ます』
『どうするかはベクターさん達にお任せしますよ』
『もし、自白剤や洗脳系ならどうなるの?』
『俺達のスキルで<状態異常無効>を付与しようと思ってますから、その心配はありません』
『なんとも凄まじいスキルだな』
『本当に全部聞くのが怖いくらい』
『俺達もメンバー以外に言うのは初めてですよ、俺達6人が信用した初めての人物がベクターさんとロアさんってことになりますね』
『光栄だね心して聞くよ』
『私も、信用には答えるわ』
俺はユニークスキル【プラス】の事から丁寧に時間を掛けて説明をした。ベクターさんとロアさんは終始真剣に聞いてくれた。
『ふ~ 驚きのあまり汗が止まらないよ』
『ユニークスキルの能力は知っていたが、潜在能力の開眼で飛んでもない事になっているね』
『本当に恐ろしいまでの能力ね。君達が本気になれば世界征服も可能なほどに・・・』
『正直に言うと俺でもまだ完全には把握してません、強さについてもまだまだです』
『ですが、少しずつ頑張っています』
『これだけの能力を手にしておいて、その油断のなさも恐ろしいよ』
『ワシ等も、それには驚くばかりだ』
『でもリーダーのお陰で己惚れる暇がありませんね』
『ニャハハ でも<状態異常無効>の時は死にそうな目にあったニャ』
『<加減之極意>も厳しかったです』
『そうよね君達は、その凄まじいスキルを簡単に手に入れた訳じゃないものね、ごめんなさい少し誤解してたわ』
『普通君ぐらいの年なら、その凄まじいまでの能力の溺れて天狗になるもんなんだがね』
『クオン君の訓練プランも実に見事だ、これからは私も及ばずながら協力したいと思う』
『では、そろそろクランに入って貰っても良いでしょうか?』
『ああ、これから宜しく頼んだよ』
『うふふ これから宜しくね♪』
その時、<神の声>が響き渡る!!!
【オルラット・ベクターのクラン登録を確認しました。】
【シャルル・ロアのクラン登録を確認しました。】
『えっ』
『むっ』
【ユニークスキル<〇>が発動されます。】
閃光のような輝きがひと際強く輝き、徐々に弱くなり2人の左手の甲に円形のマークのようなものが、ゆっくりと点滅している。
『声が言葉が、頭に直接語り掛けてくる』
【ユニークスキル<〇>が発動されました。】
【ユニークスキル<〇>が発動に伴いクランスキルが発生しました。】
【クランスキル<クラントーク>が発生しました。】
【クランスキル<指名トーク>が発生しました。】
【クランスキル<ステータス+α>が発生しました。】
【クランスキル<スキル付与>が発生しました。】
声が治まり二人の左手の甲に浮き出ていた円形のマークも消えていく。
『うふふ 何か不思議な感覚だわ』
『驚いた、クランメンバーにもユニークスキルの恩恵が入るのか』
『俺達もベクターさん達が初めてのクランメンバーなんで、詳しい事は分からないんですが説明していきますね』
俺は<クラントーク>と<指名トーク>は<鑑定>しなくても大体分かるので機能説明をした。
『これで君達と、いつでも連絡が取れるようになったわけだね、なんて便利な』
『ユニークスキルって飛んでもないわね』
『次に<ステータス+α>なんですが俺達も初めてなんで<鑑定>しますね』
【アンサー クランスキル<ステータス+α>:クランメンバーにサークルの約1/10に当たるステータスが加算される能力。なお、逆の場合も同じ効果を得る。】
『なるほどHPに例えたら俺達のHPが1600ほどあるので160ぐらいベクターさん達に加算される計算になりますね』
『・・・クオン君簡単に言うが、凄い事だよ君達が強くなれば私達も強くなるわけだ』
『逆に言えばクランメンバーが強く成れば、君達も強くなるわけね』
『まあ、俺達はクランメンバーをそんなに増やすつもりはないのですが』
『次に<スキル付与>を<鑑定>しますね』
【アンサー クランスキル<スキル付与>:クランメンバーにサークルのスキルを付与できる能力。初期は3つ付与でき、なんらかの条件によりスキルが上がると付与数が増える。】
『今は3つですが、何れ増えていくみたいですね』
