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世界一の魔術師? ですが本業は料理人ですので 〜転生料理人の異世界魔法生活〜   作者: クリップキラー
一幕 青年期 ライコウ王国脱出
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アルカナ公国とチャリー商会

今回もいつもの2倍バージョンです

アルカナ公国への最初の1歩。国境越えるなら、やっぱりせーのでジャンプしたいというさり気ないこだわりがある。


「よっし。せーのでほい」


俺はジャンプで門をくぐる。

するとJrが


「なーにやってんだよ」


と、言ったもんだから、理由を説明すると、


「そんなこと言ったってなぁ。あの森もアルカナの領地だから、既に国境は越えてるんだぞ」


「え...」


なんか悲しいうえに恥ずかしい。


「ほら!二人とも何やってんのよ!速く入国しちゃいましょーよ」


カルエルの呼び掛けで、俺とJrは、奥の入国審査(?)カウンターの方へ向かって行った。


それにしても、楽だ。出国手続きの時には、ランクカード作ってて時間かかったけど、ランクカードがある今は、係りの人に見てもらったらはいオッケーだからな。


特に何も起きず、すんなりと入国ができた。正直都の方で戦争起きてて入国とかそういうの大丈夫かどうか心配だったが、大丈夫そうだ。


街に入ると、ライコウ王国に比べると劣るものの、ちょっとした賑わいがあった。国で争いごとが起きているのに、能天気だな。

と、思っていたが、表通りを出ると、少しどんよりした空気が漂い始める。

あちこちで都から避難してきたと見られる、避難民のような人達が道のはじっこで座っている。そもそも都に住んでいた人なら、この街に家なんてないだろうし、日用品や食料、最終的に行き着くところはお金まで、何もかもを失っている状態な筈だ。

まあ、元からいた貧民街か何かの人かもしれないけど。もちろんそういう人がいない国が一番なのは確かだけど、流石にこの文明の力ではそれは到底無理だろう。昔から栄えていたヨーロッパ諸国でも、歴史全体を見れば、最近になってやっと貧民街の人たちが目立たなくなった、少なくなったと言っても過言ではない。


閑話休題。

人のことを気にする余裕は今の俺たちには無い。

今は、チャリーさんに連れられ、チャリーさんの店の方を目指して歩いている。


「反乱の影響かな?明らかに家無しの人が多いよ」


と、カルエル。


「さあな。僕達にとってはあまり関係ない事だ。早く帰れるように出来ればそれでいい」


とアッシュ。アッシュは俺以外の人との会話では、元の口調に戻るらしい。最近気づいた。

ん?最近...?色々あり過ぎて時間の観念がおかしくなったな。アッシュが学校に来たのもつい最近じゃないか。


「馬鹿言うな。関係ないわけないだろうが。都にある魔法船に乗るはずだったのに、都は陥落寸前。また次の国に行かなきゃいけないだけじゃないぞ。僕の父だって仕事が増えるし、世界の情勢が一変するぞ」


と、Jr。Jrのお父さんはあのキャビアン王だからな。仕事も確かに増えるだろうな。


「ほんとだぞ!勇者一族は呑気でいいけどな、俺達貴族家系は大変なことになるんだぞ」


ナスもJrに加勢。お前から貴族的なオーラ出てないけどな。


「過去に例がないんだぞ。国がひっくり返るなんて。そんな事が起きたら、どうなることやら...。場合によっては覇者だって黙っていない。謎大き覇者だ。何をされるか分かったもんじゃないぞ」


Jrが後に続けた。未だに意味不明な覇者と王の関係。そもそも王より上の存在って神くらいしかいないと思ってたわ。


「まあまあ。そうギスギスしないでくれよ。そろそろ着くぞ」


そろそろ喧嘩になりそうなところで、チャリーさんが止めに入る。


「しかし驚いたな。貴族の息子さんがいるとはね。出来ればうちの商会とも取引していただきたいものだ」


「え?チャリーさんって個人経営じゃ無かったんですね」


「まあこれでも商会を引っ張っていく立場として頑張っているんだけどね」


「え?もしかして社長さんですか?」


「しゃ、シャチョー?いやそれがなんだかわからないけど、一応私は商会の長。商会長なんだよ」


うお。いきなり社長降臨か。自ら仕事に出る社長ってのはいい人だな。もしかするとただ働き手が足りないだけかもしれないけど...


