2章 「課外特別実習」3
「次は岩の正体か」
粗方周辺を調査したが、分かったことは岩が何処から出現したかということだけだった。
先に岩を調べてもらっていたソニアたちと合流し、互いの結果を報告しあうことにする。
再び7人は岩の上に集まった。
「じゃあ、周辺調査組から報告します」
ユーリが代表して発表した。
「特に変わったものや手がかりになりそうな物は見つからなかったですが、岩の出現理由は検討がつきました」
「本当!?」
「何々?」
「恐らく、現実的に考えたら有り得ない確率ですが、あの丘から落ちたのかと」
「丘?」
全員が丘を見る。
ユーリは丘の上に岩があったことを説明した。
とても高い崖の上に岩が存在していて、何かの拍子で川に落ちたと推測した。
信じられないが、丘の上に岩がなくなったという話からしてそう考えるしかなかった。
「じゃあ、次岩調査組の報告お願いします」
「はい、ライネスさんの魔具で調べた結果、岩はやはり魔法で作られた物でした」
「やっぱり……」
岩調査のメンバーの一人の男子が結果を報告した。
ユーリの思った通りだ。
「属性は月。地魔法で作られた岩でした」
「まぁ、岩だから当然地魔法だろ」
「でも凄くない?あんな巨大な岩……」
「そうだね、地魔法のこと深く知らないけど、こんな巨大な岩を形成させるなんて出来るのかな?」
第一には月属性の者はいない。第一は太陽属性のトップ学校である。
そのかわり第二は月属性の学校で月属性のトップである。
しかし月属性の者は殆どいないため、月属性の者がだいたい第二に通うことになる。
なので、月属性の魔法については第一の人が詳しくなくて当然だった。
「大勢で作ったのかも」
「いや、それはないよ」
ユーリが言い切った。
ユーリは自分で作った性質測定器を持っていた。
球形の側面に測定結果がでる小さい画面があった。
「自然のものなら、魔力なしって画面に表示され、もし魔法で作った人工物なら、属性とタイプが出る。けど、複数で作ったものの場合エラーって出ちゃうの」
「え?エラーなの?」
「魔力は人それぞれ違うってさっき言ったでしょ?この魔具では一つの魔力しか測定出来なくて、魔力が混ざるとエラーになるの」
「エラー出なくて良かった……」
「まだまだ改良しなきゃいけないんだけど、私の技術がまだ追いついてなくてごめんなさい」
「いやいや、ライネスさんは十分すごいよ!」
「この魔具ではっきり分かったこともあるし!」
ユーリは落ち込みそうになるが、ソニアに励まされたことを思い出し、今はそれどころじゃないと気を引き締める。
「だからこの岩は一人で誰かが作ったってことになる」
「……こんな巨大岩を一人で……」
7人は岩を見下ろした。
たった一人の魔法使いが、どうやって巨大岩を出現させたのか、何故岩が出来たのか色々疑問は浮かぶ。
が、皆は真っ先に一人でこんなにも巨大な岩を、形成させることが出来た魔法使いがいることに、ただただ驚いて言葉を失った。
※※※※※
ある程度調査し、これ以上調べても何も出ないと判断したユーリは、排除案チームと合流し報告をすることにした。
排除案チームがいるところに向かうと、シャーナやアンジェ、排除案チーム全員が難しい顔して黙り込んでいるのが見えた。
何かあったのだろうか。
ユーリたちが近付くと、排除案チームの皆が調査チームを見つけ、明るい表情になった。
「……どうしたの?」
「調査チーム戻ってきたー!これで何か浮かぶかも!」
「打開策となる情報をくれー!」
排除案チームは口々に喜びの言葉を言う。
ユーリは息詰まっていたのだと察した。
「ユーリどうだった?」
アンジェがユーリの下へやってきた。
「うん、色々分かったから集まってくれる?」
「分かった。悪魔の見張りしてる人も呼んでくるね」
「お願い」
アンジェはシャーナに皆に集まるようお願いし、自分は悪魔排除チームを呼びに行った。
※※※※※
クラスメート全員が岩の前に集まった。
そして結果報告が行われた。
「まず排除案チームから。案は出来る限り出し尽くしたが、最善ないい解決策は思い付くことはできなかった。申しわけない」
代表してシャーナが頭を下げる。
皆が落胆するのが分かった。
「調査チームが何か掴んだようなので、その結果を元に再び策を練るつもりだ。では、調査チームの報告を頼む」
「はい」
ユーリが前に出た。
ユーリは、岩が誰かの魔法によって作られた物ということと、丘から落下した可能性があるということを説明した。
