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部長ハクア

「ガリューくん...?ガリューってその...隣の子供...か?」


「そうです。紛れもなく彼が今回の戦いにおいて一番の英雄です!俺自身彼に命を救われました。魔人を倒し、この男を捕らえたのも彼です」


そう言ってスタアさんと俺の間で縄で縛られた状態でノックダウンしている革命軍の男(と思われる)を指さす。


「え...いやその...」


スタアさんの先ほどの怒りを目の当たりにしていたこともあって、このスタアさんの豹変ぶりに驚く。

さらに言うと、あれだけ金に執着しているであろう(理由があるのは分かっているが)スタアさんが、自身でなく俺の名前をあげるとは思ってもいなかったし、いざ言われてみるとなんというかどうも気分的にいい気分ではない。


そりゃあ俺達にも学校へ帰るという任務...?があるわけだし、報酬は俺にとっても必要不可欠ではあるが、話を聞いていると、スタアさんには時間が無い上、そのタイムリミットがもうすぐそこまで迫っているということがわかる。

それに対して俺達は、速ければ速いほど良い。というだけ。

正確なタイムリミットを決めているわけでもない。


そう考えると俺自身、この権利をスタアさんに譲るべきなのでは?

と思ってしまう。

みんなも事情を話せば分かってくれる筈だし、この数日で、ダンジョン攻略をしたこともあってかなりの額が俺の口座に入る予定だ。そのお金を使えば、多少待つことになるが、帰ることも可能なはずだ。


やはり譲るべきか...。


俺が考え事をしている少しの間、静寂が流れる。

そこでレニウス公が口を開いた。


「そうか。そのじゃあそこの子供。明日までに欲しいものを決めておけ。一応言っておくが、実現できるものにするんだぞ」


相変わらずレニウス公は、自身の身分からか、高い姿勢からの話し方は変わることはないが、ある程度丸く収まった感じはする。


「それでは今日は私も仕事があるので明日の...そうだな...朝10時頃にこの部屋に来い。以上だ」


そう言って俺とスタアさんは部屋から出された。










部屋から出ると、ハクアと名乗った女性と、ウィントと紹介されていた冒険者がいた。


「お話が済んだようですね。時間を取らせてしまう事になりますが、先程言った通り、少しお話いいでしょうか?」


女性はそう言ってこちらに寄ってきた。


「いいですが...なにか?」


スタアさんが答える。


「えっと...あなたは...輝く超新流星...スタアさんですね...」


「え?俺の名前を...?」


「そりゃあギルドの役人ですからね。名の通った冒険者の名前くらい覚えてますよ。それにあなた、多くの軍団に引っ張りだことか。無所属の天才ルーキーと言ったらあなた。第三大陸の新しい顔とも言えると言っても過言ではない、と、冒険者業界でも言われてるくらいですしね」


「え...いや...その」


そのハクアなる女性の言葉に明らかに照れているスタアさん。


「そしてその隣の...君....君は...知らないわね。まだ子供だし...ビギナーさんかしら?」


突然俺に話を振ってこられて数秒のタイムラグが発生したが、それを乗り越えて答える。


「ま...まあそんなところですね」


そんなところというか、バリバリビギナーだ。

数日前に登録したばかりの真の新人。


「君名前は?」


「が...ガリューと言います」


「そう。ガリュー君...。そうだ。一応さっきしたけれど、一度自己紹介しておきます。第三大陸ギルド総本部治安維持部で部長やっています、ハクアと言います。以後お見知りおきを」


ハクアさんは俺たちにお辞儀をした。


「そしてスタアさん、ガリュー君。今回の戦いでこの国を守って頂いたこと。深く感謝申し上げる。この国だけでなくあなた達は、この大陸の秩序...バランスを守ってくれた。これはギルドとしても感謝してもしきれないほどだ」


顔をあげたハクアさんは、言葉を言い切るとともに再び頭を下げた。


「あ...いや...何もそんな大層なことは...」


「いや。謙遜はいりませんよ。正直私たちもかなり焦っていたので、この国がこうして無事であることは非常に嬉しい事です」


「あ...そういえば先程、他の国でも...と言っていましたが...」


スタアさんが言った。俺も気になっていた事だ。先ほどのレニウス公との会話中に、他の国でも事件は同時に発生していると言っていた。


つまり、同時多発テロ...?


「ええ。狙われたのは、この国のように何かしら王族などが不正に金を溜め込んでいたり、貴族や王族などが独裁的な政治を行っていたりと、その罪の重さは様々ですが、国の上層部が何かしらの罪を犯していることが分かっている小国が、数にして10程...狙われたようでして...」


「じゅ...10も!?」


「ええ。まあどれもこの国みたいに罪があったから、死人も出ずに終わったところはちょっとしたお仕置き程度で終わったのですが、酷い所は死者を50近く出し、その他は皆降伏、最終的に国を占拠されてしまったところもありまして...」


「国を占拠...ってことは...」


「はい。事実上国の管理者が交代することになります。今回襲撃に携わった人間全員が、土地はあの御方に捧げると言っていることから、そのあの御方という人物が危険だと危険なほど、その陥落した国を中心に世界のバランスが崩れてしまうのではないかと、私たちギルドの人間は危険視しています」


「もう一度スキをついて周辺国が一気に潰しにかかることは出来ないのですか?」


この話に入って初めて俺が口を開く。


「そうしたいのは山々なのですが、最近は文明発達圏以外の国での景気が悪いようで、とても戦争などはできない状況なのです。今回の襲撃のように、魔獣を用いて戦うのは、用いること自体を規制する法は無いのですが、魔獣生成をすると重罪なので、魔獣なども今回のように投入していくことが出来ないとなると、すぐに戦闘というのは無理かと...」


ちなみに文明発達圏とは、第一大陸の大半や、第二大陸、第三大陸、第四大陸の主要国家及び周辺国家を囲った、第一大陸を除けば大陸全体の約10%ほどの面積に入る国々のことで、他の国よりも財力権力...もちろん戦力も圧倒的に強く、かつ進んだ国の集まりである。


「そう...なんですか...」


「ええ。もはや早期解決は不可能なラインを超えてしまった...と言っていいと思います」


ハクアさんはそう言って(ガラスはない)の外を見た。

もう日が傾き始めてきている。

赤い夕日が眩しい。


「ああ!しまった!もうこんな...行かなくては...」


少しぼうっとしていたハクアさんがいきなり目を見開いて言った。


「申し訳ありません。ほかの場所も寄らなくてはいけないので、今日はこれで失礼させていただきます。今後ギルド本部の方にいらっしゃる事があれば、私の名前を言っていただければ、何かしらのお礼ができると思いますので。では」


そう言ってハクアさんは走って行っていしまった。


「えちょ...待ってくださいっすー!」


初めて口を開いたウィントなる男は、一人置いてかれてしまい、ハクアさんの後をすごい勢いで追いかけて行ってしまった。


「気がついたら来て...そうかと思えば風のように去っていったな...」


スタアさんがぼそぼそと呟くように言った。


「そう...ですね」


「これで二人きりになった。実は俺から君に相談があるんだ」


スタアさんがそう言って俺の方をじっと見た。


「頼む!一生のお願いだ!俺の...俺の妹...ムーナを救ってくれ!さっき見た通り、俺には金がいる。今回の戦いが頼りだったんだ!もちろん無理にとは言わない。無条件でとも思わない。俺のことを一生こき使っても構わない!お願いだ!明日の追加報酬の権利...譲ってくれないだろうか!?」


そう言ってスタアさんは俺に土下座をした。



本日はもう一話更新します

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