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ボッチな女勇者と、漆黒の魔王  作者: 狩瀬 李羅
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最強最悪な存在……?

更新、かなり不定期&遅いです。


(何、此処……)


目の前の光景に、暫し茫然としてしまった。


(どうしたら良いのよ!?)


憤りを感じるも、現在、それをぶつける相手はいない。


地面を蹴ったところで、何も起こらない。


目の前の光景は少しも変わらない。




╋╋╋╋╋╋


この世界には、魔族と人族が存在している。


力は断然魔族の方が強く、何もなければ、人族は淘汰(とうた)されていただろう。


それを憂いたのだろうか、女神の祝福を受けたと思しき人──勇者が現れるようになったと言われている。


産まれた時から勇者だと分かる理由は、体から微量な白い光を発している為。


かくいう私も、その様な状態で産まれた。


……但し、とても珍しい“女勇者”として。


勇者は男として生まれる事が殆ど。


それはやはり、力の差のせいだろう。


いくら同じ鍛練を積んだとしても、筋肉のつき方が違う。


それは私自身、とうに自覚している。


そして、そんな女勇者とパーティーを組みたがる人は現れない。


魔族相手に戦い、いつ死ぬかも知れないのに、弱い勇者と一緒にいたいとは思わないだろう。


だから私は、いつも独り。


でも、一人で魔族討伐をするのは大変で、すぐに体力も尽き、毎日ボロボロだった。


他の仕事は、“勇者”の為に出来ない。


何故私が勇者として生まれたのかと、恨んだ事も一度や二度じゃない。


魔王討伐なんて、たった一人で出来る訳がない。


パーティーを組んでいる人達ですら、出来たと聞かないのだから。


いつも魔族が住む場所へ向かう為の境目を越えても、魔王に出会う前に力尽き、帰ってくる毎日。


だから私は、魔王がどんな顔をしているのかすら知らない。




魔族が境目を越えて、人族を襲う事もある。


此方から行けるのだから、魔族が境目を越えられるのは当然。


昔は境目を越えてくる魔族はいなかったらしいけれど、今はそんなに珍しい事でもない。


……それはつまり、それだけ魔族が強くなっているって事でもあるのだろうけど。


歴史上、魔王討伐を完遂した勇者がいるのは知っている。


だけど、魔王はすぐに生まれるのか、魔王討伐の為の勇者が境目を通らなかった年はないらしい。


魔王が複数いるという噂もある位で、それはいまも確認出来ていない為に燻っている話だ。






だけど、ある日流れた噂に、私達は震撼した。


『最強最悪の魔王』が蘇ったというのだから。


魔王討伐へ向かった勇者が、魔族から聞いたらしい。


勇者達全員、魔王がいる場所へ到着する事すら出来ないでいるのに、新たな──しかも、最強最悪な魔王が蘇ったとなれば、人族が存続するのは難しいかも知れない。


王は直ちに勇者達を全員集め、一斉攻撃をすると決めた。


少数でのパーティーで行っても、意味がないと思ったのだろう。


でも、その魔王が何処にいるのかなんて分からない。


魔族が親切に教えるとも思えない。


だから私達は、複数のグループに分かれて魔王を探す事となった。




その間、魔族と鉢合わせしない訳じゃない。


何度も戦闘になり、段々と数が減っていく。


力尽きた場合、境目の向こう側──人界に転移出来るペンダントを、皆身につけている。


だから魔界に取り残される事はない。


だけど、殺されたら帰る事は出来ない。


私達も遺体を回収しない。


そんな余裕はないからだ。


遺体を抱え、戦う事など出来ない。




「おい!あっちに城があったぞ!」


そんな時、別のグループの数人が駆けてきた。


既に他の者は人界に戻ってしまった後なのか……彼等は既に満身創痍だった。


「俺達はもう戦えない。後は頼んだ」


そう言い残すと、ペンダントの力を使って消えてしまった。


でも、私達だって、度重なる戦いでかなりの疲れが見えている。


一度人界に戻り、また日を改めて見つけた城へ向かった方が得策だと思う。


だからそう提案したのに──


「このまま帰れる訳がないだろう?」


「そうだ!帰りたいなら、お前だけが帰れよ!!」


非難の声を浴びせられた。