『いやはや、君達のユニークパーティスキルほどではないにせよ、なんとも凄まじい能力だ』
『これってユニークスキルの中でも特別な様な気がするわね』
『これで俺達のスキルを3つ付与出来るようになったんですが、<状態異常無効>は決定として希望はありますか?』
『ふむ、任せるよ』
『私も任せるわ』
『分かりました、ちょっと待って下さいね』
俺は現在取得しているスキルからベクターさんとロアさんに合いそうなスキルを考えた結果、特殊スキル<状態異常無効><身体強化+10><刻印>の3つを選んだ。
流石にユニークパーティスキルやパーティスキルは付与出来なかった。
付与出来たかどうか<鑑定>してみることにする。
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【ステータス】
名前:ベクター
LV:10
種族:ヒューマン
HP:60/60
MP:60/60
攻撃:49
防御:46
敏捷:56
器用:128
魔力:51
精神:56
潜在能力:<真偽>
クランスキル:<クラントーク><指名トーク><ステータス+α><スキル付与>
特殊スキル:<真偽眼><錬金術+10><付与術+10><身体強化+10><刻印>
耐性スキル:<状態異常無効>
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【ステータス】
名前:シャルル・ロア
LV:25
種族:ヒューマン
HP:210/210
MP:250/250
攻撃:124
防御:110
敏捷:126
器用:139
魔力:149
精神:148
潜在能力:<魔力>
クランスキル:<クラントーク><指名トーク><ステータス+α><スキル付与>
戦闘スキル:<短剣+3><両手棍+8>
特殊スキル:<消費魔力減少+10><裁縫術+5><料理術+6><身体強化+10><魔力感知+10><刻印>
耐性スキル:<状態異常無効>
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【サークルが特殊スキル<真偽眼>を習得しました。】
【サークルが特殊スキル<消費魔力減少+10>を習得しました。】
『『『『『あっ!!!』』』』』
『んっ どうしたのかね?』
『すみませんベクターさん、お二人に<状態異常無効><身体強化><刻印>を付与したのですが確認のため<鑑定>したらお二人のスキルをコピーしてしまったようで』
『ああ、なるほど<スキルハンター>だったか。全然構わんよ』
『うふふ けど便利な能力ね、怖いぐらいだわ』
『その3つのスキルにしたのは理由があるのかしら?』
『はい、<状態異常無効>と<身体強化>は安全の為ですが<刻印>は今俺が考えていることを相談しようかと思ったんですよ』
『・・・ロア姉さん、こういう時のクオンは飛んでもない事考えているときよ』
『また理解を超える事なんだろうな・・・』
『僕は怖いぐらいですよ』
『ニャハハ 楽しみニャ』
『クフフ 素敵ですわ』
『あはは 大した信頼だな』
『・・・どんどん誤解されていってますね』
『一応どんなことか聞いても良いかね?』
『はい、ベクターさんには魔物の肉を摂取したときの効果を丸薬に出来ないか、また<刻印>を使ってマジックアイテムを作れないか相談したくて』
『ロアさんには、<刻印>を使って魔導書を作れないか相談したいですね』
『『『『『『『・・・・・・・・・・・・・』』』』』』』
『なるほどね、君達の言う事が分かったわ、夢のような事をサラっと言うのね』
『また、恐ろしい事を思いつくね・・・』
『あはは 面白そうでしょ?』
『君達、本当に今まで苦労してきたのね・・・魔導書を作るなんて発想が飛びすぎてるわ』
『ロアお姉さん、理解してくれて嬉しいわ、でもそれが実現するのよ』
『サークルの世界を作るって初めて聞いたときは驚いたしな』
『本部まで城になっちゃいましたしね・・・』
『ニャハハ 高い確率で魔導書も作れるって事ニャ』
『クフフ 少なくとも私達は疑う事すら出来ませんわ』
『いや、参ったよ本当の意味での大した信頼だ』
『私も、やりがいが出て来たよ』
