スタアの都防衛
ガリュー達が都に辿り着く二時間前に遡る。
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「何故こんなに速く...この量を...!?」
1週間と見積もっていた魔獣生産が、1日足らずでもう100以上の大軍隊に、その殆どが都の中に放出されている。
何故早かったか?その理由は、1匹1匹ではなく、1回に付き何匹もの死骸を一気に魔獣化させている。という事なのだが、そんな事をスタアは知る由もないのだ。
大量のムアサドーなどの魔獣(以下略魔獣)が街に入ってくるのを防ぐスタア。
だがしかし、スタア1人ではなかなか倒せない。
魔力強化で戦場を駆け回るものの、相手も素早く、スタミナ消費が非常に激しい。
スタアは魔術の扱いに慣れていないこともあって、攻撃に魔術は使わない。
そのため、ひたすら敵を追いかけて、剣で切るしかないのだ。
素早い動きが取得のスタアですら手こずっているのに、ほかの冒険者が太刀打ちできる訳も無く、せいぜい襲ってきた敵をカウンターで倒す程度。
それでもそれに対応できない冒険者は負傷し、都の中でもまだ安全な中心部、城周辺に運ばれる。
現在まともに戦えるような冒険者はスタア除いて数人...。
「キリがない!クソがぁあああ!」
剣を振るっては走り、はしっては切りつける。
一人で何体倒したかなんてもう覚えているわけがない。
「守りきらなきゃならないんだ!」
閃光のように戦場を駆け抜ける姿はやはり流星のよう。ガリューの動きの劣化版と言えるその動きは、人の目で残像が確認できる程度の速度であるのだ。
敵は魔獣。相手の殆どが小動物であるため、一体を倒すのにかかる労力はせいぜい素早い動きに追いつくためのスタミナ消費くらいだ。
スタミナさえ切れなければ、着実に敵の数を減らしていけるだろう。
だがしかし、敵の数が、スタア1人に対し多すぎる。これではまさにジリ貧である。
スタミナ切れは必須。
休まなければ戦いを続けることは困難だ。
だが敵は休むと言っても待ってくれるわけがない。
短期決戦。
唯一の勝利法。
それが出来れば苦労しない。と、スタアは首を振って、少しでも敵を減らせるように頑張ろう。考えるのはあとだ。もしかすると増援が来るかもしれない。そう思ってまた動き始める。
「グおぉおあ!?」
そう思って動こうとした時、後方で悲鳴のような声が聞こえる。
パッと振り向くと、今にも魔獣が男を襲おうとしているではないか!
スタアは瞬時に動いて魔獣を切りつける。
「あ...スタア...有難う...」
「いいから速く立て!いつまでも寝てるわけにはいかないんだぞ!礼を言う余裕があるなら自分の身を守れ!」
「わ...分かってる」
倒れていた男の手を握り引き上げて立たせる。
「もうダメだ。負傷者が増えてきている...。迎撃できる奴が少ないと少ないほどに対応できなくなっていく。負傷者もそれに比例するように増えていっている。このままじゃジリジリと潰されていっちまう...」
「弱音なんていらない!いいから一体でも減らせ!時間かければ増援が来るかもしれない!最悪俺達だけで持ちこたえられる!」
そう言って強気な姿勢を見せるスタアだが、内面全く穏やかではない。
正直ここ数分で負傷者は増えてきている。
最悪の状況すらも想定に入れなくてはいけない状況にまでなってきている。
その想定を現実にさせないためにも、スタアは走る。
♢♢♢♢♢
先程から約2時間程経った。
もう味方で戦える(まともにでなくても)のは数えるほどだ。
先程都の外の方で謎の悲鳴のような叫び声が聞こえた。人間のものではないことが分かるようなその悲鳴は、明らかに強い魔獣の登場を予期させた。
今では単独行動は危険という判断から、できるだけ2人で固まるようにして行動している。
先程スタアが助けた男との二人での行動だ。
「しかしスタア。スタアの予想では1週間で大軍じゃなかったか?」
「俺もそうだと思ってたが...分からない。俺が見てないところでも魔獣化が行われていたのかもしれない」
そう言いつつもただただ増えていく一方の敵を少しでも減らす。
魔術師達は皆魔力を溜めている間に負傷してしまっているので、まともに大軍と戦う術はもう残されていなかった。魔術なら範囲的な攻撃も可能だったが...
「スタア後ろ!」
男の叫びに反応し後ろを振り向くと大きな熊型魔獣が爪を立ててスタアを攻撃しようとしているではないか。
「ガはッ...!」
突然の事に対応出来ず、肩を思い切り引っ掻かれた。
怯んだところで熊のパンチが飛ぶ。
「クッ...!」
なんとか避ける。
「なんでこんなデカイのが居るんだよ!?」
「知るわけねえよ!?」
タダでさえ強いくまの魔獣なんて...
魔獣化した動物は場合によっては元の数倍の能力を持つ事がある。
強くないわけが無い。
「クソ!」
思い切り剣を振って熊を斬りつけるが、その剣は硬い皮膚に弾かれる。
「熊なのに剣弾くって...これはマジでやばいって!」
そう言っている間にも、熊の拳がスタア目掛けて飛ぶ。スタアは避けようとすると体制を崩してしまい、倒れてしまった。
「しまった!」
熊の拳は倒れたスタアを容赦なく狙う。
ーーーもう終わりか...悪かった…ムーナ...
ガッっという鈍い音が周囲に響き渡る。
ーーー死んだ..........痛くない?
目を開けるとそこには、一人の男が立っていた。
「ま...間に合った...」
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