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ボッチな女勇者と、漆黒の魔王  作者: 狩瀬 李羅
9/9

救世主……?

更新、遅くなりました

(´。・д人)゛


ボンヤリと座り込んでいた私と、敵国の人達へ攻撃をしていた魔王と目が合った。


黒髪に黒色の瞳を持つゼノアとは違い、この魔王は金髪に黄色の瞳。


ゼノアが着ていた物のような、黒色の服を着ている。


でも、ゼノアが着ていた服より、派手な物のようだ。


「……人間よ、逃げる事を諦めたか。逃げたところで、全員抹殺するがな」


口角だけが上がり、片手を挙げた。


それをただ、見ているしか出来ない。


私は……此処で死ぬのだろう。


それだけは漠然と解った。




一瞬にして、死んだ──


──筈……?


(……あれ?)


まだ意識があるようなのに気付いて、閉じていた目を開ける。


目の前を覆う、黒色の布。


魔王の服……?


風が吹く度に、私の顔や体を撫でるように舞う服。


これは…………誰の?




「玄黄の魔王、人界ここで何をしている?魔界から出る事が、魔王にとってどういう意味を持つのか解っている筈だ。早く魔界に戻れ」


聞いた事のある声が、目の前から聞こえる。


見上げると、その髪は黒色……


「ゼノア……?」


どうして?


二度と、人界には来ないと言っていたのに。


……魔王が人界に来たから、呼び戻しに来ただけ?


「人界を襲えば、貴様らが討伐対象となる。複数の魔王を討伐する為に、人間に与えられる力は多くなる。そうすればバランスが崩れ、魔界も人界も共に崩壊する。……貴様らは、それを知っている筈だろう?」


私が名前を呟いた事に反応がなかったけど、ゼノアの話の内容は驚くものでしかなかった。


「魔界に戻れ。他の魔王達は、既に捕らえている。……貴様では、俺に敵う事はないと分かっているだろう?」


蘇った時、周りにいた魔王達を殺したと言っていたゼノア。


あの時はまだ子供の姿だった。


今のように、大人の姿じゃなかった。


……つまり、その時よりも力が回復しているって事?




「……何故、同胞の貴殿が我の行く手を阻む?貴殿が死した後、魔界を任された我等は、人間に攻撃されても耐えておった!部下の魔族が消されても、親しい者へ攻撃されても、耐え忍んで……!……だが、魔界から連れ出された者を取り返しに、魔界から出た者がいた。我等はそれを許した。……連れ去られた者は、他の人間に売られていた。魔族を、人間が……!!人間如きがっ!!……貴殿は、それすらも“許せ”と言うのか!?我等の同胞を陥れ、物のように扱う屑に、制裁を与えて何が悪い!?」


ゼノアが玄黄の魔王と呼んだ魔王の言葉に、返す言葉もない。


(そんな事があったなんて……!)


嘘を言っているとは思えない。


ずっと我慢し続けていたのに、そんな事があれば、彼らが怒るのも分かる。


こうして人間を攻撃する事は、当然だとすら思う。


そんなに酷い事をしてきた人間を、滅ぼしたいと思われても仕方がないと思う。




「……それを実行した人間を、既に殺しているだろう?人界でさ迷っていた魔族の魂は、魔界へと連れ帰った」


激昂している玄黄の魔王とは違い、淡々と話すゼノア。


二人の温度差が激しい。


ゼノアは怒っていないのかな?


……それとも、本当は怒っている?


「蘇るから許せと言いたいのか!?」


「報復は済んだだろうと言っている」


温度差は増々開いていくばかり。


「人間が行った行為を、“許せ”と言っている訳じゃない。逆に許すべきではないと思っている。……二度とこの様な事を起こさない為にも。……ただ、関係のない者まで手にかけるなと言っている。…………俺は、お前達まで失いたくはない」


「……漆黒の魔王……」


言葉を失っている玄黄の魔王。


“失いたくはない”って……それって、勇者に討伐された紅緋の魔王の事を言っているんだろうか?


その魔王も、ゼノアは失いたくなかった──?


どの魔王よりも強いゼノア。


……でも、他の魔王とゼノアの関係って、何なのだろう?




