表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィザーズ  作者: 緒詞名
1巻「4人の魔法使い」
PR
13/60

3章 「上級悪魔」1


3章 「上級悪魔」






ドーンという大きな音共に、目の前に大きな物体が現れた。

びっくりし、その場にいた三人が固まる。

三人の視線の先には、魔具で遮った領域を軽く越え、恐らく上空から侵入してきた悪魔がいた。

アンジェの蔓は悪魔に踏み潰され、魔法が解けてしまった。


三人は急に現れた大きな悪魔に驚き言葉を失う。

悪魔は全身黒く毛むくじゃらで、ゴリラのような背格好。しかし顔は狼のような顔をし、鋭い牙を見せていた。


「何こいつ……」


アンジェも予想外なことが起きて、動揺を隠せない。


「上級悪魔……普段は森の奥にいて滅多に人前に現れない……この大きさと強さなら間違いない……」


ユーリが声を震わせ、説明した。

悪魔は大きく分けて三つの種類がある。上級、中級、下級だ。

ユーリが撒いた魔具は下級から中級悪魔に利くものだ。それを軽く越えてきたのだから間違いない。

そして悪魔の大きさは強さにも比例する。上級悪魔の大きさは約三メートルはあった。

一メートルから一メートル八十センチが中級、それ以上を上級、一メートル以下を下級と呼ぶ。

強さは想像通り下級が弱く、中級は普通、上級は強い。


「じゃあ、なんでここにいるのよ!?」

「知らない!」


流石にアンジェも危険だと察し焦りを見せた。

悪魔はアンジェたちの様子を窺いながら、一歩近づく。

三人はビクッと反応し後ろに一歩下がった。


「エーデルさん、なんか強力な魔法ないの!?さっきの蔓みたいに!」


レナーナは、目に涙を浮かべ顔面蒼白になっていた。


「そんなこと言われても……何の魔法使えばいいのか……」

「ダメ!攻撃しちゃダメ!逃げることを考えて!上級悪魔は中級悪魔までとは違って厄介なの!」


一応攻撃してみようと杖を構えたアンジェに、ユーリがストップをかけた。

悪魔のことを研究しているからか、ユーリは二人よりは冷静だった。


「どういうこと……?」

「上級悪魔は……中級以下と違って、闇と光魔法が使える」

「魔法が使えるの!?」


レナーナが驚いた大きな声で悪魔がぴくっと反応した。

慌てて自分の口をレナーナは塞ぐ。

悪魔は鼻息を荒くして、飛び掛かろうとするような構えをとった。

ヤバいと察しユーリは咄嗟に魔法を出す。


「ボルーアケージ」


三人と悪魔の間を隔てるように、電気が網目状に流れる壁が現れた。

悪魔は魔法の壁が出来たので、構えを解く。

ユーリは畳み掛けるようにすぐ追加魔法をかける。


「エンディ」


持続魔法だった。


「走って!」

「えっ」


一気に魔法を注ぐと、ユーリは後ろに向かって走り出した。

言われた通りレナーナとアンジェは直ぐにユーリの後に続いた。

後ろでは、悪魔の大きな叫び声が聞こえる。身体に響き、恐怖感が沸き起こる。


「逃げるところまで逃げる!せめてみんながいるところまで!」

「結界張ったし、持続魔法付けたから大丈夫なんじゃないの!?」

「あんなの時間稼ぎよ!言ったでしょ!?上級悪魔は魔法が使えるって、頭悪いけどそのうち魔法解いて追ってくるわ!」

「嘘でしょ!?」


三人は必死に走る。

すると前方に人影が見えた。

ハートンだ。

彼も三人の姿を見つけて、手を振った。


「あ!ライネスさんたち、こんなところにいたんだ!探してたんだよ!術式見つかったから助っ人に来たよー!」

