第106話 スタンピート
俺達は、イリカさんを連れて町を出る。
『ミュウお願い、急ぎたいの馬車かなにか借りてくれない?』
『分かってるわ、もう少し人気のない所まで待って』
『・・・ごめんミュウ何を言ってるか分からないわ』
『もう少ししたら分かるわ、それよりも1つ約束して』
『私達の事で知り得た事は、絶対に秘密にして!出来る?』
『秘密って何なの?』
『良いから約束して、それが出来ないなら連れていけなくなるわ』
『分かったわ、絶対に誰にも言わない。これで良い?』
『イリカ約束よ、この約束を破ったら、貴方でも只じゃすまないわよ』
『ちょっと脅さないでよ、ミュウ貴方変わったわね』
『んふふ そうかな?』
『自分で気付いてないの?あんなに自信なさげでオドオドしていたのに、今は何か生き生きとしているわ何があったの?』
『そっか、昔の私はオドオドしてたのか・・・そうかもね、でもね私は最高の仲間に出会えたのよ』
『ふ~ん、それがサークルなのね・・・でもBランクのパーティに入れて貰えるなんて、ねえミュウの彼氏がクオン君なの?』
『ブッ ちょ ちょっと!何言い出すのよ』
『だって彼女でもないかぎり、<ヒール>しか出来ない子をパーティに入れてくれる訳ないじゃない?』
『『『『『あははははははは』』』』』
『ちょっと、皆笑う事ないでしょ』
『フハハ すまんな。しかしミュウ本当に昔は弱かったんだな』
『ニャハハ サークルの魔女が面白いニャ』
『誰が、魔女よ』
『クフフ それピッタリのあだ名ですわ♪』
『サークルの魔獣使いでも・・・』
『ロック後で頬っぺた引っ張るわよ』
『ま 待ってください冗談ですよ』
『あはは ミュウの弱かった時なんて俺しか知らないから仕方ないよ』
『うふふ ミュウ本当に良い仲間に出会えたようね、楽しそうだわ♪』
『えへへ も~ 照れるでしょー 』
『さあ、ここらで良いだろう』
俺は馬車を出して<ルーム>からフラッ君達を呼んだ。
『えっ ええっ どこから出したの?』
『んふふ さあ乗ってイリカ』
『ちょっとミュウ説明なさいよ』
いきなり現れた馬車に驚愕していたイリカさんを無理やり馬車の中に入れ、ミュウの村を目指して出発する。
馬車の中へ入ったイリカさんは、アゴが外れそうなほど大きく開いたまま固まっている。
しばらくして、正気に戻ったのか凄い剣幕でミュウに問いただす。
『ミュウ此処は何処なの?何故部屋にいるの?急いで村へ戻らないといけないのよ?ねえ早く答えて』
『イリカ落ち着きなさいよ、心配しなくても此処は馬車の中よ、ちゃんと村へ向かってるわ』
『なっ えっ どこが馬車の中なのよ』
『だから此処がそうだって』
『信じられないわ、それを信じるとしても、いつになったら走り出すのよ急いでいるのよ』
『だから、もう走ってるってば!クオン御者に行かせて良いかな?信じて貰えなくて』
『ああ良いよ、二人座れるし』
馬車の入口とは別に、御者の席にも中から自由に行き来、出来るように作ってあるのでイリカさんを俺の隣に誘導し座って貰う。
『う ウソ・・・なんてスピード、何故こんなに揺れないの?』
『それよりせっかく御者席に来たんだ景色でも見て行きなよ』
イリカさんは、まだ信じられないようのか後ろの馬車や景色をキョロキョロ見ている。やがて何かを諦めたかのように溜息を洩らし此方を見ている。
『ねえ、貴方達は何者なの?』
『只の冒険者だよ』
『・・・これも秘密の内なのね』
『あはは そうだね』
『質問を変えるわ、あの子、貴方達の足を引っ張ってない?もしそうなら、もう少し我慢して上げてミュウは、凄く良い子だし努力家なの、きっといつか役に立つと思うわ』
