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感動の再会?

ベルハイドさんについていくと、そのまま何も言われずに馬車に乗せられ、そのままどこかへ走り始めた。

 どこかって、そりゃあ城だろうけど。


「まさかJrの予想ぴったりに来るとは」


「まあ父さんは仕事が早いからな」


「ちゃんとあのメッセージは伝わったんだ」


「二人の共通認識だし、そこらへんはまあ伝わると思ってたよ」


 Jrのお母さんの料理がやばいということが、このやりとりだけでよくわかった気がする。

 まあ、女性とは言っても、王族だからやたらめったらに料理するってわけじゃなさそうだけど。


「このまま父さんのところまで直行だと思うから、比較的いい感じで進んでいるな」


 Jrは特にお母さんのことには触れることなく、さらっと流して元の計画の話に移る。


「何はともあれ、無事計画どおり進んだっていう事実があるだけ十分じゃない。このままゴールまで行っちゃいましょ」


 カルエルはそう言って、たった今見えてきた城を見つめた。


 まだ朝早い。

 何時くらいかわからないが、少なくとも8時前だろう。


 少しづつ城も光が照らされて明るくなっていく。

 

 そんな景色を見ながら、馬車に揺られて十分。

 城の門をノーチェックで通り過ぎ、城の内部へと入っていく。


 城のサイズは、アルカナやライコウの物に比べてかなり大きく、立派だった。

 さすがは文明圏。と、言ったところだろうか。

 

 それよりも俺は思う。

 なぜ一週間もない期間の間に、俺たちはこう何回も城に入っていくのだろうか。

 普通一般人なら、一度も入るはずのないような場所だと思うんだが。


 しかももう三度も宿泊しているというね。

 なんというか、本当におかしいわ。

 

 そう心の中でつぶやきながら、大きな城を見上げていると、馬車は止まり、俺たちは馬車から降ろされた。


「Jr!」


 降りてすぐに大きい声でJrを呼ぶ声。

 ふと声の発生元を見ると、懐かしい顔。と、言っても、せいぜい一,二ヶ月ぶりなのだが、ここ数日の出来事のせいか、やたらと懐かしく感じる。


 そこには両目の脇から大きな川ができるほどに涙を流しに流しまくった王様、キャビアン王がいた。

 

「ああ、よくぞ帰ってきた!Jrだけではない!ガリュー君!勇者の末裔まで!その他生徒の皆もよく無事でいてくれた!自分の息子と未来の料理人とその仲間たちを誇りに思うよ!」


 と、泣きながら大きな声で叫びに叫んだキャビアン王。

 勝手に料理人認定されている件に関しては一旦保留しておこう。


「父さん。一応メッセージが伝わったみたいで良かったよ」


「何を言っている。あんなメッセージなくとも、来てくれればよかったんだ…と、言いたいところだが、正直まあ、あの言葉なしにはこう会おうとも思わなかっただろうし、今回は母さんに救われたな」


