ドゥールの推薦状
「・・・・・・という訳だ」
シュバリエ山から戻ってきた俺とユークリゥドはツルクルのギルドマスター、ドゥールに虹龍討伐の経緯を話していた。(この時シュウは初めてギルドマスターの名前を知った)
「ふーむ。色々と驚愕に値する情報がありすぎるが・・・・・・ひとまず。お前、SSSランクに挑戦しろ」
その時、その部屋にいたユークリゥド、ユルト、秘書らしき人物(ギルドカード発行の際渡してくるようユルトに指示したのはこの人だった)は驚愕の叫び声をあげた。
「おいおい、驚くこたぁねぇだろう。なんたってあの虹龍を殺ったんだからな。つってもまだギルド登録を済ませて日が経ってないから異例ではあるか。シュウ、お前には悪いが俺のギルドマスターとしての権限じゃSSランクまでしか上げらんねぇ。SSSランクになるには王のとこ行って王直々にランク昇格を認めてもらわなきゃならん」
王か・・・この世界に来て初めて会った以来だな。
「そういえば、王の名前は何というんだ?」
「今まで知らんかったのか!ヘブロス王だ!そこかしこで言ってんだろうが!・・・・・・まぁ、いい。とにかくお前がSSSランクに上がる気があるなら推薦状を出しておく。ないならまぁそのままだな」
なるほど。
「王に会ったら何かさせられるか?それとSSSランクになって何かメリットは?」
面倒又は俺が有益だと感じるメリットが無いまたは少なければドゥールには悪いがこの話は断ろう。
「ギルドマスターの推薦状があれば何もさせられないはずだ。メリットは権力が増す、受ける依頼または指名依頼の難易度が格段に上がって歯ごたえのある依頼ばっかになる。あとは飯屋とか宿屋が無料とかだな。あと王勅命の依頼がたまに来る」
最後が余計だな。それさえ無ければ一瞬の逡巡すら無く頷いていたが。
「その王勅命の依頼は断れないのか?」
「断れないこともない。だが、断るのはアホだ。冒険者としての評価、ガタ落ちだぞ」
正直面倒だがメリットと秤にかけると上げたほうがいいか。
「その話、受けよう。いつ王のいる・・・・・・どこだったか?」
「セレストリュールだ!ほんと興味ねぇことは覚えてねぇな・・・・・・。もうお前が受ける事は予想して推薦状は出してある。なるべく早いほうがいいからこの後すぐに出ておけ」
ドゥールの言葉に頷き部屋を出て行く。
シュウとユークリゥドが出て行った後のギルドマスター室。
「ふぅ・・・・・・実はあいつが断る可能性も高いと考えていたんだよな。受けてくれて助かった。何たって虹龍の討伐だからな、その者は我々の味方か?婚姻は?親は?つってセレストリュールのボンクラどもがうるさいのなんの」
「ドゥール様、私もその意見に諸手を上げて賛同いたしますがここにはユルトがいる事もお忘れなきよう」
「い、いえ。言わせていただけるなら私はセレストリュールと問わず貴族が全体的に嫌いです。もちろん良い人もいるのは知ってます。でも大部分が腐ってるので・・・・・・」
「ま、お前さんはそうだろうな。何たって美しいから自分のモノにしたいっていうゴミ貴族に両親殺されてユルトは攫われてるからな。ま、もう貴族に言い寄られる事はねぇ。何故なら俺が全力で守ってやるからな!ハハハハハ!」
「そ、そうだったのですか・・・・・・?すみませんユルト。あなたの気持ちも知らず・・・・・・」
「い、いいいいえ!知らなかったなら仕方ないですし、気にしてませんから!」
「ま、シュウにはユークリゥドが付いてるしそうそう貴族どもに言い寄られはせんだろう。ユークリゥドがいなくても引っかからなそうだが」
秘書とユルトは同時に頷いた。
「シュバリエ山に行くとき相当余分に物資を集めたから何も用意しなくていいか」
「一応確認しますよ」
面倒くさがったのを見破らたようだ。目がジトっとしている。
「そうだな、油断は禁物か。悪かった」
結局確認しても必要な物は特になかった。
「じゃあ出発するか。セレストリュールへの道、全く分からんから道案内は頼んだぞ」
「はい。ツルクルの町から南西に1ヶ月程歩くとセレストリュールのはずです。途中から街道があるのでそこまで行ければ迷うということはありません」
今更だが、ユークリゥドは優秀だな。学園で渋りながらもパーティーを組んでよかった。
「分かった。では行こう。さっさとランクを上げて難易度の高いという依頼を受けてみたい」
ツルクルの南門から外へ出て少し歩くと下卑た笑みを浮かべる男の集団がいた。
「へへへ、てめぇらまだ冒険者になりたてだな?あまり見ねぇ面してやがる。まぁもう分かっているだろうが有り金と装備全部置いていきな。そうすりゃ命だけは取らないでやる」
所謂ゴロツキか。
「ユークリゥド、あいつら斬ってもいいのか?話し合って解決、なんて方法面倒なんだが」
「確かあの者達はギルド会館に賞金首として載ってましたね。ですのであまり殺さずツルクルの衛兵に引き渡すべきかと」
面倒だが仕方がないか。
「いや、その必要は無さそうだ」
背後のツルクル南門から衛兵達が出て来ていた。目の前のゴロツキ達は衛兵に気付くと慌てて逃げようとするがシュウが数人動けないよう殴ると全員動かなくなった。その後賞金首達を衛兵に引き渡し気を取り直してセレストリュールに向かって歩き始めた。