「お前も、元に戻るか?お前達に負担をかけ過ぎたからな。少し休むと良い」


「……そうやって、また漆黒の魔王だけが負担を負うのか?」


「……それが俺の役目だ」


どういう意味なのか……


「俺のいない間、魔界を任せっきりだったからな。……お前達が召喚したかったのは、俺じゃなく、碧緑の魔王なのも知っている。……奴は人間を嫌っていたからな」


二人の会話を茫然と聞いている事しか出来ない。


(また、新たな魔王の名前……)


ゼノアの代わりに人間が嫌いな魔王が召喚されていれば、人間は今頃滅んでいたかも知れない。




「碧緑の魔王は、蘇らせるべきではない。……それは紅緋の魔王も同様。人間と敵対したところで、魔界にとって良い事はない」


ゼノアの言葉に、相対している魔王は何も言わない。


……でも、どうしてゼノアは、そんな考えを持っているのだろう?


だって、人間は魔界へ攻撃を仕掛けるばかりで。


人間からの恩恵など、魔界には感じられなかった。




「玄黄の魔王。総ての責は俺にある。……還れ。我が身より派生した存在である事に、頼りきっていた俺を許せとは言わない。……ただ、もう休め。お前が心を痛める必要はない」


「……漆黒の魔王…………いや、我等の産みの親」


(えっ!?)


想定外の情報に、ゼノアを見上げる事しか出来なかった。


(複数いる魔王は全員、ゼノアから生まれたの?)


それとも、その中の一部だけ?


そんな驚愕する私の前で、驚く事が起こった。


玄黄の魔王へ手を触れたゼノア。


すると──


玄黄の魔王が靄のようになって消えていく。


しかも、ゼノアに吸収されるかのように……


ゼノアの中に還った……って事?




「…………」


聞きたい事が沢山あるのに、言葉が出てこない。


早く声を掛けないと……と焦るばかりで。


今すぐ姿を消してしまうかも知れないのに……


もう会えないかも知れないのに……


それなのに、開いた口からは言葉が出てこない。


何と声を掛けて良いのか分からない。


だってゼノアは、人間を救いに来たというより、魔王達を救いに来ただけのように思う。


私が今こうして生きているのも、ただの偶然でしかないのだろう。


此処に来る前に、他の魔王の所へ行っていたようだし、私が助かったのは偶然が重なった結果でしかないだろう。




たまたま、人数が多い方へ先に攻撃をした魔王。


私が攻撃される瞬間、ゼノアが目の前に現れた。


──そう、ただ、それだけ。




「……レニー、同胞が悪かったな。……立てるか?」


目の前に差し出された手を、呆然と眺めてしまう。


いつも見ていた無表情に、少し困った表情を浮かべているゼノア。


本当に、優しい魔王。


手を伸ばし、その手に触れると、キュッ……と握られ、呆気ない程簡単に立たされる。


足に力が入らなくてたたらを踏んでしまうけれど、何とか堪える。


「魔界はもう人界に干渉するつもりはなかったが……境目を消すのを手間取っている間に、魔王達が動いてしまった」


「……えっ!?」


境目を消す……?


それって、本当にもう二度と人界に来るつもりがなかったって事?


会いに行ける可能性すらなくなるって事?


「……境目は、勇者を魔界へ向かわせる為に、女神が設置したと言った事があるだろう?女神の作ったものを、俺が消すのは少し時間がかかる」


(そんな事、聞いてない!)


境目を消すのに時間がかかる事なんて、聞いていない。




「……境目を消したら、……どうなるの?」


声が震える。


“嫌”だと、心が叫ぶ。


「?魔界と人界の間に隔たりが出来る。自由に往復は出来なくなる。……元々勇者用に設置された物だからな。普通の人間には通るだけで負荷がかかる。……もっと早く、こうするべきだった。……せめて、必要なくなった時から俺が消える前にしていれば、今のようにはなっていなかっただろう。いつか勝手に消えるだろうと放置していた、俺の責任だ」


「なっ……!?それはゼノアの責任なんかじゃないわ!」


ゼノアが設置した訳でもないのだから、ゼノアが責任を感じる必要はない。


責任があるのは、設置したまま放置した女神じゃないの?




「魔王を討伐出来る程に人間を強化し、二つの界を繋げる事は、女神にとってもかなりの負荷がかかる。境目を消す力が残らなかったのだろう。……未だに干渉がないところを見ると、設置した事を忘れている可能性が高いが」


「っ、だからって、それがどうしてゼノアの責任になるのよ!?」


「紅緋の魔王の愚行に関心を向けなかった事に責がある。……アレは、他の魔王同様、俺から派生して生まれたものだからな。意思があるからと放置していた俺に、責がないとは言えない」


「…………」


そう言われてしまえば、何も言えない。


だけど……ゼノア一人が責任を負う必要はあるの?


それに、これから二度と会えない可能性を思うと、胸が痛い。




私は──




──ゼノアの事を──






──“魔王”を好きになっている……?

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