「この人数で、勝てると思うの?相手は『最強最悪な魔王』なのよ?」


現在、此処にいるのは、勇者七人、ヒーラー二人、魔術師三人、剣士二人、神官一人。


人数に対してヒーラーが少ないし、神官に至ってはたった一人。


つまり、それだけ人界へと戻ってしまったって事だ。


これから特に必要となる人達なのに……この人数では、それなりの回復は見込めないだろう。




「うるせぇな!」


「キャッ!?」


強く肩を押され、尻餅をついた。


転がっていくペンダントは……私の転移魔法が施されたペンダントだ。


転んだ拍子にチェーンが切れたのだろう。


慌てて拾うも、その赤い石にヒビが入っていた。


(えっ!?どうして……!)


ある程度の衝撃に強い筈なのに。


この石が壊れたら、転移は出来ない。


つまり、私が人界に戻るには、境目まで歩いて行かなければならない。


その間に、何度魔族と遭遇するのか分からない。


私は強くない。


……だったら、私は、今日死ぬ運命なのだろう。




一人で境目まで行くか、城まで皆と行くか……


どちらも“死”が待っているのなら、最期くらい、勇者らしく死のうと思った。


誰もが望まなかった女勇者として、最後位は勇者らしい事をしよう、と。


そんな決意と共に足を進める。




╋╋╋╋╋╋


(確かに“城”ではあるけど……)


今にも朽ち果てそうな廃墟化した城。


この城を見た皆は、全員ペンダントで転移した。


転移出来ない私だけが、この城の前に残された。


だけど、いつまでも城の前にいる訳にもいかない。


やっぱり死にたくないし、少しでも体力回復をする為に、その城の中へと入っていく。




(ボロボロね……天井も穴だらけ……)


ガラン……とした中は、広いものの、何もないし、誰もいない。


砕けた調度品。


破かれた絵画。


割れたガラス。


屋根や壁にも穴があるのか、灯りはないのに暗くない荒れた城内を歩いていく。


荒れているものの、一晩くらいは休む事が出来るかも知れない。


そう思った矢先──




私以外の人がいた。


……いや、人という言い方は、おかしいかも知れない。


真っ黒な髪に、尖った耳、整った顔立ちから察するに、彼は……魔族の可能性が高い。


破れてはいるものの、本来は高そうな赤黒い椅子に座っている……子供。


……というか、眠っている子供。


やはり、人ではないだろう。


子供がこんな所で眠っている訳がない。




だが、魔族としてもおかしい。


魔族の子供なんて、今までに見た事がなかったけど……


この廃城を住み処としている魔族でもいるのだろうか?


このまま此処にいれば、彼の親が帰って来るのかも知れない。


起こす前に、この城から出た方が良さそうだ。




「……人間が此処に、何をしに来た?」


(ひゃっ!)


背を向けた拍子に背後から掛けられた声に、恐る恐る振り向く。


そこにいたのは──目を覚ました子供の……魔族?


(あれ?魔族って、黒髪に赤い瞳じゃなかったっけ?)


討伐対象の魔王も、聞いた話ではそのような容姿だった筈。


だけど、子供の瞳は、髪と同じく黒色。


彼は魔族とは違うんだろうか?


……でも、魔界にいるし……何者?




「……口がきけないのか?」


思わずジッ……と子供を見つめていたら、眉を寄せた彼。


子供の姿なのに、その様子には子供臭さがない。


でも、今は魔族と戦う力も残っていない。


彼は子供だけど、どれ程の力を持っているのか分からない。


それに、彼が恐怖を全く感じていないように見えるし、私程度の力では、どうする事も出来ない相手なのかもしれない。


「あっ、……一晩、泊めて欲しくて……その、帰れなくなったから……」


魔族らしき子供相手に、勇者の自分が何を言っているのだと自分で呆れるが、やっぱりまだ死にたくない。


まだ生に縋りつきたい。




「……俺を殺しに来たんじゃないのか?……勇者」


やはり、魔族から見ても、私が勇者だと分かるようだ。


他の人間達と私達勇者は、魔族の目には違うように見えるのだろうか?


「……なりたくて、勇者になった訳じゃないわ」


産まれた時点で決められていた“勇者”としての自分を、未だに認められないでいる。


魔族を殺す事だって、その魔族が余程人間を殺しているなどの罪がなければ、極力避けたい。


(……何を私は、初対面の、しかも魔族と思しき子供相手に、この様な不満を口にしているのだろう?)


