そして帰還
なんでこの時期に?それを突っ込んだ人は負けです
Jrたちの、かなり重要な話も終わり、あとはもう帰るための馬車の話をするだけだ。
「ひとまず、今日は馬車を出すことができないだろう。時間的な問題というよりかは、その他の仕事で忙しいのと、急な手配ができる馬車は残っていないはずだからだ。明日の午前中には馬車が出せるはずだ。皆には、その間、この国でゆっくりして行ってもらおうかと思う」
キャビアン王は、そう言って、済んだ食事の皿をその場に残して、立ち上がった。
「私は仕事がある。ここ数日やってきたことをいくつか中止しないとならなくなったからな。特にお前の墓は、縁起が悪いから作らないでおくことにするよ」
そう言うと、キャビアン王は立ち上がって、部屋から出て行った。
「私も失礼しようかしら。残りの料理は好きに食べていていいわよ。少しやらないといけないことがあって。荷物を置いた部屋はみんなで好きに使ってもらって構わないから、明日の出発までに疲れを癒しておいてね。食事やお風呂の時には呼ぶと思うわ」
そう言ってJr母も部屋から出て行った。
「またお城でお泊りってか。こうも連日豪華な生活してたら、体がそれに適応しちゃって、後々大変なことになりそうで怖いな」
「そうね。Jrやアッシュ、それにあの変態貴族なんかはまだ可能性ありそうだけど、私たち一般人からしてみれば、入るだけでもレア中のレアって感じだものね」
俺の言葉に、カルエルが反応する。
それにしても変なあだ名をつけられた貴族のおぼっちゃまが可哀想だ。まあどちらかというと自業自得っぽいが。
「まあまあ。楽しめるうちに楽しんじゃおうよ」
当の変態貴族は、まるで一家で大型テーマパークか何かに来たような感じのコメントだ。
ここをどこの夢の国と間違えているのやら。
貴族から見た城っていうのはそういうもんなんだろうか?
「どうせ明日まで何もできないんだ。アルカナにいた時のように仕事もない。冒険者ギルドに向かって仕事を取るのも悪くはないが、時間的にできる依頼があるかどうかも怪しい。下手にばらければ、またどんなトラブルが起こるかもわからない。悪いけどまた誘拐なんて本当に洒落にならないからな。今日は城に皆で留まろう」
Jrが言った。
「本当それは、一番困る。誘拐だけは本当困る。ここまで警戒心を持ち続けてたけど、いくら第四大陸に戻ってきたからって、油断しちゃあいけないな」
俺はそう言って、立ち上がる。
「今日は城で待機だな。何もトラブルが起きないように気をつけよう。このパーティーには、トラブルメーカーが居るみたいだからな」
俺はそう言い残して部屋から出た。
荷物を置いていた部屋に戻り、部屋の確認をする。
部屋にベッドが置かれていた。
ここ数日に見た光景ににか寄りすぎている。
ひとまずすることもないので、部屋に一つだけある窓から外を眺める。
美しい街だ。
窓の外の光景は、現代日本。イメージ的には九州の宮崎や、沖縄みたいなところだろうか。
海あり、川あり、山あり。
きっと現代日本にこんな優れた土地があったのなら、例の夢の国にも劣らないアミューズメント施設あ出来ていただろう。
食材だけでなく、観光資源も優れに優れまくっている。
この世界的に、一般庶民が観光がてら旅行に行くなんてことはほとんどないだろうが、もしもそういった文化があれば、おそらくこの街は観光案内サイトのランキング一位二位を争っているだろう。
海は綺麗。ビーチ的なものは、貴族の間でちょっとブームになっているらしい。
川も綺麗。こっちは比較的庶民でも訪れるようで、(肉体強化すれば)ここからでも釣りをしたり、水遊びをしたりしている人たちが見える。
山はまあ、ある程度道の開発ができればハイキングなんかもできそうだ。
言わなくてもわかる通り、それぞれにそれぞれの特産品もあり、食材のランクは超一流。
もう非の打ち所がないと言っても過言ではないだろう。
