第101話 奇妙な森
模擬戦については、男女1名ずつの2回行われることになった。
領主様に就いている護衛の騎士が相手をするらしい、何故か皆、模擬戦をやりたいらしくジャンケンで決めることになった。
その結果、ロックとムーアが模擬戦をすることに決まった。ちゃんと手加減するように言ったが少し心配だ。
その後、訓練場の様な所へ移動し説明を受けることになった。
『どうやら模擬戦をやるメンバーが決まったようだな、それでは、私の騎士を務めている2名が相手をする』
『男性の方がザミラで、女性の方がジーナだ、分かっているとは思うが勝敗が問題ではなく、あくまでも強さを確認するだけなので怪我をせぬ様にな』
『今グラン様から紹介頂いたザミラだ、宜しくな私は、木剣を使い、ちゃんと手加減をするので安心して掛かって来い、お前達の武器は一応用意したが何を使っても良いぞ』
『ありがとうございます僕は、ロックって言います、宜しくお願いします僕は、普段両手槌を使っているので、この木製の両手槌をお借りしますね』
ロックは、借りた木製の両手槌を素振りして感触を確かめている、勿論かなり手加減している今のロックが本気で木製の両手槌を素振りしたら折れてしまうだろう。
『ほほ~ その重い両手槌を軽々と振るとは、見かけによらず力があるのだな』
『はい、僕は、ドワーフなんで力だけは、ありますよ』
『では、良いぞいつでも掛かって来い』
『はい、では行きますね』
ロックは、開幕で抑え気味にザミラさんの目の前に移動し、軽く両手槌を振った。
流石に領主様の護衛をしているだけはあって、ロックの初撃をガードする。
『ドガッ!!!』
『なっ なんだと』
それを見ていた領主様達は、口を大きく開けたまま驚いている。
『なっ あれは<縮地>い いや違う、しかし、速い』
『えへへ 流石ですね、どんどん行きますよ♪』
ロックは、上下左右あらゆる角度からの攻撃を繰り出し、ザミラさんの反撃の隙を与えないまま連撃を繰り返した。
『グゥゥ つ 強い、まさかこれほどとは、ふふふ面白い、ロックと言ったな、此方からもいくぞ』
ザミラさんがロックの連撃を受け切り反撃に移る、上段からの袈裟斬りだったが俺達にとっては、スローモーションのように見えた。
『なっ 消えただと』
『えへへ ザミラさん、こっちですよ』
『い いつのまに背後へ回ったのだ?』
『ザミラ、もう良いだろう』
『お お待ちくださいグラン様』
『いや、ザミラよ、今背後から攻撃されれば受け切れなかっただろう?』
『はっ し しかし』
『ザミラ殿、恥じることは無い、ギルドマスターである私が、言った通り本当に6人共、私より強いんだよ』
『ザーラン殿・・・ 分かりました』
『ザミラ油断しすぎですよ、次は、私がお相手いたしますグラン様の騎士団、騎士団長をしておりますジーナです、宜しくお願いします』
『あたいは、サークルのムーアニャ、宜しくお願いしますニャ』
『ふふふ 本当に強く見えないわね、でも私に油断は、ありませんよ全力で行きますね』
『ニャハハ 望むところニャ』
『ふふふ、いざ』
ムーアは木製の短剣を2本借りたようだ、それを左右に1本ずつ持ち構える。
動きを見る限り、どうやらザミラさんよりジーナさんの方が格上のようで、開幕は、ジーナさんの連撃から始まった。
『ハアアアアアアア』
『ヒュン ヒュヒュン!』
『なっ すり抜けた?』
ザミラさんより、かなり早い攻撃がムーアに向かうが、ムーアは最小限の動きで回避するため、どうやらすり抜けているように見えるようだ。
それから、幾度となくジーナさんが連撃を放つが、悉くムーアは回避した。
『ハアハア クッ どうして当たらない?何故すり抜けるのだ?』
『ふむ、どうやらザーランが言ったように、驚くべき強さのようだな、目の前で見ても信じられんが・・・』
『どうだ?ジーナまだやるか?』
『いえ、完敗です、攻撃が当たる気がしません・・・』
『ムーア殿、完敗です驚きました、私もまだまだですね・・・1つだけお聞きしたいのだが、サークルの中でムーア殿が一番強いのか?』
『ニャハハ まさか一番強いのはリーダーニャ、あたいなんか相手にもならないニャ』
『『『・・・・・・・・・・・』』』
