情報収集
国境の街サンドラン。
他国との交流が非常に少ないこの国、ライコウ王国の中で唯一の国交が認められた都市だ。ライコウ王国の独特な文化と、他国の文化が入り混じる。それがこの街の特徴だ。この街は商業がとても発展している為、街自体は連日祭りのような賑わいを見せる。この国でも、王都と肩を並べるほどの有名都市だ。
ここまでの説明を聞くと、何かと長崎の出島と被る部分が多い。そんなサンドランで、俺は一先ず宿を取った。空を飛ぶと魔力消費が半端ない上に、ドラノを持ち上げていたため、消費量超アップしていた為、正直ヘトヘトだ。仮に今日助けに行きたくても、敵の居場所が分からない上に、魔力切れを起こしてしまう可能性もあるので、今日は情報収集をする事にした。
因みに宿のお金は、ドラノのポケットから少々借りさせてもらった。後でオリハルコンを少し渡しておこうと思う。あくまでも借りただけだからな。盗んだわけじゃないぞ。
当の本人はまだ夢の中のようで、まだ眠っている。体中に刺さった弓矢は全部抜いた。薬を買おうか迷ったが、傷はすぐに塞がった。これもマモンの能力なんだろうか?ドラノは魔力を吸い取って、自分の力にするとか言っていた。自分の力にするなら、自動回復みたいなことが出来てもおかしく無いと思う。
まあ、そういう事は今はどうでもいい。とにかくだ。情報収集をすべきだ。情報収集といえば、やっぱり酒場でしょ。ゲームでも、異世界転生系小説でも、仲間探すなら酒場、腹が減ったら酒場、宴なら酒場、情報収集や相談事も酒場、挙句の果てには酒場の上に宿があるなんて事もあって、ゲームの勇者は一生の半分は酒場にいるんじゃないの?って言うくらい万能な施設。それが酒場。え?言い過ぎ?そうでも無いと思うけど....
まあいい。俺はひとまずドラノを宿の部屋に寝かして、1人で酒場を目指す。街は王都よりも賑わっていた。
「さあさあ!魔力回復の実だよ!今日入荷した珍しい果実だよ!銀貨一枚!安いよ!」
俺は魔力回復という言葉に少し足を止める。ゲームなどではそういうアイテムは必須だが、果たして現実にあるのだろうか?と、思っていたが、本当にあったとは。
見た目は青い林檎。青いって、緑の青いじゃ無くて、真面目な方で文字通り青い。なんか病気なんじゃね?とも思える程にやばそう。サイズは普通に林檎。青いやばそうな林檎に一銀貨(日本円で10000円)も払いたくない。高すぎだろ。
(魔力回復をするアイテムなんてそんなにたくさんあるわけが無いだろ)
知らん。この世界の常識であったとしても、俺にとっては常識でも何でもないのだ。
とにかく、買うお金もないので、すぐに酒場の方へ向かう。
ーーーーーーーーーー
酒場についた。まあ、普通に酒場だ。何の変哲もないし、勿論どっかの勇者パーティーがいる訳でもない。そもそも勇者がこの世にいないんだけどね。
無事に酒場につくことが出来てよかった。また攫われたりでもしたら、流石に洒落にならない。
と、そんな馬鹿な考えを持ちつつも、情報収集を開始した。
さて。誰に聞くのがいいか。
1.物知りそうなおじいさん
2.強そうな冒険者風の男
3.酒場の店主
4.飲んだくれのオッサン
まず4は却下だな。変に絡まれても困る。堅そうな1も、案外何も知りませんとか有りうる。まずは3かな?
そう思って、酒場のカウンターの方へ向かい、座る。
すると店主が、
「おいおい。坊主。別にここに来ちゃいけねぇ訳じゃねぇが、ちと若すぎるんじゃないか?坊主は酒飲めないからな」
「いやいや。別にお酒のみに来たわけじゃないです。少しばかりあなたに聞きたいことがありまして」
人に話を聞く時は礼儀が大切だ。
「しっかりした坊主だ。ほれ。水だ。で?話ってのは?」
店主は俺に水を差し出し、話を聞いてきた。意外と優しい。
「ここらで子供を誘拐をしているようなグループの話を聞いた覚えはないですか?」
こちらも簡潔に質問をする。すると店主が、
「うーむ...俺は基本この店と家を行き来する以外で、外には出ないからなぁ。そこにいる男に聞いてみるといい。あいつは何つっても5級の冒険者だ。結構なベテランだぞ。そろそろ4級昇級試験に受けるとか言ってたしな」
「有難うございます」
俺は店主に礼を言って、店主が教えてくれた冒険者の方へと歩いた。因みにさっきの選択肢の2だった人だ。ジェントルマン風の髭が、高貴な中年感を出している。ベテランというだけあって、ランクもまあまあ高い。
冒険者も例の細かい格付けがある。〜10級までは楽々らしいが、〜7級に行けば、上級者、〜5級ならベテラン、〜3級で天才、〜1級で達人級、それ以上は神クラスと呼ばれ、神クラスに至っては国に1人、大陸に1人、それくらい少ないらしい。5級なら十分なベテランと言えるだろう。どうやって昇格するのか知らなかったが、まさか試験するとは思わなかった。
閑話休題。
俺は冒険者の方へ向かい、話を聞く。
「すいません」
「ん?どした坊主」
声を掛けると、冒険者はこちらを向いてくれた。
「少し聞きたい事が有るのですが...」
「なんだ?答えられる範囲内だったら答えてやるぞ」
思ったんだが、この国の住人は結構質問に答えてくれるんだよなぁ。助かるし、フレンドリーだからいいんだけど、そのうち大事なパスワードまで教えちゃいそうだな。
「ここらで子供を誘拐をしているようなグループの話を聞いた覚えはないですか?」
店主に聞いたことと全く同じ聞き方をする。すると冒険者は、いきなり暗い顔をして、
「諦めろ」
と、言った。
「え?」
俺はどういう意味かわからず、思わず聞き返してしまう。
「毒の盗賊団に友達でも攫われたんだろ。あいつらに盗まれたものは、あいつらからは取り返せない。毒の盗賊団は、圧倒的な人数と、エルフもびっくりの弓の技術によって、絶対的な強さを確立している。それこそもう天才や達人を寄せ集めないといけない」
毒の盗賊団か。1発で固有名詞が出た所から、このグループで間違いないだろう。それにしてもそんなに戦闘員が多いのか。それで俺達を捕まえるのに、あんなに人数を送り込んだわけか。
「奴らは何処に居るんですか?」
「駄目だ。教えられない。君が行っても死ぬだけだ。友を大事に思うのは重要だ。だがな。自分の命はそれ以上に大切なんだ」
ぬう。教えてくれないか。そりゃそうだよな。俺みたいなチビ(誕生日忘れたけど、確か8歳だったと思う)が達人クラスを集めないと勝てない所に1人で行こうとしてるんだから、止めない方がおかしいよな。
「ここじゃ。お主地図は分かるだろ。この地図のここにアジトがある」
そう言って、後ろの方で酒を飲んでいたおじいさん(選択肢1)が手書きの地図を渡してくれた。
「ま、マスター!?」
冒険者がおじいさんを見て驚く。マスターってなんだ?
「有難うございます!」
少し疑問が残ったものの、とりあえず礼を言って、立ち去ろうとしたその時、
バンという音とともに酒場の扉が開く。
「やっと見つけた!ガリュー!」
そこには、ナスがいた。
いつも有難うございます。
皆さん。戦闘中にナスが居なかったのに気づきましたか?さて。ナスは何してたのやら?
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そろそろ60000pv!




