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ガリューの試験

今回いつも以上に長いです。と言っても、毎回毎回そこまで長くないので、この位がちょうどいいかもしれませんね。


いつも読んで頂いてありがとうございます。

試験。白魔道士以外全部受ける事になった(っても自分でそう決めたが)俺。


ロールの説明された順に試験を受けることとなった。

最初は黒魔術師。


用意されたモンスターは、少し素早いウサギと犬の合体したような動物(以下犬兎)。魔獣なのか動物なのか判断出来ないが、ここで用意されているということは、特に問題なく狩って良いわけだ。

10匹ほどの犬兎が並べられ、一斉にその場で動き始める。跳ねたり走ったり。


「そこのモンスターを5匹以上討伐できれば試験は終了です。戦闘クエストでは最下級クエストに位置するモンスターなので、大した強さはないですが、一応何かあれば言ってください」


そう言うとギルドの人が後ろへ下がる。

何も言わないことからもう開始していいのだと察した俺は、いつも通り氷の柱を作る。正直一瞬で放とうと思えば放てるが、見栄えは大事だ。どんなにうまい料理も見た目が良くないといけない。まあ、見栄を張ってるようなもんだ。まあ、威力も弱くはないから、ただの見栄はりではないけども。


5本の氷柱の構築が終わった。俺は必要最低限かつ正確な魔法を放つ。最近は大人数が相手の戦闘が多いから、これからは常時心がけていきたい。

と、考えているうちにも、氷柱は犬兎を貫き、壁に突き刺さる。

壁壊しちゃったけど大丈夫かな...?


「速いですね…流石、全ての試験を受けるだけはありますね」


と、ギルドの人がやってくる。


「次は拳闘士ですね。あの人を倒せたら合格です。ですが、万が一負けてしまっても、こちらの判断で合格となる場合もありますので。なにせ人間とモンスターでは勝手が違いますしね」


そう言ってまた後ろに下がるギルドの人。


あの人と言った時に指を指した方向を向くと、1人の男の人がたっていた。筋骨隆々いかにも格闘家と言ったところ。


「君。いい筋肉だ。バランスがいい。魔術師ではなく格闘家にならないか?」


「いや遠慮します」


ちょっとした会話をした後に、試合開始。因みにカロンとソニックの相手をした人ではない。2人ともダウンしている。特にカロン相手だった人は可愛そうだ。一撃で吹き飛ばされたしな。勿論カロンは大して本気出してたわけじゃなく、少し手加減してたらしいんだけどな。


そんなことを考えているうちにも、相手からのパンチが右左から。蹴りも右左からと、連撃が加えられる。明らかに試験を落とさせようとしている。俺にとっては大したことないが、人によっては1発KOの可能性もある。黒魔術師の時と難易度の差がすごい。


「避けるか…。見た時から思っていたが、君は本当にセンスがある。私の連撃を余裕でかわすなんてな」


「明らかに試験の難易度を超えてるんじゃないかと思うんですが...」


止まらぬパンチを避けながら、質問する。


「君ならこれくらい楽勝だろう?もっと速くてもまだ余裕があるんじゃないか?君も避けてばっかじゃなくて攻めてこなゃ」


「じゃ。お言葉に甘えて」


俺は迫り来る二つの拳を両手で押さえ込み、頭突きをする。怯んだところで脚めがけて横からの蹴り。堪らず倒れる相手は、受け身も取れずにその場に倒れ込む。


「なんでそんな力が出るんだ...?」


「秘密です」


種明かしすると、ただ単に魔力で身体強化していただけだ。反則のように聞こえるが、やってもいいらしい。そもそも、相手もやってたし。随分とまあ本気出したもんだ。俺が本気出すと身体強化もえげつない事になるから、数十パーセント出せばいいとこだ。それ以上は相手の命に関わる。俺だって伊達に二十数年料理と武術をやって来てたわけじゃない。


「あぶないなぁ。そんな力出して怪我させちゃったらどうするんですか!?」


「いやあ。悪い悪い」


俺の蹴りの入った足をさすりながら、ギルドの人に受け答えをする対戦相手の男の人は、足を引きずりながらこの場を去っていった。


「さあ。チャッチャとやっちゃいましょう。次は...剣闘士ね」


その言葉とともに、木刀を持った女性がやって来た。


「そんな子供と戦うなんて聞いてないんだけど」


「まあまあ。やってあげてよ。ほら君も行かなきゃ」


同じ木刀を渡され、またこれまで通りに戦いを始める。


いきなり相手の女の人が剣を俺に叩きつける。とっさにガードをする。

よく見ると犬耳の人だ。獣人だろうか?