『ふふ ふはは 面白いザーランお前が言った通りだったとはな』
『クオンよ、試して悪かった、どうやら実力的にも問題は、なさそうだな』
『改めて森への調査を依頼したい、引き受けてくれるか?』
『分かりました、領主様の依頼サークルが承ります』
冷や冷やした模擬戦も、筒がなく終わり俺達は、領主様の豪邸を後にする。
『ふふふ ザーランよ、あの者達は、何者なんだ?あの若さで恐ろしいほどの実力を隠しておるのだろう?』
『はい、模擬戦でも魔法とスキルを使いませんでしたな、あの強さ私でも計り知れません』
『なっ ザーラン殿あの者達は、剣士ではないのか?』
『ジーナ殿、全員かどうかは分からぬが魔法も使うのだよ、それもかなり恐ろしい魔法をな』
『サークルそうか思い出した、確か噂になっている「サークルには近づくな」あれは、あの者達のことか?』
『ああ、そうらしいギルドの近くで、冒険者と揉めたそうなんだが、その場に居た全員が竦み上がるような威圧を受けたらしい』
『ふふふ 世の中は、広いな私の護衛達が手も足も出ん子供達がいるとはな』
『グラン様、私は、あの者達と友好な関係を築いておきたいのです、そのため一刻も早くグラン様へ紹介したいと思いました』
『極端に目立つ事を嫌うので苦労しましたけどね』
『あの者達は、正義感が強いため問題を起こす事も多くなると予想するのですが、どうか温かく見守って下さい』
『ああ、ワシも友達になっておきたいと思っている、敵にも回したくないしな あっはははは』
『それに、目立つ事を嫌っても被害者が出ていると知り、依頼を引き受けてくれたのだろう?気持ちの良い奴らじゃないか』
『ジーナ、ザミラお前達も今日の事は、他言無用だぞ』
『『はっ 』』
◇ ◇ ◇
『ニャー 思ったより楽しくなかったニャ・・・』
『ですよね・・・僕も期待してたんですが』
『ロック、ムーア過信はいけないよ、世の中は広い今の俺達でも、全く歯が立たない強者が、きっと居るよ』
『んふふ 二人共、消化不良なら私が相手しようか?』
『『ごめんなさい、結構です(ニャ)』』
『そんなにすぐ断る事ないでしょー』
『それよりもクオン、森の事はどう思う?』
『うん、俺でも行って見ないと予想も付かないんだよ』
『早めに行った方が良さそうですわね』
『ああ、明日の朝出発しよう、場所は大体聞いたので分かると思うんだけど近くに小さな魔族の村があるらしいよ』
『<マップ>オープン、大体ここら辺かな、村っぽいのもあるし』
『魔族の村ですか?』
『ライカ知ってるかな?そこにも注意するように言ってたんだよ』
『すみません、私は、同族からも逃げてましたから、分かりませんわ』
『あっ ひょっとしたらライカが助けた子供の村じゃないかニャ?』
『あたいが送って行ったから、大体そこらへんだと思うニャ』
『なるほど、あの子には会いに行く約束もしてるし、そこで情報収集してから行こうか』
『あの子に会うのは楽しみですが、魔族の村に入れるかどうか・・・』
『んふふ 好戦的なんでしょ?勝てばいけるんじゃない?』
『クフフ 楽しい案ですわ、その通りですね♪』
『あはは こっちの方が好戦的じゃないか?まあ、そこは交渉するとして、どれぐらいの期間になるか分からないね』
『シロの事なら、連れて行くニャ』
『ふむふむ、シロは行けるとして魔草畑どうしよう?』
『そっか、せっかく作ったのに、長引くと枯れちゃいますね』
『出発は明日だし、メイドさん雇うって訳にもいかないわね』
『水をやるだけならアーチカさんに頼んで見たらどうだ?』
『そっか、アーチカさんなら信用出来るしね頼んで見るよ』
『クオン、アーチカさんはリーバイ家のメイドさんだからローニアさんにも頼まないとダメよ』
『なるほど、分かった』
明日、出発予定なので領主様の豪邸から直接ローニアさんに会いに行くことにする。
いつものようにザルガさんが出迎えてくれて運よくローニアさんも在宅しているようだった。
『こんにちわ、ローニアさん』
『ようこそ、クオン様サークルの皆様』
『丁度お伝えしたい事があるんですよ♪』
『ほほ~ 良い話みたいですね』
『うふふ ええ、ハチミツキャンディーの販売が順調に進んで、そろそろ売り出せそうですわ』
