帰還
「虹龍を倒したら魔物たち逃げてったね。あの司令官みたいな虹龍が洗脳を任されてたのかな?」
「さてな。・・・・・・久對羅。鬼帝鎧を纏った後の副作用だが、時間伸びてないか?」
久對羅は申し訳なさそうに頬をかく。
「・・・・・・うん。ごめんね。いくらシュウでも私を使うことによる代償、もとい『侵食』は防げない。こればっかりは・・・・・・私にもどうしようもない。ホントに、ごめんね」
「まぁ、お前を使い始めた時も使ってる時も言われたからな。侵食されること自体は気にしてない。聞いたのは今の侵食状況だ。後どれくらいこの姿でいれる?」
「ごめん、分からない。大体今まで私を使った人間は強い力に酔い、壊れた。それで私が手を下してたから最後の最後まで侵食されきった人は見たことない」
「そうか。・・・・・・侵食が完了しても戦闘には影響がないことを願おう」
久對羅は頷き消える。普段久對羅は八重桜の中で眠っている。眠っているとは言っても周りの状況は見ているが。
「さて、そろそろ戻らないとヘルゼン王も可哀想だな」
俺が戻らないと魔物の群れがいつセレストリュールに攻めてくるか気が気ではないだろう。そして思い出す。転移用とヘルゼン王に渡された転移用魔法陣の描かれた紙はユークリゥドに渡してしまった。
「はぁ、仕方がない。歩いて戻るか。どうせ副作用が収まるまで戻れないし。・・・・・・それにしても妙だな。ヘルゼン王が言うには虹龍は2体、そのうちの1体は黒いオーラを発していたらしいが虹龍は2体ではなく5体いたし、黒いオーラを発する強そうな虹龍などいなかったぞ?」
シュウの疑問はその時吹いた風に運ばれていった。
「シュウさん!怪我は!怪我はありませんでしたか!?」
セレストリュールに徒歩で戻るなり門で待ち構えていたユークリゥドの突撃を受けた。
「あ、ああ。怪我などどこにもない。むしろ今のお前の体当たりの方がダメージがあったぐらいだ」
良かった、良かったと連呼しながらその場に座り込み泣きじゃくるユークリゥド。
「おい、なんだあの男。いきなり門の前で女の子泣かせたぞ」「ねぇ、あの女性ってユークリゥド様じゃない?」「本当だ!?何モンだあの男・・・・・・」
周囲の視線が突き刺さる。ついでに陰口も。
「大丈夫だ。俺はここに確かに存在している。お前の知らない場所で勝手にくたばったり、大怪我などしない。だから泣き止め。お前に泣き顔など似合わない」
とりあえず俺もしゃがんでユークリゥドを抱きしめ頭を撫でる。すると先程まで突き刺さるような視線を送り陰口を叩いていた連中はある女性は顔を赤らめ下を向き、ある男性はバツの悪そうな顔をした。何故周りは何かしらの反応を示したんだ?ただ頭に浮かんだ事をそのまま言っただけなんだが。
「久しぶりに会ったと思ったら何生徒会長泣かしてんだよ。修」
顔を上げると鈴木聖也がいた。しばらく見ない間に纏う雰囲気が大分強者のそれになってきている。何より聖也の今の外見で特に目を引くのは腰に下げた剣だ。鞘の模様は金色と銀色が混ざり合い、お互いに侵食しあっているようだ。その剣の放つオーラがなかなかに無視できない。
「何見て・・・・・・?ああ、この剣か。この前仲間と潜ったダンジョンの最奥にあった。剣の銘はエクリプス。おっそろしく強い魔物が守ってたからさぞかし強いだろうと思って持って帰ったら思った通り強い。まぁ、お前の八重桜にはかなわないと思うけどな」
そんなことはない、とシュウは思う。聖也の持つエクリプスは八重桜にはと張り合えるほどのオーラを発している。
(・・・・・・ねぇ)
(ああ、俺も思う。・・・・・・エクリプスには八重桜同様『何か』が宿っていると考えて間違いないだろう)
「で、聖也達は何故ここに?冒険者になるにしてもツルクルに行くはずだが」
「いや、ツルクルに行って冒険者登録を済ませて幾つか依頼をこなしてたら自称この国の重鎮、ゲトガンにセレストリュールに来い。会おうって手紙が来たんだ」
「ゲトガン?まさかゲトガン・マールウスですか?」
「ん?ああ、ユークリゥドさん。はい、確かゲトガン・マールウスって書いてありました」
「・・・・・・ゲトガンは色々と黒い噂が絶えません。なので武装解除を指示されても何とかバレないよう武器を所持しておいたほうがいいでしょう」
聖也は忠告に対し礼を言い王城に向かった。
「ゲトガンは勇者に対しても何かしそうなアホなのか?」
俺から見ても聖也達はそこらの傭兵じゃ相手にならない程には強くなっている。ついこの間まで素人同然だったのに早いものだな。
「はい。ゲトガンはかなり有力な貴族で自分の立場をよくわかった上で行動に出ます。マールウス家を敵に回すとかなり厄介なので皆何も言えないんです」
「・・・・・・で、その『厄介』があまり関係のない俺や聖也はやり返せるということだな?」
「えっ・・・・・・?た、確かに!なら聖也さん達に伝えなければ!」
走り出そうとするユークリゥドの手を掴んで止める。
「いや、聖也達ならこれぐらい気づくだろう」
「えっ!あっ・・・・・・はい。そ、そうですね!」
顔を真っ赤にしあたふたするユークリゥド。それを横目に聞く。
「で、セレストリュールの門前何だがいつ入っていい?」
ユークリゥドが固まった。




