狂人ピュレオ
「此度の働き実に見事だった。この働きには然るべき褒美を与えよう。シュウのランクをXランクへ上げる!これに異議のあるものは前へ出よ!」
無事セレストリュールの街に入り王城に着くとすぐに広間へ通された。そこには各有力貴族が集まり中央にはヘルゼン王とクライドなどの護衛が控えていた。
「「「「パチパチパチパチパチパチ!!」」」」
満場一致で俺のXランク昇格は決まったようだ。
「うむ、皆の意見は分かった。異議者無しとしてシュウ・イチジョウのXランク昇格をここに認める!だが、これには諸外国の重鎮らとの合意がいる。シュウ・イチジョウ、しばし待て。すぐに承諾を得てこよう。昇格まではSSSランクとして活動するがよい」
ま、ここらへんは事前の打ち合わせで知らされてたな。しかし面倒だ。俺のいない時に済ましてくれないものだろうか。
(シュウさん、退屈そうな顔になっていますよ。いつもみたいに凛々しいお顔をなさってください)
そして受勲を受けているのはシュウなのに隣にはユークリゥドの姿が。
(む。顔に出てたか。悪い、気をつける)
しかし凛々しい顔って何だ?俺はいつもそんなに凛々しい顔をしているのか?少し離れた場所では聖也達も並んでいる。その聖也はこちらの会話が聞こえていたのか笑いをこらえているようだ。
「よし!ではこれにて閉会とする!勇者一行とユークリゥド、シュウは残ってくれ。解散!」
ぞろぞろと貴族達が去っていく。そして残された聖也達と俺達。
「すまなかったな。格式張ったものは嫌いだとシュウは言っていたが出させてしまった」
一国の王から謝罪を受ける。俺もずいぶん偉くなったものだと感慨深く感じながら応じる。
「いや、構わない。これで格式張った集まりは終わりにしてくれるんだろう?」
するとヘルゼン王やその護衛、聖也達が笑い出す。
「ははははは!ああ、そうだな。これで終わりになるよう尽力する。それでいつ頃各国の重鎮と協議を始めるかだが・・・・・・」
ドオオォォォォン!!!!!
「ぬっ!?何だ!?敵襲か!?」
クライドら護衛は即座に反応し王を囲む。聖也達とユークリゥドを背にかばうようにしてシュウも動く。
王城の屋根をぶち破り今もなお煙に隠れて見えない何者かを睨む。
「イヒヒヒヒ!こうも熱視線を浴びると感じるものがありますねェ!主に快感的な意味で!ギャハハハハハァ!さて!自己紹介が遅れましたワタクシ『影』序列3位、ピュレオと申します!以後お見知り置きを!」
現れたのは日本でいうところのスーツ姿でひょろ長い手足の男だった。何とも生理的嫌悪感を掻き立てる言動、姿だ。
「なっ、『影』!?しかも序列3位だと!?」
クライドは目を剥いて驚く。
「・・・・・・?」
シュウには何のことだかサッパリ分からない。見ると聖也達も同様のようだ。しかしユークリゥドは明らかに顔色が悪くなっている。
「ン~~?頭にハテナが浮かんでる方々がいるようですねェ~?そういえばアナタがたは異世界から召喚されたのでしたっけ?それなら『影』を知らないのも無理はない。では不肖!このピュレオが『影』についてご説明いたしましょう!」
俺と聖也達を除くこの場の全員は顔を青くして微動だにしない。
「まず『影』を説明するにはこの国の成り立ちから説明しなきゃなりませんねェ。まず、このスラフト王国は初代王、ユウギが建国いたしました。その頃のこのリースフェルは荒れに荒れていてねぇ。エルフ、ドワーフ、獣人族などの亜人種。さらには魔物や龍種がリースフェルの覇権を狙って争っていたんですよぉう。そしてユウギの妻、シュールは思いついた。「生物として圧倒的な力を持つ龍種と協力できればこのスラフト王国の安定を計れるんじゃな~い?」ってねぇ。それは結果的に功を奏し国は安定した。しかしそこでユウギとシュールの意見の対立が起きた。ユウギは龍とは縁を切り人間は独立すべきだ。シュールはこれからも龍種と協力し他の種族を制圧してしまおう。当然2人の意見は擦り合せる事など出来ず別れた。ユウギによるシュールの国外追放によって。これに憎悪を滾らせたシュールが我ら『影』の始まりですよぉ。ご理解いただけましたかねぇ!?」
ふむ。中々興味深い話を聞くことが出来た。もうこいつは用済みだな。
「感謝しよう。ピュレオ。お前のお陰でこの王国について少し理解することが出来た。そしてさらばだ。神斬流・水月!」
前振り無く俺は神斬流の技を放った。この技名の水月はクラゲを意味する言葉でもある。そのため技もクラゲのようだ。突きをクラゲの触手のごとく無数に飛ばし逃げ場をなくし、滅多刺しにする技だ。(飛ぶ斬撃と同じく飛ぶ突きだ)
「ヒョッ!?ヒョヒョヒョヒョヒョ!!!」
驚く事にピュレオは全ての突きを足捌きといつの間にか手に握っていたレイピアで弾き、避けていた。
「アアァァァァァ危ないデェすねェェェェ!!危うく蜂の巣になるとこでしたよぉ!?今日はワタクシご挨拶に参っただけですのにィ!・・・・・・まぁ許してあげましょう。ワタクシは寛大な事で知られていますからねェ!それでは皆様、御機嫌よう」
マシンガンの如く喋りながら転移用魔法陣を素早く展開し、ピュレオは逃げて行った。
「チッ、逃がしたか」
無言で手に出していた八重桜を異次元空間へ仕舞う。するとヘルゼン王やその護衛たちは座り込んでいる。
「どうした?そんなにピュレオを逃したのがショックなのか?」
見るとユークリゥドも座り込んでいる。
「あ、あの。シュウさん。あの者の説明に補足をさ、させていただきます・・・・・・」
なんだかユークリゥドの様子がおかしい。
「おい、なんか調子悪そうだが大丈夫か?医務室へ行くか?」
「だ、大丈夫です。それで、補足ですが『影』の活動は残虐非道。1人を殺めたらその人の住んでいる村を壊滅させると言われているほどです。そして先日『影』序列5位を名乗るサンザという男にスラフト王国騎士団の誇る最大戦力、剣聖・ジュドーが惨殺されたのです。その5位よりも2つも序列が上のピュレオが来たのでヘルゼン様やクライド様ら護衛の方々も動けないのです。クライド様ら護衛の方々の誰が挑んでも剣聖・ジュドーには勝てないのです。唯一全員でかかった時は勝てたそうですが・・・・・・」
なるほど。要するにあのピュレオとかいうやつは次元の違う強さだったって訳か。しかし俺からするとただの狂人にしか見えなかったが。




