キノコキノコキノコ
歩いていくとやがて夜になり、一気に暗くなる。
光魔法で光を灯すので、暗かろうがなんだろうが関係ないのだが。
未だに学校のローブを着ているんだが、これがすごく有能。このローブは、ある希少種の魔物の毛皮を元に作られているようで、その毛皮で、夏は涼しく、冬は暖かく、という有能な服を生み出せるらしい。それがこのローブ。よって寒くはない。
夜の森でもこれなら安心だ。
カロンはこのローブを着ていない上に、半袖の服に短パンという感じだ。見ている方が寒そうなんだが、大丈夫かと聞くと、
「竜人族は氷山でも生きていけるから...」
とのこと。すごいな竜人族。
竜の血を受け継ぐって話も納得かも。
夜になると、森だからやっぱり危険なわけで、今日はここら辺でストップすることにした。
と、言うわけで夕食だ。
キノコ大漁の今日は、キノコオンパレードだ。
キノコを蒸して蒸しキノコ。
焼いて美味しい焼きキノコ。
刻んで細かくご飯モドキ。
例の野菜だし(残ってた)や山菜っぽいやつとか猪(狼とセットで襲ってきた)等をいれ、やはりキノコを入れてキノコ鍋。
兎に角きのこのオンパレードな夕食の完成だ。
「贅沢言ってすまないが、キノコしかないのか?」
Jrがそう言った。
「悪いな。それしかないんだ。腹壊したら、これ飲んでくれよ」
そう言って俺は毒消しを出す。
「...大丈夫なのか...?」
アッシュが毒を見るようにキノコ達を見つめる。
実際毒なのかもしれないが、仕方が無いだろう。
「キノコキノコキノコ...どこ見てもキノコしかないわね」
カルエルのその言葉に、我慢して食ってくれ。と、心の中でつぶやき、誰も手をつけようとしなかったので俺が先に食べた。いわゆる毒味だ。
数分たっても変化がないのを見ると、皆も恐る恐るキノコを食べる。
♢♢♢♢♢
「一生分キノコくった...」
と、アッシュ。流石に大袈裟だろ。
いつもの2倍ほどの時間をかけて夕飯用のキノコがなくなった。一気に食うとこんなにも辛いものなのかと、改めて感じたのも事実ではある。
「寝て起きたら一人死んでたりしないよね?毒とか平気なんだよね?」
やたらと心配するカルエル。
「そんなに心配なら、寝る前に一滴ずつ飲むか?」
と、毒消しを差し出す。
「そうしたほうが良さそうね」
カルエルはそう言って一滴の毒消しを飲む。
それに習ってほかの皆も毒消しを飲んでいく。もちろん俺も。まあ大丈夫だと思うけどさ、一応な。
この毒消しには結構な信頼があるので、俺たちは安心して眠りについた。
ーーーーーーーーーー
アルカナ公国
首都カナムーン
爆発は収まり、代わりに起こったのは、衝突。
衛兵は各々の担当する場所へ戻ると、国民が暴れているではないか。
衛兵としては、国民と対峙するのは最も避けたいものだ。犯罪者や不法入国者、敵国の兵士等なら本気で戦っても言い訳で、躊躇など一切なく戦える。だがそれが一般市民ともなれば、話は変わる。
まあ事実、器物損壊という形では、国民が暴れていればそれはそれで犯罪ではあるわけだが、だからと言って面と向かって一般市民と戦闘しろと言われて、躊躇しないわけがない。
衛兵が戸惑っている間にも、城に入って行こうとする人々。我に帰ってその人波を止めようとするものの、時既に遅く、何人もの人がその衛兵の壁を突き抜けていく。
城でも混乱は勿論起こる。少数とはいえ、市民が城に入ってくるのだ。城内の衛兵は1人1人を捕まえて縄で縛る。
それ以上の措置ができない。流石に即殺すなんて事が出来るわけもないわけだ。
城では混乱が絶えないが、それは街でも同じ事だった。
人によっては狂ったように剣を振り回し、新政権がどうのなどと言うものもいれば、我関せずというふうに平然とした人。混乱し逃げ回る人。
元々このクーデターのことを知っていた人が多かったようだ。それもその筈。そもそもこのクーデター、革命軍の人間が焚き付けたのだから。
混乱は留まるところを知らず、何も知らなかったものは首都から避難し、街は燃え、瓦礫の山となった。
王は急いで冒険者を集めるように指示した。金は払うから都を守らせろと。
こうして始まる代理戦争。革命軍が焚き付けた国民と、王国が雇う冒険者の戦い。
最初こそ国民側の力は強かったものの、都にたまたま居た冒険者の助けで、五分五分の戦いが1晩中行われた。
両軍が疲れ果て、本当に一時的に一時停戦状態となったとき、夜は明けていた。
戦いは終わり、防衛の末に公国側の勝利に見えたその時、革命軍の軍隊が都にたどり着いたのである。
感想、ブクマ、評価の方もお願いします!