こんな素敵な街が、革命軍とかいうバカどもに狙われていなくてよかったと、この光景を見て思った。
目玉である食料生産にも大きな打撃が出るだろうし、こんな綺麗な自然は、数年で再生できるものではない。
そう思いながら、景色を眺め続ける。
以外と飽きないもので、長いこと見続ける。
なんだかんだで、俺は城の窓の外から街並みを眺めるのが好きになってしまったようだ。
何が楽しいかと言われると、答えに困るが、肉体強化で目の強化をすれば、かなり遠くの景色も、望遠鏡を覗いたような感じで見れるので、意外と長いこと楽しめる。
だがやはり、そのうち時間が経って行って、気がつけばもう日が傾き始めていた。
俺はここ数日で、どれだけの時間城の窓から街を眺めてきたんだろうか。
もうなんか一生分見た気がする上に、シュチュエーションが特殊すぎるだろ。
と、自分に突っ込む。
だって、城の窓限定だからな。
そのうち、メイドさん的な人に呼ばれ、食事、風呂、就寝。
なんだかんだで、やっていることが毎回同じすぎて、スムーズに動作をこなせるようになってきた。
これ以上慣れてしまうと本当に怖いな、と、思いながら眠りについた。
ーーーーーーーーーー
翌朝。
ついに念願の(望み始めたのは数日前のことだが)帰還の日だ。
誰一人として欠けていない。
さすがに城の中で誘拐が起こるほど、警備が穴だらけではないようだ。
もしそうなら、セ○ム絶やいしたほうがいい。
まあそんな冗談はさておき、ついに馬車に乗って学校に戻る日がやってきた。
聞くところによれば、この城から、馬車で3時間からよ時間かかるとのこと。
思っていたより時間かかるな。と思ったが、まあ馬車だし、仕方がないか。
荷物をまとめ、メイドさんに呼ばれた場所までいく。
そこには馬車と、皆の姿があった。
いつも思うんだが、俺はそんなに準備遅いのだろうか?
いつもこういう時、俺が最後なきがするんだが。
まあそんなことははっきり言ってどうでもいい。
時間に遅れたのではない。皆が早すぎるってだけなんだから。
そう自分に言い聞かせながら、歩み寄ってきたキャビアン王に挨拶をする。
「昨日今日とありがとうございました」
「何を言っているんだ。まあ特に自分の息子だった、というのも大きいが、各国が問題視している黒から生還した、唯一、まあ正確なところ一人なわけではないが、初めての、子供達なんだ。何より生還してくれたことがとても大きい」
キャビアン王は一呼吸おいて、さらに付け加えた。
「学校についたら、Jrの事。よろしく頼む。君はしっかりしているからな」
そう言うとキャビアン王は、馬車を指差し、
「早く乗ってくれ。学校側には連絡を入れておくから。カロン君のことも伝えておこう。そこらへんは王の権限で入学させられるようにする。きっと学校中が大騒ぎになると思うぞ」
ちょっとニヤニヤしながら、キャビアン王は去っていった。
見送りしないのか。
まあいいか。
俺はみんなと一緒に、馬車に乗り込んだ。
「やっと帰れるのね。もうどれだけこうなることを望んだことか…」
「まだ数日しかたってねえってのにな」
「本当よ。なんでこんな身の詰まった冒険をしなくちゃあならないのよ」
「なんだ?冒険は嫌いなのか?」
カルエルの言葉に、俺が聞き返した。
この言葉には、冒険者に憧れを抱くチビッタが、ここぞとばかりに反応してくる。
「嫌いなわけないじゃない!でも、私たちにはまだ早い。ってわけよ。とにかくもう、当分こういうのは嫌だわ。もっと大人になってから、もっといろいろなところを自由に冒険したい。ってこと」
「まあそう言われると反論できないな。でもまあこういて帰れるんだから、結果オーライってことだ。誰もたいした怪我したわけでもなく、こうして学校へ戻ることができるんだからな」
しばらくすると馬車が動き出した。
馬車はそのまま、学校へと向かったのだった。