冒険者ランク
「そもそも冒険者と一言に言ってもその中にはいくつかのロールがあり、ひとつひとつに細かなランク分けがされています。今回はこのロールの紹介をしましょう。パーティーの要、攻撃に特化した魔法使いである黒魔術師。同じく攻撃特化の武術使いである拳闘士剣を使う剣闘士」
こちらガリュー。さっさと冒険者登録して都に向かいたいところなのに座学が始まりました。いや、実をいうともう冒険者の契約的な話を延々と聞かされている。死んでも責任取れないとか、いくつかのルールがあって、ルール破ったら刑罰に処すとか。
「パーティーの盾となる存在である騎士。オールラウンダーな戦士。パーティーの生命線である回復役、白魔道士。何かとお世話になる雑用。敵を引き付ける囮。と、基本は8つのロールがあります。何故今回こんな話をするかと言うと、冒険者登録をする際に、一人につき一つ以上のロールを選ぶ必要があるためです。と、いうことで、皆さんには今、このロールの中から一つのロールを選んでもらいます」
え?いきなり選んでいただきますって言われてもな...。
「もちろん、そういった所で、今すぐ決めるなんて無理な話ですよね。なので、今からロールの詳しい説明をするので、後日決まったらご連絡をください。と、いうことで、今からロール一つ一つの詳しい説明をしますね」
「...」
今すぐ決めてもいいんだけどさ、一つ言いたいことがある。話が長いんだよ...。
と、言いたい気持ちはあるものの、胸の奥にそっと仕舞って話を聞く。
「このロールは、試験にも関わってきます。例えば、黒魔術士や拳闘士、剣闘士のアタックロールを志望する人は、こちらのギルド側で用意したモンスターを数匹撃破する試験になります。と言っても、これといった取り柄のない、最下級のモンスターですので、安心して下さい。要は最低限そのモンスターを倒せないと、冒険者にはなれないわけです」
冒険者のボーダーラインがそのモンスターってわけか。それが倒せなきゃ死ぬよっていう警告なんだろうな。
ちなみにモンスターってのは、人形生物に危害を与える生物の総称だ。魔物に魔獣や魔族は勿論、熊や狼等の凶暴な肉食獣や、まだあった事ないが食人植物なんかも...まあいい。話してるだけで寒気がする。
「騎士や戦士と、私たちギルド職員の戦闘試験を受けてもらいます。一応基準を満たしている場合は、我々の判断で試験合格を決定します。白魔道士は、怪我人の治療を一定人数分行うか、それに相当する重傷を持つ患者を病院から連れてきますので、その患者を治しきれたらクリアです。まあ、7人くらいが多いです。怪我の重さによって判定基準は変わりますが、一般的に回復魔法が使えたら、クリアできる範囲内でしょう。雑用と囮は、特に試験はありませんが、1人でクエストを受けることは禁じられています。因みに、採取系クエスト専用の冒険者もこのカテゴリーに入ります」
雑用と囮...。名前も雑だが説明も雑だし、やる人いるの...?
(まあ、戦えなくてもお金になるなら冒険者って奴も少なくないんだろ)
そういうもんか。
「又、囮を除いた他のロールには、ロールランクというものが付けられています。クエストをクリアし、一定条件を満たすとロールランクが上がります。中には高ランクの冒険者しか挑めないクエストや、ランクによって報酬が上がったりもします。ランクは、1から50まで存在し、ロールランク50ランクのロールを複数持つ
冒険者は世界で7人しか居ないと言われています。そして、すべてのロールランクの合計に、冒険者の階級を加えた物を、冒険者ランクと呼びます。黒魔術師ランク30に白魔道士ランク10の冒険者階級10の場合だと、冒険者ランクは50です。勿論、一つのロールを専念するという人もいるので、あまりクエスト条件になりにくいのですが、この冒険者ランクも又、ロールランクと同じような効果があるに加え、ギルドと提携している店では割引が効いたりもします。囮に関しては、特にロールランクは上がりませんが、冒険者階級はクエストクリア数に応じて上がります」
一気に固有名詞が沢山出てきて、頭の整理が追いつかない。ちらりと横を見ると、カロンやカルエル、ソニックなんかはもうチンプンカンプンという顔をしている。貴族勢は案外大丈夫そうだ。貴族勢は英才教育を受けてるんだな。
因みにチビッタは、話を聞いているのかは分からないが、一先ず目を輝かせている。恐らく目の前で手を振っても反応は無いだろう。
「では、冒険者階級とは何か。冒険者階級とは、クエストを受けた数や、その難易度によって設定された貢献度を元に、基準を作り、目に見えるように表したものです。実際の力量とは異なり、どんなに戦闘に自身はなくとも、薬草拾いを続けるだけで気が付けば上がっています。要は、冒険者として、どれだけギルドに貢献したかを表すので、その冒険者の信頼度や自主性の判断に使われます。貢献度は、難易度が高く、報酬の少ない、さらに世界のためになるクエストほどに多く獲得できます」
「細っか...」
カルエルがそう言うと、みんなも同じような顔をする。ソニックに至ってはもう寝そうだ。
「まあ確かに細かいですが、必ずこの説明をするよう、義務付けられているのでなんとも...」
説明していた人も、少し呆れかかっている。
「ですが、これでもうほとんどの話は終わりました。あとは皆さんがロールを決めるだけです。選び直しは可能ですが、自分に一番合ったロールを選ぶのが一番です。今日はもう帰っていただいても構いません。後日ロールを決めるという形でも、全く問題はありませんので...」
「いや。時間が無い。今日決めよう」
そう切り出したのはJr。
そうだね。とカルエルも頷く。
アルカナ公国1日目。眠くなるほどに細かい区分けの話を聞き終え、ついに冒険者生活を始められそうだ。
来ました。この世界特有の細っっっっっっっっかい区分けが。もし全部のロールをオール50ランクのフルコンプリートした場合、貢献度除いても350ランク...こまけぇぇぇええええ!
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