『私の様な凡才が魔導書作りに携われるなんて光栄だわ、うふふ楽しみになってきたわ』
『でも、ロア姉さんには、まず私達の魔法の構成について相談したいんです』
『確かに君達の全属性魔法には驚いたけど、アドバイスしたい事が沢山あるわね、お姉さんに任せなさい♪』
『んふふ ありがとう』
『ベクターさんの潜在能力<真偽>ですか、<真偽眼>のスキルをコピーしたんですが名前のとおりの能力ですか?』
『ああ、これからは君達も他者の嘘が分かるようになるよ』
『んふふ 元々ベクターさんには嘘がつけなかったんですね』
『しかし、他者の嘘が分かるのも良い事ばかりじゃないよ重宝しているがね』
『俺には分かるような気がしますね』
『ロア姉さんの潜在能力も凄いわね<魔力>なんて』
『ええ、<消費魔力減少+10>のお陰で魔法をより多く撃てるので重宝してるわ』
『さて、今日言いたい事は全て伝えたので次に行きましょうか』
『まだ何かあるのかね?流石に私も少し頭の中を整理したいのだが』
『なら丁度良いですよ』
俺達は、ベクターさん達を連れて屋上に作った温泉に行くことにする、いよいよ俺の野望の1つ温泉の開通だ。
ダンジョンコアは屋上に神殿の様な部屋を作りそこへ移してある。俺達6人はまずそこへ向かい源泉と月を作る事にした。
今回ダンジョンコアにレベルアップ用に用意したオーク300匹分の魔石とオークキングの魔石まで捧げたところ、かなりダンジョンコアが大きくなったが、フィールド操作は源泉と月の2段階しか更新出来なかったためだ。
まず月を作ることにしたが、まだ暗くなるには時間があるため確認は出来ないが、この異世界にあっても月が存在するため全員でイメージするのは容易に出来た。
源泉を作るに当たっては城の地下へ作る様イメージし、既に配管は温度調節を兼ねて張り巡らしてある。次に大事な効能にあっては疲労回復と美肌効果を重視し作ることにした。
皆には事前に説明してあったので、筒がなくイメージを統一し源泉が出来上がった。
地下の源泉から温泉が噴き出し、高台に作った全方位を見渡せる湯舟に並々と注がれると、そこから全ての湯舟に次々と満たされていった。
俺達6人は、ハイタッチして喜びを分かち合う。
『『・・・・・・・・・・・・・・・・・』』
『これは風呂なのか?まさか、ここまで大規模に作るとは恐れ入るね』
『うふふ 一緒に入るのかな~?』
『ニャハハ ちゃんと水着を用意してるニャ』
『んふふ これはクオンの野望の1つだったのよ』
『あはは これは俺も全力で作ったんで是非試してください』
ムーアが事前に作ってくれていた水着を全員に渡して脱衣所に行って着替えて貰うことにした。
一応水着を着て貰っているがバスタオルも渡して、巻いて貰うことにした、そこまでして貰わないと俺が照れそうだし対策は万全だ!
男性陣についても水着の上からタオルを腰巻にして貰い女性陣を待っていると、少し遅れて全員脱衣所から出て来た。
『ブッ ロアさん、ちゃんとバスタオルも巻いて下さい』
『うふふ ちゃんと水着着てるんだから良いでしょ?』
『ニャハハ 男性陣が困ってるニャ』
『も~ ロア姉さん、ちゃんとバスタオル巻いてって言ったのに』
『分かったわよ、ちゃんと巻きます~ 』
ムーアの作った水着がせめてワンピース系なら良かったんだが、一応風呂用なのでマイクロビキニだったため視線が泳いでしまった、見事と言って良いほどの双丘から縊れた腰、抜群のスタイルなためベクターさんまで慌てたぐらいだ。
俺は落ち着きを取り戻し、まず高台に作った全方位が見渡せる風呂へ案内し入って貰う。
『ふ~ これは素晴らしい!湯舟から上に何もないため絶景が楽しめるようになっているのか』
『凄い景色ね、それに丁度良い湯加減で何て気持ち良いの、最高に贅沢だわ』
『ニャー 広いニャー 気持ち良いニャーーーー』
『ブハー これは極楽だな、フハハ最高の気分だ!』
『んふふ 最高ねクオンの野望だったのも分かるわ』
『クフフ なんて気持ち良いのかしら素敵ですわ♪』
『うわ~ 僕なんかが、こんなにも素晴らしいお風呂に入ってて良いんでしょうか?』
