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レニウスVSハクア

「...つまりなんだ?もう戦いは終わり、この戦いに終止符を打ったのは自分だと言いたいわけか?」


レニウス公の玉座のある部屋へ着いた俺とスタアさんは、真っ先にレニウス公に謁見を求め、こうして今レニウス公と話をしているわけなんだが...。


「まあ...そういう事ですね」


「で...?つまり...自分が一番手柄を立てたんだといって、例のあのなんでも一つ願いを叶えてやらんこともないとかなんとかいう、あの報酬をくれと催促するわけか?」


「いや...別にまだそんなことは言ってないんですが...」


まあその報酬が欲しいのは事実だが。

なんとしても船を入手しないといけないからな。


「ふん。お前がなんと言おうと私にはわかるぞ。なんだ欲しいものは?金か?名声か?地位か?土地か?それともなくば...権力か?」


「いやですから...そうではなく」


「まあなんであろうと私には関係ないわ。ハナからそんな報酬を出すつもりなどなかったしな。そもそも...血の契約もしていないような契約を誰が守るかって話だ」


再び登場血の契約...。


(まあ王族貴族では金のやり取りは全部昔から血の契約ってのが基本だったしな)


「まあいい。これだけはやるからっとっとと帰るんだな」


レニウス公は俺とスタアさんに布の袋を投げつけた。


チャリチャリと金属音が鳴り響く。


俺はその袋を拾い上げると同時に、中身を確認した。


数枚の銀貨が入っていた。


俺と同じ動作していたスタアさんがぼそぼそと呟いた。


「たったこれだけ...?」


その声は少し震えていた。


「なんだ?不満か?」


スタアさんはレニウス公に聞こえないように言ったつもりだったのだろうが、レニウス公も意外と耳がいいようで、スタアさんを見下すような表情でそう言った。


「不満だと...?不満に決まってるだろうがよ...」


小さい声でスタアさんが呟き始めたかと思うと、徐々にその声は大きく...大きく...


「バカにするなよ!?黙っていれば俺たちを庶民だと舐めやがって!こんなの依頼シートの報酬よりも少ないじゃないか!」


急にスタアさんは怒り始めた。

個人的に思った事。どうでもいいけどスタアさん怒るんだ。なんか優しそうなイメージだったんだけど、まさかいきなりキレるとは...。


お金の話からちょっとおかしかったし、なんかお金が必要だったのか?


「貴様私が誰だかわかってその口を利いているのか?」


「知るか!俺は...俺達は!なんのために命かけてこの国を守ろうといしてたんだ!?」


「金目当てのやつが何を言うか!」


「そうだよ!金目当てに決まってんだろうが!なんの思い入れもないこの国を...金が貰えるから助けに来てんだよ!そりゃあこの国の人たちを助けたいという思いだってあったにはあったさ!だがな!少なくとも俺には...俺にはなあ!」


スタアさんが怒る。ひたすら怒っている。その怒りからは、必死に何かを伝えようという思いが伝わってくる。


「そろそろ黙れぇええ!ええい!お前スタアと言ったな!? 多少冒険者として腕が立つからって調子に乗るんじゃないぞ!私だって一国の主。お前の存在自体を消すことだってできるんだぞ!金が欲しいならほかを当たれ!」


「俺はこの大事な時間を浪費したというのに!それなのにも関わらずほかを当たれなんて...!」


「ほう...。怖くないか。いいんだぞ。私が冒険者ギルドの上層部に言ってしまえば、お前なんて即消せるんだからな!今すぐにでも...!まあその時はその時。どちらにせよ、お前ら冒険者風情が、冒険者業以外で働き口が見つかるとは到底思えないがな!」


「ふざけるなぁああ!俺の...ムーナの...最後の希望を...最後の...ラストチャンスを潰しやがって!」


ムーナの...希望...?


