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ラインを進んで

今度はもう少し街の外側の方を中心に敵の殲滅を始めた。かなりハイスピードで倒してきたせいか、数もそこそこ減ってきていて、ある程度敵の出没する場所も限られてきた。


最初のうちは全方角に広がっていたが、ある程度倒していくうちに、城の方を目指して、スタアが見つけたという謎の集団の方からほぼ一直線にラインを引くように、魔獣がやってきていることが分かってきた。


まあ考えてみれば、みんな城潰すために来てるんだろうし、それが当然か。


それが分かれば、ラインに沿って行くのが良いと思い、そのラインを城の方から逆行して敵を殲滅していくことにした。


「敵も強い敵はそんなに居ないし、これなら昨日のダンジョンの方が恐ろしかったね」


「そうだな」


アッシュの言う通り、なんというか生温い。国を潰そうって言うなら、それこそボブゴブリンロード数体集めないと。


(そんなに集められたらゴブリン絶滅するわ)


そうか?ロードいなくてもなんとかなるんじゃない?


(ロードが居ないと国的なそういうものが生まれないんだよ。そうすると統率力無いゴブリンは...)


指導者がいないのはやっぱり良くないのか。人であれ、魔族であれ、そこら辺は同じか。


(魔族と人間の違いなんてあってないようなものだしな)


「ダンジョン...?ガリュー君達はダンジョンに行ったのかい?」


「え?ああ...昨日行きました」


(床屋に行きましたみたいなトーンで話すなよ...)


そんな事言ったってね。昨日行ったし。


「その歳でダンジョン...。やっぱり強いんだな。俺にもそれだけの強さがあればな...」


何故かスタアさんがヘコむ。


「何言ってるんですか。スタアさんだって強いし、何より冒険者の皆に慕われている…。凄くいいじゃないですか」


「俺には目的があるんだ。ちょっとでも良いから今は力が欲しいんだ」


「そうなんですか...」


やはりこの人訳ありか。

目的...金がいると言っていたが...。

力は金のためだろう。

いったいスタアさんは何を必要としているのだろうか?


「げっ。熊だ!」


スタアさんが叫ぶ。

スタアさんが指差す方向を見ると、そこには先程倒したのと同じような熊型の魔獣がいる。


数少ないホームラン打てない敵だ。


「犬っぽいのいがいの魔獣初めて見た」


ナスがそう言ったが、


「あのでっかいアリも魔獣だろ」


とアッシュが言った。

確かにそうだな。

多分魔獣。


「とにかく倒すか」


「ガリュー君。あの熊強い?」


「んー...強いっつうか硬い」


「硬い...。じゃあ魔法でぱっぱと片付けちゃってよ」


アッシュから意見が出る。

これまで柔らかい敵か、アホみたいに硬い敵にしか使って来なかったので、ちょっとアイススピアの性能も見ておきたいのもあって、すぐにアイススピアを準備。


まだ少し遠くの方にいる熊めがけ、アイススピアを放つ。


「グギャァアア!」


見事貫通。熊はドロップ品を落として煙となる。

結論。アイススピアはやっぱり強い。


某ゴブリンの王様達が硬すぎただけだった。


まあそんな事はどうでもいい。

ドロップ品を拾ってラインをさらに進む。



♢♢♢♢♢



「さっき熊倒してから敵が居ないんだけど」


「きっとガリュー君に怯えて逃げたんだよ」


「バカ言うな。魔獣がそんなんで逃げるわけねえだろ」


「いや...言ってみりゃ野生の生物だし...野性的本能みたいな」


「そうそう。なんたって相手はガリュー。魔獣たちも医務室には行きたくないってわけでしょ。天下のガリューに逆らえば、魔獣も人も関係なく死にかけるから。学校のレディー達も、僕の帰りを待ちつつ、医務室送りの怪物が帰還するのを怯えてるはずだ」


「お前らそろそろいい加減にしろや」


と、まあ漫談的なことをやっているが、本当に敵がいない。

熊を境に居なくなった。

なんだか嫌な予感。変な叫び声の正体もまだわかっていない。


何もなければいいが...


と、思いながらラインに沿って歩いていくうちに、3人の人影がラインの上で魔獣達の通行を妨げるかのように立っているのが見えてきた。


「あ。あれカルエルとカロンじゃない?」


「おいおい。せめて名前だけでも出してやれよ。ソニック可愛そうだぞ...」


遠目からでも確認できる。間違いなくあの3人だ。

ナスのコメントには少しイラつくが。


「知り合い?」


スタアさんが聞いたので、


「仲間です」


と答える。


「まだ居たんだ。これで5人目...。立派なパーティーじゃないか。ガリュー君や2人の戦いを見ていても、かなり皆強い。彼女らも強いんだろう?」


「まあそうですね」


「僕は基本一匹狼だったから...。仲間っていうのも時には必要...か」


俺達はカルエルたちの方へ近寄る。


「あっ。ガリュー。それにアッシュと...変態」


「変態ってそんな...」


早速のカルエルのパンチでナスが沈む。


「敵は?ここには居ないみたいだけど」


「だいたい片付けちゃったかな。ちょっと前からここで張ってるけど、なんか急に敵の数が減ってきてる。ちょうど私達がここで張り始めたあたりからかな」


カルエルが言った。


「そうか。もっと奥の方でJr達がが戦っているのかも知れないな」


「そうだといいんだけど…」


「どうかしたか?」


「いや。さっき変な悲鳴を聞いたから...。それも丁度敵が来ている方向から。明らかに人の声じゃなかった。少し寒気がする...」


「そうだな。俺もその声は聞いた。やはりなにか居るってことだな」


俺達はスタアの見たと言う魔獣を作っている謎の集団がいるであろう方向を見る。

普通に歩いてきたこともあって、まだまだ距離がある。


Jr達が戦っているとしたら、2人が危ないかもしれない。


「急いで声の主のところまで行こう。Jr達も心配だ。敵が少なくなってきたのも気になる。ただ単に在庫切れならいいが...」


俺達は更にラインに沿って進む。



ーーーーーーーーーーー



「グルルルル...」


黒いオーラを纏った怪物が小動物の死体を貪る。

体は人のようだが、中身はもう人ではない。


腹に大きな傷がついたその怪物を制御する者はいない。


そんな化け物を遠目で見守る人がいた。


「ふふふふ...ははは...はっはっは...魔人...禁じられた魔法が...解き放たれた...。小動物を喰らわれたのは想定外だが...あいつ一人で小動物何体分だ...?」


頭がおかしくなったのか?はたまた元々おかしかったか。

男は近くの木の上から化け物を見下ろして静かに笑う。


「終われば処分すればいいだけ。あとはあの御方にこの国を...」


男は笑いながら化け物を見ている。


歴史上数回しか登場しなかった魔人。

だが、裏では幾度となく作られてきた。


その強さ故に制御ができず、その存在を作り上げたものでさえ喰らい尽くしてしまう事がある。

そんな魔人が...街に放たれる。



99話目!!!???

あと一話で100話!

もう少しキリのいいところで100話を迎えたかったですが、仕方が無いですね。


100話目もよろしくお願い致します!

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