『君は、ミュウの良い理解者みたいだね嬉しいよ。でも、心配しなくても良いよミュウは既にサークルにとって掛け替えのない人物だから』
『そう安心したわ、ずっと心配だったの』
『それに君は勘違いしてるよ、今のミュウは魔導士なんてもんじゃない、そうさっき冗談で言っていた魔女と呼んでも良いぐらいだよ、勿論良い意味でね』
『俺達は、全員ミュウから魔法を教えて貰ってるんだ』
『そ そんなあの子は、<ヒール>1回しか出来なかったのよ、それに攻撃魔法もほとんど出来ないわ』
『俺の訓練、いや修行と言った方が良いかもしれないが、とっても厳しいんだけど全員文句も言わずに付いてきてくれている』
『今のミュウは、君の知っているミュウじゃないよ』
『そう、そうよね強くなっていなければBランクのパーティに入れる筈ないわ、あの子も頑張ったのね』
イリカさんは、少し嬉しそうに涙目になっている。
『クオン!イリカに変な事言ってないでしょうね?』
『ちょっとだけだよ♪』
『えっ ちょっと恥ずかしいんだから』
『あはは ミュウ久しぶりに話をしたいわ、今までどんなことやってきたの?』
『そうね、簡単に言えばクオンに会ってから驚きの連続だったわ、言っても信じられないくらいのね』
『そっかやっぱりクオン君が彼氏なのね』
『そ そんな事、一言も言ってないでしょ?』
『あら?じゃあ、まだなのね?』
『そーよ、まだよ』
『あっ まだってそういう意味じゃなくて、あわわ』
ミュウの失言に俺まで顔が真っ赤になるのが分かる。
『ふ~ん、まだなんだ うふふ 頑張ってねミュウ』
『も~ イリカ~ 私を、からかっている場合じゃないでしょ』
『もう駄目クオンと話させないわ、中へ入りなさい』
『うふふ クオンさんありがとう、またね』
イリカさんはミュウに連れられて馬車の中へ入っていく、入れ替わりにオーラが御者を代わってくれたので俺も馬車の中へ入る。
『ところで、スタンピートの事を詳しく聞いて良いかな』
『ええ、最初は数匹いるだけだったから村の皆で討伐出来ていたの』
『それが日に日に数が増えてきて、援軍を呼びに行こうとしても既に村が囲まれていて逃げれない状態になってたの』
『それでも村の中でも足の速い人だけで、援軍を呼びに行こうって話になって運よく私だけがオークの囲いを抜けれたのよ』
『オークに捕まった人がいるの?』
『いいえ、捕まりそうになった者もいたけど、村の皆で阻止したわ』
『幸い私の村には弓の名手が多いから、今まで何とか持ちこたえたのよ』
『村を囲んで確実に落とせるまで待つなんて、オークキングがいるかもしれないわね』
『ちょっとライカそれ本当なの?』
『元々オークに村を囲むなんて知恵はないわ、そう考えると可能性が高いわね』
『それで村人は、何人ぐらい居るのかな?』
『今は、200人ぐらいよ』
『分かった』
俺達は、既に<マップ>&<サーチ>で村の状況を調べていたが、その情報と全て合致した。
イリカさんが言っていたオークの数は、残念ながら数十ではなく3百匹ぐらい居そうだ。
幸い、未だに村に集結中で襲われていない、どうやら俺達も間に合いそうだ。
勿論、この情報はイリカさんに伝えるのは、どうかと思うが村へ着けば分かる事だし伝えるか。
『イリカさん、落ち着いて聞いて欲しいんだが良いかな?』
『は はい』
『俺達は、気配を感じ取るスキルがあるんだが、それによると現時点で村は無事だ、それは安心して良い』
『よ 良かった』
『しかし、オークは約3百匹いると思う』
『さ 三百ですって、そ それじゃ村は・・・』
