3校合同トーナメントの存在
俺たちがようやくツルクルへ戻れたのはパレードの日から2ヶ月も経っていた。
「・・・・・・久しぶりだな。ユルト。ようやくまたお前から依頼を受けることができる」
ユルトは目に涙を大量に浮かべ俺の話を聞いていたが遂に決壊し号泣し始めた。周りの冒険者たちは事情を知っている者ばかりな為微笑ましく見ている。
「うぅぅ・・・・・・やっと。やっとですね!シュウさんが依頼を受けに来なくなってからすごく寂しかったんですよ?それこそ冒険者の方と話をしてる途中でぼーっとしちゃうくらい」
別に死地に赴いた訳ではないし、大袈裟な気もするが。
「ところでこのツルクルにはXランク相当の依頼なんか来るのか?前に地龍の依頼を受けたのは覚えているが」
「来ません」
即答だった。まぁ、そうだろうな。ヘルゼン王からもXランクは相当各地を駆け巡ると聞かされた。駆け巡るのは面倒だと考えていたらそれを好意的には受け取れなかったらしいユルトは必死に喋り始めた。
「で、でもSランクの依頼やたまにSSランクの依頼も来ます!3年程前にはSSSランクの依頼も来ました!」
「そんな必死にならなくてもここ以外から安定して依頼を受ける気はない。ヘルゼン王が言ってたがXランクの依頼は主に国家の危機に相当するらしい。そうそうそんな依頼は出ないだろう。だから俺は危険な依頼が来やすい土地より居心地の良いこのツルクルを優先する。安心しろ」
ふえぇぇぇぇぇと泣くユルトを急かし依頼を受ける。依頼内容はこうだ。
『ウルガンの亜人村にて奴隷目的に連れ去られる獣人が多数出ている為その救出及び主導している組織の壊滅』
未だ泣き止まないユルトを置いてギルド会館を出る。そこには喜色を顔に浮かべた聖也ら勇者一行とユークリゥドがいた。
「ずいぶん嬉しそうだな、聖也。何か良いことでもあったのか?」
「お?ああ、シュウか。実はユークリゥド学園、ボルガス学園、セレクメント女学院合同で開催するトーナメント形式で行われる通称『聖戦』と呼ばれる大会の存在を今知ってな。それでつい楽しみで顔に出てしまったみたいだ」
ほう。聖戦か。
「シュウさん。主催者でもある私から詳しく説明させていただきますね。この『聖戦』と呼ばれる学園共同トーナメントは各学園からひときわ優秀で冒険者登録をしているチームを3つずつ選考し選ばれたチームは『聖戦』に出場します。これには生徒に拒否権はありません。そしてトーナメント優勝チームを有する学園は他の学園から優秀な上級生、教師を招いて自校の生徒に教えさせることができます。もちろん、私とシュウさんのチームも出場しますよ。セイヤさんら勇者チームも出場します。あと1チームは『聖戦』まで秘密です」
確かに楽しみだな。他の学園か。まったく考えたことなかったな。どんな強い奴がいるか、俺も聖也のように顔に出てしまいそうだ。
「ふふっ、嬉しそうですね。シュウさん。わくわくしてるのが伝わってきます」
・・・・・・訂正。出てしまっているようだ。
「開催はいつだ?」
「今日より数えて10日後です」
ずいぶん急だな。普通、こういう催しはもっと前もって知らされるものなんじゃないのか?
「たった今ウルガンの亜人村に行き奴隷を救出する依頼を受けたんだが間に合うか?」
俺はウルガンの場所すら知らないが。
「ええっ!ウルガンの依頼受けたんですか!?絶対に間に合いませんよ!ここからウルガンの亜人村に行くまでで10日経っちゃいますよ!」
困ったな。トーナメントには出たいが1度引き受けた依頼をほっぽり出すのは気がひける。誰かに頼めないものか・・・・・・。
「ああ、いたじゃないか。依頼を押し付けるのに適任が」
それから数分後俺はしくしくと泣き崩れるギルドマスターを前にして依頼をドゥールに押し付けることに成功したのだった。
「これで依頼の件は片付いた。あとはそのトーナメントの開催日を待つだけか」
最初はギルドマスターとしての仕事があると拒否されたが国の上層部に黙って俺のランク上げをした事をチラつかせたら手のひら一変、ぜひその依頼引き受けると頭を下げてきた。よっぽどクビになるのが怖いらしいな。
「ギ、ギルドマスターに押し付けたのですか・・・・・・すごいですね。ある意味。あ、シュウさん。誠に申し訳ないのですが私とシュウさんだけでは出場出来ないんです。チームは最低3人。あと1人、何とか見つけませんといけません。さらに他のチームは大抵4人から5人でチームを組んでいますので欲を言えばあと2、3人欲しいです」
出るとか言いながら人数が足りないのか。
「誰かあてはあるのか?」
・・・・・・返答がないということはあてが無いようだな。
「あてが無いなら付いてきてくれ」
以前パレードで亜人たちに演説をしてからよく亜人たちからお願い事をされた。それを幾つもこなしたら亜人の中でも格の高いやつに『我々亜人一同あなたから要請があれば戦いだろうと夜伽だろうと何でもする所存であります。何卒お困りの事がありましたら我々をお便りください』と言われた。それを頼るとしよう。
「確かここの店の・・・・・・」
中古の武器、防具を主に取り扱っている店に入り、最奥の槍置き場を掻き分けると壁に極小さなつまみがある。そこを1回転させる。
「わ、わわ!壁が開きましたよ!シュウさん!しかも開いた空間に魔法陣が!」
そう。この部屋にはある1つの転移用魔法陣がある。
「この魔法陣はツプチェの亜人村に繋がっている。そこに俺のあてがある。別にトーナメントに亜人が出ても問題あるまい?」
亜人差別がある国だ。少しは亜人がチームメイトに加わる事に忌避感があるかと思ったがユークリゥドは「前代未聞ですね。しかし、面白いです。しかもそのチームには主催者でもあるこの私が・・・・・・大変面白いです」と乗り気だった。魔法陣の上にユークリゥドと共に立ち、呟く。
「転移、ツプチェ」
その瞬間俺たちを光が包み込んだ。