 そう言って涙を流しながらキャビアン王は笑った。


「私が何か?」


 奥から綺麗な女性が現れた。


「ンな…。なんでもない。全く異常はないぞ!」


 キャビアン王が背筋をピンと立てて、顔を硬直させた。


「そう。ならいいけど。何はともあれ、Jr。よく帰ってきたわね。自慢の息子よ。どういう経緯でここまでたどり着いたのかもきになるけれど、お腹。減ってるでしょう?」


 話からして、どうやらこの人が『クソまずい』料理で有名(家族の間で)なJrなお母さんのようだ。


「か、母さん…」


「朝食をみんなで食べましょう。皆さんも一緒に」


 そう言ってJr母は俺たちの方を向いた。

 思い返してみれば、今日は何も食べていない。

 まあ時間的に何も食べていなくてもおかしくはない時間だが。


「そ、そうだな。皆一度中に入ろう。色々と聞きたい話もあるしな。食べながらゆっくり話を聞こうじゃあないか」


 キャビアン王はそう言うと、俺たちを城の中に案内した。


 これまでの二つの城よりもはるかに内装にこだわられている城のようで、とても綺麗な城だ。

 中世ヨーロッパ時代の城は、何かと色々汚かったよう(衛生的な問題で)なので、立派な城ほどそう言うことが心配だったが、さすがは文明圏国家。

 装飾だけでなく、衛生的にもとても綺麗だ。


 まずは大きめの部屋に案内され、荷物を置くように言われた。

 荷物を置いて、そのままキャビアン王についていくと、長い長いテーブルが中央にドンっと置かれた大きな広間にたどり着いた。

 

 その大きなテーブルには多くの料理がすでに並べられていた。

 テーブルはほとんど料理で埋まっている。


 これだけの量、いったい何人前なのか想像することすら難しい。

 力士が数人在籍する相撲部屋の食事レベルなんじゃあないだろうか。

 

 俺たちはそんなテーブルの椅子に座ッタ。

 それに続くように、俗に言うお誕生日席に座ったキャビアン王が、言った。


「これはほとんど、この国で採れた食材だ。下手に料理するよりも塩だけで味をつけた方が美味しい。そんな食材に恵まれたこの国ならではの薄味の料理だ。と、言っても、つい二十分前に君たちが来ることを知ってから作らせた結果がこれ、というわけなんだが、まあ我慢してくれ。あいにく量はたくさんあるから、ゆっくり食べながら話を聞かせて欲しい」


 そう言って自分の皿に料理を乗せ始めると、皆も早く。と、催促するかのように、皆の方を見た。

 俺たちもそれに習って、手元の料理を用意された皿に盛っていく。


 もはやバイキング形式、ホテルのビュッフェ形式の朝食だ。


 適当にとって口の中に放り込む。


「おいしい…」


「そうだろう?ガリュー君。君は料理ができるから、この質の良さもより深く理解してくれると思ったよ」


 食材そのものの味が深く出てきている。

 正直味付けは大したことはない。


 塩振って終わり。みたいな料理もあるくらいだ。

 だが、食材そのものの味がとてつもなくうまい。


 なんというか、食べてて力がみなぎっていく感じだ。


(魔力を適度に含んだ食材の特徴だな。うまい、元気になる、魔力が若干回復する、といった効果が出る)