『オーラ少しフラッ君に任せて来てくれないか』
『分かった』
『ワシを呼ぶってことは作戦の説明か』
『イリカさん、信じられないかもしれないが落ち着いて聞いといてくれ』
『村人は、約200人だ対してオークは約三百匹』
『大した数が集まったな』
『うん、そこで作戦なんだが、まず村全体を覆う<ライトシールド>を張ろうと思う、これは6人で村の要所に付き分担でやろう』
『ちょっと待って、村の周りを紙に書くわ』
『っと、大体こんな感じね』
『ありがとう、オークの分布も書くと、こんな感じだな』
『ふむ、見事に囲まれているな正面に多く集まっているか』
『私が正面を担当するわ』
『分かった、他は均等に散らばろう』
『ちょっとまって魔物が多いなら、どうして一番強い人を配置しないの?』
『ちゃんと一番強い人を配置してるニャ』
『そうですね魔法ならミュウが一番です』
『なっ』
『イリカありがとう、でも信じて私の村だもの頑張るわ』
『ミュウ本当に強くなったの?信じて良いの?』
『ええ、任せて』
『じゃ続きを言うぞ、村全体に<ライトシールド>を張ったら、担当した場所のオークを各個撃破だ』
『大体1人50匹ってとこだな』
『そう考えると少ないですね』
『ロック油断は禁物だぞ』
『はい、すみませんでした』
『とはいえ俺達なら問題ないと思うが、おそらくオークキングが居る筈だ』
『オークキングだけは、皆マークするようにしてくれ』
『『『『『了解!!!』』』』』
『もうすぐ、馬車を下りて徒歩でオークの囲いを抜け村へ入る、イリカさんは俺が連れていくよ』
『クオン、イリカの変なとこ触っちゃ駄目よ』
『人聞きが悪いぞミュウ』
『『『『『あはははは』』』』』
『・・・・貴方達、本気で1人50匹相手する気なの?正気?』
『イリカ・・・気持ちは分かるけど、もうすぐ分かるわ信じて付いてきて』
『ミュウ悪いけど、信じろって方が無理があると思わない?』
『・・・思うわ、でも見てて』
『わ 分かったわよ』
『少し待っててくれギルドへ連絡しとくよ』
俺は、エイトールさんから預かった通信用オーブに魔力を流しギルドマスターを呼び出す、すると手の平に包み込めるほどのオーブにギルドマスターの顔が映し出される。
『待ってたぞクオン、状況が分かったか?』
『お待たせしました、状況を説明しますオークの数は約3百匹、その内オークキングが居ると思われます』
『そうか思ったより多いな、倒したオークはそのまま放置しといてくれ辻褄合わせがいるだろうから明日の朝には、冒険者を集め出発出来ると思う』
『分かりました、すみませんね無理を言って』
『あはは なーに労せずオーク3百匹が手に入るんだ、こっちも十分利益が出るよ』
『あっ そーだ魔石だけは頂けますか?』
『おいおい、それだけで良いのか?』
『勿論、今回はミュウの村なので無償でも、やることに変わりはありませんしね』
『分かった、事後処理は任せろ只、少しは手加減しろよ』
『あはは 分かってますよ、では』
ギルドマスターとの連絡も終わり、オーブを収納してから皆に伝える。
『皆聞いてのとおりだ、出来るだけオークの原型を残して倒してくれ』
『やれやれ、オーク3百匹も居るのに全力では出来んのか』
『全くですわ』
『オーラ、ライカ仕方ないだろ?』
『分かってますわ』
『・・・貴方達の会話を聞いていると頭痛がしてくるわ』
『イリカ大丈夫?』
『よし、そろそろ下りるぞ』
俺達は、村を囲んでいるオークの手前で馬車を下り、とりあえず村の中へ入ることにする。
『では、これからオークの囲いを突破し、それぞれ配置についてくれ』
