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ウィザーズ  作者: 緒詞名
1巻「4人の魔法使い」
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2章 「課外特別実習」1

2章 「課外特別実習」






東の森入口付近。

シャーナグループ+他4グループの計20名のA組は、一先ずここで待機の指示が出た。

多くの者が森にこんなに近付いたのは初めてだろう。昼間なのに森は静かで奥は暗い。一回入ったら抜け出せないような雰囲気を醸し出していた。

流石に行く前に学校で見れた笑顔は全くない。皆が不安と緊張で落ち着かなかった。


グレアムが生徒の前に出る。

今から行う課外特別実習の仕事内容の説明が行われるのだろう。


「今日は課外特別実習です。この実習は、実際に自分たちの魔法を社会のために役立てようというのが目的です。しかし、君たちが今から行うことは遊びではありません。自分たちの力で、実際に今起こってる問題を君たちだけで解決に導いて下さい。先生は余程のことじゃない限り手出しや助けはしませんので」

「先生、悪魔に襲われたらどうするんですか?」


生徒の一人が手を挙げて質問した。

誰もが心配し、聞きたかったことだ。


「君たちだけで対処して下さい。君たちは三年生です。悪魔の対処方は習ってきたはず。グループではなくクラスで行う意味を考えて下さい。他に聞きたいことは?」


本当に生徒だけの力で乗り越えないといけないようだ。


「クラスでやるということは、半分は悪魔退治に分けろということか。協力してやらないとな……」


シャーナが小さく呟いた。これはクラスのリーダーを一人決め、指揮する人や作戦を立てないといけないと考える。

ここは学校ではなく、現場なのだから何が起こるか分からない。


「魔法の制限や魔法道具に制限はないんですよね?」

「そうです。ここにいる悪魔は学校の悪魔と違います。どんなのがいるかわかりません。自分の身はしっかり守って下さい。他にはありますか?」


手を挙げる者はいなかった。

命懸けの仕事に学校のルールはいらない。

助けはないのだから、自分たちが本気で頑張らないといけないのだ。


「では、具体的な実習内容を説明します。君たちが知っている通り、今魔法作物が水不足の被害にあっているのは知っていますよね」


ソニアとシャーナが反応した。先週、その被害がめぐりめぐって自分たちにきたばかりである。


「ラワーやコリカなどの魔法作物は、自然な水でないと育ちません。水魔法の水では育たなくて、今大きな問題となっています。水不足の理由は東の森から川の水がなかなか流れてこないことです。そこで、その原因が東の森にあることが判明したので、それを排除するのが、今回の実習です」


森の向こうには海がある。コアはその海水を、海から東の森を通って流れる川から自然な水を得ている。

コアの地形は領域の広さで多少異なるが、だいたい北に1番地、北東に2番地、北西に3番地、西に4番地、東に5番地、南に6番地、南西に7番地、南東に8番地となっている。