 へー。

 魔力って食材にも関わってくるのか。

 これをおいしく調理できたらもっと化けるかもしれないな。


 そう思いながら料理を噛み締めていく。


「で、本題に移ろうか。君たちはこの数日間。どこで何をしていた?もしくはされてしたんだ?」


 少し料理の方に気を取られていた俺たちに、キャビアン王がそういった。


「…。何されていた…と、言われると、正直何もされていない。というよりも、黒の基地を僕たちがぶっ壊してきちゃった、というのが正しいかもしれない」


「基地をぶっ壊す?」


 Jrの言った言葉に、キャビアン王が首をかしげる。


「つまり、黒にさらわれたというのは事実なんだな?」


「うん。ただ、目が覚めてすぐに基地を破壊して脱出してしまったから、大した情報をつかんだってわけじゃあないけども」


「何を言っている。無事帰ってきただけで十分だ。それよりも、基地を破壊したという事実のほうが驚きだ。アルカナに基地があったのか?」


「いや。基地があったのはその隣のライコウ王国だった」


 しばらくJrとキャビアン王の話が続く。

 Jrは、俺たちが入る必要がないほど完璧に経緯を話している。


 その後ライコウの城に行ったこと、アルカナを目指して、盗賊に攫われたこと。

 カロンが仲間に加わったこと、アルカナについたら、事件が起きていたこと。


 冒険者登録をしたこと、アルカナ首都カナムーンにて戦闘を行ったこと。

 そのままほうびとして船に乗せてもらったこと。


 ダンジョンでの出来事はあまり詳しく語らなかったが、他のことに関しては、特に隠すことなく滞りなくJrが話し続けた。


「…。それで、今に至る、と」


「そういうこと」


「なかなか中身の詰まった旅をしてきたみたいだな。もっとなんか、死にかけたり、洗脳されかけたり…本当に生き地獄味わってるのかと思ったが、いうほどでもなかったか」


 ひとまず、洗脳やら暴行やらをされていないかどうかを気にしていたキャビアン王は、安堵の表情を見せた。

 少し冒険者として戦闘していたことについても、一瞬顔をしかめたようだったが、思ったほど危険な目にあっていないとわかった途端に顔の筋肉の緊張を緩めた。


「だから、父さんのところに寄って、馬車で学校まで送ってもらおうかと思っていたところなんだ」


「なるほど。もちろん馬車の用意はするが、ちょっとこっちも困ったことがあってね」


 そう言ってキャビアン王は難しい顔をする。


「なにせ黒にさらわれたとなると、様々な用途で利用されかねない。それは裏での取引にとどまらない。だから、それを抑止するためにも、黒にさらわれた人間は、死んだというふうに先に手を打っておくことが常識。ましてや、戻ってきた子供なんて過去に例がない。だから、こちらの方でも、王子、つまりJr。お前が死んだという情報を大々的に流してしまっている」


 そういえば、国民が嘆き悲しんでいる、とかベルハイドさんが言ってたっけな。


「そこでいきなり、王子が帰還した、とか言ったら、いろいろと混乱が生じるうえに、もっと良くないことが...」


「もっと良くないこと?」


思わず聞き返してしまう。


「黒の連中だ。まあ、もう既に基地破壊した時点で、ある程度気づかれているとは思うが、攫った子供が全員逃げ出しているわけだ。つまり、口封じなどをするために、もう一度攫って洗脳、もしくは普通に殺してくるかもしれない」


 その言葉に、俺だけでなく、その場の全員が固まる。


「殺してくる…?ってことは、俺たち結構危ない?」


 ナス言った。


「いや。危ないのはせいぜいJrくらいだ。国王の血筋であるJrは、完全に正体がばれていると思ってまず間違いない」


 ナスの言葉に対し、キャビアン王が答えた。

 そして、難しい顔をして言った。


「どうしたものか…」


 するとJrが突然、椅子から立ち上がって言った。


「そんなの簡単だ。僕がこのまま死んだという扱いでいればいいだけ。そうでしょ?父さん」


 なんとも縁起の悪い扱いだ。


 と、思いつつも、それが最善の策であると言われれば、それはそうかと納得してしまう。


「…しかしJr。それでいいのか?」


「いいも何も。殺されるよりはずっとマシだと思う。表面上は親子の関係がなくなるかもしれない。だけど、裏では常に繋がっていられるしね」


 Jrが言い切った。

 

「まあ、お前がそれでいいなら、私はそれ以上のことは言わない。正直、それが最善策であるということは、私もわかっている。ただ私は、お前自身がそれを望まないのではないか?と、思っていただけ。自分でその覚悟がついたのであれば、それ以上に言うこともない」


「仕方ないわね。可愛い息子が大変な目に会うくらいなら、表面上の関わりなんてお飾りみたいなもの。もともと後数年は学校でお勉強するのだし、あまりその間は関わることは多くないでしょう。少し寂しい気もするけれど、何もJrちゃんが居なくなるわけじゃあないものね」


 キャビアン王に続いて、Jr母が言った。


「ただ、王位の継承や、その他いろいろなことを棒に振ることになるはずだぞ?本当にいいのか?」


「王位とか、正直いらない。もっと自由に生きていきたいと思うよ。貴族との付き合いもうんざりだ。正直な話、これですっきりした感じだよ」


 どうやらこの問題は、解決しそうだ。





 


 

リメイク、通常盤、どちらもどうかよろしくお願いいたします

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