「逃げて!!」

「は?」

「いいから!!」


ユーリの切羽詰まった声と、三人が必死に走って向かって来る様子から、ハートンは何かヤバいと察し言う通り元来た道を走って引き返す。


「何があったの!?」


後ろを気にしながらハートンが叫んで三人に聞く。


「悪魔が…………上級悪魔が……襲って……」


ユーリはへとへとになりながら、答えた。

するとその時、後方から再び大きな雄叫びが聞こえてきた。


それが聞こえた途端、ユーリの血の気が引いた。


「結界が壊された……来る……」


その場の全員が息を飲む。

足を止めることは出来ない。


「もうすぐ、川に出る!……そしたらリンダスさんもいると思う!……他のみんなも戻ってきてるかもしれない!走ろう!!」


ハートンの言う通り、今は逃げるしかない。

人数が多ければ悪魔を退治することが出来る確率が上がる。

4人は走り続けた。


そして前方に川を見つける。

思い切り走って、4人は何とか川まで出ることが出来た。

すぐにシャーナたちを探す。数十メートル先に、悪魔を上手く撒いたらしい排除から帰ってきた者が、シャーナの周りに数人集まっていた。

川を見るとハートンの言う通り岩の排除は終わっていた。

4人はそのまま足を止めずに、シャーナたちのいるところへ走る。

シャーナたちは、勢いよく走ってきた4人に気付いたが、何か様子がおかしいことに気付く。


「なんであいつら走ってるんだ?」


シャーナが怪訝な顔をする。


「何か言ってる」


ソニアが呟いた。

皆は耳を澄ませて聞き取ろうとする。


「……て!!」

「何だってー?」


大きな声でシャーナが聞き返す。


「助けてー!!」


ハートンが大きな声で言い直した。


「は?助けて?」


その場の全員がどういうことか疑問に思った瞬間、走ってくる4人の後方から物凄い衝撃音がした。


一瞬何かが爆発したのかと思ったが、違った。

木が倒され、土煙が舞う。中から現れたのは、大きな悪魔。

恐らく、もの凄いスピードで突進してきたのだ。


皆が4人が何故必死に走ってきたのか瞬時に理解した。

しかし、急な自体に身体と脳は追いつかない。

皆はパニックになり、4人と同じく逃げ出した。

驚いていたがシャーナとソニアだけは何故か冷静だった。


「おい、みんな!落ち着けって!」


シャーナの言葉は誰にも届かない。


「ちっ」


シャーナは、恐怖で逃げ回るクラスメートに舌打ちする。


「ソニア、あの4人がこっちにくるまであたしが悪魔の相手をする。お前は結界作ってみんなを川の中に避難させろ」

「え」

「悪魔の意識をあたしに向けている間に、姿を隠せばいなくなったと思い諦めるだろ」

「でも、シャーナ一人……」

「あたしは平気だ」

「でも、私、魔法……」

「時間がない。やれ。」

「……分かった」

「大丈夫だ。お前は強くなってる、出来るさ。でも絶対無茶はするな。クラスの奴が落ち着いたら、手伝ってもらえ」


シャーナはそういうと、皆とは逆に悪魔の方へ走り出した。


(守りたいのに)


ソニアはシャーナの背中を見つめて、自分の無力を痛感する。

しかし、シャーナが頼ってくれたのだ。魔法が下手なソニアに皆の命を預けたのだ。


「結界張る……」


出来るだろうか。さっきだって一人でできなかったのに。

同時に何か他の魔法を出すわけではないから、一つに集中出来るが、ソニアは不安だった。


皆の分の結界。

一つずつ作り持続魔法をかける方法しかソニアには出来ない。


(時間がない……)


