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ボッチな女勇者と、漆黒の魔王  作者: 狩瀬 李羅
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戦争

ブックマークや評価、ありがとうございます。



戦争が始まったのは、ゼノアが魔界に戻ってから三月後位だった。


今まで勇者が魔王を討伐するからと、勇者を輩出するこの国へ攻撃する国はなかった。


……だけど、ゼノアの言葉で、現在存在している勇者は魔王を討伐できる“勇者”ではない事が分かった。


魔王を討伐する意味もないというのも知った。


だからこそ、攻撃しない選択肢を選ばなければいけない理由は、もうない。


魔王討伐の為にと、他国から援助も受けていたらしく、それ故反感を持たれる事となったのだろう。


──無駄な事に、今まで莫大な資金を渡していた事になるのだから。


一国同士の戦争なら、まだ勝つ見込みがあっただろう。


勇者じゃないとはいえ、女神の祝福を与えられた人が多いのだから。


でも、複数国相手との戦争となれば、勝つ見込みなどない。


……この国は、敗れるだろう。


いくら戦い慣れている人がいるとしても、国中の人全員が戦い慣れしている訳でも、戦を好んでいる訳でもない。


寧ろ、完全に分けていた為、戦闘に関心すらない者もいる位だ。


この国はもう、長くないだろう。




勇者と認定された者以外も、戦争にかり出された。


魔術師などの戦い慣れている者ならともかく、一度も戦いに参加した事のない者もいる。


……明らかに怖がっている。


戦力にならない事は、火を見るより明らかだろう。


……それでも、戦うしかない。


…………戦ったところで、敗ける事は九分九厘、解りきった事だけど。




────

──


最前列にいるのは、元・勇者ばかり。


その後ろに魔力付加を行う魔術師が並び、その後ろには震えの止まらない民達。


他の国も同時に攻めて来ているのだから、一国と対峙する人数は少なくなる。


だから、戦い慣れていない人達だけでなく、私達ですら恐怖しか感じない。


相手の数が違い過ぎる。


戦っても敗ける事を、悟らない者はいないだろう。


戦死するか、捕虜になるかのどちらか。


戦わなくても、死や奴隷として従属の道しか残ってはいないだろう。




自国の味方より、何倍も多い数の敵と対峙していた時──




双方の間に、雷が落ちた。


土煙が舞う。


地響きで、皆が体勢を低くしている中、現れたのは──




魔族。


……否、魔王?


魔王なら、ゼノア以外では初めて見る。


でも、何故此処に?


ゼノアに殺された筈なのに、もう蘇ったの?




「漆黒の魔王から、人界で散った魔族の魂を回収したと聞き及んだ。だから、人界への攻撃は止めろ、とも忠告を受けた。……だが、我は人間を許しはせぬ。我等は紅緋の魔王ではない!それなのに、攻撃を止めなかった人間など、存続させる意味などない」


憤りを感じる。


どうやら彼は、魔王の一人のようだ。


漆黒の魔王がゼノアだとは知っている。


……でも、“紅緋の魔王”とは誰の事なんだろう?


紅緋の魔王とは違うって事は……それって、勇者に討伐された魔王の事?


ゼノアとは違って、古臭い話し方をする魔王らしき者の登場に、皆が固まる。


それは私達だけでなく、敵国の者達も。


魔王相手に、私達はどうする事も出来ない。


勇者でもない人間が、討伐対象にされていない魔王を討伐なんて出来ないのだから。




戦争どころではない。


このままでは、人界にいる全ての人間は滅ぶだろう。


力の差があり過ぎる。


ヒシヒシと感じる威圧感に、誰にでも分かる事だろう。


冷や汗が流れていく。


相手はたった一人といえど、魔王なのだから。


魔族相手でも手こずるのに……


ゼノアの言った通り、魔王を討伐できる人間なんか、現在の人界にはいないだろう。




「に、逃げろ!」


散り散りに逃げる人達。


でも、逃げたところでどうなるというのだろう?


人界を滅ぼすつもりらしい魔王相手に、それを妨害出来るのは、魔王複数でか、魔王の中でも強いゼノア位だろう。


でも、私達が魔界に行かない限り、会わないだろうと言っていたゼノア。


……会いに行けば、助けてくれるのだろうか?




…………でも、たった一人で会いに行けるとは思えない。


ゼノアのいたあの城まで、一人で行ける自信がない。


以前行った時、複数の“勇者”と共に行ったのだから。


しかも、着いた頃には、皆満身創痍だった。


そんな場所に、弱い私が一人で辿り着ける筈がない。


(人界が……人間が滅ぶのを、待つしかないのだろう)


たった21年の人生だった。


私より若い時に死んだ人だっている。


魔王討伐をしに行っていた時、私達は死と隣り合わせだった。


いつ誰が死んでも、可笑しくなんてなかったのだから。


でも、死にたくないと思う自分も確かにいて……




(どうして……)


勇者として、危険な事をしなくて済んだと思ったのに、戦争が始まった。


次には魔王の襲撃……


(何故、戦いばかり……)


元々、戦いたくなんてない。


剣を振るうより、料理をしていたい。


他の女の人達のように、家で愛する人を待っていたい。


そんな私の夢は、叶わないまま。


“女勇者”としていた時は、その珍しさと弱さに蔑まれていた。


友達だって、できた事がない。


親しみを籠めて話しかけてくれる人なんて、誰もいなかった。


両親ですら、“女勇者”の私に落胆していた。


無視はされなかったけれど、好いてはくれていなかったと思う。


……そんな両親も、現在存在していないけれど。




(“女神の祝福”なんて……私はいらなかった)


勇者と認定されなければ、普通の女として生きていけたかも知れないのに。


今更勇者じゃないと言われたって、周りの反応が変わる訳でもない。


私は未だに独り。


(どうして、私だったのだろう?)


どうして、私は努力をしても、何も手に入らないのだろう?




ボンヤリと、人間を攻撃する魔王を眺めていた。


逃げ惑う人達へ、容赦なく攻撃する魔王。


一瞬にして、何十人もの人達が倒れていく。


強大な魔術より更に強いと思われる力で、人が沢山死んでいく。


魔王は現在、人がより多く集まっていた他国の人達へ攻撃をしている。


周りにいた自国の人達は逃げ、たった一人でボンヤリと膝をついている私には見向きもしていない。


……でも、それもすぐの事だろう。


戦争が起こっていたのは、この場所だけじゃない。


他の場所でも、他国と睨み合っている。




(魔王は複数いるんだよね……だったら、他の魔王も人界に来ているんだろうか?)


現実逃避なんだろう、そんな事を考えていた。


「人間など、一人残らず抹殺してやる。例えこの身に何が起ころうとも……」


振り返った魔王は、狂気の瞳をしていた。




その時──


ふと、気になった。


人界を滅ぼす為に、魔王達はゼノアを喚んだ筈……


それなのに、魔王一人相手でも、人間は太刀打ち出来ない。


ゼノアを喚ばずとも、人間を滅ぼせたんじゃあ……?


どうして彼らは、ゼノアを喚んだのだろう?


魔王達が人界に来る事に、何かしら不具合があるという事?


でも、ゼノアは普通に過ごしていたけど……どういう事?


他の魔王達より強いゼノアだけが特別?


……それとも、ゼノアも何かしら不具合があったんだろうか?

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