「悪いけどさっさと終わらせてもらうよ。もう十年経ってから来な」


「それは無理ですね」


カンっという音が鳴り響き、剣と剣がぶつかり合う。3、4、5回と守り続けた俺は一気に反撃に出る。

相手の木刀を弾き、一瞬のスキで相手の手だけを狙って突きを放つ。木刀だから血が出ることもない。いきなり加速した俺に驚きつつ、痛そうな顔をしている。


だが、休ませる気などない。一瞬止まったスキを見計らい、更に腕を叩く。


「グッ...」


痛みに耐えられなかった相手の女の人は、木刀を手放してしまう。


「負けだ...。私の負けだ」


「ほんと見てて危なっかしいんだよね…。いつもの試験と同じように行かないもんかなぁ...」


ギルドの人が困った顔をしている。


「まあ私は関係ないか。次は...騎士?」


騎士の試験は免除された。というのも、黒魔術師同じく例の犬兎を倒すのだが、条件は鎧を着ること、剣で戦うことだったので、「君には必要ないかな」とかなんとか言われて免除された。


「そうしたら戦士なんだけど...」


奥の方から男の人がやってきた。


「休日出勤はからだにひびくなぁ...」


「はぁ...。あいつしかいないのかぁ」


ギルドの人がなんとも言えない表情でやって来た巨体の男を見る。


「まあ...その...君も頑張ってね」


なにか気になる言葉を残して、ギルドの人がこれまで同様に下がる。


「君たちのせいで休みが台無しだ...ふぁああ」


あくびをしながらこっちを睨んでくる巨体の男。


「君は少しは腕が立つよねぇ?暇つぶしになってくれるなら丁度いい。さあやろう。早くやって早く帰って寝よう」


そう言うと、なんの掛け声もなく突っ込んでくる男。


戦士の試験は、魔法と剣で戦えば良いというだけ。それならそっちも免除で良くないか?と思ったが、敵も魔法と剣を使うから守備的な面も考えてとのこと。


俺はいきなり突っ込んできた男を避けて、咄嗟に借りた木刀を叩きつける。

バシッっという音がしたかと思いきや、その直後にはバリッと音を立てて木刀が折れる。


「なっ...」


「効かないなぁ」


男は持っていた斧を俺に向かって叩きつける。

咄嗟にステルスバリアを展開。

斧はバリアに当たった瞬間に、ありえない衝撃で吹き飛んだ。


「ンゴッ!!」


その斧は男の手から離れ、中を放物線を描くように飛んでいき、後ろを向いていたアッシュの背中に柄の部分が直撃する。

アッシュは意識はあるがやばい顔をしている。

腰を抑えて倒れている。


「ぬう...不可視障壁か。なかなか高度な技だ。それでいて耐久度も高い。お前なら本当に俺を楽しませてくれるんじゃないか?」


眠そうな顔が一変。その顔は真剣な顔に変わっていた。


男は腰から更に剣を取り出す。


俺も負けじと次の一手。氷柱を構築。男の肩めがけて放つ。


が... 鈍い音と共に氷柱は砕け散る。男の肩に少し傷がついた程度。どんだけ硬ぇんだよ...


俺が怯んだ隙に男は剣を振るう。ステルスバリアを張って守りきる。


すると男の剣は先程の俺の木刀同様に折れる。


「ダメだこりゃ...このままじゃどっちも勝てねぇ。俺もお前も硬すぎる。いつまでたってもダメージ入んないわ」


そう言って男はいきなり後ろを向いて帰って行った。


「ああ...もう...ヒヤヒヤしたぁ....君もよく生きてたねぇ...あんなバケモノと対等に戦うなんて...」


ギルドの人がやってくる。


「君みたいな人が不合格なわけないよ。試験するまでもなく合格だったね。ちょっとそこで倒れてる子は治療してあげるけど、君は別に怪我はないよね?」


「あ。はい」


「しっかしなんで君が戦う相手は皆あんな本気出すのかなぁ。まあキロはいつも通りだったけど…」


「きろ?」


「ああ、さっきのデカ男。いっつもあいつが来ると死者が出る。人呼んで戦士試験の死神。私たちじゃあ対抗できないのよねぇ...」


死人が出るって...たかが試験であのデカ男は何やってんだ…。


「手加減って言葉を知らないのよ。しかし君が戦った相手は皆本気出してたよ。君の歳で皆倒すとか夢見てるみたい。君だけじゃなくて君の仲間もバケモノ揃いだけど、君はキロ以上のバケモノかもね...」


「ははは...」


返す言葉が見つからない。たかが試験で死人出す男と比べられたくない。


「それよりあの子大丈夫かな? メチャクチャ苦しんでるけど」


パッと振り返ると、カルエルに治療されているアッシュが目に入る。

徐々に表情は和らいできているが、まだまだ痛そう。と言うか骨何本か折れてんじゃないか…?


「あの子直し終わったら手続きするね」


「あ、はい」


こうして俺たちは試験を無事に終えて、やっと冒険者登録の手続きをすることになった。



アッシュ背骨バキバキ事件発生。

今回出てきたキャラの殆どはもう出てこないと思います…多分。


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