コアには川が二つある。東の森から流れる川と南から流れる川だ。

今回水不足になったのは、東側の川で3番地から5番地、8番地と川は流れており、魔法作物は殆ど5番地で作られていた。ラワーも5番地が生産地である。

3番地の前で水不足問題が起きているので、東の森に原因があるのは当然だろう。


「原因は川を辿れば分かるでしょう。説明は以上です。先生も森の中で皆さんを見守っていますよ!皆さん協力してやり遂げて下さい。解散」


グレアムはそう言うと、森の中に入っていった。

生徒だけで残されてしまった。

重い沈黙が辺りを包む。


シャーナは誰が何に適しているか考えながら、クラスメートを観察していた。

アンジェはシャーナの様子を見て、何か考えているのだと思い黙っていることにする。


「とりあえず、どうしようか考えよ!作戦とか立てる?」


ハートンが明るめな声を出した。空気に堪えられなかったのだろう。

その一言でみんなが、そうだな!どうする?とやる気を起こした。


「一ついいか」


シャーナが真面目な顔して手を挙げた。

皆がシャーナの方を向く。どうやら考えがまとまったようだ。


「この実習を指揮するクラスのリーダーを決めておいた方がいいと思うんだが、どうだろう」


シャーナの問い掛けに皆が頷く。

それを見て了解し、シャーナは続けた。


「誰が相応しいか立候補、もしくは推薦して欲しい。何人かいた場合は多数決をとりたい。この人なら命を預けられる、人の命を預かる責任を持てる人にお願いしたい」


シャーナの言葉に皆が緊張した。命が関わるなど荷が重い。

グループは5つあるが、そのグループのそれぞれのリーダーも流石にそんな責任は負えないと判断し。顔を伏せていた。


「シャーナがいいと思いまーす」


アンジェが手を挙げて言った。

大半の人が、推薦したくても違うメンバーだから、推薦しづらかったのだろう、同じメンバーのアンジェが推薦してくれて助かったと全員が思う。

この場の誰もが推薦しようと思っていた人物の名が上がったことで、それを聞きウンウン頷く者や、同じく手を挙げて賛成する者も出た。

シャーナはこうなるだろうと予測出来てたらしく、分かった責任を負うと冷静に言った。


それからシャーナの指揮で作戦を立てていった。

森に入る前に、メンバー構成や、役割分担を決める。

何も策や準備なしで森を進むのは危険だからだ。

悪魔が現れた時のためにすぐに対応出来るよう、フォーメーション組んで進む。

攻撃魔法を得意とするメンバーが外側、内側に守備魔法、治療魔法を得意とするメンバーで、内側メンバーを外側メンバーで囲うように歩くことになった。


「ソニア、恨みを晴らしにいくぞ」


森に入る前にシャーナがソニアに言った。

ソニアは最初何のことだか分からず首を傾げる。


「恨み?」

「ああ、先週のラワーの恨みだ!ふっ、まさかあの時の悔しさをここでぶつけることが出来るとはな!」

「……」


まだ引きずっていたらしい。

しかも、ラワーを食べれなかったのはソニアなのに、何故かシャーナが不満を持っている。

シャーナことだ、ラワーのことだけじゃなくその日起きたシャーナの不運も含まれているだろう。


「待っていろよ。川の原因が何かは知らんが、あたしを怒らせたからには容赦はしない。あたしの魔法で蹴散らしやるぜ」


この口ぶりだと原因は悪魔だと決めつるようだ。

シャーナはニヤリと笑ったが目は笑っていなかった。本気である。

社会貢献が目的なのに、シャーナの中では目的は変わっていた。

完全に憂さ晴らしだ。腹いせである。


いつも頼りになるシャーナだが、この時ばかりはソニアも大丈夫かと心配になる。

ソニアの反応に気付き、言い聞かせるようにシャーナは言った。


「いいかソニア、これはある意味ラッキーだぞ」

「ラッキー?」

「この実習が成功すれば、またラワーが好きなだけ食べれるんだ。あたしたちの手でラワーとか取り戻せるんだ」

「私特別ラワーが好きというわけじゃないよ」

「……。ラワー、だけじゃない。魔法作物全般をまた好きな時に好きなだけ食べることが出来るんだ。魔法作物は美味しいだろ?」

「うん」

「だからあたしたちの手で、取り戻すぞ」

「うん」

「成功したらご褒美としてグレアムに集ろうぜ」

「デザートのモワート食べたい」

「それも魔法作物だからな!」


(大丈夫かしらこのリーダー……)


そんな二人の会話を近くで聞いていたアンジェは、心配になった。




※※※※※




森に入り、川沿いを歩いていく。

通常だったら、川の両岸は陸と川に2メートルほど高さがある。水嵩が増しても大丈夫な程度だ。

しかし今は川の水が殆ど流れて来ないので、谷とまでは言わないが、川の底とシャーナたちが歩いている陸からは深さがあった。


シャーナグループはソニアとアンジェは内側、ユーリとシャーナは外側で、リーダーのシャーナが先頭で移動する。

幸運にも悪魔に遭遇することはなかった。


そして30分くらい歩いたところに、目的地であろう場所にたどり着いた。


「なんだこれ……」


クラスの誰かが呟いた。

そこには川をせき止めるように、巨大な岩が存在していた。

岩は両岸にはまっているようで、岩の隙間から、勢いよく溢れ出た川の水がコア方面に流れていっている。

この僅かな水で現在魔法作物を作っていることになる。

しかしほぼ川の水は、岩によってダムのように止められていた。


「これのせいで川が流れて来なかったのか」


岩の近くまでシャーナが近付いた。

当然岩でせき止められている前は、水嵩が増していて、ちょっと手を伸ばせばすぐに水に触れる。

逆に岩より後は来た時と同じく、底が見えるほど水が来ていなかった。


「私たちの仕事はこれを排除するってわけね」


ユーリが岩を指差して言った。


「意外とこの川深かったんだな深さどれくらいあるだろ」

「8かな?」

「コアや森の手前の川の水深は約12~15メートルらしいわよ。だからだいたいそれくらいと考えていいんじゃない?」


クラスメートの疑問にアンジェが答えた。


「エーデルさんって物知りだなぁ」


ハートンの感心した声に、アンジェは得意げな顔をして続けた。


「ちょうどこの岩が向こう岸に渡れる橋がわりになる、底からあたしたちがいる陸までの高さだから、この岩は15メートルくらいかしらね」


アンジェの推測にみんながざわつく。


「でけぇ岩だな」

「岩というより壁じゃない?」

「こんな岩どうやって壊すんだよ。幅も意外とあるぞ」

「爆発起こすとか?」

「森にも被害出るだろ」


色々案を出すが、いい案が全く浮かばない。

シャーナは一回クラスまとめることにした。


「みんな一回集まってくれ。今から岩の排除に取り掛かるわけだが、いつ悪魔が襲ってくるか分からない状況で作戦なしに行動すると危ないだろ」


シャーナの下へ集まった皆は静かにシャーナの話を聞く。最もだ。

岩に気がいっていたがここは森。悪魔が潜んでいる。


「だからまたフォーメーションを組み直し、役割を三つに分ける」


一つが悪魔の排除チーム、一つは岩の排除案を考えるチーム、最後に岩を調査するチーム。

岩の除去案と岩の調査を同時進行させ、数十分後に集まり報告しあう。

そして二つの結果を元に解決策を考える。

残ったチームがその間、悪魔から二チームを守るのだ。


排除案チームはシャーナとアンジェを含む6人。

岩調査チームはユーリ、ソニアを含む7人。

悪魔チームに、ハートンなど行きと同じく攻撃魔法を得意とするメンバーの7人が役割についた。





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