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砕く...散る

もう近くには誰もいない。

ただ、魔人と俺が、元々は城下町らしく賑わっていたであろう街の端っこで睨み合う。



相手に意思があるとは思えないので、睨み合っていると思っているのは俺だけだとは思うが。


まあいい。

狙うは心臓。一発撃破狙って頑張ろうという次第。

頑張ろうとかそんな軽いノリでいると死ぬかもしれんが。


まずは敵の硬さを知るためにも、アイススピアを生成する。


相手も警戒しているのか、少し唸り声を上げながらこちらを睨む。


意思はないとは思うが。


とにかくこのまま待っていたところで何も始まらないので、アイススピアを飛ばす。

目標は胸のあたり。


「アイススピア!」


真っ直ぐ魔人に向かって放たれたアイススピアは、魔人の胸に届く前に、魔人の手で思い切り弾かれる。


「って...まずそっからかよ」


当たって強度確認とかそういう問題じゃないじゃあないか。

あんなの弾くとか、流石に意思ないとか言えねえだろ。


(そりゃあ何も敵に突進するだけの人形じゃないんだし)


んな事言ったってよ...。


(野生の本能ってやつだろ?意志じゃない。本能だ。そこら辺はもうどうでも良くなってきてるがな。ガトリングで弾けないくらい放てばいいじゃあないか。蜂の巣にしてやれ)


だから蜂の巣に出来るかどうかの実験をしようとしてたんじゃないか。


(あのなぁ。考えろ。そんなことしてなんの意味になる?ダメだったら逃げる...って訳じゃないだろ?どっちみち倒すことに変わりないんだ。短期決戦した方がいい。どうせ単発じゃ手で弾かれんだ。実験結果は、単発なら手で弾かれる、でいいだろ?さっさと済まそうぜ)


...。まあそうだな。結果がどうであれ倒すという根本は変わらないしな。最悪オリハルコンあるしな。

それでもダメなら...。


(そん時はそん時...)


だな。


ガトリングとアイススピアを混ぜてイメージし、手を魔人方向に向けて一気に放つ。


「グフウウウ...」


一発目はさっきと同じように弾くが、その後二発三発と立て続けて飛んでくる氷の柱を弾ききることは出来ないと思ったのか、一発目を弾いた手とは逆の手で体を守る。


ガンガンと氷と筋肉のぶつかる音がする。


いや...もう筋肉じゃねえよ...。


(さっきの熊もそうだが、大きい魔獣や質のいい魔獣は筋肉が硬化して鉱石のようになる)


筋肉じゃなくて石なのか。

石と言うとあの魔術全部吸い取るアホみたいな石のことしか思いつかないが…。


(アホみたいなって...お前今その石身につけてるだろ)


まあそうだけども...。


(まあ安心してくれ。その石みたいなハイスペックじゃないから。ずっと当て続ければいつか割れるって)


もう表現が割れるって表現になっちゃうのかよ。

っつうかずっとってアバウトすぎない?

具体的にどのくらいよ?


(...がんばれ)


え?ちょ...アザゼルさん?


それっきりアザゼルは何の反応もしなくなった。


うわ。見放されたわ。

魔力切れるか、割れるか...どっちが先になるだろうか?


どちらにせよ忍耐強くやらんとな。


とか言っている間にも、もちろんアイススピアを手を止めること無く放っているのだが、魔人も負けずとこちらに向かって1歩ずつゆっくりだが歩いてきている。


あまりの迫力に、俺も1歩後ずさりする。

時速数百キロは出ているであろう氷の柱を、片腕で防ぎつつ、こちらに歩いてくる。

言うまでもなく、ものすごい力が掛かっているはずなのに、それを押しのけてくる魔人には、敵ながら天晴れと言ったところか。

まあ、今の俺に敵を褒めていられるような余裕がある訳では無いが。


これまで以上に、アイススピアを連射している手に力を入れる。


距離を詰め寄ってくる魔人に対し、アイススピアの威力が十分に出て、かつ魔人との距離を詰めすぎない程度に下がりながら、ただひたすらアイススピアを放つ。


単純作業だが、文字通り一歩間違えれば俺の命に危険が及ぶ可能性だって十分にある。


ゆっくりと間合いを詰めてくる魔人と距離を置きながら、更にアイススピアの威力を上げていく。


そして遂に、その時はやってきた。


ピシピシと音を立てて(アイススピアと魔人のぶつかる音でその音は聞こえないが、気分的な問題で聞こえてくる)魔人の腕に亀裂が入る。


やがてその亀裂が腕全体に広がっていく。

アイススピアを一発受ける度にその亀裂の数が増えていく。


「やれ...そのまま...打ち砕けぇえええ!!!」


一発、二発、三発...。






そして遂に...魔人の腕が、砕け散った。



ーーーーーーーーーー


「んな...?馬鹿な...魔人だぞ?」


木の上から眺めていた男は、木の幹を強く叩く。


「魔人の腕が砕かれた...?馬鹿な事言うな...?歴史上で魔人が出た事件は全て伝説級の事件...それを...それをあの...」


男は、木の上からでは本来よりもより小さく見える少年の事を強く睨みつける。


「子供...。たかが子供に...何ができるって言うんだ...?すべてはあの御方のために...そのためにも此処は...私は...落とさなくてはならない...。絶対に。あの御方に捧げるのだ。それを...それをあんな子供に?」


男は震える。手からは黒い何かがチラチラと出てきている。

闇のオーラだ。

その闇は発する本人の怒りなどの感情そのものを映し出しているようだ。


「ふざ...けるな...クソがああああああ!」


男はそう言って自分の立っている木の枝を大きく踏んで地団駄をした。


枝が揺れ、その枝についていた葉が落ちていく。


「ハハハハハハ...全て焼き尽くしてやる…。あの子供も、あの魔人も..われは求める…全てを焼き尽くす炎を...!」


男は呪文を唱え始めた。

黒いそのオーラは、やがて炎のような赤に変わっていく。















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