俺が頭の上にクエスチョンマークを浮かばせたその時だった。


後ろの扉がキイと音を立ててゆっくりと開いた。


「今の話...聞きましたよ。レニウス公。それが本当なら、すぐにでも国の長の権限を剥奪しても構わないんですよ」


扉の向こう側から髪の長い女性と、腰に2本の小さな剣...双剣を携えた小柄な男が入ってきた。


「...はて?お前達は誰だ?剥奪?一体何なのだ?何ふざけたことを言っているのだ?勝手に部屋に入ってきてまず最初のセリフがそれか?」


「そうですよ。心配になって来てみたら、戦いは終わっていたみたいなので、レニウス公の元に行って話を...と思っていたのですが...」


「だからお前達は誰だと言っているんだ!私はこの国を治めるものだぞ!?それをそんな態度で...。全てを失う覚悟があるか?」


「それはこちらのセリフ!私は第三大陸ギルド総本部国家治安維持部が部長、ハクア・ミルティアです!こちらは第三大陸ギルド公認治安維持軍団(レギオン)(警備軍)のNo.3、白銀のウィントさんです!」


「んな...?ギルド総本部...だと...!?」


え...?なになに?ごめん状況掴めないんだけど!?


「何故本部の幹部がこんな所に?」


スタアさんが言った。

俺が全く状況を掴めていないまま話が進んでいく。


「今回の事件...ここだけでなくその他全ての大陸のいくつかの国で同時に発生しています。他の国ではなす術なく陥落したという話もあったので、心配になり、ウィントさんと駆けつけたのです」


ハクアと名乗った女性は一呼吸置くとまた喋り出す。


「そうしたらまさか国の長ともあろうレニウス公が聞き捨てならないことを言っていたようなので...」


「わ...私は何もしていない!」


先ほどの威勢はどこへ飛んでいったのやら、レニウス公は非常に焦った様子で弁明しようとする。


それほどの力...権力がこの女性...いやギルドにあるということか。


「先ほどの言動が偽りのないものであり、それが実行されるものなのであれば、あなたはギルドの権限によっていくつかの罪に問われます!特に問題は報酬について。ここまで難度の高い依頼である上に、さらに大規模な依頼であるにも関わらず、報酬をちょろまかすなど許し難い行為!ましてやその依頼では多くの怪我人が出ている。運良くし者は出なかったようですが、聞けば瀕死状態の怪我人もいるそうじゃないですか。人命に直結するような依頼で報酬を偽るなど以ての外です」


「そ...それだけなら剥奪にはならないだろ...?私だって自分の国がこんな有様なんだ...!国を再建するには金がいるんだ!出せる金なんてない!ギルドのルールでも、何か大事な理由があれば報酬を変更することも可能とあったはずではないのか!?」


「まだ終わっていません。そこに加えて贈賄、及び恐喝、それだけではありませんよ。風の噂で耳にしたのですが、聞けばレニウス公。かなりお金を隠れて溜め込んでいるのだとか。ギルドに払う筈の税金がこの国の規模にしては少ないという事で、ギルド職員が調査に向かった結果、地下に隠し部屋がある事と、その部屋の中にかなりの額が溜め込まれていたことが分かっていますよ」


「そんな馬鹿な...」


「今回の件に加えて税を払っていない事まで発覚。これらはギルドの定めた規定に大きく違反することになります。しかし!今すぐ撤回し、正規の報酬を支払うのであれば、この全ての罪は免除してもいいでしょう。未遂ということで、多少の罰金は頂くことになりますが」


「わ...わかった。撤回だ!撤回する!だからどうか...剥奪だけは...」


女性は物凄い速さでマシンガントークをしていた。

レニウス公だけでなく、俺やスタアさん、この部屋にいる全ての人がその迫力に圧倒した。

このハクアという人が連れてきたウィントという人までも。


ピリピリとした雰囲気の中、ハクアと名乗った女性は、レニウス公を言い負かしたことを確認するとともに、俺とスタアさんの方を向いた。


「後でお話があるので、この部屋の外でお待ちしています」


ハクアと名乗った女性はそう言って部屋から出ていった。


「...ご...ごほんごほん。で...では君たちに報酬を与えたいと思うが、希望を叶えられるのは1人だけ。どちらがやより戦いに貢献したのだ?」


わざとっぽさが物凄い咳払いをしたレニウス公は、何も無かったように話を進めた。


「そ...それは...」


今回の戦いは間違いなく俺の手柄だ。

魔人も倒したし。スタアさんを助けたのも俺だ。

だがしかし、スタアさんの金に対する執念というか…お金で人はあそこまで変わるのか?的な場面見たあとだと言い辛いな。


「ガリュー君です」


俺が悩んでいるうちに、スタアさんが笑顔でそう言った。

先ほどの怒りがどこかえ飛んでいったような、明るく爽やかな笑顔で。







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