『『『『『了解!!!』』』』』
『イリカさん、すまないが村まで連れて行くので抱っこするよ』
『えっ きゃっ 』
俺は、グズグズしてたら照れそうなので、素早くイリカさんをお姫様抱っこして表情を崩さないように努めた。
『行くぞ』
『『『『『了解!!!』』』』』
『な なんなの?私を抱っこしているのに、このスピードはなに?いつの間にオークの囲いを抜けたの?空を走ってる?まさか、もう駄目、理解が追い付かないわ』
『さっ 着いたよイリカさん』
『あ ありがとう』
『い イリカ、イリカなのか』
『俺達は配置に付く、イリカさん村の人達に説明しといてくれる?』
『わ 分かったわ』
俺達は作戦通り、それぞれが配置について<ライトシールド>の準備をする。
<パーティトーク>オン
<皆は配置に付いたかな?>
<<<<<いつでも>>>>>
<では、ミュウから時計回りに俺、ロック、ムーア、オーラ、ライカの順番で<ライトシールド>を張るよシンクロに気を付けて>
<ミュウよ行くわね<ライトシールド>!!!>
<クオンだ<ライトシールド>!!!>
<ロックです<ライトシールド>!!!>
<ムーアニャ<ライトシールド>!!!>
<オーラだ<ライトシールド>!!!>
<ライカよ<ライトシールド>!!!>
<よし、準備は整った各個撃破だ>
<<<<<了解!!!>>>>>
◇ ◇ ◇
<イリカ視点>
『イリカさっきの人は、なんなんだいきなり現れたぞ』
『さっきの人は援軍よ、私が<エンゲルラント>から来てもらったの』
『ミュウもいたぞ、ミュウも連れて来たのか』
『そうよ、私が連れて来たパーティの一員だったの』
『イリカ何故連れて来た?何故わざわざ死地に同胞を連れて来たのだ?』
『言いたい事は分かるけど、仕方なかったのよ、本人が任せてって言うんだから』
『話は、後だイリカお前が責任を持ってミュウを守れよ』
『分かってるわ』
ミュウ・・・確か村の正面に行くって言ってたわよね、急がなくちゃ。
えっ なにっ?村が半透明な光に包まれている、これが作戦の時に言ってたシールドなの?
村全体に、冗談でしょ?こんなに広範囲のシールドなんて、どれだけの魔力がいるか・・・
まさか・・・まさか・・・あの作戦、本当に本気だったの?
い 居たミュウ無事だったのね、良かった。
う ウソっ ミュウがシールドの外に居る・・・
『ミュウなにやってるの、早く村の中へ入って』
『ミュウ、ミュウなの?なにしてるの早く早く村へ入って』
『イリカ、お お母さん、久しぶりね、大丈夫よ見てて、私がどれだけ強くなったか』
『ミュウお願い、早く逃げてミュウーーーーーーーー』
隣で久しぶりに会うであろうミュウのお母さんが絶叫している、無理もない久しぶりに見る娘が3百匹もいるオークの群れの前で佇んでいるのだから。
私が何としても村へ連れ戻さなきゃ・・・
私は村の入口にある柵越しにミュウを見ると、見たこともない青い半透明なムチを螺旋に動かし構えているミュウの姿が映し出される。
き 綺麗・・・なんて幻想的な、まるでこの世の者とは思えない美しい光景に只々驚く。
ミュウ?本当にミュウなの?つ ついにオークの進行が始まった目の前には数十を超えるオークの群れが今にもミュウに襲い掛からんとしている。
ミュウもゆっくりと動かしていたムチを襲い来るオークへ振り下ろした。
『<ソニックブレード>!!!』
『『えっ 』』
な なにが起こったの迫りくるオークの群れが倒れている・・・く 首が、オークの首がない。
あの一振りで10匹ほどいたオークの首を跳ね飛ばしたの?