『お~ 良かった売れると良いんですが』
『それは、間違いありませんわ』
『今日は、クオン様も良い話ですか?』
『いえいえ、今日は少しアーチカさんに頼み事があるんですよ』
『えっ 私にですか?』
『はい明日から、どれぐらいの期間になるか分からない依頼があるんですが、その間、内の畑に水をやって欲しいんですよ』
『少し特殊な水なんですが、頼めないでしょうか?』
『お嬢様、私は喜んでお受けしたいと思います』
『うふふ、ありがとうアーチカ、でもクオン様掃除もありますから数人付けますわ』
『いやいや、少し水をやって貰うだけなので、掃除までは良いですよ』
『クオン様のお陰で<クリーン>を使うだけなので手間は掛かりませんわ』
『アーチカ貴方が2~3人選んで、明日から良いですか?』
『分かりました、お嬢様』
『クオン様、留守中お任せ下さい』
『なんか気を遣わせたみたいで、すみません、でも助かります』
『では、鍵の受け渡しと、説明をしたいので少しアーチカさんに、お越しいただいて良いでしょうか?』
『分かりましたわ、アーチカお願いしますね』
『はい、お嬢様』
『すみませんアーチカさん、ローニアさん、俺達もメイドさんを雇う事を検討しますので今回は、ご迷惑をお掛けします』
『うふふ、当家のメイド達なら喜んでクオン様に奉仕すると思いますわ、私が行きたいぐらいですわ』
『お お嬢様』
『うふふ 冗談よアーチカ』
いきなりの頼み事に快く引き受けてくれて感謝しかないな、アーチカさんは俺達と共に家に来てくれたので、鍵と<オリオンの聖杯>から作った水をアイテムポーチに入れて渡すことにする。
もう俺達には、擬装用にしか使わないし置いていくことに問題はなかった。
『アーチカさん説明は以上です、すみませんが宜しくお願いします』
『あ あのアイテムポーチなんて高価な物を、お預かりして本当に宜しいのですか?』
『はい、いっしょに甘い物も入れて置きましたので、どうぞ皆さんでお召し上がり下さい』
『ありがとうございますクオン様、それと御恩をお返しする機会を下さったことに感謝します』
『あはは、これで貸し借りは無しですね』
『そんな、こんな事では、とてもお返しにならないのですが、またいつでも、御頼り下さいませ』
『ありがとう、アーチカさん』
頼み事をしたのは、此方なのに丁寧なお礼をされてしまい、申し訳なく思う。
本当に良い人だな、アーチカさんには、仕事に戻って貰い明日の相談をする事にする。
『じゃ明日の予定なんだけど領主様から指名依頼の形を取ると聞いているので、とりあえず出発前に冒険者ギルドで受注しないとなんだ』
『なるほど、報酬とギルドランクのために気を使ってくれたんだな』
『ああオーラ俺もそう思う、中々細かい所まで気を配ってくれる方のようだな』
『現地までは、馬車で行きたい所だが、まだ設計図案しか出来てないので今回は、歩きです』
『ニャー ついにサークルにも馬車が出来るニャ、嬉しいニャ』
『んふふ 私達なら走った方が早いのが痛し痒しなんだけどね』
『あはは そこは、冒険の醍醐味と言うか馬車に揺られての旅もしたいでしょ?』
『勿論、僕とリーダーの設計なので、すっごく良い馬車を考えてますよ』
『『『『おお~ パチパチパチ!!!』』』』
『くふふ 楽しみですわ♪』
『普通の馬車は、尻が痛くなるんでな楽しみだ』
『そこは、リーダーの発案で改善出来ますよ、と言うか驚くと思います』
『・・・・もう発明家って言っても良いニャ』
『本当に、どうして色々と思いつくのか・・・』
『クフフ 不思議な人ですわ♪』
『どうせなら良い物が作りたいじゃないか、乗り心地を重視で考えたんだよ』
『ああそれと、数日掛かるかもしれないから何か買い足すものってないかな?』
『そうねー 下着類は、ムーアが作ってくれたし、食料はどうなの?』
『食料は、まだまだいっぱいあるんだけど、野菜類が少し欲しいかな』
『非常用ポーションの補充はどうだ?』
『ポーションも結構作ったから大丈夫』
『あたいは、買いたい物はないけどテント用の寝具を作るニャ』
『なら僕もベッド作ろうかな』
『俺は、簡易コンロ作ろうかな』
『んふふ どんどん快適になっていくわね、私は、野菜類を買い足しとくわ』