ソニアは腕輪を摩った。




※※※※※




「あれ?なんでシャーナ、こっちに走ってくるのよ!?」


アンジェが逆にこちらに向かってくるシャーナに気付いた。

4人とシャーナがすれ違う瞬間、シャーナがアンジェに言う。


「アンジェ、逃げんな!フォローしろ!」

「は!?戦うの!?」


シャーナの言葉にアンジェは足を止めた。

三人はアンジェたちを気にしながらも、走り続ける。


「正気!?あれ上級悪魔なのよ!?しかも野生!学校のとは違うわ!」

「皆パニックになってる。あたしらしか戦えるやつはいない」

「魔法使えるのよ!?あれ!」

「知ってる」

「え、知ってるの?なんで?」


アンジェでも知らないことを何故、シャーナは知っているのか。

ユーリは悪魔を研究しているから納得出来るが、シャーナが知っているのは意外だ。


「今はそんなことどうでもいいだろ。あたしが攻撃するから、アンジェは奴の攻撃があたしに当たらないようにフォローしろ」

「もしかして、直接攻撃するわけじゃないでしょうね!?」

「遠距離魔法で攻撃しても防がれるだろ。防御魔法張ったにしたって、相手も魔法使えるんじゃ直ぐに壊される」

「危険よ!!」

「だからフォローしろって言ってんだ!その底無しの魔力なら何も怖くねぇだろ!」

「……呆れた。無茶苦茶だわ。全力でフォローするけど、こんなのあたしじゃないと死ぬわよ」

「だろうな。でも、あたしより今から頑張るやつがいるから、こんなのたいしたことない」

「……どういうこと?」

「…………ソニアに魔法使えって言った」

「…………あんたが?」


アンジェは疑う。

シャーナがソニアを誰よりも守ろうとしているのを知っているからだ。

なのにソニアに魔法を使わせたのが理解出来ない。


「ソニアだって成長している。それに腕輪があるなら大丈夫だ」

「……ならいいんだけど」


アンジェは不安だった。

しかし会話を続ける時間はなく、二人が会話をしている間に悪魔は目の前まで来ていた。


「任せたアンジェ」


シャーナは真っ正面から悪魔に立ち向かっていった。

走りながら、杖を前に構えて呪文を唱える。


(契約魔法……)


契約魔法は魔具に魔法をかけておき、魔具に名をつけ、呼び寄せる魔法である。しかし、契約魔法だけで呼び寄せると、本来そこにないものを出現させるので、魔法の持続時間も性能も本来の物より劣ってしまいすぐに消える。

普通は、杖にも契約魔法を記録しておき、杖がよりしろになって魔具を呼び寄せる。すると消えずに魔具を扱える。


シャーナの杖にもある魔具が契約されている。


「トレジサイン」


呪文を唱えると杖を全体的にさっと撫でながら、魔具の名を呼ぶ。


(ほむら)


すると、杖が剣に変化した。

シャーナ愛用の剣である。

シャーナは剣で悪魔と戦うつもりなのだ。

シャーナが剣を出したのを見て、アンジェもすぐに魔法を唱えさっきよりも太くて丈夫そうな蔓を、悪魔とシャーナの周りに出す。


「グラスァケージ」


悪魔が近づいてくるシャーナを魔法で攻撃しようとする。しかし、アンジェが伸びた蔓を手で遠隔に操り、シャーナを防御する壁となる。

悪魔の攻撃は禍禍しい黒い球を口から放っていた。

悪魔は力押しでシャーナを立て続けに攻撃しようとする。その度にアンジェが瞬時にシャーナを防御した。

そのおかげでシャーナは悪魔に急接近する。

まずは悪魔の左足に剣を刺した。


グサッ。


(浅い……!)


しかし、思っていた以上に毛むくじゃらの体毛の下は頑丈で、剣があまり入らなかった。

シャーナは直ぐに慌てて剣を抜き、後ろに飛び退き悪魔から距離をとる。

悪魔の剣が抜かれたところからは赤い血が流れていた。しかし叫び声も出さない様子だと、悪魔にしたらたいしたことないのだろう。

その反応にシャーナはイラッときた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