新たな仲間、シーリア
光が収まり、視界が回復するとそこはたくさんの亜人で賑わう田舎町だった。そしてシュウが来たことは瞬く間に街全体に伝わりツプチェの町長であるサイトがやって来た。
「おお、シュウ様。また来てくださったのですな。して、此度はどのようなことを?」
「俺とユークリゥドはとある武術大会に出ることになった。しかしその武術大会に出るにはあと1人人手がいる。そこでお前たち亜人から1人借り受けたい」
それからの亜人達は大変な喜びようでなかなか人を紹介してもらえなかった。何でも公式で大きな大会に亜人が出るのは前代未聞、更に『誘われた』事により喜びは増したらしい。
「申し訳ありませんな。我々だけ盛り上がってしまい、面目次第も御座いませぬ・・・・・・。うーむ、しかしシュウ様のチームとして相応しい実力を持つものですか。難しいですな。ツプチェは戦うよりも静かに暮らしたい者が集まっておりますゆえ。実力が高い亜人を求めるならばウルガンの亜人村が一番でしょう」
結局ウルガンに行く羽目になりそうだ。
「この町にウルガンへ繋がっている魔法陣があります。それをご利用ください」
その魔法陣を有り難く使いウルガンへ転移した俺達を待っていたのは丁度奴隷狩りに遭っている亜人村だった。見れば小さい子供や老人を人質に取られ男衆はろくに抵抗出来ず連れて行かれている。瞬時に八重桜を手に出現、姿を消した。次にシュウが現れたのは人質の後ろにいる組織の人間と思しき男の背後だ。
「シッ!!」
一振りで3人いた男を斬り捨て、少し離れた場所にいた男の背後へ瞬時に回り込み斬る。
「お前達の大事な子や父母は俺が守る!思う存分反撃しろ!」
ここでようやく組織の人間は自分達が襲撃にあっていると理解し剣を抜き始める。しかしその頃にはもう連れ去られようとしていた男達の反撃が始まっていた。
「「「ウォォォォォ!!!」」」
「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」
もともと亜人の方が身体能力は優れている。人質というカードを失った組織の者に勝ち目があるわけが無かった。
亜人達が戦っている間ユークリゥドに先ほど消えたのはどんな技かと聞かれたが技なんて難しいものじゃない。ただ単に超高速で動いただけだと言ったらユークリゥドはかすれ声で笑っていた。喉の調子が悪いのだろうか?
あっという間に組織の者は縛り上げられた。しかし組織の中でも下っ端だった為大した情報は得られなかった。
「分かったことと言えばウルガンは奴隷狩りが最も盛んに行われているということだけか。これでは何とも言えないな」
「はい、そうですね。でもこれはギルドマスターに任せましょう。もうこっちに向かって来ている筈ですから。私たちは私たちでここへ来た目的を果たしましょう」
「分かった。おい!ここの亜人村の長は誰だ?」
話によると長は真っ先に殺されたらしい。残った者を纏められて抵抗されることを考えると当たり前か。
「なら勝手に用件を済まさせてもらう。奴隷の件は事態解決の為ここに人が来る。俺の用件はある大会へ出るのにチームメイトが足りない為1人貸して欲しいということだ。なるべく強いやつがいい」
取り敢えず1番強いという奴らを並べてもらったがこれといった者はいなかった。しかし亜人達の集団から一歩引いて立っている白猫のように白い耳と白い尻尾の生えている小柄な女の子に目が付いた。
「あの子はどうしたんだ?集団から一歩引いてるようだが」
「へぇ、あいつはオイラとトモダチのギャルギュで森へ狩りに出掛けたら倒れてんのを見つけたんでさ。いっそいで村まで抱きかかえて走っちゃら怪我しでねぇし何で倒れてんのか分かんなかっただよ。まぁ、同じ亜人っつうんでほっとけねぇんでこの村に置いてんでさ」
かなり訛りが酷いが大体は分かった。つまり孤児みたいなものか。
「おい。そこの小さいの」
「・・・・・・私は小さいのじゃない。私の名はシーリア。性はない」
僅かに言葉を交わして分かったことはこいつは、いや、シーリアは感情が読めない。つまり何を考えているか推測すらできない。もし剣士として相対したら厄介だろう。
「分かった。シーリア、お前は戦えるか?俺が見たところ相当やれそうだが」
本当に強者ともなれば自然と強者のオーラというか強者と感じれる何かを出す。それをシーリアからはかなり濃厚に感じる。
「驚いた。見ただけで分かるなんて。でもあなたもすごい強い。私なんかとは一般市民と剣聖並みに差がありそう」
この子も感じてたか。俺は戦ったら厄介なだけで圧倒的な強さの差で押し切れる。
「よし。今から俺と手合わせしろ。それで俺がしっくりくればお前を俺とユークリゥドのチームに入れる」
「シュ、シュウさん!?こんな年端もいかない子供を戦わせるだなんて!」
「ユークリゥドは分からないのか?シーリアは恐らく今17くらいだろう」
シーリアはコクリと頷き肯定する。ユークリゥドはえっと呟いた後口を閉ざした。
「それで貴方の名前がシュウということは分かった。そしてさっきの申し出?命令?は貴方に服従しろということ?」
「違う。仲間になれと言っている」
シーリアは仲間という単語に首を傾げた後了解と告げた。
善は急げという事で俺とシーリアはすぐに手合わせを始めることになった。村の中央にある広場で俺とシーリアは向かい合う。開始を告げる者もいない。俺やシーリア程なら互いに何となくその『時』が来たら動き出すからだ。今だ!
「ふっ・・・・・・!」
「やあぁぁぁ!」
互いに無手。体術のみだ。見込んだ通りシーリアは高速で俺の背後に回った。いや、背後というのは違うか。何故なら・・・・・・
「え・・・・・・?」
「勝負ありだな」
俺はシーリアよりも早く動いてシーリアの背後を取っていたからだ。シーリアの首をに手刀を当てて勝利を確かなものとする。周りの亜人がざわめく。
「今何が起こったんだ?」「見えなかったぞ!」「シーリアが消えて、シュウ様も消えて・・・・・・・は?」「シーリアに驚いたが、シュウ様にはもっと驚かされたな」
俺はシーリアの首に当てていた手刀を下げ、構えを解いた。すると少し頬を赤くしたシーリアは俺の前に立ちこう言った。
「すごい。私の取り柄は誰よりも速く動けることだった。でも私の速さなんか遥かに超えてた。・・・・・・ええと、確かこういう時は。そう、貴方に惚れた。我が生涯貴方の側に居させてください」
何だかただトーナメントに出る人員確保のために手合わせしただけだが生涯なんて重い話になってしまったな。
「生涯うんぬんは置いておいて俺たちのチームに入ってもいいという意思と取っていいんだな?」
シーリアは首を振る。
「生涯共に歩いていきたい」
よく分からないがチームに入ってくれるものと取り、了承した。
「ちょ、ちょ、ちょっと!シュウさん!?それ結婚の申し出ですよ!?そんな簡単に了承していい話じゃないですよ!」
結婚か。確か男女が長い間共に過ごす事だったか。まぁあながちシーリアの俺の関係に当てはまらない事もない・・・・・・のか?
こうして俺はチームメンバー(嫁)を手に入れたのだった。
後に聞いた話だがシーリアの種族である白猫は一対一の決闘(敵ではない者との決闘)に負け、相手が異性なら求婚する習わしがあるらしい。