『ふむ、ワシは何をしようかな』
『オーラやる事がないなら私と戦闘訓練しませんか?』
『ふむ、良いだろうワシも鍛えないとな』
『んふふ 私も買い出しが終わったら参加するわ』
『あはは じゃ皆のやりたい事が終わり次第、戦闘訓練しようか』
『『『『『了解!!!』』』』』
俺達は、明日の準備と訓練をすることになり動き出す、寝具については後の楽しみのため見ないでおいた。
戦闘訓練は、全員が集まった所で連携の訓練に入る、俺達も漸く魔法を組み込んだ戦闘に慣れてきており、それぞれが効果的に魔法を駆使し戦術を練り上げている。
特に火属性については、前回のスキル上げでランク8になっているため、<ファイアボール>であっても、かなりの威力を発揮した。
今の俺達がシンクロで<ファイアボール>をやれば途轍もない事になるだろう、明日向かう森の中では火属性は使えないが・・・
それを考えて他の属性のランク上げも、課題の1つになってきた。
加えて<ウィング>の練習の時に身に着けた<エアウォーク>も戦闘に多大な貢献をしている、平面的な戦闘であった俺達が今は、かなり立体的な戦闘が出来るようになった。
背の高い魔物にも首等の急所に攻撃が届くようになり、また、回避力も上がり溶岩地帯のような地形にも対応出来ると、非常に有効なスキルだ。
実際に空を飛んでいる魔物に対しては、<ウィング>もある、どんどん俺達に有効な手段が増えるのは良い事だが、それに伴い訓練をして身に着けていかないと宝の持ち腐れになるから、頑張らないとね。
森での戦闘を想定し風属性を全員で練習したためランクが2つ上がり<風属性+4>になった。
日も暮れて来て良い時間になったので訓練を終了し明日に備えて、早めに就寝することにする。
翌朝、全ての準備を完了し冒険者ギルドへ向かった。
『エイトールさん、おはようございます』
『おはようございます、サークルの皆さま』
『話は、聞いております危険な所だと思われますので皆様十分気を付けて下さい、無事に帰って来て下さることを祈ります』
『ありがとう、危険だったら逃げるから大丈夫ですよ』
俺は、エイトールさんに心配させないため笑顔で、そう答えた。
『頼んで置いて言うのもなんだが、十分気を付けて行ってくれ』
『ギルドマスターも来てくれたんですね』
『ああ、頼んだ手前、激励しておかないと不味いだろう?』
『報酬も多めに出して貰えるよう領主様へ言っておいたから楽しみにしといてくれ』
『『『『『おお~ パチパチパチ!!!』』』』』
『あはは、楽しそうなパーティだな』
『ええ、俺の自慢のパーティですよ』
『も~ 照れるでしょクオン』
『ニャハハ、あたい達の自慢は、リーダーニャ』
『お待たせ致しました、これが受注書になります』
『ありがとう、エイトールさん、それでは行ってきます』
『お気をつけてくださいね』
『頼んだよサークル』
俺達は、笑顔で手を振りギルドを後にする。
とりあえず話にあった魔族の村を目指して歩を進める、ライカが助けた女の子にも会いに行かないと、確か名前はデーラだったかな。
馬車で2時間ほど掛かると言っていたけど、軽く話をしながら30分ほどで村へ着いた。
村の入口には1人だけ門兵のような人物がいたので、話掛けてみることにした。
『むっ 何者だ?お前達』
『すみません俺達は、冒険者なんですが村長に会わせて頂けませんか?』
『村長の知り合いか?』
『いえ、会った事は、ないのですが、この近くにある森の調査依頼を受けて来たんですよ、そのため情報収集に此処へ来ました』
『・・・帰らずの森か、やめておけ、あの森は村の者も近づかないようにしている所だ』
『なるほど、良かったら詳しくお聞きしたいのですが』
『ふむ、見た所、同族もいるようだな少し待て村長に聞いてきてやる』
『まあ、私の顔を立てて下さるのですね、ありがとうございます』
『別に、そういう訳ではないが同族を仲間にしているのだ若く見えるが、お前達が強いのであろう?少し待て』
魔族の門兵が門の扉を閉めてから、村長の所へ向かった。
『どうやらライカのお陰で話を聞いて貰えそうだな』
『ええ、私も驚いていますわ、クフフ 以前の私でも通してくれたかしら?』
