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面会

430時、CH-47輸送ヘリに続々と防弾ベストに必要最低限の弾薬、軽量なカービンライフルを持ち、大きなリュックサックを担いだ、痩せ気味だが、筋肉質な体格をした青年たちが乗り込んでいく。

 十数人が乗り込んだところで、ヘリは離陸した。

 イオリアは、ジャングルの中で、仲間のゲリラが居るアジトを目指していた。無線機には、特定の周波数で信号が聞こえる。それが大きくなっていく地点にアジトがあるのだ。

 そこは、ロシア陸軍が駐屯する最小の単位のアジトだ。いくつもあるが、相互に連絡を取り合い、近くの野営基地につながっている。

 陸軍が駐屯する理由は、まず、アメリカへの麻薬の流出を防ぐこと。

 南米のゲリラの一番の資金源だからだ。次にゲリラの掃討だ。同じ目的を持つアメリカの海兵隊とは連携している面もあるとか。

 しばらく歩いていると、足にロープが引っかかり、大きな音がした。

 罠だ。音を出して知らせるのだが、イオリアにとっては好都合だった。

「誰だ!?」

ロシア語で後ろから問いかけられたので、イオリアもロシア語で答えた。

「イオリア・ステファノビッチ少佐だ。階級章を見せる。」

 イオリアはバッジを後ろに投げた。

「まさか・・・?あの少佐ですか?」

振り向くと、泥だらけの戦闘服に身を包み、AKを構えた青年が立っていた。彼の手にはイオリアが投げて渡した階級章がある。

「無事だったんですね?このあたりに落下したとの報告があったので見回りを強化していました。これをお返しします。」

 青年は階級章を手渡した。

「ありがとう。このとおり、私は無事だ。司令部に報告したい。」

「わかりました。案内します。」

 二人はノイズの強くなる方向へと歩きだした。

 その頃、上空の輸送ヘリでは、リーコンが現地へ向かっていた。機内で、綿密な確認が行われている。

「到着まで15分。」

 機内に機長のアナウンスが入る。アナウンスの後、黒人の隊員が立ち上がった。

「いいか、みんなよく聞け。」

 全員の視線が黒人の隊員に注がれる。どうやら彼は隊長らしかった。

「俺たちの目標は、降下地点近くの旧共産党ゲリラの掃討と麻薬密入ルートの撲滅、そして、VIP、イオリア少佐とマイケル大尉の保護だ。降下したら、二つの小隊に分かれる。訓練と同じく、アルファとブラボーと呼称する。アルファが前衛し、ゲリラを掃討する。俺たちブラボーが密入ルートとVIPの捜索にあたる。訓練通りやれば問題ないが、これは実戦だ。敵は待ち伏せてる可能性が高いし、罠などを仕掛けていることもありうる。もちろん、俺たちが生きて帰れる保証はどこにもない。だが、ベストをつくすだけだ!センパーファイ!常に忠実に!」

隊員たちは声をそろえて同じ事を叫んだ。

「センパーファイ!常に忠実に!」

「よし!やってやろうぜ!お前等!ファックンロール、マリーンズ!」

 ヘリは異様な熱気に包まれながら降下していった。

 イオリアたちは、前線のアジトに到着し、アジトの指令たちから手厚い歓迎を受けていた。彼女は指令たちと紅茶を飲みながら報告を聞いていた。

「報告によりますと、五分ほど前にアメリカ軍と海兵隊二個小隊を乗せたヘリがジャングルを抜けた高原に降下、海兵隊を上陸させています。彼らの目的は定かではありませんが、タイミングからして、こちらが捕らえているアメリカ人パイロットの救出が目的ではないかと。」

「こちらと交戦状態になる可能性もありそうだ。兵を一カ所に移動させよう。」

 指令の一人が無線機の方へ歩いていった。次に、イオリアが口を開いた。

「私を保護した事を報告して、将軍はなんと?」

「アメリカとの交戦を終わらせる材料にしたいそうです。そのためには、こちらがアメリカ人パイロットを差し出す見返りに、海兵隊を引かせてもらうようにする方向で、話はまとまっています。」

 無線での交信を終えた指令が戻ってきた。

「海兵隊は、どうやら、麻薬の輸送ルートをたどって来ているらしい。彼らの目的は私たちロシア軍ではなさそうだ。」

「となると、協力も視野に入れているのでは?」

「国防相に問い合わせてみよう。」

 指令があわただしく動き、兵士たちは移動を始めた。

「待ってちょうだい。お願いがあるの。」

「何でしょうか?」

将校のひとりが応じる。

「私を撃墜したパイロットに会いたいの。私が落とされたのは初めてよ。だから今までは白鳥と呼ばれていたの。是非会いたいわ。」

 将校は敬礼で応じ、イオリアに着いてくるようひうながした。二人は分隊に紛れ、前線本部を目指す。

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