久對羅
「はぁはぁはぁ・・・・・・。くぅっ!?」
「ユークリゥド!お前はセレストリュールに戻って治療しろ!ここは俺が引き受ける!」
先程からこの繰り返しだ。何度俺が戻って治療しろと言っても毎回まだやれるといって残る。
「い、いえ・・・・・・まだ・・・・・・まだやれます・・・・・・」
またか。もういい加減邪魔になって来た所なのだが。そろそろユークリゥドを守りながらではなく殲滅に向かい、積極的になりたい。
「悪いがユークリゥド、お前を守りながらじゃ満足に戦闘出来ない。・・・・・・退いてくれ」
人の心の機微に対し鈍感な俺でも分かる。これは相手を傷つける言葉だ。だだしこうでも言わなければユークリゥドは退かないような気がした。相手の感情を読み取る能力の低い俺が今のユークリゥドの気持ちを想像すると恐らく自身の力のなさに対する怒りが4割、俺の口にした言葉に対する屈辱が3割、敵の量に対する絶望が3割ってとこか。
この想像は的を射てそうで射ていない。何故ならばユークリゥドのシュウに対する想いをシュウは気付いていないからだ。
「・・・・・・わ、分かりました。そうですよね。今の私なら尚更、万全の状態の私でもシュウさんの足手纏い。・・・・・・すみません、強情張って」
シュウの顔に後悔と謝意のこもった表情が浮かんだのをユークリゥドは見逃した。
「では、あとはお願いしますね」
ユークリゥドの姿が転移魔法により消える。それと同時にシュウは周囲に感じる監視(魔法)の気配を全て斬った。(シュウはこの世のあらゆるもの全ては斬れると信じているため斬ったし、成功したがこれはシュウの剣が鋭いを通り越した鋭さだったのとシュウの刀に宿る『鬼』のお陰もある)
「よし、これで覗き見してるやつはいなくなったな。さて・・・・・・起きろ、#久對羅__くむら__#
シュウの横に推定年齢17歳(外見)の美少女が現れた。
「はぁ、シュウってばとーんと私の事呼ばないから危うく拗ねるとこだったよ?まぁ私も外の世界見てたけど私を呼ぶほどの危機というのは無かったね。けど、けど!何も無くってもおしゃべり目的で呼んでって言ったのに何で呼んでくれないの!」
突然怒りだす『鬼』。この久對羅と呼ばれている『鬼』はまだシュウの師匠が死ぬ前日本でシュウによって討伐された事になっている『鬼』だ。が実際は人ながら人間離れした実力を見せたシュウに久對羅が一目惚れしシュウの刀となったのだった。
「すまない。今まで俺と付き合ってきたから分かると思うが単純に忘れていた。以後気をつける」
と毎回言いつつ忘れるシュウである。
「ま、その事はまた今度話し合うとして・・・・・・すごい量の魔物ね。どうやったらこんな量の魔物を呼べるの?っと、シュウが知るわけ無かったわね。いいわ。我が力、存分に振るえ。我が宿主よ」
久對羅は桜が好きだったため刀の名前は八重桜となった。
「ああ、そうさせてもらう。ふぅぅぅぅぅ・・・・ッッッ!!顕現せよ!!#鬼帝鎧__きていがい__#!!」
シュウの体に禍々しいオーラを放つ鎧が装着された。全体的にほぼ黒色で鋭角的なフォルムだ。能力は単純に筋力、防御力などの基本的能力の爆発的上昇。これによりシュウの理壊斬刃はさらに強力となる。
「理壊斬刃ッッ!!」
シュウの放つオーラ(魔力ではない)により周囲の地面が大きくへこむ。いわゆるシュウを中心としたクレーターだ。
「久對羅、特に強力な気配を発する魔物、まぁ虹龍だがその魔物の居場所を教えろ」
鬼帝鎧となり八重桜にもなっている状態では久對羅は喋れないが思念のやり取りができる。
「そうか。ありがとう」
虹龍は魔物の群れの四方と中央に一体ずつということが分かった。
「さっさと片付けてユークリゥドに乱暴な発言について謝罪しないとな。それにユルトはどうしてるか気になる。聖也にも会ってないな。これが終わったら会いに行くのも良いかもしれない」
そう言ってる間にも魔物は寄ってくる。がシュウの常時放っている物理的な威力を持つオーラに押し潰されていく。つまり今のシュウは魔物の群れを走り回るだけでほとんどを潰せる。シュウもそのことには気づいているが走り回るのは面倒な為していない。
「見つけた。・・・・・・しかし以前倒した虹龍より大分威圧が無いな。弱い個体なのか?」
実際はシュウが鬼帝鎧を着けた事による戦闘力の爆発的上昇によりあまり威圧を感じないだけで以前倒した虹龍と同等、もしくはそれ以上だ。
「む?人間か。よくぞここまで辿り着いたな!我が名はコ」
「悪いが急いでいる。旋風!!」
最初に見つけた虹龍の名乗りの途中で先制攻撃をする。すると一撃で虹龍の首が飛んだ。
「ぬ、ぬおぉぉっっ!?ぐっ、何とも化け物じみた人間もいたものだ!だが!我の死は瞬く間に同輩の元へ伝わる!今にそのちっぽけな命は拭き消されるであろう!今のうちに懺悔を済ませておく事だな!
・・・・・・も、もういないだと?馬鹿な・・・・」
シュウの姿は虹龍が己の死は瞬く間に同輩の元へ届くと言った時から無い。
「良い事を聞いたな。これなら予定を変更し先に中央の奴の元へ向かうか。5体の虹龍の内中央のが一番強いと久對羅が言っていたからこの魔物の群れの司令官的存在と見ていいだろう。それに運が良ければ他の虹龍が数体集まっているかもしれない」
そんなシュウの期待は見事的中。それどころか残り4体の虹龍全てが集まっていた。シュウはこの虹龍たちに対して気配を消して接近、 即座に虹龍らの上空へ飛行しシュウ特有の物理法則を無視した飛行技術で奇襲を掛けた。
「むぉう!?」「ゴバァァァッッ!!」「ギャヒッ!?」「・・・・・・ッッッ!!」
全ての虹龍を蹴りとパンチで地面に埋め込む。
「・・・・・・これで終わりだッッッ!!!神斬流・天穿ッッッ!!!」
鬼帝鎧の身体能力強化により天穿発動時の可動範囲が大幅に広がった為全ての虹龍は漏れなく蜂の巣と化したのだった。
「ウひっ!キキキ!スンバラシィイィィィ!!まさか虹龍を4体同時に葬るトハ!想像以上などという言葉では生ぬるい!クヒヒヒヒヒヒ!!ヒャハハハハハはーーーー!!」
シュウは周りで『視て』いた魔法的なものは全て斬ったが魔物の視界を奪い、観る者までは気づかなかった。




