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主犯捕獲

球体が飛んでくる。

対魔人戦の時の追跡弾とは違い、赤く更にとても小さい。


だが、なんだかとてつもなく危険だという警告が自分の中でガンガンと鳴り響いている。


避けなきゃ...!

そう思って咄嗟に先程から何度もとっていたドッヂロールをしようとしたその時。


「オラァア!」


黒い影のような何かがその赤い球体を弾いた。


「スタアさん!」


「借りは返させてもらうよ!」


黒い影は高速移動中のスタアさんだったようだ。


まああれ当たっても、石先生が吸収してくれたかも...なんて言うのは野暮か。


と...心の中で呟いた直後、弾かれて吹っ飛んだであろう赤い球体がある方向から低い地鳴りのような音が聞こえる。


「ガリュー君!まだ終わってない!すぐに逃げるよ!」


スタアさんが叫ぶ。

何事かと音のするほうを見ると、赤い球体が比較的速い速度で膨らんでいるのが見えた。


「ななな...なにあれ!?」


「いいから走って!ある程度走ればオッケーだから!」


言われるがままに猛ダッシュで緊急離脱。

その後、数秒もせずに俺が元いたところは赤い球体に包まれていった。

赤いドーム状の球体の中身はよく見えない。...いや。全く見えない。一体中で何が起きているのかさえわからない。

そう思うと恐怖だ。


「あ...あれは?」


「魔術師なのに知らないとはね。あれは高位な爆発魔法の一種だよ...。学校でいずれ習うんじゃないかな?使えるかどうかは別...まあガリュー君なら使えるだろうけど」


ああ。割とメジャーな魔法なのか?


(メジャーっちゃメジャー...。まあ皆がみんな使えるようなもんじゃないけどな。炎のドームが消えればその理由がわかると思うぞ)


その理由?


スタアさんとアザゼルと話をしている間に、球体の膨らみは治まり、そして球体は徐々に薄くなって消えていった。


「ん...んなバカな...」


膨らんだ球体のあった部分を見た俺は、目を見張った。


そこにある筈ばった、球体から逃げることが出来なかった、動くことなどありえない民家が、忽然と姿を消していた。そこには何も無い。消し炭の一つさえもない。


確かにそこにはいくつか家があり、その全てがもちろん逃げることなく膨らむ球体に吸収されていったところも見ていたのに...。


あの民家はどこに行ったか?

どこに行った?むしろどう消えた?


(炭を通り越して存在そのものも焼き尽くされたってわけよ)


よく見るとその下の地面も抉り取られたかのようになくなっている。

アイスクリームをスプーンですくった跡のようだ。


じゃあ土も燃えて消えたってか?

絶対燃えない物入ってただろ。それはどこいったんだよ。

金属とかプラスチック...プラスチックは無いか?


もしそうなら本当に範囲内の全てが焼き尽くされていることになる。


そんなの科学的にどうなの!?


(この世界で科学を持ち込むなっつうの。それよりいのか?とっとと魔術撃ったやつ探さなくて)


「そうだな。一体どこから...?」


「あの木の上だ!」


スタアさんが指をさした木の上を見ると、1人の人間が太い木の枝の上に立っているのが見えた。


「危ないことしやがって!」


相手の足を狙ってアイススピアを撃つ。


遠くからなので音は聞こえなかったが、アイススピアは木の上の人の足をかすめて通り過ぎていった。

木の上の人は驚いたからか、足を滑らせて木から落ちた。


「追おう!」


木から落ちたのを確認したスタアさんは、そう言って木の方へ走っていく。

俺もそれに続く。


木の方に向かうと、一人の男が倒れていた。


「こいつが革命軍のやつなのか?」


「多分そうだね」


スタアさんと俺は男に近づく。


「ん...んんぐ...」


男は俺達が近づくより早くに立ち上がった。


「お...お前ら...ぁああ...」


男は立ち上がるやいなや、こちらを睨んで叫んだ。


「ふざけるなああああ!お前みたいな子供に...魔人はやられるし魔獣も役に立たないなどがぁあああ!」


男は手から炎の球を作り出した。


「ファイアボール!」


ファイアボールが俺に向かって飛んだ。


「んな!?」


ドッヂロール。


「無詠唱!?」


スタアさんが叫ぶ。


「クソがクソがクソガァアア!!屈しないぞ屈しはしない!あの御方にこの土地を捧げるのだ!」


「お前は何のためにここまでしてこの国をひっくりかえそうとしているんだ!?」


もう狂い始めている男に問いかける。


「あの御方の為にこの腐りきった国を潰し...捧げるのだこの土地を!すべてはあの御方のため!私は屈しない!」


「腐りきった国...?」


「そうだ!腐った王族...公族か...ええい!面倒な!」


やっぱその王族公族のやり取りこの世界でも共通か。


「とにかく...この腐った国潰してやるのだ!..........それだというのに...それだというのに...扇動した奴らは役に立たないで、魔獣ですらも役に立たないで...魔人を作ったかと思えばこんな子供に...!そこの子供!お前もお前だ!私の駒を潰しに潰しまくりやがって!わかるかお前等に!この...ことごとく計画が崩されていくという事が!」


「お前!人をなんだと思っているんだ!お前が煽ったのかなんなのか知らないが、この国の住人が暴徒化してこの戦いが始まった。全部お前のせいなら、お前のせいで何人の人が死んだ?何人が負傷した!?わかっているのか!?」


スタアさんがすごい形相で怒っている。


「ハッ!そんなのは私の責任では無い!元はと言えばこの国のトップのヤツらがいけないんだ!我々はただ少し煽ったに過ぎない!その程度の煽りで爆発してしまうくらいにこの国の人々はこの腐った国の腐った中枢の人間共が好き勝手してきたということだ!」


男のその言葉に、スタアさんは黙った。

俺も正直この国のレニウス公のことはあまりいい印象を持っていないのは事実だが。


「それは...否定できるかと言うとそうではないかもしれない。だがしかし!俺は土地を捧げるなんてどうでもいい理由で人を傷つけることなんて許さない!今も城は医務室にも入りきらないほどの怪我人で一杯なんだ!肝心な回復役の人達ももうダウンしている!全部お前達のせいだ!お前のいうその『あの御方』とかいうやつのせいだぞ!分かってるのか!?」


スタアさんが言った。


「ええい!五月蝿いわ!焼き尽くせぇえ!ファイアボール!」


至近距離から放たれた火の玉が俺を襲う。


「...」


俺は無言でその火の玉を弾いた。


「同情する余地すらもない」


俺は一瞬で男との間合いを詰めて溝落ちを思い切り殴る。


「ガフ....ァア!」


男はそのまま崩れ落ちた。

気を失ったようだ。


「城まで運びましょう」


「そうだね。これはお手柄だ。恐らくこいつが革命軍...?の、親玉だな」


俺は男を肩に担いで、スタアさんと共に城に向かって走った。



♢♢♢♢♢



少し走ると城に着いた。

まあスタアさんに合わせて走っているから、一人で走るよりは遅めだけど、まあスタアさんじゃなかったらもっと遅いからそれはよしとしよう。

いやよしとしようって何様だよ!?


というツッコミは置いといて欲しい。


「ひとまずこいつをお...公に引渡しに行こう」


そろそろもうその下りも飽きてきたところだ。もう早く王になれよ。


そんなツッコミを心の中でしつつ、あのレニウス公のいる部屋へ向かった。







いつもありがとうございます

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