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ウィザーズ  作者: 緒詞名
1巻「4人の魔法使い」
5/60

1章 「ハジマリ」4

「えー、気を取り直して。ハートン!話をきっちりつけようじゃないか!」

「……あ、うん」


ハートンにしたら、さっきまでの女子たちのやり取りでお腹いっぱいである。


(なんで、俺ここにいるんだろ。リンダスさんだけだと思ったのに、なんでグループ全員でいるんだよ。こういう時も仲間連れて……女子ってめんどくさ)


帰りたくなっていた。


「ハートン、何故うちのソニアと友達になろうと思ったのかね」


しかしシャーナは本題を話せてないのでまだ帰らせるつもりはない。


「ただ純粋に友達になりたかっただけだよ」

「友達ならグループにいるだろ」

「確かにグループのみんなはいい友達だよ。でも、最後の高校生活だし、クラスのみんなと仲良くなりたいって思うのはダメかな……?」

「……」


ハートンは寂しそうに言った。

確かにそれぞれグループの仲はとてもいいが、クラス全体と考えたらめちゃくちゃいいとは言えない。


「本当はシルキーさんだけじゃなく、リンダスさんやエーデルさん、ライネスさんとも友達になりたいって思ってたんだ」

「あたしらも?」

「だけど三人は凄い人たちだから話し掛けづらくって、だから、シルキーさんからお友達になって仲良くなれたらなって……」

「ハートン……」

「やっぱダメだよな、こんなやつが声かけちゃ……」


ハートンは困った顔して笑った。

それを見てシャーナは急に申し訳なくなった。自分の考えがいかにおかしいか。考えすぎだったか。


「俺、友達は諦めるから、じゃあ……」

「待てよ」


ハートンが去ろうと背を向けたら、シャーナが呼び止めた。

低い声だったので、ハートンは怒らせたかと思い、恐る恐る振り向く。

シャーナは俯いていた。


「…………いよ」

「え?」

「だから、友達になってやってもいいよって言ってんだ!」

「え!?」


半ば逆ギレ気味ではあるが、シャーナは照れ臭そうに言った。

ハートンは驚く。


「そのかわり、ソニアだけじゃなくあたしらグループみんなと友達だかんな!」

「う、うん……」

「でも何か妙な真似したら即効敵と見なすからな」

「……うん」

(あれ?友達なんだよね?友達になるんだよね?)


ハートンはシャーナに脅しを疑問に思いながらも、頷いた。


こうして、ハートンとの騒動は一先ず落ち着いた。




※※※※※




ハートンの言っていたことは本当のようで、ハートンはクラスのみんなともっと仲良くなろうと努力をしていた。

彼のおかげかここ数日だけでもクラスとしての仲が良くなった気がする。


「あー、せっかくのフラグだったのにー。恋話だと思ったのにー」


しかしこの展開を少々残念がっている者がいた。アンジェである。

3年A組の教室で、自分の席に頬杖ついて、ぶーぶー文句を垂れていた。

こう見えてアンジェは優秀でいい子なので、無遅刻無欠席を目指している。だからアンジェと同じグループのソニアたちにも遅刻しない、させないと言い聞かせ、朝のホームルームの時間、15分前には必ず行くようにする。


「まだ言ってるのかよ。ハートンいい奴だったじゃないか」


あんなに敵視してたのに2、3日で心変わりしているシャーナ。

早いものである。


「だって、あんたたち浮いた話がなかなかないんだもの」

「アンジェは浮いた話だらけだけどな」

「否定はしない」


本当に自信家だ。


「ふらふらしすぎるのやめたら」


1時間目の準備をし終わったユーリが会話に入ってきた。


「別にふらふらしたくてしているわけじゃないわよ。あたしを愛してくれる人がいないだけ」

「うん。まぁ、こればかりはな」

「別にあたしより強い人、なんて言わないわよ。優秀すぎるあたしより強い人はまずいないから、それは置いといて」

「……」

「あたしを愛しくれるのは大前提で、その上でイケメンで、紳士で、それなりに魔法も優秀で、1番地から3番地までの人で、ありのままのあたしを受け止めてくれる人が周りにいないだけなのよ」

