表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

こわいひとにはこわいかも、こわくないひとにはこわくないやん、な実体験

作者: KEY

私が4歳の頃。



母方の祖父が亡くなった。


今では顔も思い出せないくらいのおぼろげな記憶だが、一度お見舞いに行った時に、


「よく来た、よく来た」


と喜んで、大きな手で頭を撫でてくれた事は、よく覚えている。



祖父危篤の報をうけ、病院に家族で走ったが、多分間に合わなかったのだろう。


祖父と対面をした覚えはなく、母がやたらと泣いていたことだけは、やはり覚えている。


今だと分かるが、ご遺体を母の兄にあたる叔父が家へとつれてかえる運びとなったのだろう。


一緒にいた叔父一家はいつの間にか姿を消していて、私たちも祖父の家、つまり母の実家へと向かうのだと告げられる。


その時、急に、私はお手洗いに行きたくなり、ひとり、トイレに駆け込んだ。


母に、いつもの入口で待っているから、ちゃんと来るんだよと言われながら。


そしてお手洗いから出てきた私は、見事に迷子になった。


何を馬鹿なと思われるかもしれないが、なんてことないところで迷うほど、私は方向音痴なのだ。


半べそをかきながら、なんとか階段を見つけて一階に降りたが、どこをどう通れば『いつもの入口』にたどり着くのか、全くわからない。


ここから先が不思議な出来事。


急に私は泣くのをやめて、何かに導かれるように、走り出した。


長い廊下を走って走って、どこかは知らないが、出入り口のようなところに出た。


そのまま出入り口を出ると、病院を出た。


私の足は止まらず、そのまま走り続け、ぐるりと病院の周りを回りきり、いつもの入口へたどり着いた。


入口で苛々しながら待っていた母が、入口から「入ってきた」私に驚愕の目を向けたのは言うまでもない。


そして遅くなったことに大目玉を喰らいながら、私は家族と母の実家に向かった。



あの時、私を導いてくれたのは、なんだったのか。


ただ走っていた最中、なんども誰かが、背中を押してくれたような気がした。


方向音痴のわたしは一度迷うと、さらに迷うことを恐れて、道を自分で決められない。


その私に、まず走れと背中を押し、そして走り出したらこの角を曲がれと押し続けてくれたのは、だれだったのだろうか。





余談。


大人になり、結婚して子供も無事授かった私は、近いということもあり、子供のホームドクターをその病院にしていた。


ある時、子供の通院のついでに一階をぶらぶらして、あの廊下を見つけた。


廊下を歩いたその先に、通用口を見つけた。


その通用口は、ご遺体専用の出口だった。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お祖父様の思い出と共に語られているためか、全体的に温かな雰囲気すら感じる不思議な体験談でした。そして、余談で少し冷やっと感じられて、ホラーらしさもありますね! [一言] 子供のころの不思議…
2014/08/23 20:35 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