決着そして最終階層へ
いつも有難うございます
「行けっ!」
オリハルコンスピアは真っ直ぐにボブゴブリンロードの心臓(人間と構造が同じなら)に向かって飛ぶ。
「筋肉の前では無力っ!」
これまでと同じように筋肉でオリハルコンスピアを砕こうとするが、そのままボブゴブリンロードを貫いたオリハルコンスピアは、奥の壁の方へ進む。
「やべっ!オリハルコンが!」
吸い込まれ...無かった。オリハルコンは壁に弾かれて落ちた。
(オリハルコンを魔法で作ってないからじゃないか?)
そうか。っていうか普通にオリハルコンよりも壁の方が硬くね?
オリハルコン...最強の金属...弱い...。
とか言ってる間にボブゴブリンロードは崩れ落ちた。
「カハッ...」
「カイン!?」
ボブコボルトロードがボブゴブリンロードに駆け寄る。
関係ないけど、ボブゴブリンロードの名前ってカインかよ。
(ネームドだったのか)
ネームドって?
(いやほら...あの吸血鬼の先生とかみたいな、種族的に高貴な種族なんかだと名前があるのが普通なんだが、ゴブリンみたいな下の下の下の種族が名前持ちなのは珍しい)
そうなのか。ちょっとその言い方ゴブリン可愛そうだな。l
「う...きにする...な。お前がこの隙に首を...取ればいい...もう俺という競争相手は居ないんだぞ...」
「ふざけるな!お前...死ぬぞ!」
「あの世で会えるさ...」
「カイン...だめだ...あんなに見栄を張っていたが…私はお前なしでは戦えない...お前と一緒にこれまで数千年生きてきたじゃないか!あんな赤ん坊の時から一緒だったってのに...」
「く...ははっ...何言ってんだよ...」
「た、頼む。これまでお前達を殺そうとしていた私が...こんな事を言って許されるとは思わない...でも...お願いだ...カインを...コイツを助けてやってくれ!もう私達の負けだ!次の階層に行ってくれて構わない!だから...だから...お願いだ...コイツを...」
ボブコボルトロードは泣きながら俺たちに向かってそういった。
ドラマのワンシーンのようだが、至って真剣な目をしているボブコボルトロード。
「馬鹿じゃないの!?あんた達魔族はそうやって敵を油断させて...そんなの信じられるわけないし、そもそも助けるわけないでしょ!さっきまで私達を殺そうとしてたのに!ね?そうでしょガリュー?」
「いや...」
確かにさっきまで俺達はこいつらに殺されそうになったかもしれない。でも...ここでボブコボルトロードまで倒して、2体のボブロードを倒してめでたしめでたし...とはならないと思う。
これまで人格のようなものが無かった魔族と比べて、こいつらが命乞いをしているのに、無視したくない。人間として、いや...元日本人の俺にはそういった感情がある。
ここで倒したら、後悔しかないと思う...
「いや。俺は助けたい。こんなに頼み込まれて...ゴブリンやコボルトにも愛だとか...そういうのがあるんだなって。そう思った。人間と変わらないんだって」
「で...でも...」
「もちろん見境なしに人間を襲ってくるような魔族は許さない。でも、こいつらは違う」
「でももしかすると...」
「それなら俺が倒すしかない。でもこいつらはそんな事しない。そう信じている。だからカルエル。治療してやってくれ」
「...ガリューがそう言うなら...」
そう言ってカルエルはボブゴブリンロードの方へ進む。念のため俺はその後に続いて護衛する。
「あ...有難う...本当に...」
ボブコボルトロードは顔を大きく歪めて泣いた。
大粒の涙が床に落ちる。
「裏切らなければなんて事無いわ」
そう言ってカルエルはボブゴブリンロードの治療を始めた。
♢♢♢♢♢
「...さっきまで...悪かった」
傷が癒えて、全回復したボブゴブリンロードが、傷を癒して力を使って疲れたカルエルに礼を言う。
「傷が傷だから、治すのに凄い力を取られた」
カルエルはそう言うと大きく深呼吸をする。
「本当に...その...有難う。恩は忘れない。生憎このダンジョンから出られないが、そうしなくても出来るような例ならいくらでもする」
ボブコボルトロードがまだ涙目な顔を向けて言う。
「じゃあ次の階に行きたいんだけど」
「ああ。その椅子の下だ。最後の階層だ。私達も知っているのはこの下が最後の階層であることと、このダンジョンの長がいること。ダンジョンの長には、近ずいてはいけないと、本能が語りかけてくるような恐ろしいやつだ。気をつけた方がいい」
こいつらでも恐ろしく感じるとか...バケモノかよ...
(お前も十分バケモノだし、っつうかこんなゴブリンとコボルトなんてそもそも規格外だし、こいつらも十分バケモノだぞ)
そうか。強い人と出会いすぎでそこらの感覚が麻痺してんな。
「忠告有難う。先を急ぐから。何かあったら階段登ってくる」
「あ、もう行くのか?もうちょっと礼をさせてくれ」
「また今度な」
そう言って俺達は最後の階段を降りようと椅子をどけると、下から黒い煙のような何かがモクモクと出てきた。
「な、なんだ!?」
「それだ、その煙が恐ろしさを醸し出しているんだ」
後ろの方でボブゴブリンロードがそう言った。
何?雰囲気的にとかじゃなくもう物理的に見える恐怖なの?
いよいよ本格的にやばそうだ。
俺は光魔法の力を強めて、階段を降りていく。
ドラマっぽい急展開で命乞い。多少雑かもしれないです。そのあたりは申し訳ありません。
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