『あはは ロック俺達で作ったんだ、誰にも遠慮する必要もない俺達6人の世界であり6人だけの本部だ!』
『しかし、日頃の疲れも吹き飛ぶぐらい気持ちが良い、ありがとうクオン君最高の気分だよ』
『んふふ ロア姉さん、このお湯は、美肌効果もあるのよ♪』
『なっ ちょっとそういう大事な事は早く言いなさいよ、どこまで最高なお風呂なの?』
『クフフ リーダーは女殺しです♪』
『おいおい、また猛烈な誤解だ!ちゃんと疲労回復も付けただろ?』
『ニャハハ でももうお肌がツヤツヤニャ』
『えっ ちょっと待って、本当にツヤツヤになってる~~~~~~~~やだっ もう最高♪』
『あはは しかしこの間のワインも最高だった。クオン君は親父殺しでもあるな』
『まあ、喜んでくれれば俺も嬉しいですよ、でもこの温泉は我ながら最高だ作って良かった』
『そうだ、キンキンに冷えたエールも用意しました飲んでください』
俺は木製のお盆を湯舟に浮かして全員にエールを配り乾杯した。
『プハー これはたまらんな、病み付きになりそうだ』
『あはは 僕も最高に美味しいです、お風呂で飲むエールがこんなに良いなんて』
『景色も、お風呂も、エールも最高!』
俺達はお風呂を堪能してから、ホロ酔い気分でムーアに作って貰った浴衣へ着替えベクターさん達には部屋で寛いで貰った。
ちなみに<ルーム>に作ったサークルの世界はダンジョン扱いなので<ダンジョンワープ>で移動も出来る事が分かり、この広い城の中も更に快適になった。
『ニャハハ すっごい便利ニャ、スレイプニルのフラッ君達の所にも<ダンジョンワープ>で直ぐに行けるニャ』
『それに此処なら<ウィング>も気兼ねなく使えるから、いつでも練習出来るわね』
ベクターさん達に予定を聞いたところ、しばらく何もないそうなので一度家へ戻り護衛の方に数日の間留守にすることを伝え、此処に来てくれるらしい。
俺達も丸薬や魔導書の作成を相談するため明日から共に行動することにした。
それに、いよいよ俺はずっとやりたかった本来の目的を実施することにした。
そのため明日から畑を作る事にした、そう俺はまず醤油を作る!この異世界に来るときに爺ちゃんが持たせてくれた各種野菜から果物の種には大豆もあるため、いつか作ろうと<アイテムBOX>に仕舞っておいた。
その事についてメンバーにも伝えておくことにする。
『えと皆に聞いて貰いたいんだが、このサークルの世界を作った本来の目的をそろそろ実行したいと思うんだ』
『ゴクッ また壮大な話なんですね、もう僕は聞くのが怖いですよ』
『クオンがずっと言ってた本来の目的ってやつよね?』
『次は世界征服か?』
『覚悟は出来てるニャ』
『クフフ 体が震えますわ♪』
『なっ 何なの?また飛んでもない話なの?』
『只事じゃなさそうだね・・・』
『俺は明日から野菜や果物を作り、それから調味料を作る!!!!!』
『ようやく誰にもじゃまされない畑が作れるようになったしね、待ちわびたよ』
『『『『『『『えっ 』』』』』』』
『ちょっと待って食材の為に、この世界を作ったの?』
『ああ、そのとおりだ!種が少ないので、とてもじゃないが外の世界で作る気になれなかったんだよ』
『でも此処でなら何の心配もなく畑を作れるし、天候にも左右されない理想の環境だ』
『・・・あの私が言うのもなんだけど皆絶句してるわよ?』
『あはは こりゃー良いクオン君は食材の為に世界から作ったんだね』
『ええ俺はずっと我慢してきましたが、ようやく足掛かりが出来ました、これから作る予定の野菜から調味料が出来れば、やっと本気で料理が作れる』
『リーダーがそこまで言うってことは、また飛んでもない料理なのね』
『前から思っていたが、その食への情熱は凄まじいものがあるな・・・』
『でも今までの料理が本気じゃないって、飛んでもないニャ』
『流石リーダーです、僕達とはスケールが違いますね』
『クフフ 誰にも想像が付かない行動力、相変わらず魅力的ですわ』
『丁度良いニャ、シロ用の魔草も作るニャ』
『モキュモキュ♪』
『それならアドちゃんも手伝ってくれたら捗りそうね』
ドライアドのアドちゃんも、任せてって言うように俺の周りをフヨフヨと飛んでアピールしてくれている。