でも、人界では、勇者として生まれたからには、勇者となるのが当然としか思われない。


私の愚痴や不満など、誰も聞いてはくれない。


“勇者らしく振る舞え”と言われるだけ。


“力がない言い訳をするな”と怒られるだけ。


確かに私は勇者として未熟で、弱い。


だけど、他の仕事が出来るのなら、そうしたい。


結婚すれば勇者として働かなくて良いと思って相手を探したけれど、……全敗だった。


“勇者”の嫁はいらないと言われた。


戦いに赴く職業の奴は基本ガサツだと言われたけど、一応、料理だって出来るのに。


……一番言われたのは、身体的特徴。


毎日剣を振るうっているんだから、筋肉はある。


そこまで腕や足が太い訳でもないけど……私の胸は、未だに大きくならない。


もう21才だけど、まだ大きくなる希望は捨てていない。


だけど、村の男連中は、豊満な胸に、柔らかい肌の女が良いと言って、私と結婚してくれる人はいなかった。




「なりたくないのなら、辞めれば良いだろう?人間は相変わらず愚かだな」


「…………」


こんな子供に言われてしまった。


しかも、頬杖をついたまま、呆れた様子で。


でも──


「辞められるのなら、とうに辞めている!」


辞めたくとも、辞められない。


「それなのに、女勇者というだけで、誰もパーティーを組んでくれずに、いつも独りで……」


仲間が出来た事なんてない。


男に負けないように鍛練を積んでも、どうしたって力では敵わない。


こんなに無力な勇者など、いたって無駄。


いくら努力したところで、あっさりと抜かれてしまう。


私が勇者である意味など、あるのだろうか?


そう思ったら、涙が出てきた。




「……お前も、俺と同じか」


「……?」


何が同じだと言うのだろう?


「愚かなのは、人間だけでなく、今の魔族もだからな」


「……何の話をしている?」


彼は何が言いたいのだろう?


「魔族は、死んだとしてもすぐに蘇る。それは魔王も同じ。……だからこそ、時期ではない時に無理矢理蘇らせては、今の俺のように本来の姿にはならない」


……頭が上手く働かない。


(……え?……って事は、何?討伐したところで、魔族はすぐに蘇る……?)


そんな事、聞いた事がない。


だったら、私達は何の為に戦っているの?


それに……彼が魔族では見た事のない子供の姿なのは、無理矢理蘇らせたから?


“蘇った”と言っていたのは、『最強最悪な魔王』……




「……貴方、魔王なの?」


声が震える。


嘘だと言って欲しい。


……だけど、返ってきたのは肯定。


(私は、魔王相手に愚痴っていたの……?)


勇者として、あるまじき行為だったのは分かっている。


でも、まさか、相手が討伐対象として名が挙がった魔王だったなんて……!




でも──


「何故、私を殺さないの?」


たった一人の勇者を殺すくらい、簡単な筈。


何故、私の話を聞いてくれていたんだろう?


攻撃する素振りを全く見せないけど……


「俺は、人間の“討伐ごっこ”に付き合うつもりはないからな」


「…………」


随分な言い種に、言葉を失う。


(“ごっこ”って……)


私達は真剣なのに。


毎日、命を落とす事と隣り合わせなのに。




「……まあ、今魔界に“魔王”の肩書きを持つのは、俺だけになっているがな。奴等は暫くしたら蘇るだろうけど」


しれっ……と言われた言葉に、またも驚く羽目に。


「……何故!?」


「儀式をして蘇らせたくせに、この姿の俺は不必要だからと攻撃してきたからな。返り討ちにした」


「…………」


勇者達が何度挑んでも倒せなかった魔王を、“返り討ちにした”なんて簡単に言ってのけた。


しかも……“奴等”って言った?


(やっぱり、魔王は複数いたの?)


でも、何故こんなに情報を与えてくれるのだろう?


人間との戦いに興味がなさそうだけど……魔王なんだよね?


今まで見た事がある魔族とも違う。


茫然と、『最強最悪な魔王』らしき彼を凝視してしまう。


“敵”の筈なのに、それらしく見えない。


魔王を殺した彼は、誰の味方なのだろう?


……誰の味方でもない可能性もあるけど。

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