『<ウォーターボール>!!!』
『えええっ なんて数なの』
『み ミュウ???』
今度は、<ウォーターボール>・・・水属性も覚えたのね、でもそれよりも、いったいいくつの<ウォーターボール>を出したの?数えきれないわ。
後ろで待機していた数十にも及ぶオークの群れにミュウが放った<ウォーターボール>が雨のように叩きつけられる。
『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドン』
何時までも続く<ウォーターボール>の雨がオークを蹂躙している、凄まじい数の攻撃に関わらず、その一発一発がなんて威力、頭に当たれば頭が吹き飛び、胴体に当たれば穴が開いている・・・
ミュウ貴方どこまで強くなったの?いくらなんでも人知を超えているわ。
こ 今度はなに?ミュウの体が紫の光に包まれパチパチと放電しだした、まさか雷属性まで・・・
『<サンダーボルト>!!!!!!!!!!!!!!!』
『ビガギガガガガガガドゴオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!』
『キャアアアアアアアアアアアアアア』
大気ごと揺るがすような凄まじい轟音が鳴り響き、辺りに静けさが戻るころ、顔を上げるとそこにはオークの死体が絨毯のように敷き詰められていた。
オークの屍の前に佇むミュウが振り返り、ゆっくり此方へ歩いてくる、私は慣れ親しんだミュウを前に恐怖が走る。
『私の担当した場所は終わったわ』
『ひっ あ 貴方は本当にミュウなの?』
『そうよイリカ、お母さん!私は落ちこぼれだったから、必死になって努力したの』
『でも、少し強く成りすぎちゃったかもね、えへへ』
『えへへ、じゃないわよ吃驚しすぎて腰が立たないわ』
『ミュウ、ミュウお帰りなさい、どれだけ強くなってもミュウは私の娘よ』
『久しぶりね、お母さん。少し痩せた?元気だった?』
久しぶりに会うであろうミュウとミュウのお母さんは、抱き合い感涙に浸っていた。
しかし・・・なんて強さ、ムチによる物理攻撃と圧倒的な魔法攻撃・・・両方とも飛んでもないわ。
夢かとも思うが、目の前に広がるオークの屍がそれが事実を物語る。
『そうだ、ミュウ私は他の場所を見てくるわ』
『私は、此処を離れられないから、遠慮なく見てきて』
私は走った、確か隣の場所はクオンさんが担当だったはず。
そ そんな、急いで着いた場所には既に先ほど見たようなオークの屍が当たり一面に広がっており、ミュウのムチと同じような青い半透明な不思議な剣を左右に携えている。
『イリカさん、こっちは大体終わったよ』
『ひっ いつの間に・・・さっきまで、あんなに遠くにいたのに』
『あはは、驚かしちゃったかな、ごめんごめん』
『あっ 他の場所も終わったみたいだ、もう安心して良いよ』
『ほ 本当にオーク3百匹を、たった6人で倒したの?』
『どうだったミュウは?』
『あ 悪魔の様な強さだったわよ、いったいどれほど鍛えたらああなるのよ?』
『言っただろ?君の知っている弱かったミュウは、もう居ないって』
『でも、いくらなんでも異常すぎるわ』
『いや、俺達はまだまだ弱い、これからもっともっと強くならないと』
『ねえ正直に答えて、あなたは悪魔なの?』
『あはは 只の冒険者だよ』
『でも君には約束を守って貰うよ』
『わ 分かってるわよ、絶対に誰にも言わないわ』
『分かってるなら良いよ、でもその約束を破ったら、』
『その時は、私の命でも何でも貴方に上げるわ』
『その言質取っておくよ』
『ではミュウの所へ戻ろう最後の戦闘がある』
『えっ もう全滅したんじゃないの?』
『1匹だけ残ってるんだ』
『ま まさかオークキングなの?』
『正解!』
『なんでそんなに重大な事を軽く言うのよ』
『あはは まるでミュウみたいな事を言うね、さあ戻るよ』
なんて人なの?オークキングなんて歯牙にも掛けないような・・・
村の正面に戻ると既にサークルのメンバーが全員揃っており、何かを待っている様に入口を凝視している。
『全員揃ったな、仕上げと行こうか』
『ねえ、仕上げは私に任せてくれない?』
『ニャハハ 珍しくミュウ怒ってるニャ』
『僕は良いですよ』
『ふむ、察しよう』
『ズルいわミュウ』
『ライカには、今度甘い物でも奢るからさ』
『ニャーあたいもニャー』
『分かってるわよ、全員に奢るからさ』
『ミュウ分かってると思うけど、ちょっとでも危険を感じたら、俺もやるぞ?』
『分かったわ』
『ミュウ、本当に君はミュウなのか?』
『んふふ 久しぶりね、おじさん、そして村の皆』
『本当にミュウなのね、あの子があんなに強くなるなんて』
『久しぶりに帰って来たと思ったら、なんてぇーもん見せるんだ腰が抜けたぞ』
