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スタアさんの事情

本日2本目です



「お...落ち着いてください!そんな土下座なんて!」


「頼む!一生のお願いだ。俺を奴隷として扱ってもいい。俺の妹は...あと数日で死んでしまうんだ!」


「...ど...どういうことですか?」


「俺の妹は...冒険者だった。俺と二歳違いの妹で、元気で...俺が言うのもなんだが、出来のいいやつだった。だが...」


スタアさんは土下座していた体を起き上がらせて、こちらを向いた。

顔は異常なまでに暗く、そして手が潰れてしまうのではないかと思うほどに手を思い切り握り潰していた。


「俺達は二人でパーティーを組んでいた。特に何不自由なく冒険者生活を送っていた。モンスターを狩って生計を立てる日々は、楽ではなかったが、辛くはなかった。とても楽しい日々だったよ。でもある時事件があった。二か月前のことだ」


スタアさんの目から一筋の涙が流れる。


「俺達はこれまで通りにただ戦っていただけだった。ただ、いつもよりも敵を深追いしすぎた。いつもは日があるうちに引き揚げていたんだが、その日は日が沈んでも狩りを続けていた。そんな時、だった。俺達は...後ろから忍び寄る影に気が付かなかった。ガリュー君は、石蛇って知っているかい?」


「石蛇...?」


「そう...。通称石蛇。正式にはストーンコブラ。比較的デカイ凶暴な蛇で、大した強さがある訳でもなく、危険もそこまで高くない蛇のモンスターなんだが...」


「その...ストーンコブラがどうしたんですか?」


恐る恐る質問をする。


「ああ...そもそもストーンコブラって言うのは...石化毒を持っている蛇でね...噛まれると...長期的に麻痺が起きて動けなくなって、一ヶ月ほどで頭に毒が影響を与えて、寝たきりに...そして徐々に体が石化していく。二ヶ月から三ヶ月で完全に石化する」


「せ...石化...!」


石化と言うとあれか...メデューサに見られてなるやつだろ?

石になったらなんか薬かなんかで治せるのか?


(完全な石化じゃなければ、その石化した経緯によるが、それに合った治療法をすれば治ることがある。白魔法使いに治してもらうとか、薬飲ませるとか、聖水をかけるとか。その他いくつか...)


じゃ...じゃあ...完全に石化してしまったら?


(助からない。残されるのは死のみ...いや。完全に石化した瞬間に死んでいると言っていいか。まあそういうことだ)


そんな。そんなのやばいじゃないか...。

俺らとは違って命がかかっている...。優先順位は圧倒的にスタアさんの方が高いじゃないか。


「もう言わなくてもわかるとは思うけれど、俺の妹のムーナは今、体の殆どが石化している。もう時間はほとんど残されていないんだ...」


「わかりました...。まさか妹さんがそんな事になっているとは...。きっと僕の仲間もそういう理由ならオッケーしてくれると思います。命に関わることですから。何よりスタアさん自身にもお世話になっていますしね」


「本当にありがとうガリュー君。こちらこそだよ。君には助けられてばかりだ。俺自身でなく、妹の命まで救ってくれるとは...」


スタアさんは一度涙を流してからは泣いていなかったが、ここに来てもう一度泣いた。


「当たり前のことをするまでですよ。さあ。皆のところに行きましょう。



♢♢♢♢♢



「あ!ガリュー!聞いたわよ!魔人討伐!おめでとー!」


皆が何処にいるか分からなかったので、一先ず人がいそうな所を探し回った挙句、最終的に辿りついたのは医務室。


何故かほかの場所に比べて人が溢れかえっている。


何があったのかと部屋を覗くと、怪我人を絶賛治療中のカルエルがいた。その周りには皆の姿もあった。


「ああ。カルエル。お疲れ様」


「そうそう。ほんとこっちもお疲れよ。なんたってこの部屋にいた人たち全員治したんだから」


「え...」


カルエルの言葉を聞いたスタアさんが一瞬固まった。


「全員って...あんなに怪我人がいたのに?」


「ああ。こいつHSPだけは無尽蔵なんですよ」


「ちょ!?ガリュー!色々とグサリと刺さるんだけど!だけはって何よ!だけはって!無尽蔵って言い方もなんか嫌なんですけど!」


「いやあ。本当にガリュー君は仲間に恵まれてるんだな」


「違うわよ。仲間に|だけは<・・・>恵まれてるのよ」


仕返しのつもりか?

と突っ込みつつ、本題の方の話をしようと、話を一旦止める。


「カルエル。皆も聞いて欲しい。大事な話だ」


「ガリュー君がそんなに真剣な顔している所を見ると、かなり真面目な話っぽいね」


「なんだよアッシュ。まるで俺がいつも不真面目でヘラヘラしてたみたいじゃないか」


「まあ。冗談は置いておいて、何か問題でも?」


皆の視線が俺に集まる。


「問題...というわけではないんだが...。まあ聞いてくれ。依頼の紙に書いてあった、なんでも願い聞くってやつ。あの権利は今の所俺にあるんだが...その権利をスタアさんに譲ろうと思うんだ」


ちなみにまだスタアさんと会ったはずのないJrとチビッタは...あー...違うわ。チビッタは真顔だわ。Jrは誰?って顔をしている。


「...まあ理由があってだな。まあ話せばわかってもらえると思う。1から話すとしよう。スタアさんには妹がいて...」


先ほどの話を皆に話す。


「つまり...毒でスタアさんの妹さんは死にかけていて時間が無く、お金がいるから、権利を譲るべきなのでは?って事ね」


「そういうことだ。どうだ?一応皆に聞いてからにしようと思ってな」


「なんだ。そんなこと、俺達がダメって言うわけないだろ。勇者はどんな人の命も見捨てない」


アッシュが言った。


「レディが苦しんでいるなら、助けるしかない...だろ?」


ナスはドヤ顔だ。


「お前ら...そう言ってもらえると思ったよ」


そう言いつつも、二人ともそういうキャラは抜けないんだな...と、思ってしまった。


「私は急いでいるわけでもないから...なんでもいいですよ...」


カロンはいつも通り申し訳なさそうにぼそぼそと言った。


「僕は早く帰りたい気持ちは山々ではあるが、考えてみると、少し待てばダンジョンの時の大金が入るわけだし、のんびり冒険者ってのも悪くない。チビッタも喜んでいるようだしな」


「......」


「......」


Jrは冷静な判断をしていると思う。


後に続いたチビッタ、ソニックもまた、冷静なように見えるが、この二人はただぼうっとしているだけだ。


「皆...それじゃあ...」


「待ちなさい!私は絶対に許さないわ!」


皆の意見が一致したと思ったその時だった。

カルエルだけが...反対したのだった。








いつも読んでいただき、ありがとうございます

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