「ほら。着いたよ。ようこそチャリー商会へ」


そこには大きなお屋敷が建っていた。


「でか...」


流石にライコウ王国の城より小さいが、城と比べるのは馬鹿馬鹿しいか。


「店じゃなくて商館だなこれ」


「ああうん。そうだね。一先ず入って。お茶でも出すから」


言われるがままに屋敷(?)に入っていく。


「チャリーさんがこんな大きな商会の長だとは...」


「そうは見えないよね。でもね、これが事実なんだよね。正直馬車の1台なんて大した額でもないんだけど、勿体なくてね。だからあの時も時間かけて直してたんだよ」


と、話していると、奥の方から人が出てくる。


「あれ?商会長?今日はライコウに行かれたのでは?」


「いやぁ。ちょっと死にかけてね、この子達に助けてもらってね」


「え?死にかけって...」


「丁度いい。メイ君。お茶を人数分頼むよ」


「うえ?ちょ、商会長!?死にかけってどういう...」


「話は後だ。客人をもてなすのが最優先なんじゃないかな?」


「は、はあ...」


そう言うとメイと呼ばれた人(女性だった)はどこかへ行ってしまった。


その後も俺たちは広い商館の中をチャリーさんに従って歩き続ける。


「しかし、何故こんなに小さな国の端の街に拠点を置いたのです?」


と、アッシュが聞いた。


「ここはね、一見ただの小さな街なんだけどね、商業をする上ではとても、良い場所なんだよ」


「と、言うと?」


「君たちも見てきたはずだが、ライコウ王国のサンドラン。すごく賑わっていただろう?あの街に物を売れば、高く、大量に売ることが出来る上に、行き来が楽だし、時間もかからないんだよ」


「サンドランで商売をすればいいんじゃ無いんですか?」


「あの国はお金が違うし、土地が高いんだよね。その点こっちなら、大したことない普通の街の土地だから、安いんだよ。さらに、こっちならほかの商人から商品を受け取って、代わりにサンドランまで運んであげたりしてお金を稼げたり、サンドランで仕入れたものをこっちで売ったりできるから効率がいいんだ」


すげぇ。頭良いんだな。確かに少ない資金からでも、それなら経営は楽勝で出来るくらいのお金が入ってくるよな。


そうこうしているうちに、俺達はある部屋に連れられていた。


「まあ適当に座ってていいよ。お茶は少し待っててくれ」


「あ、はい」


少し待つと、メイさんがやって来た。お茶を持って。


「よし。じゃあ本題に入ろう」


いきなり話し始めるチャリーさん。


「メイ君はそこで少し待っててくれ。さてガリューくん。君達は魔法船に乗りたいそうだが、あいにくこの国唯一の魔法船の停泊する都が反乱で大変なことになっている。ここから馬車で一日足らずで都には着くだろうが、そこでどうなるかは予想もつかない。かと言って、他の魔法船乗り場に行くとすると、この近くの国でも馬車で1ヶ月はかかる可能性がある。というのも、この国周辺はさっき言った通り、魔物の増殖が予想される。一週間もすればすぐに魔物や魔獣で街の周囲は埋まってしまうかもしれない。それはこの街だけじゃあない。ほかの町や他の国でも同様に、金目当ての冒険者達が都へ向かっている。3日ほど放置するだけで群れが生まれるほどの魔物や魔獣が、もう一日以上放置されることになる。普通に隣国に進むだけでも、馬車で数日はかかるだろうが、それに加えて魔物やらなんやらがいつ襲ってくるかも分からない」


「....」


「君達なら魔法で生き延びれるかもしれないが、時間がかかることに変わりない。そこで...メイ君。あの紙を出してくれ」


「こちらです」


「ありがとう。これを見てくれ」


メイさんが差し出した一枚の紙。それを俺達に見せたチャリーさんは、新たな提案を持ちかけたのだった。


新章ですね!


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