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凶報

ツルクルを出てから2週間が経過した。さしたる問題も起きずここまでは順調な旅だ。

「ユークリゥド、セレストリュールには行ったことがあるのか?」

「はい。以前ヘルゼン家の長女として貴族の集まりに行かされました。その集まりは退屈極まりなかったですが町自体は美しかったですよ。料理も美味しかったです」

美しい街並みか。そういうのにあまり興味は無いな。料理といえば最近タルケを食べてないな。シュバリエ山に行っていたから当然と言えば当然だが。

「飯屋にタルケはあるか?」

「もちろん。どこにでもありますよ」

よかった。王がいる街だ。何か普通と違う工夫がされてるかと期待してしまう。・・・・・・ん?

「ユークリゥド、お前は何も感じないか?」

「え?何も」

ユークリゥドには感じ取れていない。ということは思ったよりも距離が離れているのか?

「少なくとも俺にとっての近くだが近くに大規模な魔物の群れの気配がある」

「えっ!?もうセレストリュールまで少ししかないのに魔物の群れ!?・・・・・・少し、待っててください」

ユークリゥドの足元に魔法陣が展開される。あれは以前見たが確か魔物探査の魔法だったはずだ。

「・・・・・・!?ほ、本当にあった・・・・・・。こうしてはいれません。急ぎセレストリュールへ向かいましょう!この事実を一刻も早く知らせなければ!幸いこの街道からは外れているので回り道は必要無さそうです!」

ユークリゥドは気づいているか分からないがあの群れはユークリゥドが『あの程度』の驚きですむ群れの規模ではないはずだ。少なくとも万の単位は超えている。そこから考えるとおそらく存在を隠蔽する結界か何かが張られている。防御系の結界ならまだしも存在隠蔽の結界をただの魔物が張れるとは考えにくい。

「・・・・・・この群れは人為的なもの、か」

「何か言いましたか?」

「いや、何でもない。急ごう」

今は先を急いでおこう。セレストリュールでも隠蔽結界の存在くらい感じ取れる魔術師くらいいるだろうから。しかし、現実は違った。

「何故普通に過ごしているんだ、ここの住人は・・・・・・」

通りは普通に賑わっている。注意を呼びかける兵の姿すら無い。

「まさか気づいていないのか・・・・・・?」

思ったよりも隠蔽の結界が強力で俺たちが気づけたのは近かったからか?

「取り敢えず王宮に向かいます。入り口で警備兵達に止められたら私が兵と話をするのでシュウさんは直接ヘブロス王の元へ行き事情を話してください」

「分かった」

なるべく兵は殺さないようにしておこう。火急の件とはいえ犯罪者にされそうだ。王宮へと続く大通りを走る俺とユークリゥドに奇異な視線を向けるセレストリュールの民。平均的な生活水準はツルクルより高そうだ。着ている服が上等で、物腰も丁寧。走りながら人々を観察してるともう王宮前だった。

「良いですか、くれぐれも兵は殺めないように。それと多少ならお目こぼしもあるでしょうがなるべく礼儀正しくしてください。緊急事態でも細かい礼儀などを騒ぐ貴族がいますから」

「こんな時に礼儀か。そいつは相当な阿保だな。・・・・・・まぁ、分かった。言葉遣いには注意するよう心がけよう」

その礼儀を気にする貴族というのがユークリゥドの叔父であることをシュウはまだ知らない。

「は、はい・・・・・・。では、もう兵士がこちらに向かってきてるので。お願いします」

ユークリゥドの言葉に頷きを返しユークリゥドと別れる。ユークリゥドが火急の件だかなんだか叫んだのが功を奏したのか追ってくる者はいない。しかし、王宮内で追ってくる者はいた。全員一撃で昏倒させる。

(ここか?王のいる部屋は。他と違い段違いに警護の兵が多いな)

こちらに気づいた兵士達を何もさせず首に手刀を打ち込み気絶させる。

「さて、行くか」

シュウが扉を開けるとそこには・・・・・・虚ろな眼をした兵士の集団が6人の護衛に守られている玉座に座ってるやつを狙っている光景だった。

「くっ、まだ増えるか!・・・・・・テータ、キューレ、ゾルト、クライド、フルウ、アリア。すまないな。私に人望が無かったからお前達をこんな危険な目に合わせている」

護衛の者達は無言で玉座の男に微笑みかける。そこには絶対の忠誠心が窺える。

中々好感が持てる。それに部下にあれだけ深い忠誠心を抱かせる。・・・・・・助けてやるとするか。それに恐らくあれがヘブロス王だしな。

「俺は味方だ!そこの玉座に座ってるやつ!そこで待ってろ!今道を切り開く!で、護衛のやつら!道が空いたら速攻で連れてこい!行くぞ!」

俺は大声を出し虚ろな眼の兵の注意を引きながら指示を出す。すると

「なっ!?あいつは!?何故こんな所にいる!ピュレオ様は後2日は掛かると仰ってたのに!」

?俺の事を知ってるやつがいるのか。まぁいい。斬り捨てるだけだ。

「お前は!シュウ・イチジョウか!無為に命を差し出すな!私にそんな忠誠を見せても・・・・・・」

「別にお前に忠誠心なんか持っていないしあるように見せかけてるつもりも無い。ただお前という人間に好意を抱いただけだ」

護衛達は自分達の味方になるかもしれない者に対して自分たちの主に対する言葉使いを注意する訳にもいかず歯噛みした。

「そう・・・・・・か。その、なんだ。嬉しいな。王としての私ではなく1人の人間として好意を抱かれるのは。っと、そんな場合では無いな。すまない、シュウ。頼む!」

頼むと言い始めた時には既に前傾姿勢、言い切った時に大理石の床を蹴っていた。

「ふッ・・・・・・!」

右手で振り抜かれた刀で数人纏めて吹き飛ばす。斬ってはいない。峰打だ。

「なんという速度。最下級の巫女が召喚したとはとても思えん!」

「・・・クライド、それでは、スリュルが、かわいそうだ。あいつの、力は、最高位の、巫女をも、超えている、はずだ」

「そうなのか!?知らなかったな。で、何故ゾルトはそんな事を知ってるんだ?」

「召喚能力を、見て、あの子を、連れてきた、のは、俺、だからな」

兵をバッタバッタと薙ぎ倒す俺を尻目に会話か。そんな余裕あるなら自分らで突破出来るだろう。まぁ、道を切り開くといった手前、引くに引けないが。

「・・・・・・今ので最後か。道を作る以上に敵を全滅してしまったな。で、無事か?・・・・・・へ、ヘブロス王?」

俺の頭の中では名前を忘れる寸前だったらしい。

「う、うむ。私は無事だ。謝意を示し何か送ろうと思うが何かあるか?」

「悪いがそういう話は後だ。俺がここに来た理由は重要な、そしてこのセレストリュールの危機に関する情報の伝達だ」

「なにっ!?セレストリュールの危機だと!?」

一瞬で顔色が変わるところといいこのヘルゼン王は自国を愛し、国民を愛する名君なのだろう。しかし、そんな王に何故あれほどの兵が・・・・・・?

「ああ、文字通り危機だ。それは・・・・・・万を超える魔物の群れがこちらに向かってきている」

その部屋の空気が凍りついた。

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