『あはは 魔族が好戦的って言っても、色んな人が居るだろうからね』
しばらく待つと、先ほどの門兵が戻ってきて話を聞くと、村長が会ってくれるそうだ。
『ありがとう、助かります』
『ふん、お前達のためではない、村長のご意思だ』
村の中は、全て木造の平屋建てで本当に小さな村だった、その中でも村の最奥にある大き目の建物が村長の家らしく俺達は、案内されるがまま着いて行った。
中へ入ると村長は、かなり年を取っており寿命の長い魔族でも、かなりの年齢を思わせるほど深い皺が刻まれていた。
『俺達は、冒険者をやっているパーティ「サークル」と言います今日は、いきなりの訪問に応えてくれて、ありがとうございます』
『ふむ、礼儀正しいの、話を聞こうじゃないか』
『はい、この近くにある森に異変が起きているらしく俺達が調査に来ました、何か情報があれば、お聞きしたいのです』
『ワシ等も、あの森には困っておるのだ、1ヶ月ほど前に、この村から狩りにいった者が帰ってこんためワシ等も調査にいったのだが一度森に入れば簡単に出れないのだ』
『その時は、運良く出れたが3日ほど迷ったらしくてな、ワシ等も近づかんようにしておる』
『お主達も、それなりに強いのであろうが、やめておけ、その若さで命を落とすこともないだろう』
『ありがとうございます、ですが俺達も仕事なので、そういう訳にもいかないんですよ』
『そう言うと思ったわ、1つだけアドバイスをしておこう、迷わないように目印をしても無駄じゃ、あれは森自体が動いておるとしか思えん節がある』
『なるほど、ありがとうございます、帰りに調査内容を伝えにきますね』
『クククッ 帰りにか、若さとは良い物だな あっははは』
『ところで、お聞きしたいのですがデーラちゃんは、まだこの村に居ますか?』
『むっ 確かにこの村に居るが、何故知っている?』
『クフフ 私の友達なんです』
『ふむ、お前達が助けてくれたのか、感謝する』
『・・・流石は、村長っていったところですか、会えますか?』
『うむ、この者達を案内してやってくれ』
『はい、分かりました』
先ほどの門兵が、デーラちゃんの所まで案内してくれるようだ。
『おい、本当にお前達が助けてくれたのか?』
『たまたまですよ、その時に、また会いに来ると言ったので、約束は果たさないとね』
『そうか、俺からも感謝する、こっちだ』
ふむ、話をしてみると此処の人達は良い人みたいだな、少し懸念していたが杞憂に終わりそうだ。
小さい村なのでデーラちゃんの家には、直ぐに着いて呼んでくれた。
『デーラ居るか?』
『どうしたんだ?デーラに用事か?』
『ああ、デーラの友達を連れて来た』
『あっ お兄ちゃん約束どおり会いに来てくれたんだ』
『お姉ちゃん、あの時は、ありがとう、ずっとお礼が言いたかったの』
『くふふ 私こそありがとうデーラちゃんが、助けを呼んでくれたお陰で助かったわ♪』
『あはは、デーラちゃん元気だったか』
『うん、お兄ちゃんも、あの時は、ありがとう』
『おい、デーラどういう事だ?』
『あっ お父さん、このお兄ちゃん達が私を助けてくれて此処まで送ってくれたの』
『そうか、君達が助けてくれたのか、あの時は、本当にありがとう感謝するよ』
『いえいえ、たまたまだったので、お礼はいりませんよ』
『さあ、中へ入ってくれ大した物はないが、お茶でも出そう』
『すみません、これから森の調査に行かないといけないので今日は、失礼しますね』
『むっ 帰らずの森か?』
『やめておけ、あそこは危険だ』
『ありがとう村長さんにも、そう言われたのですが、そういう訳にもいかなくて』
『ふむ、見た所、冒険者だな、同族もいるようだが、そういう事なら途中まで私が案内をしよう』
『ありがとう、でも場所は分かるので、それに帰りにもちゃんと此処へ寄りますから、ご安心を』
『うむ、悪いが森には入れぬが途中までだ、それなら良いだろう?』
『・・・そこまで言って貰えるなら、お言葉に甘えます』
『あっ そうだデーラちゃん、これお土産だよ』
俺は、デーラちゃんにハチミツキャンディーを1瓶用意してきた、きっと喜んでくれるだろう。
『ありがとう、お兄ちゃん、きっと帰ってきてね』
『ああ、約束だ』