岩調査と排除案のチームが合わさり、解決策をまた練ることになった。
悪魔排除チームには続行して見張りを続けてもらう。
「魔法の産物なら、術式解けば岩消えるんじゃない?」
話し合いが始まり、すぐに意見が出た。
術式とは魔法を扱う時に描く術の方式のことだ。
たいていは術式の要らない基礎魔法やそれの応用魔法を駆使して魔法を使う。
他には呪文などで術式を描く手間を省くのが普通だ。
しかし、複雑な魔法や高度な魔法、スケールの大きい魔法だと術式をちゃんと描かなければ成功しない。
それに呪文で省略しても、普段は人の目には見えないが、魔法には術式が含まれているのだ。
魔法で出来た物を、魔力で覆った杖で叩けば、バネのようにお互いの魔力が反発しあい杖が跳ね返る。上手く術式があるところを叩けば、術式が見える。
術式を解けば必ず魔法は解ける。
「そうかも!問題はその術式が何処にあるか……」
「あと術式を見つけても複雑だと解けないかも。地魔法なんてあんまり触れないし……」
せっかく出た意見だが不安要素が出た。
しかし、それを聞いたアンジェが言った。
「とりあえず探して見ない?案外解けたりするかもよ。解決策に繋がるのを一つひとつ試していくのも手よ」
「アンジェの言う通りだ。試せそうなものは、試していこう他に何か意見は?」
シャーナもアンジェに賛成し、話し合いが終わったら、術式を探してみることにする。
次にユーリが手を挙げた。
「解決策じゃないけど、一つ補足。岩の固さを調べてみたけど、あれは物凄く固いよ。ダイアモンド並」
「強度ってその魔法使いの力量に反映されるもんだよね、ホント誰が作ったんだろ」
「これで岩を壊すのが難しいのが分かったな」
どうやら今考えられる解決策は一つしかないらしい。
「よし!術式を解く方法を試してみよう!」
シャーナの言葉で皆が動き出した。
チームを編成し直し、悪魔の見張り5人、岩排除15人ずつに分かれた。
※※※※※
岩は巨大なので、術式を探すのにも一苦労である。虱潰しに杖で叩いて探すしかない。地道な作業だ。
水魔法使いの5人は川に入り、水中から術式を探す。その他のアンジェとシャーナなどの10人は、陸からでも探せる岩の側面から術式を探す。
「ユーリはどっちのチームに入るんだ?」
チームを組み直す時シャーナがユーリに聞いた。
ユーリはどちらかと言えば、悪魔の見張りに最初から入りたかった。
真っ先に悪魔と接触出来る可能性があるからだ。
しかし、調査には自分が必要だろうと判断し、調査チームに入った。
シャーナには、そんなユーリの性格がお見通しだったのだろう。あえてどっちにつくか聞いてくれた。
「……悪魔排除に」
「分かった。けど、一つ言っておくが、自ら悪魔な接触しようとするなよ。クラスを巻き込むような真似は、例えユーリでも許さない」
「……うん」
「あたしは責任を負ってる立場だからな。今はグループで行動しているわけじゃないから、自由なことはするな」
「……分かった」
「あ、あと一つ」
「一つじゃなかったの」
「うるせー聞け。絶対に死ぬな。何かあったら逃げろ」
「…………大丈夫よ」
シャーナがとても真剣な表情をして言ってきたので、ユーリも真面目に受け止めた。
「じゃあ、頑張れよー」
しかしシャーナは言うことは言ったようで、すぐにいつものシャーナに戻り、ユーリの背中を軽く叩くと、自分の持ち場に移動した。
(心配してくれたのか……)
ユーリはアンジェとお昼にした時を思い出す。
ユーリはアンジェやシャーナとは違い冷めた人間だと思っている。
心配されると恥ずかしくなるし、心配するというのも苦手。
踏み込んでいい領域を測って接する癖がある。
シャーナはユーリのそんな性格を理解し、適度な距離を保ちながら、時々大胆に領域を越えてくる。しかしそれは嫌ではない。
(上手いんだよね。人との接し方が)
だから皆シャーナについていこうとする。
アンジェはいい意味でも、悪い意味でも、予告なしに土足で気にせず領域に入ってくる。
我が道のように、当たり前な顔をして。
シャーナとは違うのは気遣いが出来ないことだ。振り回すだけ。
だからユーリは最初アンジェが苦手だった。アンジェもユーリがつまらない奴だと思い苦手だっただろう。しかし今は何故か向こうが懐いたように絡んでくる。
最初は嫌だったが、慣れてしまえば、普通だった。
(まぁ、悪くないし……)
たまに嫌だけど、嫌いじゃない。