鑑定
「おっ待たせー!」
さっきの事はすべて忘れたかのように元気よくレミナスさんがカウンターから出てきた。
「どうだったんですか?」
「ダンジョンを本当に攻略したかは、調査団みたいなのが見に来るから、まだ判定があとなんだけど、この拾ったアイテム次第で、ポイントが決まる...要はどんな敵をどれだけ倒したかって事ね」
「じゃあ、鑑定してもらわないといけないとかですか?」
「本当は、国の都にある首都ギルドの方の専属鑑定士に店に行かなきゃいけないんだけど...」
「けど?」
「なんと、その鑑定士が、今の都の混乱から、安全なこの街に都合よく避難してるらしいのよ」
「なんて都合がいいんだか...」
「で、もうすぐその人が来るから、もうちょっと待ってて」
俺達はギルドの建物の中でゆっくりする。ほとんど皆が都に行ったり、仕事に行ったりで、少なくとも、ここ最近のこの時間はギルドに人は殆どいないらしい。
職員を除けば、殆ど俺達の貸切状態だ。
奥の方の酒場では、客が居ないせいか、店のおばちゃんがテーブルの上で頬杖をついたままうたた寝をしている。
そういえば昼飯食ってなかったな。
俺は酒場の方へ向かって歩く。
おばちゃんを起こし、なんのメニューがあるか聞くと、パンとスープ、蒸しじゃがいも、サラダ、肉、と言われた。
肉に関しては、ざっくりすぎてよく分からん。
一先ずパンとスープ、サラダを人数分頼み、皆を呼ぶ。
「ああ...そういえば食べていなかった」
「ここまで何も感じなかったのに、いきなりお腹減ってきたわ...」
皆も忘れていたようで、タイミング的にも丁度よかった。
数分待つと、サラダとパンが人数分出てきた。
流石にドレッシングとかないから、生野菜をただ何もかけずに食べるだけだが、この世界の野菜はまあまあ美味しい。空気がいいからだろうか?
そんなこともあって、生で食べても普通に美味しいのだ。
ちなみに俺はドレッシングだとゴマ系が好きだ。自分で作るよりもああいうのは買ったほうが美味しい。
閑話休題。
皆が食べ始めて数分すると、スープが出てきた。
鶏ガラ出汁のスープ。
温かうちに食べてしまおうと、残っていたパンをスープに漬けて、スプーンで拾って食べる。
ちなみに俺はひたパン派だ。
残ったスープを飲もうと思ったところで、レミナスさんが俺を呼ぶ。
俺はスプーンを置いてレミナスさんの居るところまで行く。
「なんですか?」
「来たんだよ。鑑定士が」
レミナスさんの見ている方向には、中年の片眼鏡をした男性がいた。
「まったく。仕事とはいえ、避難先でまで鑑定とは...」
ちょっとボヤきながらこちらに来た男性は、レミナスを見ると、
「品は?」
と聞いた。
「これです」
レミナスさんは俺が拾ってきたアイテムを鑑定士男性に渡す。
鑑定不要なゴブリンの剣とかコボルトの杖は取り除かれている。
「部屋を貸してくれ。代表者と君も一緒に来なさい」
レミナスさんを
にそう言うと、レミナスさんは通路奥の小部屋へと男性を案内する。
「ほら。リーダー君も速く。代表者君でしょ?」
その言葉に、俺も同じ部屋の中に入る。
「悪いが君ね...こんな子供の拾ったものの鑑定なんて...まあ依頼は受けるしかないんだが、期待はするなよ...」
男性はそう言ってアイテム一つ手に取って見る。ゴブリンロード(ボブじゃない方)の王冠を見る。
「ああ...だいぶ古いが本物だ...。こいつを倒したやつは結構腕利きだな。まあ人数で攻めれば倒せる相手か...」
そう言って王冠を置き、もた次の王冠を手に取る。コボルトロードの王冠だ。
今気づいたけど王冠が多いな。
「こっちも本物か...。そこの子供は腕利きの冒険者の連れか何かか?運良く拾ったにしては数が多いな」
運良く拾えるなら苦労しないっての。まったく。
ちょっと失礼な鑑定士に腹が立つ。が、まあこの歳だし、信じてもらえないか...。
「...ちょっと待て...」
鑑定士の手がボブゴブリンロードの王冠を手に取った途端に止まる。
「なんじゃこりゃ...」
「どうかしましたか?」
「いや...初めて見たやつだから、偽物か...なんて思ったけど...精霊の力は本物って言ってんな」
「精霊の力?」
「鑑定士の人はだいたい鑑定の力を手に入れた人たちがやるんだよ。要は職業特価の力だよね」
俺の質問に対して、レミナスさんが答える。
「ボブ(上位種)のゴブリンロード...とこっちはボブのコボルトロード...今までの経験にない王冠だ...」
男性は目を輝かせてじっくり観察し始める。
「これはちょっと私1人の判断では決められない。一度これだけ持って帰らせてもらうよ。少なからずひとつロールポイント5000下らないな...」
ご...ごせん!?
昨日稼いだのは全体で4000とちょっとだったから、それを一体で上回るって言うのかよ...
「まったく...こんなのを討伐する英雄がこんな寂れた街にいるとはね...」
この街って寂れてるか?
まあいい。
そう言いながら今度は赤い石を手に取って、さらに男性は目を丸くする。
「...これも本物か...。いったいどんなバケモノの結晶石だよ...」
「結晶石?」
「なんだ。知らないのか? 上位の魔族や、幽霊系のモンスターとかの魂の核みたいな物だ。大きい程にその生物の力だとか生命力だとか、精神力が強いことを意味する物だ」
そう聞いてもう一度石に目を向けるが、大きいと言っても、せいぜい大人の手でがっしりつかめるサイズ、硬式野球のボールとソフトボールの間くらいのサイズだ。
対して大きくない気がする。
「普通はせいぜい雨粒みたいなサイズばっかだってのに...。大きくたってミニトマトサイズだぞ」
そうなのか!?もしかしてあの幽霊(謎)って相当やばい奴だったんじゃ...。
(案外俺より強かったりして...)
有り得そうだから笑えない...。
「一応サイズでロールポイントが決まるが、こんなサイズを測ったところで、測定のしようがないな。これも持ち帰りだな...」
え...。じゃあほとんどポイントはいらないじゃん。
「と、言う事だから、一先ずそこの子供の方に入るポイントは、ゴブリンロード一体分に、コボルトロード一体分、あと確定分の10000と、結晶石の過去最高の値の30000先に入れちゃっていいよ」
そう言って男性は部屋から出て行った。
「...4万...?」
「ダンジョンってのは恐ろしいところなのね...いろんな意味で」
部屋に残された俺とレミナスさんは、苦笑いしながら宣告されたポイントに驚いた。
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