『ミュウ姉ちゃん、カッコいい』
『んふふ ありがとう、でもまだ1匹残ってるんだ、危ないから皆下がっててね』
サークルが言っていた通り普通のオークより倍ほどの大きさがあるオークが、こちらに歩いてくる。
あれがオークキング・・・なんて凶悪な。
『ミュウあれがオークキングなの?本当に勝てるの?』
『なっ オークキングだと、さっきより危険なんじゃないか?』
『おい、子供を家に入れろ、皆身を隠すんだ』
村の皆が身を隠す中ミュウがゆっくりと歩を進めオークキングに迎え立つ。
背後には、いつでも加勢出来るようにサークルのメンバーが構えている。
『イリカ、お母さん危ないわ逃げてて』
『『ミュウの雄姿を最後まで見てるわ』』
『んふふ <ライトシールド>!!!』
『クオン、お願いね』
『ああ、こっちは任せて、念のために鑑定するから見てから行くように』
『分かったわ』
*********************************************
【ステータス】
名前:オークキング
LV:60
HP:620/620
MP:400/400
攻撃:472
防御:449
敏捷:451
器用:450
魔力:460
精神:450
スキル:<身体強化+8><腕力強化+10><打撃強化+10><HP回復+10><HP吸収+10><魔王の威圧><縮地+5><統率><刻印>
*********************************************
『流石にオークキングね』
『間違いなく過去最高の強さだ、気をつけてミュウ』
『任せて、行くわ』
ついにミュウがオークキングの眼前やく10メートル手前ぐらいで歩を止める。
『オマエガ、ワガグンヲ、タオシタノカ?』
『ええ、私のパーティがね』
『ミゴトダ、ワタシトノイッセンモ、ウケテクレルカ?』
『ここは、私の村よ。私は決してお前を許さないわ、掛かって来なさい』
『チイサキニンゲンヨ、カンシャスル』
次の瞬間オークキングの巨体が消えた!轟音と共にミュウが立っていた場所に大穴が開く、あの巨体でなんてスピードなの、ミュウは?ミュウはどこ?
『ヨクカワシタナ』
『遅い!遅すぎるわ』
『ナニッ』
『本当に見えない攻撃って奴を、見せて上げるわ』
探していたミュウは、あの一瞬でオークキングが元に居た場所に立っていた、一体どれほどハイレベルな攻防をしているのか、私には分からない・・・
先ほども見せたミュウのムチがオークキングに振り下ろされる、いえ振り下ろす様に見えた?
『ブアアアアチイイイイイイイイインン!!!』
『ブフオオオオオオアアアアア!!!』
『流石オークキングね、ファントムテイルの一撃を耐えるなんて』
『ブフォオオオウ フフフ タシカニ ミエナイ』
『ノゾムトコロダ ワガゼンリョクヲモッテ アイテヲスル』
『勘違いしないで、見えない攻撃は、これからよ』
『<ソニック>!!!』
『ドゴオオオオオオオオオオオオンン!!!!!!』
『ブゴオオオオオオオオオオアアアオオア!!!!』
オークキングの巨体が重力を感じさせないような動きで弾き飛ばされ地面を弾んでいく。
ミュウが持つ武器、ファントムテイルと言うらしい物が完全に見えなくなった、攻撃をしていない今でも不気味な音が聞こえるだけで、み 見えない。
『ヒュン ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュン』
『ヒュン ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュン』
既にオークキングはフラフラの状態で、なんとかギリギリで立ち上がってきた。
『ナンタルイチゲキ マサカ マサカ ワタシガ』
『次は私の最強の一撃を上げるわ、私の村を襲った事を後悔して逝きなさい』
『マ マテ 』
『逃がさないわ、<アイスロックプリズン>!!!』
身を翻し逃げようとしたオークキングが一瞬にして凍り付く。
『<エンチャット>風!!!』
『<ソニックブレード>!!!!!!!!!!』
今まで不気味な音を奏でていた風を切り裂く音が変わり、「フォン」と言う軽い響きを残し無音になる。
【サークルが特殊スキル<統率>を習得しました。】
【サークルが特殊スキル<刻印>を習得しました。】
【レベルアップしました。サークルがレベル28からレベル30に成りました。】
【サークルの<魔王の威圧+2>が<魔王の威圧+4>に成りました。】
【サークルの<縮地+7>が<縮地+10>に成りました。】
オークキングの巨体を、その場に残しミュウは仲間達の下へ戻るとハイタッチしながら、喜びを分かちあっている。
ああ、本当にミュウは最高の仲間に出会えたんだと静かに思った。