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様々な家庭、家族

私の家族の複雑な関係

作者: 山家

「叔母ちゃん」

「私はお姉ちゃんと呼んでほしいな」

「私の息子だから、あなたは叔母ちゃんで正しいわ」

「ええ、お姉ちゃんが産んだ子ではなくて、お母さんが産んだ子じゃない。お姉ちゃんでいいじゃない」

「皐月」私は、妹を睨みつけた。

「ごめん」妹の皐月は、頭を下げたが、内心では納得していない。まあ、12歳で実の弟に叔母ちゃん呼ばわりされては仕方ないかもしれない。

「息子が混乱しているでしょう。3歳だから、まだよくわかっていないけど。あなた、子どもをあやしてちょうだい。私は皐月と話をしたいから」

「いいよ」夫は自分と血縁の無い息子を実子のように可愛がってくれる。嬉々として息子を自分の部屋に連れて行った。


「弟を息子にするなんて、お姉ちゃんも思い切ったことをしたわね」

「だって、仕方ないじゃない。夫が無精子症で子どもができないのだから」結婚してお互いに子どもが欲しいのに、半年経っても私に妊娠の兆候がない。それで夫婦そろって検査してもらったら、夫が無精子症だと判明したのだ。顕微授精でも無理だという。私と夫は相談して養子を迎えることにした。

「だからって、弟を息子にする?」

「夫も私も子どもが欲しい。でも、夫は不妊症。養子をもらうしかないでしょう」

「それで、私たちの弟を養子にしたわけね。でも、他にも方法はあったと思うな」

「どんな方法?」

「AID」皐月は、ぼそっと言った。皐月は中学生のくせに異常にませている。私は思わずむせた。

「だって、お姉ちゃんには何の問題もないんでしょう。そうすればよかったじゃない」

「止めて。私みたいに実父が分からない子になるわ」皐月は私の異父妹だ。皐月には実父がいるが、私には(戸籍上は)実父はいない。

「お姉ちゃん。本当に実父が分からないの。お母さんには尋ねたの」

「尋ねたわ。お母さんには思い出したくない思い出らしいの。だから、それきり。それに今では私にも養父とはいえ父がいるし」

「ふーん。私が尋ねても、お姉ちゃんの実父を教えてくれないのよね。お母さん。まさか同時に2人の男性と付き合っていたのかな」

「そうかもね」私はそっけなく答えた。皐月も余りこの話題に触れると、私が怒るのが分かっている。話しを明後日の方向に変えた。

「思ったんだけどさ。お父さんから精子を貰ったらいいんじゃない。お姉ちゃん、お父さんが初恋の人だったんでしょう。お姉ちゃんの知人が教えてくれた。お姉ちゃんとお父さんが最初付き合ってたのに、お母さんが略奪したって。初恋の人と公然と子どもが作れるわよ」

「何を言いだすの。我が家の家庭が滅茶苦茶になるわ。実父が養祖父なんて真実を知ったら、生まれてきた子が苦しむわ。それに血がつながっていないとはいえ、仮にも今では私の養父なのよ。姉に父と関係するように勧める気」私は皐月に激怒した。皐月はしゅんとした。

「ごめん、そんなにお姉ちゃんが怒るとは思わなかった。でもさ、お姉ちゃんは26歳で、お父さんは28歳、お母さんは42歳。どう考えても、お姉ちゃんの方が年齢的には釣り合うじゃない。私がお母さんのお腹の中に出来た時にはお母さんは29歳だったけど。幼稚園の頃、お姉ちゃんがお父さんと呼ぶのがどうにも違和感があった。本当はお姉ちゃんが本当の私のお母さんなのかなとか、お姉ちゃんじゃなくて叔母ちゃんなのかなって思ったこともあった。周囲も本当の関係を知らない人はそう言ってたし。何でお父さんはお母さんを選んだのかな」

「まあね。恋愛関係は年の差なんて関係ないのよ。お父さんとお母さんは今でもバカップル並みの仲の良さだしね」

「そうそう、また子どもが出来たって。お母さん言ってた。40歳過ぎたのだから、もうできないと思ってたのに5人目ができたと嘆く様に言ってながら、満面の笑みを浮かべてた。お姉ちゃんは聞いていない?」

「聞いていないというか。私には言いづらいんでしょう。私たち夫婦には実子ができないのだから」

「そういえば、そうだね」皐月はその話題に飽きたのか、学校の話題に話を切り替えた。一しきり話すと話すことが尽きたのか、皐月は両親の家に帰って行った。


 皐月を見送った後、私は皐月にさえ話せない秘密、夫も知らない秘密を思った。皐月の実父、私の養父は実は私の異母兄なのだ。だから、私は初恋を諦めるしかなかった。まさか、初恋の人が異母兄だったなんて誰が思うだろうか。そして、母が異母兄と恋に落ち、結婚に踏み切るなんて。私と養父の実父は、私が母のお腹の中にいるときに亡くなり、母は私が不倫の子であることから、認知を求めずに身を隠した。そして、異母兄と知らずに私は養父と知り合い、母に真実を教えられたのだった。だから、皐月は妹であり、姪でもあるのだ。そして、養子の息子は、私の弟であり、甥にもなる。本当に複雑な家族になったものだ。私はあらためて思った。

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