「一気に難しくなったな」

「意外と欲張ってたわね」

「はぁ?妥協しまくってるでしょ!」


アンジェにとったらまだまだ条件は欲しいらしい。


「シャーナとユーリはどうなのよ! 人のこと言えんの?」

「あたしは自分より強いやつかな。年齢は近い方がいい」

「それだけ? 顔とかは?」

「あまり気にしないな」

「……やっぱりシャーナとは価値観違うわ。分かりあえない」

「大丈夫、あたしもあんたの価値観が分からない」


意外にもシャーナにも理想はあるらしいが、アンジェの期待するような答えではなかった。


「ユーリは?」

「私は別に……」

「そういえばユーリのそういう話聞かないな」


ならユーリは、とシャーナからユーリにターゲットを変える。

シャーナもあまり浮いた話を聞かないユーリの話に興味を持った。

同時にアンジェはこの流れは恋話っぽいと密かに嬉しくなる。


「私はない」

「いやいや、そういうのいらないから。理想の一つや二つあるでしょ?」

「……あたしはそういうのに興味ない。それより研究とか発明をやってる方が楽しい」

「あんたそれでも女子高生……」


真面目にそう言い切ったユーリにアンジェはがっくりする。

ユーリの趣味は発明だ。

悪魔や魔力、魔法の研究は自ら進んでやっているが、その他に自分の魔法を活かした発明品を作ることもしている。

なのでユーリは学校が休みの時は、ずっと自分の部屋に篭りっぱなしだ。

アンジェはユーリに期待するのを諦めると、ソニアを見た。

ソニアは先日のことがあってか、三人の話に加わってこないがちゃんと聞くようにしている。


「ソニアは?」


一応流れ的に聞いてみた。


「……私は理想はない」

「ですよねー」

「ソニアはぶれないからな」

「ソニアは私と違う意味で理想ないんでしょ」


分かっていた答えが帰ってきて、三人はウンウンと頷く。

やはりこのメンバーで恋話なんて出来ないか、とアンジェは肩を落とした。


「今日も女子4人集まって早くからガールズトークかい?」


その時だった。

突然後ろから声をかけられたのだ。

びっくりして咄嗟に4人が後ろを向くと、30代前半の身長の高い細身の男が立っていた。

黒髪に、無難な黒スーツ、優しそうな微笑みを浮かべたその男は、3年A組の担任、グレアム・レイノードである。

知っている人物だと分かり4人は緊張を解いた。


「……気配なかったんですけど、いつからいたんです?」

「ついさっきだよ。シルキーさんの『私は理想はない』くらいからだったかな?」

「女子の話を立ち聞きするなんて失礼ですよ」


シャーナは聞かれて機嫌が悪いという態度を隠さず、グレアムを責めるような目で睨んだ。


「いやー教室に向かってたら、教室から楽しそうな声が聞こえてきて、何話しているのかなーと……」

「先生には関係ないです」

「恋話?」

「怒りますよ」


シャーナは先生であろうが、怪しいと思った人物には敵意を見せる。

シャーナはグレアムが嫌いだった。

4人がグレアムと出会ったのは高2の時だ。

その時起きた事件に彼も少なからず関わったので、その時からグレアムは4人を詮索するようなそぶりを見せるようになった。

しかし、グレアムは先生の立場的に生徒が心配なのであろう。仕事熱心なのは確かだ。

シャーナ以外はグレアムを敵視していなかった。


「すみません、先生。リンダスさんは恋話聞かれて恥ずかしいんですよ。察してあげて下さい」

「は!?」


いい子のアンジェは先生、しかも担任を敵に回すなどしたくないので、シャーナを止めた。

思ってないことを言われシャーナは驚く。


「あ……リンダスさんそれはすまなかった」


グレアムは真に受けた。

実際は違うのに、真に受けられると、恥ずかしいと思われたと思い、違う意味で恥ずかしくなってくる。


「ち、違う!」

「いいんだ、分かってる。生徒の気持ちを分かってなかった僕が悪かった。確かに失礼だったね」

(誤解だー!!)


しかし今シャーナがどんなに否定しようと、グレアムには恋話を聞かれて恥ずかしかったことを、恥ずかしいと思い否定しているようにしか聞こえないだろう。

シャーナはアンジェを睨む。

アンジェは視線を逸らして知らんぷりを決めていた。


「さ、リンダスさん気にしないで。ほらホームルームを始めるよ」


グレアムはシャーナの気持ちを切り替えてやる意味も含め、そう言った。

いつの間にか15分経っていたようで、クラスメイトもほぼ登校してきたようだった。

シャーナは誤解も解くことも出来ず、一人恥をかいた気分で、ずっと機嫌が悪かった。




※※※※※




タイプ別授業の時だった。

タイプ別授業は週に4回あり、どれも5時間目にある。

シャーナたちがいないため、ソニアは一人で受けることになるが、ソニアにも一応一緒に受ける友達はいた。

同じ水魔法使いのティア・ギルアムという女子である。明るい茶髪に、緩く髪を巻いき、前髪を真ん中分けいる。C組の良いところのお嬢さんだ。向こうから気さくに話し掛けてきてくれたので、友達になった。

タイプ別授業は一人で受けれる授業になっているため自由席である。ソニアはティアといつも隣同士で座り授業を受けていた。

授業内容は実習で、基礎の水魔法を離れた特定の場所に出現させるというものだ。遠隔の魔法は、集中力が必要になる。仲間のバックアップなしでは出来ない。

この授業では、いかに早く集中して魔法を出せるかと、的確な場所に魔法を出せるかにかかっている。


水魔法の先生の説明が一通り終わり、いざ練習となった。


「じゃあソニアちゃん、あたしからいくね」


ティアが魔法を唱える。

しかし頑張って集中しているが、水魔法はなかなか出現しない。

数分かかって魔法を出せたが、合格ラインの距離の半分しかいってなかった。

そこで集中力が途切れ、ティアはへたれこむ。


「はぁー、ソニアちゃん、これ難しいよ?」


周りを見てみると、ティアだけじゃなく、多くの生徒が出来ていない。

ソニアは自分に出来るか不安になった。




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