『そういえばアドちゃんは普段何を食べてるんだ?』
『なんか基本なにも食べなくても良いみたいなんだけど、フルーツ類は喜んで食べてくれるわ』
『あらハチミツキャンディーも舐めてたわよ』
『あはは 甘い物も好きなのかな?』
アドちゃんは、とっても良い笑顔で俺の肩へ座って頷いている。
『よし、なら俺のとっておきのやつ作るよ、楽しみにしてて』
アドちゃんは両手を口に持っていきプルプルしながら喜んでくれているようだ。その仕草が可愛くて皆ほっこりとした気分になる。
『ニャアア なんかシロの様子が変ニャ』
『モキュー モキュキュ』
シロは何故かジタバタした後、糸を吐きだし瞬く間に繭を形成し真ん丸の繭玉になった。
『ニャー どうしたんニャ』
『ひょっとしたらシロって、まだ子供だったんじゃないか?』
『えっ どういうことなの?』
『ふむ、先ほどから見ていたが私の経験から言うと妖精の子供のようだね、心配しなくても羽化するんじゃないかな?』
『シロって妖精だったんニャー』
『どうやら心配はなさそうだねムーア様子を見ようか』
『分かったニャー、でも吃驚したニャ』
突然の事で皆が慌てたが、心配することはないようなのでベクターさん達は一度家へ帰り、明日からしばらく此処で生活してくれるようだ。
ベクターさんが<ルーム>を開いてみると無事家に繋がっていたため<刻印>の方も安心して使えそうだ。
俺達も食事を取った後、部屋で休む事にして眠りにつく。
朝目が覚めると、心地よいベッドのお陰で気分良く起きれた、リビングへ行こうかとしたところムーアから<パーティトーク>が掛かる。
<大変ニャー、皆リビングへ来て欲しいニャー>
<どうしたんだムーア?>
<シロの繭玉が割れてきたニャー>
<分かった直ぐ行くよ>
どうやらシロが羽化するみたいだ、俺は<ダンジョンワープ>を使うのも忘れてリビングへ向かうとムーアの話のとおり繭にヒビが入っており今にも割れそうだった。
しばらくすると寝起きの悪いロックも駆けつけ、全員でシロを見ていると、いきなり繭がパカッと割れて中からモンシロチョウのような白い羽をパタパタと動かし、小さな女の子がひょっこり出て来た。
大きさはアドちゃんと同じぐらいで白いワンピースの様な服を着ていて、とても可愛らしい。
どうやらシロは蝶々の妖精だったようだ、とっても良い笑顔でキョロキョロと辺りを見渡しパタパタと飛んでムーアの頭へ座る。
『ニャハハ シロが蝶々になったニャ』
『んふふ とっても可愛いわ♪』
羽化したシロを皆で眺めていると、突然<神の声>が鳴り響く。
【ユニークパーティスキル<能力開眼>発動によりシロの潜在能力<魔糸>が開眼されました。】
【シロが特殊スキル<属性魔糸>を取得しました。】
【ユニークパーティスキル<能力開眼>発動によりアドちゃんの潜在能力<植物>が開眼されました。】
【アドちゃんが特殊スキル<種生成>を取得しました。】
『どういう事だ?』
『私も分からないけど、なんらかの条件を満たしたんじゃないかな?』
『俺も推測の域を出ないけど、シロはまだ妖精に成り切れてなくて潜在能力が確定してなかったんじゃないかな』
『それが羽化して大人になったから、<能力開眼>が発動した』
『アドちゃんも<能力開眼>したことから、おそらく条件に単体以上ってのがあると考えたら納得できる』
『【プラス】の能力から考えても、出会いが力になるって訳ね』
『まだまだ、僕達にも分からない能力ですね』
『ニャハハ モキュモキュしてるシロも可愛かったけど、今のシロも可愛いニャ』
『んふふ アドちゃんはフヨフヨと飛ぶけどシロはパタパタって飛ぶのね可愛いわ』
『新たに覚えたスキルも凄そうだな?』
『ニャハハ どんな糸になるか楽しみニャー』
『アドちゃんの新たなスキルもクオンの役に立ちそうね』
『ああ、<鑑定>してみるよ』
【アンサー <属性魔糸>:各属性の能力を有した魔力糸を生成できる能力。】
【アンサー <種生成>:一度把握した植物の種を生成できる能力。】
『想像以上に有用なスキルだな、嬉しくなるよ』
『あたいも楽しみが増えたニャー』